教育

2025.07.23 13:00

トランプ政権下で進む学生の「米国離れ」、英大学に出願した米国人が過去最多

英オックスフォード大学(Shutterstock.comn)

英オックスフォード大学(Shutterstock.comn)

英国の大学に出願した米国人の数が今年、過去最高を記録した。この背景には、外国人留学生への攻撃や研究費の削減、大学学長への圧力、一流大学に対する取り締まりのほか、多様性・公平性・包摂性(DEI)政策の見直しなど、米国のドナルド・トランプ政権による高等教育への介入がある。こうした政権の圧力の明らかな「効果」の1つは、高校卒業後の学業の継続を英国の大学に求める米国人の数が著しく増加したことだ。

英大学入学事務局(UCAS)によると、6月30日の締め切りまでに、米国人から提出された2025年度の大学入学願書は前年比約14%増の7930件に上った。これは2006年に集計を開始して以来、最多となる。

UCASは、全英で統一された共通の大学出願システムだ。米国の大学共通出願システムのコモンアップと同様、英国の高等教育機関に出願する多くの米国人がUCASを利用している。だが、UCASを通さない出願もあるため、今回の統計では、米国からの出願者数が実際より少なく集計されている可能性がある。また、UCASは学部入学のみを対象としているため、米国からの大学院生の流出も今回の数字には反映されていない。

UCASを通じて英国の大学の学部課程に出願した外国人留学生の数は、全体で前年比2.2%増加した。中国からの出願者が前年比10%増で過去最高を記録したことに加え、ナイジェリア(同23%増)、アイルランド(同15%増)、米国(同14%増)からの出願者も全体の増加を支えた。出願者数だけでなく、英国の大学が外国人留学生に出した入学許可の数も前年比9%以上と大幅に増加した。

一方、米国の大学は、今年の外国人留学生の入学者数が減少するとみている。例として、

●教育関連の情報サイト、インサイド・ハイヤーエデュケーションの報告によると、米国の学生ビザ(査証)の発給件数が激減している
●同サイトは、米国際教育者協会(NAFSA)が今夏、全米約150の大学を対象に実施した調査で、78%の教育機関が、学部と大学院の双方で外国人留学生の減少を予測していると伝えた
●米国際教育研究所(IIE)の報告書によれば、米国の大学の40%が外国人留学生の学部生の入学者数の減少を、49%が大学院生の入学の減少を予測している

IIEによると、2023年度には110万人を超える外国人留学生が米国の大学に入学していた。この数字は過去最高で、全米の大学生の約6%を占めた。新型コロナウイルスの世界的な流行で、2020年度に外国人留学生数が前年比15%減を記録したが、以降の3年間で留学生数は計20万人増加した。

しかし、トランプ政権下で、米国が人気留学先としての地位を失いつつある状況が浮き彫りになっており、欧州、オーストラリア、アジアの大学に人気が移っている。こうした変化に伴い、外国の大学への留学を選択する米国人学生も急増しており、英国が大きな受け皿となっている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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キャリア・教育

2025.06.02 09:00

トランプの大学締め付けで留学生の「米国離れ」も ハーバードに代わる進学先は?

ハーバード大学のジョンストン・ゲート。米東部マサチューセッツ州ケンブリッジ(365 Focus Photography / Shutterstock.com)

ハーバード大学のジョンストン・ゲート。米東部マサチューセッツ州ケンブリッジ(365 Focus Photography / Shutterstock.com)

数十年にわたり、米国は外国の学生の間で最も魅力的な留学先と考えられてきた。世界的に評価の高い大学、卒業後の就労プログラム、研究機会などに惹かれ、米国務省によると2023〜24年度には過去最多の112万人あまりの留学生が米国で学び、それによって米国には500億ドル(現在の為替レートで約7兆2000億円)超の経済効果がもたらされた。

だが、ドナルド・トランプ政権のビザ(査証)政策をめぐるここ数週間の混乱や、ハーバード大学の留学生受け入れ資格を取り消した5月22日の措置を受けて、留学先としての米国の魅力は揺らいでいる。政権による最新の措置に対しては連邦地裁が一時差し止め命令を出したものの、米国の高等教育の不安定な状況は、今後どのような結果になろうとも、それだけで外国の学生を遠ざけるのに十分かもしれない。

ハーバード大学をはじめ、米国のいくつかの研究大学は巨額の研究資金も失っており、これは留学生にとって研究機会が減ることを意味する。さらに、米国の大学は授業料も高騰していて、少なくとも1校では寮費や食費、教科書代などすべての経費を含めると年間の学業コストが10万ドル(約1440万円)を超える。大半の留学生は正規の学費を支払うことになるので、こうしたコストの高さも、留学先として米国を選ぶのは賢明なのか疑問を抱かせる要因になる。

英国やカナダ、豪州も留学生を制限

海外での学位取得をあきらめ、国内の大学に進学する選択肢を選ぶ学生が今後は増えるかもしれない。とはいえ、国際教育者協会(NAFSA)によれば、インドのように、高等教育の需要に対して大学の定員が足りていない国もある。インドでは大学の数は増えているものの、教育の質には相変わらずばらつきがある。ほかの国でも、大学の質が低く、今日の労働市場で競い合っていくのに必要なスキルを身につけた卒業生を生み出せていないことがある。

外国の学生は、英国やカナダ、オーストラリアといった米国以外の英語圏の国を留学先に選ぶ可能性もある。たしかにこれらの国々は、世界的に認められている学位プログラムや、卒業後の就労ルートを提供している。しかし、これらの国々でも近年、大勢の留学生が流入した結果、移入者に対する国民感情が悪化し、入国管理政策が引き締められているのが実情だ。

次ページ > 日本は2033年までに留学生を40万人受け入れる目標を掲げる

翻訳・編集=江戸伸禎

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ライフスタイル

2025.05.30 12:30

国外に移住する米国人が増加、「学生ビザ」で夢を実現する中高年層も

フランスの首都パリにあるソルボンヌ大学(Alexandre Rotenberg / Shutterstock.com)

フランスの首都パリにあるソルボンヌ大学(Alexandre Rotenberg / Shutterstock.com)

米国人は海外移住を夢見るだけでなく、実現している。最近の調査によると、米国人の17%が向こう5年以内に外国に移住することを考えており、5%は移住に向けて積極的に動いていることが明らかになった。海外に移住するには、投資によって居住権を得るゴールデンビザ(査証)制度から、祖先をたどって市民権を得る制度まで、さまざまな方法がある。しかし、なかには「学生になる」という、外国移住の足がかりとなる賢い方法を見つけた人もいる。

イタリアを拠点に、外国人向けの移住コンサルティングを手がけるファインディング・ラドルチェビータは、主に学生ビザで欧州に留学する若者の家族を支援している。ところが昨年、ある中年の顧客が別の要望で同社を訪れた。それは、海外留学を望む顧客本人のために、学生ビザの取得を代行してほしいというものだった。筆者の取材に応じた同社の設立者キム・エングルハートは、「最初は、これは1回限りのことだと思っていた。ところがその後、同じような問い合わせが相次いでいる」と語った。

居住権取得への道としての留学

近年、海外で学ぶ米国人留学生の数は増加している。留学推進団体の米国際教育研究所(IIE)が2024年11月に公表した報告書によると、米国人留学生の数は22~23年にかけて前年比49%増加した。エングルハートによれば、学生ビザを希望する40代以上の顧客の数が特に急増しているという。

その理由はさまざまだ。異なる文化に浸りたい場合もあれば、生涯学習の認知効果に関する報道を見て留学を思い立ったという人もいる。しかし、多くの人にとっての究極の目標は、留学を足がかりとして長期的な居住権を得たり、場合によっては第二のパスポート(旅券)、つまり市民権を取得したりすることにある。

筆者の取材に応じた移住コンサルタントのアマンダ・クレコウスキも同様の傾向が見られると証言した。「欧州の大学院への出願に対する関心が高まっている。顧客が本気で出願していることも、私は理解している。顧客は、自分に適性があり、興味をそそられるようなコースに応募しているからだ」。クレコウスキによると、多くの顧客は以前から「いつかは」大学院に進学したいと考えていたが、最近の社会情勢により、行動を早めるようになっているようだ。

次ページ > 学費の安い欧州に留学する米国人が増加

翻訳・編集=安藤清香

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教育

2025.06.04 09:00

トランプの下で米国は「営利大学大国」に? 職業学校を支援、所得向上効果には疑問符

連邦助成金の一時停止や留学生受け入れ資格の取り消しなど、ハーバード大学への攻撃を強めるトランプ米大統領(Kayla Bartkowski /Getty Images)

連邦助成金の一時停止や留学生受け入れ資格の取り消しなど、ハーバード大学への攻撃を強めるトランプ米大統領(Kayla Bartkowski /Getty Images)

エリートの「Woke(ウォーク、意識の高い)」大学への攻撃を続けているドナルド・トランプ米大統領は5月26日、一時停止したハーバード大学向け連邦助成金の一部を職業学校(トレードスクール)に振り向ける可能性に言及した。トランプは、選挙戦でも第1期政権でも職業学校を支持していた。「非常に反ユダヤ主義的なハーバードから30億ドルの助成金を取り上げ、全米各地の職業学校に与えることを検討している」とトランプは自身のSNSトゥルース・ソーシャルに投稿した。「米国にとって素晴らしい投資になるし、ひどく必要とされているものだ !!!」

もっともトランプには、この30億ドル(約4720億円)の振り向け先を独断で変更する法的権限はないようだ。この資金はもともと研究向けに連邦議会で承認されたものであり、職業学校向けに振り替えるかどうかもおそらく議会に委ねられる。しかし、こうした措置に対して彼が共和党の支持を得られる時があるとすれば、それは今かもしれない。ほとんどの職業学校は営利目的で運営されている。そして、職業学校を含む営利の高等教育セクターは、詐欺や制度悪用、その他の問題にまみれてきた過去がありながら、トランプと共和党支配の議会では繁栄する方向にあるように見える。

下院を通過したトランプ肝いりの税制・予算法案、正式名称「一つの壮麗な法案(One Big Beautiful Bill)」には、営利教育機関に有利な条項がいくつか含まれている。たとえば、一部の営利校に対して連邦学生ローンの利用を制限してきた規制の撤廃や、低所得層の学生が従来より短期間の職業訓練プログラムでもペル・グラント(返済不要の奨学金)を利用できるようにする「ワークフォース・ペル・グラント」制度の創設などだ。トランプはさらに、高等教育機関の認定プロセスの全面的な見直しも計画しており、これにより営利校は学生への連邦援助をより早く、容易に利用できるようになる可能性がある。

営利教育業界は米教育省内にも、これまでより自分たちに理解のある人物を持つことになりそうだ。トランプが高等教育担当の教育次官に指名したニコラス・ケントは、営利教育の業界団体キャリア・エデュケーション・カレッジズ・アンド・ユニバーシティーズ(CECU)の元最高政策責任者にしてロビイストなのだ(彼の指名は5月22日、共和党が上院の保健・教育・労働・年金委員会を賛成12・反対11の僅差で押し通し、現在は上院本会議での採決を待つ状態となっている)。

次ページ > 新たな奨学金制度の懸念点

翻訳・編集=江戸伸禎

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