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神谷宗幣「哲人政治が日本を救う!」(『維新と興亜』令和5年3月号)

日本の政治は非常に危険な状況にある


── 崎門学や水戸学の國體思想を基軸に据える本誌は、「天皇親政こそわが国本来の姿である」という考え方を追求しています。こうした考え方について、神谷さんはどう思いますか。
神谷 もちろん、国民に信を問うべきだとは思いますが、私は今の民主主義が決していいものではないと繰り返し述べてきました。目指すところは、古代ギリシアで唱えられた「哲人政治」だと思っています。哲学がある人がきちんと政治をやった方がいいという考え方です。
 民主主義が行きつくところはポピュリズム政治であり、すでにわが国は「今だけ、金だけ、自分だけ」という政治に流されています。日本の政治は、非常に危険な状況にあると考えています。
 哲人を選ぶ方法は二つあります。一つは選挙で選ぶという方法、もう一つは日本の國體に沿って再び天皇陛下にお願いするという方法です。私は日本の天皇陛下の多くが哲人政治家であったと考えています。ただし、私はいきなり天皇陛下による政治に戻すべきだと主張しているわけではありません。そこに戻すなら国民への教育と理解のプロセスが非常に重要だからです。いずれにせよ、哲人政治は現在の日本を救う一つのキーワードになるのではないかと私は考えています。
── 統帥権を天皇陛下に奉還すべきだと思いますか。
神谷 統帥権を持つのは総理大臣よりも天皇陛下の方が適任だとは思います。ただ、それを天皇陛下に委ねるかどうかを決める際にも、しかるべきプロセスを経る必要があると思います。
── 例えばイギリスの場合には、名目的であれ国王が軍の最高指揮官になっています。日本の場合にも、自衛隊の志気を高めるためには精神的な拠り所が必要になってくると思います。そうした意味では、最高指揮官には天皇陛下になっていただくべきではないでしょうか。
神谷 同感です。日本人はコロコロと変わる「総理大臣の指示で戦え」と言われるよりも、「天皇陛下の指示で、日本のために戦え」と言われた方が、「よし、戦おう」という気持ちにはなるはずです。名目的でも天皇が軍隊の最高指揮官になっていただくことは非常にいいと思いますし、軍隊の志気は十倍ぐらい上がると思います。
── 国家の根幹を規定する憲法の改正についても、陛下のご英断を仰ぐ形で進めていくべきではないでしょうか。
神谷 その質問もまた、哲人政治家の話に行きつくのですが、そうしたプロセスを経ることが理に適っていると思います。何でもかんでもみんなで決めることが必ずしも善ではないと、私は考えています。国家の根幹に関わる決定は、「国民全体のために」という理念が絶対にぶれない人に任せるべきだと思います。
 日本の政治家も、いつ外国勢力に取り込まれるかわかりません。外国勢力に取り込まれた人たちが全てを決めていいとなれば、国家は簡単に外国勢力に乗っ取られてしまいます。しかし、天皇陛下が外国勢力に取り込まれるリスクは、政治家が取り込まれるリスクより何倍も少ないと思います。
 哲人政治家に国家の基軸を守っていただくことは、国防上も非常に重要だと思います。国家の根幹に関わるような部分に関しては、天皇陛下のご裁断を仰ぐと規定しておくことは国防上も重要であり、国民の幸せにも繋がると思っています。

御製を読み、神話を学ぶことが重要だ


── 戦後、日本人の尊皇心が失われてしまいました。
神谷 もはや尊皇心が全く残ってないように思います。
── どうすればそれを取り戻せるのでしょうか。
神谷 難しいですね。歴代天皇の御製をしっかりと読み解いていくことが重要だと思います。御製を読むことによって、例えば、何かが起きた際に天皇陛下がどのようなお気持ちでいらっしゃったかを拝察することができます。「あるべき國體とはこうだ」というところから入っていくよりも、御製から大御心を読み解いていく方が入りやすいと思います。それによって、いつの時代も国民が安らかに暮らせるように祈り続けてくださっている天皇の御存在を知れば、感謝の思いが湧いてきます。
── 学校教育で日本の神話を教えることについてはどう考えていますか。
神谷 学習指導要領にも書いてありますから、しっかりと教えるべきだと思います。それが事実だったかどうかということではなく、日本人の考え方、ものの捉え方という意味で神話を学ぶことは重要だと思います。神話を知らなければ、天皇、皇室が元々どのように誕生したのかという物語、ストーリーがわかりません。それがなければ、皇室に対する理解も進まないし、愛着も湧かないと思います。
 ストーリーがあるからこそ、日本人は何千年にもわたり皇室を大事に守ってきたのです。つまり、神話というのは民族の歴史であり、その根っこの部分を抜いてしまえば、民族は滅びるのです。だから、神話は必ずきちんと教えるべきだと思います。
── 教育勅語を復活すべきだと思いますか。
神谷 本来は、教育勅語がなぜ作られたのか、井上毅らがどのような思いでそれを作ったのかというところから学び、教育勅語の復活を目指すべきですが、それを主張すると、拒否反応を示す人も少なくありません。多くの人が、教育勅語は軍国主義だと思い込んでいるため、教育勅語の復活には時間がかかるでしょう。したがって、教育勅語に書いてあるような考え方を、国民の理念として教育に取り入れるべきだと思います。

國體論を口にできない言論空間


── 水戸学の國體思想なども重要な思想だと考えていますか。
神谷 現在は、そうした考え方になっていますね。水戸学の根本、エッセンスは非常に重要であり、水戸学に流れる精神も残していくべきだと考えています。ただ、水戸学そのままでは多くの国民には伝わらないので、現在の状況に言葉を置き換えて伝えていく必要があると思っています。
── 政治家の國體観が失われているように思います。
神谷 その通りですね。國體観は持ってはいけない、國體観を持つ人は危険人物だから、そうした人は排除しなければいけないといった風潮が政治の世界にあるように思います。例えば、私が国会の代表質問で水戸学の思想を語ろうものなら、大手のメディアが一斉に潰しにくるでしょう。政治家の中には國體観を持っていても、それを出すと叩かれるので、あえて出さない人もいると感じています。国会議員が心情を吐露できないような言論空間を、メディア、国民世論が作り上げているのではないでしょうか。
 日本の敗戦後、GHQによって日本の國體思想が封印された流れが、今も続いているように思います。

小学校からの教育が重要だ


── どうすれば国旗・国歌への尊敬を取り戻せると思いますか。
神谷 小学校からの教育が非常に重要だと思います。私が国旗に対しても、国歌に対しても敬意を持っているのは、小学生の時にそれをしっかり教わったからです。国旗を地べたに置こうものなら、先生から叩かれたほどです。国旗には正しい畳み方があるということも、小学校できちんと教わりました。「君が代」の斉唱の仕方だけではなく、「君が代」の歌詞の意味についても教わりました。
 国旗・国歌に尊敬の念が持てない人たちは、決して国を守ろうとはしません。だからこそ、小さい頃からその道理を教える必要があると思います。例えば、社会科の教科書の冒頭に、国旗と国歌を載せ、なぜ日本人が国旗と国歌を大切にしてきたのかということを、しっかり教えるべきです。
── 小学校できちんと国旗・国歌への尊敬の重要性を教えられたのは、珍しいケースのようにも思います。
神谷 私が育った福井県では、それが普通だったと思います。だから私は、大阪府吹田市議会議員になった時、「日の丸や君が代を悪く言う先生がいる」とか、「音楽の教科書の君が代のページにプリントを貼っている」といった話を聞いて、驚いたことがあります。教育委員会の人にそうした現状について議会で質問してくださいと言われ、質問しました。すると、共産党の議員やその支援者の方から強い批判を受けました。彼らは、日の丸は軍国主義の象徴であり、日の丸の赤は血の色だなどと言うのです。教育の影響は恐ろしいと、つくづく感じました。
モラロジー研究所に入っていた父の教え
神谷 ただ、実は私も高校生の頃までかなり左派的な考え方を持っていました。皇室を蔑ろにするような考え方を持った先生の影響もあったのかもしれません。ところが、海外に行った時に、外国人に対して日本のことを十分説明できず、「これは日本人としてまずい」と強く思ったのです。
 日本に帰ってきてから、小林よしのりさんの『戦争論』など、保守派の論客の本を読むようになりました。その時、「自分がいま学んでいる考え方は、父親が言っていたことと同じだ」とふと気づいたのです。私が二十四~二十五歳の頃だったと思います。父親はモラロジー研究所に入っていたのです。モラロジー研究所は、廣池千九郎が大正十一(一九二六)年に創立した道徳科学研究所を起源とする修養・道徳団体です。父親だけではなく、祖父も叔父もモラロジーに入り、勉強していたのです。私は、幼い頃には親父はなんか変わったことを言っている、古めかしいことを言っていると感じて、理解しようとはしなかったのです。しかし、二十代半ばでようやく父親の言っていたことの意味がわかったのです。ある日、それを父に伝えると、父は何も言わずに喜んでいました。

男性の皇位継承者を増やすことが先決


── 皇位継承の議論についてはどうご覧になっていますか。
神谷 皇位継承に関しては、国民がとやかく言うべきことではないと考えています。皇位継承は皇室の方々に一任し、そこで決まったことを国会で承認すべきだと思います。一般国民が持っている情報は限られています。そうした限られた情報の中では、皇位継承についての議論も、結局人気投票のような形になりかねません。
── 女性宮家創設についてはどう考えていますか。
神谷 旧宮家に復帰していただき、男性の皇位継承者を増やすことが先決です。その議論なくして、女性天皇とか女性宮家の議論をするのは、順番が逆だと思います。
 私の基本的な考え方は、皇位継承者は皇室の方々に決めていただければいいというものです。秋篠宮皇嗣殿下と悠仁親王殿下のお二人ともが、万が一皇位を継承できない状況になった場合、現状制度では他に継承者がいないということになってしまうので、制度を新設するまでの間に限り、愛子内親王殿下にお願いするという選択肢も残しておくことは悪くないと思います。私は必ず男系で継承していただきたいと考えていますから、まず皇位継承者を増やすための議論をしなければいけないと思います。女性宮家や女性天皇の議論を先にすることが間違いだと考えているのです。
── 政府の皇位継承に関する有識者会議報告書が示した「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」という案と「皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする」を比較したとき、どちらの案がいいと考えていますか。
神谷 当然、「皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする」という案です。養子は場当たり的なものに過ぎません。あるいは、側室制度を復活させるしかないと考えています。

続きは紙版の『維新と興亜』で!


皇族の方々の尊厳をどう守るか

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