野狐人〜西村賢太 周りの周りの人たち〜 第二回 澤水月 編
澤:「曩時」って誰も読めない漢字ですよね 笑
落:俺も初読とりあえずは飛ばして読んでたかもしれません 。澤さんの話聞いたら大事なワードなのに 笑
信濃路、今回も満席の為カウンタースタート
落日堂(以下、落):初めまして。今回はよろしくお願いします。澤さんに声をかけた理由は2つありまして。まずは当然西村賢太、西村賢太を通じてXのフォローをし合って、そして俺が好きなエレファントカシマシ、エレカシの弾き語り動画なんかを澤さんがYouTubeにアップしてるのをお見かけして。ああこれなら面白い話が出来るかなって思ったのがきっかけです。で、俺は事前に聞いてはいますが澤さんのお仕事って聞いちゃって大丈夫ですか?
澤水月(以下、澤):新聞記者です。
落:某大手の新聞記者さんだそうで。正直エラい方を引き当ててしまったな、なんて思ってます。本職の方じゃないですか。俺なんかの素人インタビューを引き受けていただきありがとうございます。勉強させていただきます。実は前回、インタビューは楽しく出来たのですが脱線が酷くて…笑 今回は先に聞くべき事をサクッと聞きつつ進めて行きたいと思います。
澤:わかりました。よろしくお願いします。
落:まずはなんか頼みましょう。俺はジンジャーエールを。
澤:私も同じで。
落:あとは鯨ベーコン、ポテトサラダをお願いします。
『西村賢太さんもかなりの仮面を被ってるんじゃないかって』
落:今日は西村賢太の話をお聞きしたいと思います。
澤:はい。西村賢太さんで想起させられたのが村崎百郎さん(生まれつき「電波」を受信する特異体質であると自称し、狂気に満ちた特異なキャラクターと豊富な知識で書かれる秀逸かつ猟奇的な文章で「鬼畜系」の地位を築き「電波系」という言葉を定着させた。Wikipediaより)です。村崎百郎さんは本当に仮面を被っていましたが、西村賢太さんもかなり仮面を被っているんじゃないかって没後に思いました。まだ私も作品をそこまで読んでいない時です。ジュラルミンケース持ってスーツをきちんと着て。私が思うに「苦役列車」はもの凄く芥川賞を狙って作った、芥川賞に打って出る、例えばエレカシで言うなら「今宵の月のように」の様な作品だと思ってるんですよ。
落:そんな話、いいっすねえ。
澤:何故かというと、何度か読み返してやっぱこれ凄いわ〜と思ったんですけど、北町貫多は凄まじい暴言を吐くじゃないですか?西村賢太さん自身も口が悪くて、そしてあのコスチューム。芸能人の毒舌スターの様なああいう人物をやりつつ、服装もわざわざあれを制服にしてるって最初メディアにチラチラ出たじゃないですか。地もあるけど演じてもいた。その姿が芥川賞を獲りに行ってる、そして村崎百郎さんに重なって見えたんです。
落:なるほど。
澤:賢太さんと私は同年代なんですけど、大体見てきた物が一緒なんです。
落:西村賢太は1967年生まれです。
澤:じゃあ3コ上かな。私は1970年生まれです。
落:大丈夫ですか?お歳言っちゃって。
澤:大丈夫です 笑
落:ありがとうございます。続きをお願いします。
『「苦役列車」は貧乏青春ファンタジー、バブル来る前』
澤:見てきた風景が同じで、バブルだなんだで世の中はワーワーやってるけど、そんな中で鬱屈を抱えて日々生きてる人はいっぱいいて。でもそんな部分は中々歴史に残らない。「苦役列車」がわかりやすく書かれてるなと思ったのが、ビートたけしもネタにしてましたが当時早朝高田馬場に行くと、駅前で日雇いの人を募集して物凄い人数の人がいて、それにあぶれる人はなかなかいない。実際そうだったんですけど、その時代は今からすると随分前に廃れてます。西村賢太さんが「苦役列車」を発表した時にはその高田馬場の風景は、もうない物でした。「苦役列車」は(貧乏青春ファンタジー、バブル来る前)といったところだと思います。そして西村賢太さんは、それを「苦役列車」冒頭でおことわりしてるんですよ。御伽話でいうところの(むかしむかし、こんな話がありました)(かつて古い時代の物語です)とか、それを「曩時」、誰も読めないたった二文字を額縁に入れて、「曩時」北町貫多は、って。こういう話ですよ〜って、自分の青春話を始めてるんです。
落:おお、読者は気付いていますかね?
澤:どうでしょう、「曩時」って誰も読めない漢字ですよね 笑
落:俺も初読、とりあえずは飛ばして読んでたかもしれません。澤さんの話聞いたら大事なワードなのに 笑
澤:「苦役列車」の、貫多の目の前で友人と思ってた日下部と美奈子が「トークショーの司会」の話から延々とアホっぽい“コネクレイジー”な話をする場面。私は96年くらいから新宿のトークライブハウス「ロフトプラスワン」に入り浸ってそこで寝泊まりして出勤、みたいな生活もあったんで凄く「分かるわかる!こういう若者いたいた!」みたいな感じもありました。よくあの当時を再現してもおられる。
落:俺も何度かは「ロフトプラスワン」行きましたよ。
澤:お亡くなりになる前、実は西村賢太さんを一度だけお見かけしたことがあるんです。2011年ごろかと思うのですが…恐らくロングインタビュー受けた後の様子で。錚々たる「名物文芸記者」の方々などに大名行列のようにお見送りされてエレベーターに乗り込むところに偶然通りがかりました。見送られ、エレベーターに振り返った瞬間、誰も見てないとなった途端にチェシャ猫みたいな…鼻の線より口角が上の満面の笑顔で。「ご満悦」という言葉を具現化したらこうだろって顔が凄くピュアで可愛らしかったんです。その顔が忘れられないんですよね。
落:澤さんは村崎百郎さんに関する書籍も出版されてたとか。
〜〜ここで澤水月さん執筆の村崎百郎資料登場。お借りしたので俺からはエレカシ関連のプレゼントを。西村賢太話は一旦休憩〜〜
落:資料ありがとうございます。読ませていただきます。俺からプレゼントがあって。
澤:なんですか?
落:3年前のエレカシ有明アリーナで本人達から手渡しでいただいたエレカシグッズです。抽選に当たりました。ミヤジが目の前で俺の名前も写真集にサインしてくれて。自慢で申し訳ないのですが。
澤:おお〜っ!凄い!私もあのコンサート行きましたよ。
落:澤さんも行ってたんですね。で、売ってたグッズ全部貰ったんです。あまりにもいっぱいいただけたから近所の妻の友達のエレカシファンやロック好きな弟の奥さんとかに配って。この絆創膏セットだけずっと残ってました。3年開封しなかったからもういいだろ、という事であげます。是非使ってください、わざと怪我して 笑
澤:笑 とっても嬉しい。ありがとうございます。
澤:エグい話って大丈夫ですか?
落:ある程度のエグい話って皆好物だと思いますよ。
落:出身地と年齢聞いて大丈夫ですか。年齢は上に出ちゃいましたね。
澤:浦和です。
落:ウチと近いですよ。武蔵浦和で働いてた事があります。
澤:少しエレカシ地域って感じですよね。
落:赤羽とかは毎日通ります。澤さんの今の生活の中心ってなんですか?やはり仕事ですか?
澤:仕事ではないですね。何年か前に自分の人生に大きな蹉跌をきたした事柄があったんです…エグい話って大丈夫ですかね?
落:ある程度のエグい話って皆好物だと思いますよ。
澤:仕事とは全然関係ないところで大しくじりをしまして。自死未遂をはかって間一髪助かるみたいな大騒動がありました。自分で自分の首とか刺したりしたんですけど、病院で、ひどくてダサくて目立つ大きな絆創膏を首に貼られた状態で帰ってきました。多分医者が敢えて醜い処置をして、2度するんじゃないぞって意味を込めて貼ったんだと思います。
落:気遣いですかね?
澤:かもしれなかったですね。歌舞伎町の病院で。
落:何年くらい前の話なんですか?
澤:2008年、9年辺りかな。その頃は母親が自死したりとか色々ありまして。そういった事とか自分の事とかが積み重なって爆発したみたいな感じで、精神的に不調をきたしてたとは思われるんですけど…それでも仕事は続けてました。
落:凄い状態 笑 いやいや、笑じゃないですよ、俺。
澤:自死未遂の後も取材なんかは続けてたのですが、さすがに「限界きました、ちょっとばかり休ませて下さい」と会社に言ったら、「わかった。3週間位休みなよ。」となりました。でも休みから出てきたら自分の席がなくなってた、という流れです。そして取材の仕事からは降りざるを得なくなったんです。
落:限界に気付くのが少し遅くなってしまったんですかね。
澤:元々は校閲だったんですよ。漢字を見て内側に籠って仕事をするタイプだったのが、芸能、街モノ仕事をするようになって、芸能界あちこち出入りして仕事してたんですが、私生活でしくじってしまったという訳です。ハハハ。
落:ここ、凄いブロックになりました。載せて大丈夫ですか?ありがとうございました。
『赤い薔薇』
落:次の質問…もうこれは失問だな。ご趣味は?
澤:今はエレカシにハマってて。
落:ライトな話題がきました。
澤:エレカシの曲を弾き語りをしてみたり(澤水月さんはエレカシ弾き語りを「gothrapunzel」=ゴス、ダークなラプンツェル=という名のアカウントでYouTubeにアップしている)、色々調べたり、それでそこから派生して今は森鴎外を読み込んでます。あとは薔薇の栽培を。
落:ああ、なるほど。宮本浩次といえば森鴎外です。
澤:薔薇の栽培をしているからか、エレカシの「赤い薔薇」って曲が好きで。好きというかこの歌、色々ありそうだなと。
落:澤さんのYouTubeの弾き語り観ましたよ。俺もあの曲大好きです。澤さん「赤い薔薇」推してますよね。
澤:弾き語りで歌っているうちに、歌ってみて気付く事ってあるじゃないですか?
落:歌って噛み締めてみて初めてわかる、的な。
澤:宮本さんもソロプロジェクトで色々カバーして、その歌を品詞分解してみて突然胸に落ちたって仰ってて。私も弾き語りで何度もやってみて、この曲「赤い薔薇」は宮本浩次が森鴎外の「青年」をやろうとしてるんじゃないか、って急に思ったんですよ。森鴎外の「青年」は、作家を志してる青年がいて、その志を立てたいんだけど周りはくだらない奴ばっかりで。自分はきちんと志を立てていくのだ!と思っているんだけど、出てくる女性の中で清純な女性よりも一番淫猥でお金持ってる妖艶な女に誘われて童貞を捧げる前後を描いた話で。凄い面白いですよ。
落:読んだ事ありませんが、今、惹かれてきました。
澤:森鴎外の中でも世に知られてる方に入ってます。童貞喪失がテーマでまとめてあるサブカル本、所謂(童貞本)に入る様な感じです。
落:それを、「赤い薔薇」に感じる訳ですね。
澤:生きてるとあるじゃないですか、素性がわからないんだけど妖しくて、本当はそっちを向きたくないんだけど惹かれてしまって関係を持ってしまった。けど、じゃあ俺の事好きなのかっていうと凄い軽くあしらわれて。「赤い薔薇」の歌詞が宮本浩次さんの実体験からきてるかはわかりませんが、歌詞を噛み締めてみて初めて、森鴎外の「青年」っぽいと私は思いました。
落:その2つを重ねて聴く、読む、楽しみも増えそうですね。「悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜」ってアルバムの頃、戸田のエレカシライブで宮本浩次が自慢の曲だって言って「赤い薔薇」の演奏を始めたのが俺は印象に残っています。でもそれは10年以上前なので、また時間が経ってから「赤い薔薇」のこんな話が出来るとは思ってもいませんでした。嬉しいです、俺は。
『本が正しい漫画が正しい』
落:早くも長くなってきました。言葉おかしいですけど。
澤:はい 笑
落:ここのブロックでは、澤さんがどんな人生を送ってきたのかなあなんて事を聞きたいと思っています。
澤:父も新聞記者なんです。今の私と同じ会社の。昭和5年生まれで。
落:昭和5年?て事は結構遅くにできたお子さんだったんですね。
澤:はい、当時は考えられないくらい高齢の親の下に生まれた事になります。だから親とは価値観が合わな過ぎて。父は当時40歳で母が昭和9年生まれの36歳でした。上には10歳離れた姉がいます。父は、大学の文学部を出て何にもなれない人間がなるのが新聞記者だって言ってました 笑
落:子供の頃はどんな物に興味を持って過ごしてましたか?
澤:随分とダークな物とか幻想的な物とかが大好きで、小学生の頃から「パタリロ」を読み込んで、その流れから澁澤龍彦が大好きだったんです。
落:なかなか、俺には手を出せない分野です。パタリロは何かで聞いた「FLY ME TO THE MOON」って話を読みたくて買いました。伊集院静が勧めてたんだっけな、確か…すいません、澁澤龍彦さんて方はどんな方なのですか?
澤:ゴスっぽい人ですよ。今も沢山ファンのいる、ゴスロリの女の子が憧れるようなタイプの人です。ゴスロリの源流といった感じの。
落:そりゃあ俺はあまり知らないワケです。
澤:澁澤龍彦は私の父と大学の同窓同級同学年だったっぽくて、それを知らずに澁澤龍彦にハマってる私を見て父はどう思ってたのかな、なんて今は思っています。
落:何歳位の頃の話なんですか?
澤:はっきり覚えてますけど、小学4年生です。
落:多分、早いですよね、普通の子より。
澤:はい、早いです。色々と早過ぎて。だから私、今になって芥川龍之介を改めてちゃんと読んだりしてます 笑 あと当時は、教科書に載ってる「舞姫」を読んで森鴎外大っ嫌い!ってなったりしてました。
落:スタートが違いますね、俺なんかと。小学4年生じゃこっちは木の枝持って走ってましたよ、意味もなく。枝と枝2本立て掛けてバランスよく立つか否か、みたいな事毎日毎日やってて。
澤:だから早熟な子供だったと思います。親からは放っておかれてまして。まず母親からは育児放棄、父は新聞記者だから家庭を顧みずで。彼は外に女性もいまして。なので私は図書館ばかり行ってました。
落:全くもう…少しは時代もありますかねえ。
澤:10歳上の姉に育てられた様な物です。それと今でいう虐待サバイバーですかね。母親に包丁突きつけられて殺されかけたり、裸にされて外に放っぽり出されたり、大体の虐待を経験しています。で、学校でも当然の様にイジメを受けてて。
落:言葉がないですね…頑張れ澤さん!
澤:でも子供だったからかな、自分の気持ちは案外能天気で、本が正しい漫画が正しいとなって。そうこうしているウチに、自分で言うのもなんですけどやたらと早熟で頭の良い子になりました。で、そんな子って割と不良の人達と仲良くなるじゃないですか、特に私の場合はなんですけど。
落:興味の対象みたくなるんじゃないですかね?
澤:それもあるかもしれませんね。イジメてくる人以外の不良とは仲良くしてましたね。まあイジメは家での方が酷かったんですけど。寝てると母親に首絞められたり。眠ってる時は辞めてよお母さん、って。
落:もう一度、頑張れ澤さん!
澤:芥川龍之介が、「狂気の母親の下に生まれて、物心つく前に死んでしまった。美しかったらしい。でも自分はいつか狂気を発するだろう」(調べたら点鬼簿かな)、それに自分を重ね合わせてた青春だったかもしれませんね。小、中学校まではそんな感じでした。
落:そんなお母様、そして芥川龍之介。芥川龍之介の小説に興味を持つには充分なお話です。
澤:芥川龍之介には限らないですけど、他にも色々読み漁りました。その頃自分で色んな文化的な物に目覚めて。パタリロ、澁澤龍彦、芥川龍之介、あとはアルフィー、THE ALFEEにもハマりました。記憶の改ざん、前後した物事もあるかもしれませんけど、一気に目の前に入ってきた感じですね。
落:アルフィーはもうその頃人気あったんですか?
澤:売れた最初を私は見たって感じです。
落:「ドリームジェネレーション」ってアルフィーの漫画、俺大好きでした。最初は4人組で。
澤:家にガットギターがあって。古い話で申し訳ないんですけど当時売ってた明星ってアイドル雑誌を買って、アイドルには興味なくて、
落:歌本ですか?
澤:笑 そうですそうです。歌本です。
落:被せてすいません。俺も好きで買ってました。コード載ってましたよね。懐かしいな。
澤:本当かどうかは知りませんが、アルフィーの坂崎さんが作ったタブ譜、なんてのを見ながら幸ちゃん部分を弾いてました。当時はタブ譜を見て弾くなんて恥ずかしい事だったようですよ。女子供だから許されるみたいな 笑
落:少し下の俺の世代だとタブ譜のスコアがいっぱい売ってて、タブ譜見てコピーするのが恥ずかしいなんて思いもしなかったですねえ。澤さん可哀想に 笑 でもちょっと、普通の青春時代みたいなエピソードが聞けて良かったです。アルフィーのおかげですね。THE ALFEE。いいな、THE ALFEE。俺は今BSでやってる高見沢俊彦さんの美味いメシみたいな番組をよく観てますよ。ちゃんと録画して。
澤:ハハハ。
『古本屋のギルド』
落:アルバイトとかはどんなのやってたんですか?なんかもう澤さんがファストフード店みたいので働いてる感じは想像できませんが。
澤:大学に入ってからのバイトは2本柱で、出版社での校正校閲、神保町の古本屋でのバイトを始めました。
落:やはりファストフードとか居酒屋ではなかったのですね。
澤:詩歌の出版社での校正校閲、主に私家版を出版してる会社で働いていました。
落:後の新聞記者の仕事に役立ちそうなお仕事ですね。
澤:地方流通中心の私家版をいっぱい作っていました。大学卒業で辞めましたが、今は有名な出版社になってる様です。俳句とかを作る人なら知らない人はいない、みたいな。ふらんす堂っていうんですけど。
落:名前だけなら俺も知ってます。
澤:神保町の古本屋は、大学ではバンドサークルに入っていたのですが、よく先輩から代々受け継がれているバイト先ってあるじゃないですか?
落:ああ、そんな文化があるみたいですね。噂には聞いて知ってます。
澤:古本屋の方は神保町の有名なカレー屋の近くで…(スマホの地図を出す)。
落:はい。
澤:そこの近くで…
落:はい。
澤:岩波書店の古書だけを扱う、岩波書店公認の店が2階建てでありまして…
落:おお。
澤:そこの手前の…ごめんなさい、岩波書店ではないんです、バイトは。
落:笑
澤:神保町の中心街からは外れた…紳士服のAOKIがあって…
落:はいはい、わかります。
澤:昔の勧銀がありまして…
落:ああ、第一勧銀懐かしいです。
澤:神保町のメイン通りがありますよね、そこから辿ると…
落:(地図を見ながら)こちらが東京ドーム方面です。水道橋とか…
澤:今は移転してその場所にはないのですが、とにかく!その古本屋で働きまして。
落:端折ってくれました 笑 どんなお店だったんですか?
澤:古地図とか歴史書を扱う店で、出自が確かな店主さんがやっておられたお店でした。当時神保町古本屋のギルドみたいな感じがありまして。私が働いていたのは90年〜93年位だと思うのですが、戦前からやってるのが一流、みたいな雰囲気が古書店街にありました。ヒエラルキーともいうのかな。話がまた逸れてしまうのですけどどうしてもお話したい話が1つあって。良いですか?
『時代的にも、私が働いてた古本屋を一度は覗いたんじゃないかな』
落:是非逸れましょう。どうぞ。
澤:西村賢太さんの小説で、古書店でコーヒーでも取ろうやとなって、持ってきた女の子に岡惚れする話があるじゃないですか?
落:はい、ありますね(二十三夜 / 西村賢太)。
澤:あれがめちゃくちゃ私リアリティを感じました。この人は本当に古書店街にいた人だなあって思いました。
落:何故なんでしょうか?
澤:あの当時の古書店街にあった風物なんですよ。ほとんどの古本屋、それぞれが台所を持ってなくて近くにある喫茶店からわざわざ女の子にコーヒーを運ばせるって文化があったんです。しかもそれをやるのは結構ちゃんとした古本屋の方。
落:落日堂(ここでは朝日書林のこと)、結構狭いんですよね。
澤:でしょ?それは台所がないんですよね(二十三夜では、ガスの管はあるけど使わないから引いてない、との新川の台詞)。
落:なるほど。そこにリアリティを感じてるって面白い話だし羨ましいです。
澤:白っぽい本、茶色っぽい本ってわかりますか?
落:思想ですか?
澤:いえ、もっと物理的な話で。もしかしたら00年代には残ってた言葉かもしれないんですけど、私が神保町で働いていた当時は人気で世間に出回る新刊、例えば「ノルウェイの森」とか新し目の本の事は白っぽい本と言ってたんです。単純に表紙が綺麗。そして、戦前からあって大正〜昭和の見るからに茶色の、それを茶色っぽい本と言って古本屋では隠語として使ってました。お客さんが持ち込んだ本、アレは全部白っぽいからダメだな、とか。
落:白はやはりダメですかね…笑
澤:裏で言ってました 笑 だから西村賢太さんが好んでたのは茶色っぽい本ですよね。
落:澤さん神保町で西村賢太と時期被ってたんじゃないですか?西村賢太は当時一応全部の店パトロールしてそうですよね、ウロウロと。
澤:ですよね。絶対被ってたんだろうなって思うから、それも私が西村賢太さんに共感出来るポイントです。
落:澤さんが働いてた店が専門外って気付いてしまう1回目は絶対ありましたよね。
澤:宮本浩次さんにしろ西村賢太さんにしろ、神保町は第二の故郷みたいな場所。時代的にも私が働いてた古本屋を一度は覗いたんじゃないかなって思っています。
落:色川武大のエッセイ読んでたら豆かんが出てきて。
澤:同じ同じ同じ同じ!
落:なんか頼みましょうか。
澤:ではハムエッグを。
落:俺はしらすおろしを。
落:さて、次の質問いきますね。澤さん好きな食べ物はなんですか?
澤:ハムエッグです。
落:え?マジですか?
澤:はい、マジです。冗談抜きでハムエッグなんです。
落:おお、何をかけて食べます?
澤:胡椒と醤油です。
落:え〜、案外普通でした。がっかり!冗談です。俺も実家では胡椒と醤油で食べてました。昭和な感じかもですね。
澤:何かけて食べますか?
落:醤油とマヨネーズです。長い年月かけてそれが一番美味いってなりました。で、出来たら半熟じゃない方が、黄身が固いのが良いです。
澤:私も〜。両親の出が三河なんです。彼らの食事の文化圏が愛知だから濃い味なんですよね今思えば。味噌汁も八丁味噌でしたし。
落:赤味噌ですか?
澤:赤味噌よりももうガチな、豆だけで作られた濃い〜のを食べてましたね。美味しいですよ。サラダ菜に味噌付けて食べたりしてます。
落:健康的かもしれませんね。
澤:私はそれで育ってるので、白味噌とか赤出汁は外で食べる物って感じで。家には岡崎八丁味噌みたいのがありましたから。あとはうずら。うずらの卵が大好きです。
落:うずらですか?今ってうずらの卵って缶詰めかパックで売ってますよね。どうやって食べるのですか?
澤:頭おかしいと思われるかもしれませんけど、本当に好きなのでラーメンに乗せて食べてます。子供の頃浦和のラーメン屋さんの付け合わせ、ラーメンにうずらが1個か2個乗ってまして、噛むとプチってあの感じ、そこが始まりです。
落:俺はたまに八宝菜の時に買うくらいです、うずら。
澤:なるほどね〜、だから1缶食べたりしますよ。
落:マジすか!
澤:でもコレステロールを気にしてうずらフライはあまり食べないです 笑 あとは枝豆も好きで、飲み会などでは皆から奪って先に全部剥いてから食べます。
落:それはわかるかも。
澤:あとは豆かんも好きです。
落:俺も大好きです。色川武大の小説だかエッセイを読んでたら豆かん、赤エンドウ豆が出てきて。
澤:同じ同じ同じ同じ!
落:マジですか?うわっ、まさかの!あの本で?
澤:はい。あの塩っぽさがたまらないです。
落:豆かんから色川武大話はちょっと本気でビックリしました(喰いたい放題 /色川武大)。
『本当に長髪が好きなんです』
落:次の話いきますね。また聞くの恥ずかしいんですけど、好きな異性のタイプを教えてください。
澤:笑 絶対に人を見た目で判断はしませんが、しょうがない物として、、、
落:しょうがない物として?
澤:見た目は絶対に…長髪!
落:マジすか!?(またマジすか、だ)
澤:長髪フェチなんですよ。男女とも、眺める分には本当に長髪が好きなんですよ。90〜00年代に長髪フェチ界隈でガンガン書き込みしたり長髪メインのモデルしたりとかしてました。幼いころ、母が姉の髪を無理やり刈って姉が警察に泣いて駆け込む姿を目撃したからかも…笑えないですね。
『まとめて西村賢太さんを手離した人がいて、その方からダンボール1箱で買いましたよ』
落:ぼちぼち締めでまた西村賢太話に戻りますかね。西村賢太を知る前と知った後って、ご自身が変わった事ってありますか?
澤:今考えてみたけどそれはあまりなくて。私読書メーターで色々書いてるんですけど…(iPadで読書メーターの画面を)
落:えっ、同じ本の感想文を何回も書いているのですか?西村賢太の。
澤:書ききれないって感じで何度かに分けてる部分もあるのですが、そうです。
落:それは凄いなあ。初めて知った人かもしれません。
澤:まとめて西村賢太さんを手離した人がいて、その方からダンボール1箱で買いました。それで何度も読んじゃって、何度も感想文を書いちゃいました。
落:尊敬してしまいます。一度読むと後は投げ捨ててあったりしますから、俺の場合は。
『日乗を読むと、自分の食生活にそっくりでした』
落:最後になんですけど、澤さんご自身の今後の目標、やりたい事なんかを是非教えて下さい。
澤:私もずっとなんか書きたい書きたいなんて思っていて。このままでは私の人生可哀想過ぎるなあ、って思って 笑
落:いえいえ、色々あった事は聞かせていただきましたが今は楽しそうにやってらっしゃいますから。以前の著書のようなマニアックで攻めた物、期待してます。
澤:50歳を過ぎて、あれ、自分の人生の終わりが近づいてる、やりたい事ここでやらないでどうする!なんては思っています。あとは宮本浩次さんとエレカシのライブに行くのと、ギターを弾くのが私の楽しみですね。
落:それはとても良い趣味ですよね。もう一つ最後にいいですか?
澤:はい。
落:西村賢太と澤さん、共通点って何かありましたか?
澤:日乗を読むと、私お酒は飲まないけど自分の食生活にそっくりでした!あと夜勤生活なので昼夜逆転の時間帯が全く同じ。世が明けるころからハムエッグ食べ出すとか。
落:俺も昼夜逆転時代が長くて…朝方宝焼酎「純」を飲み干してカップラーメン食べてから寝るとかは全く同じでした 笑 今回はありがとうございました。
澤:こちらこそ、ありがとうございました。
220分ほど話をしていました。生い立ち、少し前の過去には壮絶な部分があったものの、今はわりとよろしくやっていて楽しそうにも見えた澤氏。人生を文章に救われ本に救われ。まんま、西村賢太 周りの周りの人たちじゃないですか。
野狐人〜西村賢太 周りの周りの人たち〜
第2回 澤水月 編 終了


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