「国のガイドライン通りにいかない、さまざまな事態が起きている」。妊婦が病院以外に身元を明かさない「内密出産」に取り組んでいる賛育会病院(東京都墨田区)の賀藤均院長が、3月末の運用開始からこれまでに感じたことです。法制化を目指し、「後に続く病院を増やしたい」と話しますが、課題はないのでしょうか。
インタビューは前後編の2回です。前編では、これまで預け入れがあった赤ちゃんがいずれも「孤立出産」だったことや、運用する中で抱く葛藤について聞きます。前編はこちら
国のガイドラインに感じるギャップ
――親が育てられない子どもを匿名で預かる「ベビーバスケット」(通称・赤ちゃんポスト)とともに、今年3月31日から内密出産にも取り組まれています。国内では2カ所目です。
◆既に数件、内密出産になったケースがあります。内密出産をしたいという相談はもっと多いのですが、医療ソーシャルワーカーや助産師と対話を重ねる中で気持ちが変わり、最終的には行政にも身元を明かすケースが相当数あります。
――内密出産については、国内で初めて取り組んだ熊本市の慈恵病院の事例を踏まえ、国が2022年にガイドラインを出しました。内密出産を「推奨するものではない」とし、医療機関が妊婦に対し、内密ではなく身元情報を明かした出産をするよう産前に「説得」することが求められています。
◆ガイドラインに沿った対応を原則としています。ただ、無理強いするようなことはしません。
内密出産は、子どもの出自を知る権利に課題が残るものの、誰にも妊娠を知られたくないと思い悩む女…
この記事は有料記事です。
残り2264文字(全文2926文字)
あわせて読みたい
Recommended by