社説
バブル経済の崩壊後、おおむね1993~2004年の就職難の時期に学校を卒業した人たちは「就職氷河期世代」と呼ばれる。40代から50代半ばの年齢層だ。
非正規雇用の期間が長い人が多く、他の世代に比べ貯蓄が少ないため、高齢になって困窮することが懸念されている。既に老親の介護と仕事の両立に悩む人がいる。
不況と学卒の時期がたまたま重なり、企業の採用減や労働規制緩和のしわ寄せを受けた。経済的苦境は自己責任だとして放置してはならない。
1700万人以上といわれる氷河期世代への支援を拡充すべきだ。
政府は19年から本格的な支援策に取り組んでいる。企業に助成金を支給して正社員化を後押しし、国・地方の公務員への採用も進めた。
その効果は十分に行き渡っていない。本意でなく非正規雇用されている人は、24年までの5年間で11万人減少したとはいえ、依然として35万人いると推計される。
仕事に就いていない人は44万人で増加傾向にある。ひきこもりの人も少なくない。
同じ世代でも新卒採用と中途採用の正社員ではキャリアに差がつき、年齢を重ねるにつれて所得格差が広がっているといわれる。
人手不足対策で賃金を上げる企業が増えているものの、対象は若手社員が中心だ。氷河期世代はここでも割を食っている。
政府は6月、氷河期世代の新たな支援策の基本的な枠組みをまとめた。リスキリング(学び直し)などのキャリア形成支援、公務員・教員への採用拡大、住宅の確保などを挙げている。
九州にも多くの氷河期世代が暮らす。自治体や企業も協力して、個人や地域の事情に合った支援をしてほしい。
参院選では、氷河期世代に照準を合わせた公約を掲げた政党がある。高齢期が視野に入る当事者にとっては、生活を支える年金が特に気がかりだろう。
現行では現役時代の賃金水準が低いと、会社員らが入る厚生年金の受給額は比例して低くなる。非正規雇用が長い人にとっては死活問題だ。
低年金対策を急がなくてはならない。先の通常国会では厚生年金への加入を拡大する改正法が成立する一方で、基礎年金(国民年金)の底上げ策は先送りされた。
底上げに必要な財源の半分は国費で賄う。参院選前に増税の是非につながる議論を避けたとみられる。
制度の抜本改革として、税金を原資に、誰もが最低限の生活に必要な年金を受け取れる最低保障年金の導入を求める意見もある。
年金制度は氷河期世代だけでなく、若い世代にも共通する課題だ。各党が唱える改革に財源の裏付けや実効性があるかどうかを見定めたい。