参政党の支持層に極右と極左が混じる理由:被害者意識という共通性で読み解く
今回の参院選で躍進した参政党だが、どのような人が支持しているのだろうか。古くは岩波書店「世界」(2022年12月)に「参政党を取り巻く陰謀論 : 自然派、反ワクチン、レイシズム……」というタイトルの記事が出ているが、今でも基本的な骨格はそのころと同じとみていいだろう。今回の選挙での特色を挙げるとすれば、既存政権への不満票、すなわち"風"派が乗った程度である。
参政党については現在世間から一定の関心があるかと思うが、本稿では、前半では参政党の支持層についての概観。特に左右の相乗りの様子を記述し、後半では極右と極左が相乗りできる理由を追求する。
参政党支持層の概観
本編の前に――"風"層
21世紀の日本には、既存政権への不満票として表出しやすい、特定の政党への忠誠心が薄く新味のある改革派的なポジションの候補者を好む無党派が、総投票数の3割程度というかなりの数で存在する(と筆者はみているし、アメリカでもオバマの標語がchangeだったように似たようなものだとは思う)。これはよく"風"にたとえられ、小泉旋風→民主党政権交代→安倍政権or維新などで政権成立に重要な役割を果たし、最近では都知事選石丸、国民民主党(瞬間最大風速)、そして今回の参院選では一部が参政党に流れたというのが私の見立てである。
この層は基本的に既存政策への不満表明が主眼のため、強い語調であることが好まれる。小泉旋風→民主党政権交代→安倍政権のいずれかの支持者の方には不本意だろうが、これらで"風"層の支持があったのはいずれも強い態度で既存政策への挑戦を表明したためだろう。強い態度で既存政策への反対を突き出せば、中身に関わらず、民主党でも安倍政権でも、都知事選石丸であってもよく、参政党でもよかった――というのが私の見立てである。ただ"風"層のなかにもグラデーションはあり、NHK党が暴れまわっていた時に支持した"風"層はそんなに多くなかったし、参政党はNHK党に比べれば(賛否は別として)実際の政策を語っているのでやや支持が多い、というところではないかと思う。
都知事選ではあれだけ暴れまわった石丸が都議選ではあっさり失速して惨敗し、国民民主党からもさらっと人が離れたように、彼らは個人や政党への忠誠心は低い。彼らが民主党政権退陣以降、立憲民主党も見放しているように、参政党もアクションを起こせなければ二度目はよりネガティブに見られるだろう(私はこれを「風に乗って風下に行くと、折り返そうとしたときには追い風ではなく向かい風になる」と表現している)。
反ワクチン・反行動制限の受け皿
参政党は、コロナ禍を経て反ワクチン論、あるいは行動制限忌避で一気に成長した党であることは常々指摘されている。
コロナ禍以前からワクチン反対派であったユーザは立憲民主党やれいわ新
選組、日本共産党のアカウントをフォローする率が高いのに対して、コロナ禍以降に新規にワクチン反対派になった人々はこうした既存の政党をフォローする傾向が弱いことがわかった。しかし、コロナ禍以降に新規にワクチン反対派になった人々は 2022 年 3 月から 9 月にかけて参政党のアカウントをフォローする率が急上昇しており、陰謀論やスピリチュアリティをきっかけとして反ワクチン的態度を持ち、さらに反ワクチンを掲げる参政党への支持を高めた可能性が示唆された。
ただしここで「反ワクチン」と呼ばれる人には二種類ある。一つはフードファディズム的な傾向の強い「ワクチンは健康に悪い、製薬企業の陰謀」と主張するタイプで、もう一つは特段ワクチンを槍玉にあげているわけではなく「健康を害してもいいから自由を阻害するな」と主張しているタイプである。前者は参政党への忠誠度が高いと思われるが、後者は過去のコロナ政策への異議申し立てとして参政党に票を投じただけで、反科学や反ワクチンの色はそれほどでもなく、なんなら「ワクチン打って行動制限解除」なら参政党には傾かなかったのではないかと思われる。
「健康を害してもいいから自由を阻害するな」派は無視できない数がおり、参政党の投票者層で若者が多かったことについて、「高齢者が外出を控えればよかったのであって、若者の大事な数年が奪われた理由はない」と恨み骨髄にしみている層の影響は無視できないというのが私見である。彼らにとっては自民は当然、立憲や共産も論外、参政党はコロナ政策で反主流派的なところはいいが外国人排斥やフードファディズムにはそこまで賛意はなく忠誠心も薄い、"風"層に近いと筆者は見立てている。
右派からの流入層
参政党は程度はともあれ反移民・反LGBTを前面に掲げた政党であり、右翼として扱われることが多い。しかしながら、00年代の「ネット右翼」とはだいぶ毛色が異なることもよく指摘される。
同じ「ネット保守政党」に見えるが、両党のように雑誌の「正論」や「WiLL」など保守論壇中央と呼ばれる岩盤層からは支持は得ておらず、支持構造は大きく異なっている
00年代のネット右翼の中心的な論点は20世紀前半の戦争がらみの歴史認識であり、排外主義色はあまりなく、LGBTに至ってはほぼ論じられていなかった。かつ、そういった歴史認識右派層はこの数年で急速に鎮静化しつつある。理由はいくつか指摘できるが、一番インパクトが大きかったのはロシアによるウクライナ侵略で、親露派の左派が大日本帝国擁護と似たような理屈でロシアを擁護しだし――例えばNATOの東方拡大に対する正当防衛論が、大日本帝国のABCD包囲網自衛論やらハルノート論とほとんど同じ論旨になっていて――大日本帝国についても相対化して語れるようになった、というあたりが分かりやすい構図だろう。
前掲の記事(1・2)など参政党には女性の支持者が多いことが度々指摘されるが、参政党の排外主義は女性と相性が良い、従来的なネット右翼とはまた異なる性質ということには注意が必要である。いわゆる「体感治安」、治安への信頼感や不安感に関する調査はたびたびおこなわれているが、OECDの調査でもわかるように一般に女性のほうが体感治安を悪く報告する傾向がある。ここ数年で外国人と「体感治安」の争点になっているのが川口市のクルド人だが、川口市議選挙ではクルド人問題を主題に取り上げた参政党の女性候補者が当選している。反LGBTにしても、「フェミニストを自称しかつ反LGBTである」という人々(トランス排除的ラディカルフェミニスト; TERF)が世界的におり、かつ日本にもいて、保守と連携している例があることは過去にも言われている。
実は市の公式データを見ると、強盗などの凶悪犯罪を含む「刑法犯認知件数」自体は、長期的に見ると減少傾向にあるんです…(中略)…一つ一つの事件は大きくなくても、日常的に「秩序が乱れている」と感じる場面が増えたことが、市民の『体感治安』を悪化させていると考えられます。…(中略)…今回の調査で最も衝撃的なのが、18~20代女性の7割以上が「治安が悪い」と感じている事実です。この数字は、他のどの世代よりも突出しています。
また一種の伝統回帰的な訴えも見られるが、これらもガチの伝統維持派とは異なり、いわゆる「作られた伝統」タイプである。例えば選挙戦中は{小麦食は戦後にGHQに押し付けられた}的な発言が掘り返されていたようだが、当然ながら日本ではうどんなど昔から小麦は食されており農林水産省「うちの郷土料理」の群馬県特集は小麦が多数派だったりして、伝統回帰風の発言に見えて全然伝統を踏まえていないといった問題はかなり以前から突っ込まれている(そもそも小麦有害論自体がアメリカ発祥のグルテンフリー型フードファディズムの影響で成立しているように見える)。
ただ、従来の「ネット右翼」が参政党にいないというわけでは決してない。00年代のネット右翼でも、ネットのレスバトルでいわゆる「国籍透視」的なものを常習的にやっていたような層は、普通に参政党に合流して、相変わらず「国籍透視」をやっているようである。むしろ、ネット右翼と総称されてきた集団にも多様性があったが、それが低い解像度でいっしょくたにされていたと見るべきだろう。
左派からの流入層
岩波「世界」の記事にも見られる通り、参政党は「自然派、反ワクチン」という枠を持ち、このルートでもともと左派を支持していた層の流入が見られる。
左派の中には、薬害エイズ問題(これは功績と言える)にコミットして以降、それが過激化して反標準医療と言える一派が形成されるようになった。HPVワクチンでは現立民の阿部知子らが反対運動を起こして接種中止に追い込んだ(結果的に「中止禍」と言えるくらいには女性の福利厚生を低下させた)が、"薬害追及グループ"は支持層も国会議員もコロナ禍においてワクチン反対派として振舞うことになり、直近でも阿部知子は「コロナワクチンによる健康被害の追求」という趣旨の発言をしている。
またゴリゴリの左派(極左にカウントしても良い)メディアの週刊金曜日が「買ってはいけない」というシリーズを出しているが、極端で非科学的な(医療者・科学者からは非科学的とみなされている)人工物忌避、いわゆる"自然派"フードファディズムの代表と言ってよいものだろう。
このように参政党と左派の一部は属性的な共通性を持っているが、具体的な支持者の流入も観察される。特に目立つのはSNS上でハッシュタグ・アクティビズムをやっていたような、いわゆる「活動家」タイプの人である。例えば、朝日新聞出身で泉房穂氏へのインタビュー本も出している鮫島浩氏は、本人、および経営する個人メディアの読者層が、参政党に親和的になっていると指摘される。
SAMEJIMA TIMES、今ではすっかりコメント欄も含め、参政党一色に。(15万登録もあるので、ある程度ターゲットに最適化してきたということだろう)
— 平河エリ Eri Hirakawa (@EriHirakawa) July 11, 2025
反自民・民主・財務省系の共産→れいわ→参政の移動がここでも見える。
フラワーデモの発起人で活動家タイプのフェミニストとして知られ共産党とも接近していた北原みのり氏は、朝日新聞社のAERAで《若い人が参政党を支持するのは心情的に理解できる》という、微温的・消極的理解をトーンとする記事を書いている(記事中{男と対等に扱われることに疲れた女性}へのシンパシーが繰り返し出現し、男女対等派の私としてはそこもうんざりする)。
環境左派から陰謀論への転換は世界でも珍しくはなく、例えばイルミナティ陰謀論や爬虫類人陰謀論の始祖に近い位置にいるデイビッド・アイクは、元々イギリス緑の党の幹部だったことでも知られている。
なお、{左派から参政党に流入するフローがある}ことを指摘したからといって、{左派は陰謀論に陥りやすい}と言っているわけではない。現時点で参政党批判の主力は左派だろう。しかしながら{陰謀論的価値観で左派的主張をしている人たちがいる}ことも確かで、SNS上でハッシュタグ・アクティビズムをやっているような手合いは特に陰謀論に陥りやすい傾向にあるように思う。
"陰謀論親和性"で考える左右の参政党支持層
蹄鉄理論
ここまでで概観したように、参政党は今回乗って次回乗るとは限らない"風"層を除いたコア支持層は、今まで極右とされた層と極左とされた層の混合である。極右と極左の類似性については、すでに「蹄鉄理論」というものが存在している。Wikipedia掲載の模式図では、極右と極左は共通性があるものの別物であるとしている。しかし参政党を見る限り、別物ではなく同じ箱に共存可能であるといえるだろう。実のところ、過去には千葉麗子など極右⇔極左のスイッチ例は少なくないのも実情であり、あまり不思議ではないともいえる。
同じ箱に共存できるということは、蹄鉄の下がつながった円環状のモデルが真っ先に思いつく。ただし、筆者は円環状になっているというより、左右に加えもう一つの主軸――陰謀論親和性が存在していると見立てている。
被害者意識という共通性
近年の学術論文などを見る限り、一般的に被害者意識は陰謀論と密接な関係があると考えられている(2024年の論文の例)。現在の典型的陰謀論では、悪の陰謀団体は市民に対する攻撃"ケムトレイル"などを仕掛けているといったものが出てくるが、こういった被害妄想的な主張は陰謀論の主要な特徴の一つと言える。
最近は『自分たちが虐げられている』と漠然とした不安・不満を持っている層が参政党を選択肢に入れるようになってきました。
外国人排斥系の極右では「我々は外国人によって被害を受けている」という意識となり、これは参政党の主張の節々に見られる。反LGBTの主張にしても川口の女性やTERFのそれは「男性からもトランスからも加害される」という被害者意識が柱になっている。左派系のフードファディズムの場合には大企業が食べ物に混ぜる添加物によって我々の健康が害されていると考える。どちらのケースでも断片的な真実と膨大なデマによってコミュニティ内部の人間は確信を深める。
CampbellとManningのThe Rise of Victimhood Culture (2018)では、後にWokeと呼ばれるリベラル側の運動が《被害者性争い》であることが指摘されて話題を呼んだ。一方で、本節冒頭で指摘したような「陰謀論者は被害者意識をこじらせている」という類の研究はもともとMAGA批判で盛り上がった面がある。WokeとMAGAは対立しているが、被害者意識・陰謀論的傾向という同じ母から生まれた双子とも言える。
この点に関しては、私の論友である《マクロン》氏がこの数年来、政治的な左右の両方に「被害妄想型~情緒抑圧型~情緒欠落型」というスペクトラムが存在し、それで分類すべきだと提唱している。氏の分類は、自分の党派に都合の悪い事実に対して反論することを優先して嘘をつく(被害妄想型)か、沈黙する(情緒抑圧型)か、平然と取り扱う(情緒欠落型)かというリアクションでの分類がベースとなるが、私としてはかなり適切なものであったと評価している。
ただ留意すべきは、この被害者意識は強いか弱いかの問題であって誰にでもあるということである。例えば「体感治安」についてTERFや川口市の例がそうであるように女性は悪く報告しがちである(被害者意識が強い)が、「女性は被害者意識が強すぎる」と問題視してきた人はほとんどいなかったと思うし、本稿を読んでも考えを変えない人のほうが多いのではないだろうか。
善悪二元論という共通性
上述のような被害者意識は、「善なる自分が不安だったり不幸だったりするのは、悪による侵害を受けているからだ」「自分に迎合しないものは全て的で、敵は全部繋がっている」という世界観を容易に醸成する。EUの陰謀論対策ガイドラインでも陰謀論者の特徴として「すべてが繋がっていると考える」「善悪二元論」「特定の人々を悪属性として迫害する」といった項目が挙げられている。
ここで、何の属性を悪属性に当てはめるかで特色が出始める。典型的陰謀論の場合にはディープステートやイルミナティが入る。排外主義であればそれに外国人・外国政府が当てはめられる。フードファディズムではここに大企業(山崎製パンやモンサントなど)が入ることが多い。右翼の中には"人権は弁護士などの権力コングロマリット"を見出す人がいるし、活動家型の左派にしても、例えば日本会議や統一教会は、実際に比してかなり過大に政治的影響力を見積もられほとんど陰謀論の領域に達していた論者も多かったように思う。
こういうことを書くと「女が男から加害されるのは事実」「モンサントは実際に大企業だ」「日本会議や統一教会は実在するし実際に政治に食い込んでいる」と言ったような反論が想定されるが、現代陰謀論の代表であるディープステートにしても、元々はトルコで政権交代しても入れ替わらない官僚・国家公務員群を批判的に呼んだ"Derin devlet"という語が英語に輸入されたもので、日本で言えば小泉政権が官僚を「抵抗勢力」と呼んだり田中真紀子が「伏魔殿」と呼んだのとあまり変わらないルーツを持つ(現在でもトランプが陰謀論という批判を避けるため官僚群に限定してディープステートと呼んでいる)。それに対し、現実的にあり得ない尾ひれをつけ、その権能を異常に過大評価して敵視するようになると陰謀論と呼ばれるようになるわけだが、ハッシュタグデモ界隈で語られていた日本会議や統一教会像については十分に陰謀論と呼べるだけの尾ひれがついていたと思う。男女論ですらDVの暗数調査が発達した結果、女から男への加害が男から女への加害に匹敵する規模であることが明らかになりつつあるが、被害者意識に凝り固まっている人は調べもしないし知らされても無視するだろう。
また、陰謀論的傾向では善属性か悪属性かはかなり大きな問題で、発言者の属性を問題にする傾向にあり、「国籍透視」は古いネット右翼の時代からよく見られたものである。発言者の属性を強く問題にする傾向は左派思想でも見られ、例えばフェミニズム発祥でWoke思想で展開された思想として、〔過激に言えば〕特定の〔被差別〕属性を持つ発言者以外の発言は無視してよい、という立場理論(Standpoint theory)が公然と主張されてきた。気に食わない主張をする女性を〔南アの名誉白人の類推で〕「名誉男性」呼ばわりする例が散見されるが、少なくとも罵倒語としての「名誉男性」は右翼が気に食わない相手に「お前日本人じゃないだろ」と言う行為とさほど変わらないし、親和性の高い同一の傾向があるように思う。
デマを気にしない性向
善悪二元論からさらに派生した特徴として、自分の好みに合っている噂話なら客観的な事実性の検証をせずデマをまく、という点についても陰謀論的傾向を持つ左右に共通するところである(論友マクロン氏が元々指摘していたところである)。批判されていた小麦有害論あたりは端的なところで、「日本には元々小麦はなく戦後GHQに押し付けられた」あたりの「作られた伝統」型の主張は右派陰謀論のデマで、小麦を根拠なく有害だと言い募るフードファディズム的性向は「買ってはけない」の極左が振り回していたデマと類似する。
ただし注意すべきは、デマを気にしないだけであって、本人は自分の価値観にあった「真実」を求めているにすぎず、また言っていることの中には断片的には真実が入っていることもある、という点である。例えば排外主義ではよく外国人の犯罪が取り上げられるが、個別の犯罪例は実在する場合がしばしばあるし(もちろん関東大震災の例のようにデマもある)、統計的な犯罪率の低下を指摘されて「体感治安」を持ち出すことも多いが、実際に犯罪統計で率が高いケースは決してないわけではない。この手の《犯罪属性》論は女性運動でも頻繁に見られ、個別犯罪事例を取り上げ、統計的に否定されて体感治安を持ち出す、あたりの流れは同様に起きる。フードファディズムも断片的には正しい情報が入っており、例えば元々セリアック病(小麦グルテン不耐症)患者向けの、アレルギー表示と同様の目的だったグルテンフリー表記があり、その事実に尾ひれがついて発展したもので、類例には事欠かない。日本会議や統一教会に対するハッシュタグデモ界隈の論説は、私は実質的に陰謀論レベルに拡大解釈されていると見なしているが、一方でそれらの団体の一定の政治へのコミットが事実としてあったうえで、そのうえで拡大解釈を行っているのが陰謀論的と指摘している。
この中でも面倒くさいものはあり、参政党は少子化論で女性に高卒女性に出産育児に専念する選択肢を与えよというような主張をしているが、教育の延長によって肉体的な妊娠出産の適齢期が社会的に妊娠出産に不適とされることで出生率が低下する、というのは人口学において数少ない少子化原因の硬いファクトのひとつで女性論でもそのようなことが言われるが(ただし先進国で女性が自分も養育費を払うという価値観まで進むと人口置換水準には足りない程度だが若干増える)、道徳論の要請からそれを見ないふりをしているだけなので、「参政党が間違ったことを言っている」という先入観だけで批判すると手痛いしっぺがえしを食う可能性があるのは、おそらくこれに限らないと思われる。
終わりに:陰謀論者に至らない"陰謀論的性向"
ここまで長々と説明してきたが、これらはあくまで傾向の話である。参政党が陰謀論をやっているかというと断言するのは憚られることで、少なくとも参政党の政治主張の中にはイルミナティも爬虫人類も入っていない。
ただ、左右の双方から流入した参政党支持者の傾向をまとめると、被害者意識と善悪二元論、客観的検証より党派性を優先した結果デマをばらまく傾向など、陰謀論者に特徴的な性質を多く持つ、と分析できるだけの話ではある。
また、私は彼らが本稿の読者を含む《私たち》と別の志向や感性の人間だとも思わない。ほとんどの人は大なり小なり「自分は正しくて相手に加害されたのだ」と考えがちな傾向は持っているし、論友マクロン氏の分類では情緒抑圧型の人――つまり"普通の人"は、都合の悪い真実は真実であると認めつつも不快なので沈黙しているだけで、結局は不快な事実に立ち向かいたくはないのではある。陰謀論に堕ちた人は外から見ると一線を踏み越えたと見られがちだが、本人たちにとってはその自覚もなくただ歩いていただけだろう。
自認が右であれ左であれ、積極的に政治運動にコミットしていた(例えば𝕏で毎週政治の話題をしていた)ような人にとって、参政党員は遠い存在ではなく、つい昨年までは同志として肩を並べて政治運動し、SNSではお互いにリツイートしあう関係だったりした人がいる可能性がかなり高い。なんなら今現在相互リツイートする人の中に、参政党に投票したことを公言していないだけの人も混じっているだろう。読者の中で政治運動に強くコミットしていた自覚の強い人は、その点を重々自覚すべきだろう。
p.s. 最近物入りというか趣味で買いたいものが結構あってアマギフがあればうれしいので、気に入っていただけたら投げ銭歓迎です(物欲)



コメント
1「健康を害してもいいから自由を阻害するな」ていうのなら、厳しい表現規制とか国民の自由をことごとく剥ぎ取っている憲法案とか、立憲やら共産やらに比べても論外のはずなんだよなぁ。ただ他の党も全部自由より安心安全という方向に流れてる中で(本当に山田太郎議員が孤軍奮闘だから)、これでもそう変わらないとみられたのはあるのかもしれない。
逆に自由全振りの海賊党作ったら参政党の半分くらいは取れるんだろうか?