答え合わせなんかするなよ。
東京在住の女性K様から「一緒にランチを食べたい」とご連絡をいただいた。私の正しい使い方である。なぜ私に連絡をしたのか尋ねたら「なんとなく」と言った。こんなことを書く人間になんとなく会いたい人間はいない。絶対何かあると思って絶対何かあるだろと尋ねたら、実はいまは病院の帰りで、最近髪の毛が抜ける病気になって困っていると言った。おい。めちゃめちゃあるじゃないか。めちゃめちゃあるのに、隠してくれるな。
K様は「自己紹介してもいいですか」と言った。私は「そういう許可は取らないでください」と言った。K様は「前にも同じことを書いていましたね。それを読んだ私もそんなこと言わないでいいのにと思っていたのに、自分がやってしまっていると知って愕然です」と言って、泣いた。また、泣かせてしまった。俺に会うとみんな泣く。俺は悪魔なのかなと真剣に悩む。K様は、泣きながら「自分がこんな風になるとは思わなかった」と言った。坂爪さんに会ったら何かヒントをもらえるかなと思っていたけど、その在り方が受け身で、依存的で、失礼だったと反省していると言った。
K様は「頭の中が真っ白になって何も言えない」と言った。こんな時はどうすればいいのだろうとか、こんな時は何を言えばいいのだろうとか、正解を探すと身動きが取れなくなる。正解を探してしまうのは、自分で責任を取りたくないからだと思う。自分で責任を取らなければ、人生が展開しない。正解を探すな。正解なんてないのだから、正解なんてわからないまま、自分で決めて、自分の責任で言いたいことを言えよ。やりたいことをやれよ。そう言うと、K様は「同じことを前に書いていましたね。読んでいたはずなのに、何もわかっていませんでした」と言って、更に泣いた。
出会う女を泣かせまクリスティの私は、パスタ屋の店員から睨まれまクリスティでもあった。泣くのは全然構わないけど、肝心なのはその後だろ。自分にはこう言うところがある。それに気づけたことは幸運だ。その上でどう生きるかが肝心なのに「なんで自分はこうなのだろう」とか「自分の何がダメだったのだろう」とか、過去に固執するから現在がつまらなくなる。切り替えておくれ。K様は「退屈な思いをさせてごめんなさい」と言った。私は「謝られても楽しくない。過去はいいから現在を楽しみませんか」と言った。その言葉を聞いて、K様は更に泣き、私は更に睨まれた。どんどん俺が悪役になっている。ごめんなさいもありがとうも要らないから、切り替えておくれ。
切り替えたK様は「大好きなツールドフランスの話をしてもいいですか」と言った。私は「そういう許可は取らないでください」と言った。それがよくなかった。K様の涙腺は再び崩壊し、ツールドフランスについては何も聞くことができなかった。別れ際、K様は「いたたまれなくなった」と言った。自分が思っている自分と実際の自分がこんなにも違うのかと思って愕然とした。それに気づけてよかった。坂爪さんに会えて嬉しかった、と。私は「だったら、いたたまれなくなったと言うよりも『トータルでよかった』って言えよ。いたたまれなくなっただけならさっさと別れましょうってことになるだろ」と突っ込んだ。笑いを誘うつもりで言ったが、K様は泣き、私は自由が丘の通行人全員から睨まれた。睨んでくれ。俺は悪魔だ。俺はもう、悪魔でいいよ。解放の悪魔だ。
おおまかな予定
7月24日(木)東京都中央区界隈
以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)
連絡先・坂爪圭吾
LINE ID ibaya
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE https://tinyurl.com/2y6ch66z
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