スイス式ドロー二戦目は”
光神殺種は、ブロックを行った相手と
手軽に増えやすいトークンとスレイヤー効果を備える軽いクリーチャーを並べて、手強い敵となる敵を飲み込んだり、あるいは戦闘破壊されることによって発生する追加効果で盤面を構築していく。
切り札のエースはコスト10の<神呑の世界蛇・ヨルムンガルド>
そのターンに戦闘破壊されたクリーチャーの数が一定以上の時のみ、召喚コストを大幅に踏み倒して召喚出来る大型クリーチャー。
前世の強いプレイヤーなら敵味方共にクリーチャーの贈呈や、大量自殺特攻からのヨルムンガルド2体呼びとかがざらにあったもんだ。
出張によく使われていたから二枚刺しの出張、タクシー蛇とかいわれてた代物だ。
同じような動きでブロックに適したテーマの”
あと砂糖といえば……”ドナドーナツ”。
あのカス。
あの腐れドーナツ。
暗黒のメタボ時代。
”グレーズ”と”あんドーナツ”戦争。
トップメタを貪った”デブドラ”。
本来のハンデスを見失ったドーナツ食生物”ハンドーナツ”。
あのギドギドの油揚げがよぉ! 糖分たっぷりだから傷みにくいし腐らないとでもいうつもりか!
マジで死ね! 頼むから消えてくれ! 永久追放されてくれ! あのクソドーナツ!!
二度と見たくない。
本当にもう二度と見たくない。
今生だとまだどこでも見かけてないし、使い手もいないみたいだけど、あいつの姿を見ただけで発狂する自信がある。
「はぁはぁ」
うっかり思い出してしまったトラウマを、フリードリンクの烏龍茶で胃に流し込む。
二回戦の光神殺種使いは、”魔女”のバーンで直接焼いて勝った。
”ア・ナイト”にいれてある全体除去2枚も使い切るまでもなく危なげない勝利。
自分のデッキ構築がバレていない――まあ、
横に意気揚々と並べたところをざっくり刈って、飛ばして焼いただけ。
バーン要素がたまたま刺さったというだけで。
――はっはぁ! お目々は開けたか?
――バーンの使い方はどんだけ上手く、痛いところに当てられるかってところだ。
――そのメタカードはやめろよ! 顔メタは卑劣だぞ!
――まあオレは勝つんだが?
――お前も火力使いにならないか?
――ブルズアイだ。
――ちゃんと避妊はしろよ。一発必中とかもあるからよ……
ダーツバーが好きだった火力使いのおっさんを思い出す。
あの人のバーンは好きだった。
ひりつき、どこに狙われているのか、どこを焼かれるのか焦げ付くような対戦が出来た。
あの人のカード捌きが好きだった。
ダーツの遊び方も教わったし、無駄にかっこいいシャッフルとかも教わった。嫁さんに尻に敷かれていてかっこよさの欠片もない台無しだったところもあった。
今はもうあの人のようなバーン使いを見たことがない。
あの人たちのような……
強い奴はいないのか。
『三回戦が始まります――さん、茂札さん、中央フィールドに集まってください』
アナウンスが聞こえた。
紙コップをゴミ箱に捨てて、瓶入りのラムネをかじりながら、手袋を嵌め直す。
あと一線勝利すれば3-0だ。
カード代になるポイントカードを貰えるし、出来るだけ勝ちたいな。
いやデッキに勝たせる、それが当たり前だ。
どんな相手だろうが、対峙すれば真剣勝負。フリプではない大会だからこそ。
――それが強いと気づいた。
辿り着いたバトルフィールド。
指定された自分の側から入場して、その少女を見てから気づく。
このアニメ世界でならよくあるカラフルな髪色。
透き通るような紫水晶のような髪色を優雅に流し、同じ色のキャップを被っている。
補導されそうなミニスカから伸びる足はまっすぐに、ブレのない姿勢で佇んでいる。
2次元から現実に変わってもなお力をいれてる美少女と断言出来る顔、鋭く切れ上がった目つきがこちらを見ている。
一回戦では隣のフィールドで対戦していた少女だと思い出す。
……こちらはコントロールで、多少デッキ構築は見られていると考えたほうがいいな。
ピューピューだのの口笛の音、ざわついた観客からの声と視線、それらを出来るだけ排除するために出来を取り出し、ボードを展開する。
あちらも同じように展開を行う。
動作がスムーズだ。
「場馴れしてるな、この店には常連?」
あいさつ代わりに話を振る。
「……ここには初めてきた」
「そう、出稼ぎってところかな」
この娘、間違いなく強いな。雰囲気でわかる。
息を吸う。
メインデッキを取り出し、ファローシャッフルを三回、カットを行ってからセット。ライフデッキは二回フォローして、カットも二回でセットする。
相手の少女は早々にデッキをし、ボードの中でカードがシャッフルされている。
バトルボード機能にある自動シャッフルだ。
サーチやデッキ回復のためにデッキを取り出して、シャッフルし直さなくても機械が行ってくれる便利な機能。
だから自分でシャッフルしなくてもいいのだが、自分なりのルーティーンで前世からやっている。
相手のカードは……スリーブなしか。
まあこの世界のLifeのカードは気合いれないと破れないぐらいには頑丈だしな。
「? 開始まではまだ時間があるはずだけど」
少女からの視線を感じる。
シャッフルによる遅れを咎められてるのだろうか。
「そういうつもりはない……ただ珍しい」
シャッフルか?
スリーブか?
……まあ前者だろうな。
「ルーティーンでね、すぐに終わる」
「スリーブ、つけてる」
「?」
予想してなかった方を言われて、瞬きをしてしまった。
キャップの少女は終わったシャッフルのボードを構えて、カンカンと踵を鳴らした。
「カードを大事にし、シャッフルも上手い人は大体強い。殺しにいく」
「おいおい物騒だな。Lifeだぜ」
息を吐く。
ボードを構える、肌が冷たい風に触れたように震える。
「命燃え尽きるまでに」
「相手の命を消す」
Lifeのカードゲームとしてのコンセプト。
「だからこそ」
「己が命を燃やせ」
公式サイトにも載っていた常套句。
「俺は
燃えてきた。
「……サレン。サレン=アンダー」
表情一つ変えずに、キャップの少女がそう名乗る。
「「ファイト!」」
俺たちは同時にデッキからカードをドローした。
◆
……強い!
油断をしていたつもりはなかったけれど、強く痛感する。
この相手は手強い。
「通常魔法<黙示録の光>を発動する……!」
「通さない。対応して瞬間魔法<反応解呪>」
「それに対して<防災>! コストとして土地を3枚墓地に送る」
「ピッチスペル……!」
「これで場のクリーチャーは全て破壊され、それらは再生出来ない!」
並べられたクリーチャーと
追撃手は強化されなければ強くもないし、出されていない状態ならば怖くない。
「対応します」
なにっ。
「瞬間魔法<蔑み>を発動」
ピーピングハンデス!?
でも私の手札は一枚だけど、まずい!
「効果を説明します、一コスト支払えばこれは打ち消せます」
「コスト一枚出して、打ち消す……!」
「順番に対応して、<黙示録の光>が発動。場のクリーチャーが全滅します」
<黙示録の光>が適応された。
予定通りに全部消し飛ばせたけど……
召喚する予定だった手札のマスカレイドが出せない。
コストが足りない。
たった1コストだけど、これを払わなければ手札に握っていた一枚を見せた上で捨てるはめになっていた。
「私のターンは終了」
「そのエンドフェイズに、瞬間魔法<残骸回収>を発動。通りますか?」
「妨害は、しない」
「なら墓地からカードを一枚、デッキトップに戻します」
「っ!」
フツオと名乗ったファイターが、墓地からのカードをデッキのトップにセットする。
おそらく序盤から何度か使った
だけどどれだ?
いやおそらく<忌み王>……あれだったらこちらのコストを抑えても出せるクリーチャーなら消し飛ばせるとまで考えてた?
「俺のターン。レディ・アップキープ・ライフドロー・メインドロー」
滑らかなターンの開始宣言を聞きながら、私は考える。
相手はおそらく【二重血統《デュアルブラッド》】だ。
複数のデッキテーマ、それぞれ異なるカードの
【
植物戦鬼までなら支配難易度は低いし、夜侵猟団ならばある程度は使い手とデッキの中身も調べはついている。
それぞれの専用サポートの代わりに、汎用カード……特に手札交換とかを入れているのにはひっかかるけど。
はずだ。
「コストゾーンに
はずなんだけど。
「スンッ」
……気配がしない?
精霊はどうやらいないというのはわかっていた。
鼻を鳴らしても、香りがしない。
独特の気配がしないことから精霊憑きではない。
精霊憑き自体探さなければ見つからないぐらいには貴重で、どこにでもいるわけではない。
私の知っている傭兵ファイターでもA級以上で二割前後、S級のネームドでもなければ前提ではない。
だがしかし。
「メインデッキからカードをドローし、<亜人の忌み王>を召喚」
「……ゴブリンプラントの切り札!」
「知っているみたいですね。通りますか」
「対応は……しない」
出来ない。
私の手札にあるのはクリーチャー一枚だけ、次のターンまで生き延びられれば。
「<亜人の忌み王>はプレイされ、場に召喚された時パワー5以下の全てのクリーチャーを破壊する。まあ無人ですが」
黄金色の光を背負い、ゴブリンたちの王が……人間でありながら、植物に寄生され、醜く歪んだが故にゴブリンたちの王となった忌み人が現れる。
コスト7のパワー6/タフネス7、大型クリーチャー!
唯一無二のクリーチャーであるため、戦場に一枚しか維持されない。
これをデッキトップにおいていた?
いや。
「2コスト支払い、
「ッ、ない!」
本命はこっちだ!
「効果を説明します。クリーチャーに対応させる秘宝、これを重ねられたクリーチャーのパワーは+2上がり、貫通を持ち、いずれかの場から墓地に送られた時にカードを一枚引く」
これでパワーが8。
攻撃されたら私のライフが削りきられる!
「俺のターンエンド」
「私のターン! レディ・アップキープ・ライフドロー」
私のデッキから対応出来る。
勝てる勝ち筋の残るカードを考える。
次に殴られれば負ける。
忌み王をなんとか倒せなければ負ける。
必要なのは――
◆
その瞬間、激しく嫌な予感がした。
相手のデッキの主軸はマスカレイドデッキ。
型の古い昔のテーマデッキだ。
ユウキ少女のブレイバーのご先祖様というべきタイプで、それを扱いやすく、コストバランスなども整えられたのがブレイバー。
真っ当に純正でやりあうならばデッキパワーはブレイバーに有利。
しかし、プレイングの腕は……
「ドロー!」
相手の手札はライフカード一枚、メインデッキの一枚。
両方とも今引き。
しかし、俺には見えていた。
そのデッキが鋭い光を放っていたのを。
「ケアしきれなかったか」
「<
「
前世での禁止カードじゃねえか!
<剣を花束に>共々マジ禁止されろよ、カスカード!!
この世界だと数十万以上するし、なんで禁止されないのかわからん
そのコスト増加って意味ある!? ただのバーンだろ!
というわけで<忌み王>が墓地ではない場所に消し飛ばされた。
ライフデッキから一枚減り、墓地に送られた<継ぎ接ぎの呪剣>のカード効果で一枚ドロー。
あ、受粉ゴブリンさんだ。ちーす。
「私は<フォトマスカレイド・DK>を召喚! これは墓地に眠るマスカレイドの種類が4枚以上ある時、コストを軽減して召喚することが出来る!」
全身に無数の仮面を貼り付けたクリーチャーが召喚される。
パワーとタフネスは、うん……無理。
「通します」
「DKは墓地に眠るマスカレイドの種類の数だけ+1/+1を乗せる!」
純正で強いやつだー。
「魔石<ザ・エントリー>をステイして起動、DXに速攻を付与する! 貴方に相応しい処刑台は決まった!」
それ決め台詞なんだな。
「攻撃!!」
「通ります」
投了はしない。
好きに決めろ。
「ブレイクワールド!!」
無数に分身したクリーチャーの攻撃と共に俺は吹き飛ばされた。
ぐえー、負けたわ!
「来たるべき時にいつだって現れるから英雄なのだ」
――狼騎士・ガーロ
~ザ・エントリーより~