関西を中心に1府6県の病院を拠点に活動するドクターヘリ8機が、7~8月に順次運航休止となる事態に陥っている。運用する関西広域連合によると、委託先の整備士不足が原因という。特に大阪府などを管轄するヘリは不具合もあって7月末まで半月にわたり休止される見込みで、一刻を争う救命医療への影響を懸念する声が上がる。
近畿や周辺自治体でつくる広域連合によると、ヘリの運航を委託する学校法人「ヒラタ学園」(堺市)から今月9日、「ドクターヘリに同乗する整備士が確保できず、一時的に運航できなくなる」と連絡があった。国の研究チームが示すドクターヘリの運航基準に合わせ、操縦士を補佐する整備士もヘリに同乗する必要があるためだ。
すでに和歌山県立医科大付属病院が9~15日、済生会滋賀県病院が10~13日、奈良県立医科大付属病院が16~22日、鳥取大医学部付属病院が22~28日の日程でヘリの運航を休止。さらに大阪大医学部付属病院は24~30日に休止予定だったが、機体の不具合も重なって15日から休止が続く。
同病院高度救命救急センターの織田順センター長は取材に「これだけの長期休止は前代未聞の事態。(搭乗予定だった)ドクターもナースも不安を感じている」と強調する。休止中は近隣のヘリが搬送をカバーするか、陸路での搬送となるが、同病院には休止中、消防からドクターヘリの出動要請が来ないため、「搬送にどれほど影響があるのか、把握さえできない」と困惑する。
ヒラタ学園によると、複数の整備士が長期休暇などを求めたことで欠員が生じ、各地に整備士を配置するのが困難になっているという。同連合広域医療局の担当者は「救命医療にとって重大な事態。ヒラタ学園には運航を継続するよう要請を続けている」と話す。
広域連合やヒラタ学園によると、8月に入っても整備士不足は続き、兵庫県立加古川医療センター、公立豊岡病院(兵庫県)、徳島県立中央病院を拠点としたヘリが順次休止される見通し。8月は山間部などで熱中症患者を搬送するケースが多く、織田センター長は「空路で搬送できず、手遅れになるケースが出ないか心配だ」と話す。
ヒラタ学園によると、9月以降は整備士の一部増員が見込めるが、担当者は「人材確保に全力で取り組む」としている。