[社説]再審制度の改正迫る無罪判決
1986年に福井市で起きた女子中学生殺害事件の再審で、名古屋高裁金沢支部が殺人罪で有罪となった前川彰司さんに無罪を言い渡した。
昨年無罪が確定した袴田巌さんと同様、再審制度の不備を明確に示した司法判断だ。法整備の動きを加速させねばならない。
前川さんは一貫して冤罪(えんざい)を訴えていた。一審は無罪だったが、二審は「犯行を告白された」などの知人証言を根拠に懲役7年の逆転有罪とし、前川さんは服役した。
再審の判決は、捜査に行き詰まっていた警察が知人の虚偽証言を誘導したと認定。さらに事実関係の矛盾を指摘する捜査資料があったにもかかわらず検察が伏せていたと認めた。「公益の代表者としての職責に照らし、失望を禁じ得ない」と非難したのは当然だ。
17日には、殺人罪で服役後に再審無罪となった西山美香さんが国と県を訴えた訴訟で、大津地裁が滋賀県警の違法捜査を認めた。
冤罪を生んだ不正な捜査手法が次々と明らかになり、刑事司法に対する信頼が大きく損なわれている。警察と検察がなすべきは真摯な検証と反省である。
再審をめぐっては、手続きの長期化や捜査機関が持つ証拠を開示するルールがないといった問題点が指摘されている。
前川さんも2011年に再審開始が認められながら、検察の不服申し立てで覆った。証拠開示にも応じようとせず、再審開始の決め手となった捜査資料が示されたのは23年になってからだ。
こうした不備を改めようと、先の通常国会で野党6党が法案を提出した。他方、法制審議会(法相の諮問機関)でも議論が続いており、与党内には法制審に委ねるべきだとの意見があるという。ただ検察・法務省は証拠開示の拡大などに消極的とされ、抜本的な改革につながるかは不透明だ。
欠陥をただすための一刻も早い対策が求められており、議員立法の成立を優先すべきだ。