ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
地球の戦士達は苦境に追い込まれていた。
シーラス本人どころか、彼が呼び出した戦士達すら地球戦士達にとっては遥か格上……本来ならばとても戦える相手ではない。
この窮地にリゼットの残した戦乙女達は頷き合い、数体が迎撃に飛び出し、残る数体が地球の戦士達に覆いかぶさった。
戦乙女達が実体を失ってクリリン達の全身を保護するように包み、クリリンはその力に驚く。
「こ、これは……?」
「す、凄い力だ。これなら俺達でも……」
今更だが、超サイヤ人ゴッドというのは神の気を纏ったサイヤ人であり、ブルーは神の気を纏った超サイヤ人だ。
そしてリゼットの残した戦乙女達は、当然ながら神の気そのものである。
それが全身を包んだ今、クリリン達は疑似的に超サイヤ人ゴッドに近い状態にあると言っていい。
即ち超地球人ゴッド! あくまでこの瞬間のみだが、クリリン達全員が第一線でギリギリ戦えるだけの力を手に入れた。
「よし! 行くぞ皆!」
「おおっ!」
タピオンの掛け声に天津飯、クリリン、ヤムチャ、餃子、人参化が応え、ナッパとゴテンクスも飛び出す。
ディスポの超速の乱打を三つの眼を持つ天津飯がかろうじて目で追い、必死に防御する。
プライドトルーパーズ相手にクリリンとヤムチャ、人参化が応戦し、ゴテンクスとナッパがカミンとオレンを相手取る。
シーラスの振るう棍をタピオンが剣で受け、幾度も火花を散らした。
ラグスのガラス攻撃をカリンとポポが避け続け、残った戦乙女達が第2宇宙の戦士達を蹴散らす事でギリギリのラインでまだ戦いは成立している。
「みんな、目を閉じろ! 太陽拳!」
クリリンが太陽拳を放ち、敵の目を晦ませる。
その隙に本家太陽拳の使い手であるが故に誰よりも早くクリリンの狙いを悟っていた天津飯が空へ飛んでいた。
「皆散れー! 新気功砲!」
天津飯の指示で全員が四方に散開し、直後にザンッ! という空間ごと削るかのような音と共に、シーラスを含む敵全てが気功砲に巻き込まれた。
神の気を纏う事で多少戦えるようになったが、所詮は下駄をはかせてもらっているだけだ。
元々の実力差がありすぎる以上、どうしてもこの戦いは不利になる。
だから天津飯はその差を少しでも埋めるべく、ここで命を捨てる覚悟で気功砲の連発に入った。
「はっ! はっ! はっ! はあっ!」
天津飯の裂帛の叫びに合わせて、ザンッ、ザンッ、と気功砲が敵全体を襲う。
勿論天津飯だけに攻撃をさせたりしない。
気功砲を発射してから次の気功砲を撃つまでの僅かな間に割り込み、ゴテンクスが攻撃に入った。
「連続死ね死ねミサーイル!!」
父ベジータ譲りの気弾連射で追い打ちをかけ、その間にクリリンとヤムチャ、餃子が気をありったけ溜めてナッパは大きく息を吸い込んだ。
「いくぞぉー! 合わせろ、皆! 気功砲ーーー!!」
「「波あああーーー!!」」
「どどん波!!」
気功砲、かめはめ波、どどん波が同時に降り注ぐ。
ナッパは口から破壊光線を放ち、ゴテンクスもかめはめ波を発射した。
その全てが気功砲で空けた穴の中に飛び込み、大爆発を起こす。
これで倒せたとは流石に思わない。
だが、少しくらいは効いてくれたんじゃないかと淡い期待を抱く。
「な、何……全くの無傷、だと……?」
だが無情にも、まるでダメージが入っていなかった。
その理由はトッポだ。彼は『破壊』の力を前面に展開する事で、クリリン達の攻撃を全て消してしまっていたのだ。
「ち、ちくしょう!」
クリリンが特大の気円斬を放つ。
だがこれも通じない。トッポの前に届くと同時に霧散してしまった。
トッポは感情のない目でクリリン達を見上げると、直後に彼等の前に姿を現す。
「は、速……」
トッポの巨大な拳が天津飯にめり込んだ。
彼を覆っていた神の気がダメージの大半を防いでくれたが、それでも余剰ダメージだけで天津飯を失神させるには十分すぎる。
天津飯が地面に激突し、白目を剥いて動かなくなる。
「て、天さ……」
続けて餃子。トッポの手刀一発で吹き飛ばされ、天津飯のすぐ近くに墜落した。
こちらもたったの一発でKOだ。彼は何が起こったかすら理解できないまま意識を断たれてしまった。
「こっ、この野郎ー!」
「よくも天津飯を!」
クリリンとヤムチャが怒りのままに飛び出し、トッポに拳を放つ。
だがトッポは一瞬で二人の背後に回り込み、拳の一撃で叩き落してしまった。
すぐに救援に向かおうとしたゴテンクスとナッパだったが、行く手を阻むようにシーラスが現れ、棍の一撃で弾き飛ばされてしまう。
タピオンが斬りかかるが、振り下ろした刃を指先で止められて腹に棍をめり込まされた。
人参化はカミンとオレンの二人がかりで袋叩きにされ、援護に向かおうとしたカリンとポポの道を塞ぐようにラグスのガラスが大量に降り注ぐ。
「い、いかん……力の差がありすぎる!」
「ミスターポポ困った……神様の留守を守れない」
カリンとポポは流石の技巧者ぶりで、今の所攻撃を一撃も受けていない。
だが戦いはいくら回避が上手くても、それだけでは勝てないのだ。
相手を倒すパワーがなければ、戦いに勝利する事は出来ない。
震える足で悟飯が立ち上がろうとするが、先程のダメージが大きすぎて膝をついてしまった。
そんな悟飯に、シーラスが掌を向ける。
「もう無理に立たずともよい。お前はよくやった」
シーラスの狙いは吸収であった。
彼が作り出し、そして現在同化しているAI生命体アムズは強い戦士を吸収すればするほど強くなっていく。
その在り方は皮肉にも、彼が道を踏み外す原因となった魔人ブウと全く同じだ。
己の信じる正義の為に信頼を寄せてくれていた時の界王神を裏切り、一番憎んでいたはずの魔人と同じ事をする。
彼の正義はとうの昔に破綻し、歪み切っている。
それでも彼は進み続けるしかない。時の界王神と袂を分かった時に退路は失われているのだ。
「お前はここで消える。しかしお前の力は未来の正義を守るための礎となる。約束しよう……決して私はお前の犠牲を無駄にしないと」
「違う!」
シーラスの言葉に、悟飯が満足に動かない身体の代わりに唯一動く口を動かした。
追い詰められても折れる事のない闘志を宿した瞳でシーラスを真っすぐ睨む。
「僕は消えない。たとえここでお前達に敗れたとしても……いつの日か、僕の意思を継ぐ者が必ず立ち上がり、お前達を倒す!」
「……っ」
悟飯の真っすぐな視線を受け、シーラスが怯んだ。
悟飯の瞳の中には、歪み切ってしまった自分の姿が映っている。
シーラスは悟飯の中に、まだ時の界王神と共に歩んでいた頃の自分の姿を垣間見た。
ギリ、と歯を食いしばり、シーラスは叫んだ。
「消えるのだ! どれだけ尊い意思を持っていようと……どれだけ正しく生きようと! 巨大な力の前では一瞬で消されてしまう! だから私は、二度とそのような事が起こらぬ理想の世界を作らねばならんのだ!」
シーラスが感情を露わにし、悟飯を吸収するべく掌を突き出す。
最早語る言葉はない。今はただ、一秒でも早くこの青年を目の前から消してしまいたい。
何を吠えようと、何を信じようと、結局は力だ。力がなければ何も守れない。
シーラスの手が眼前に迫り、悟飯はこの直後に待つ己の喪失を実感して思わず目を閉じた。
――直後。
どこからか飛来した一条の光線が螺旋を描きながらシーラスへ突き進み、咄嗟にシーラスは飛び退いた。
「……っ!? い、今のは……」
見覚えのある技に、悟飯が顔を上げる。
今の光線が飛んで来たのは、上からだ。
そこにあったのは、一つの高層ビル。悟飯は少しずつ視線を上げていき、頼もしい救援者の姿を探す。
そしてビルの頂点……先細りし、尖った先端の上に、彼の姿はあった。
白いマントが風で逆方向になびき、姿を隠してしまっていたが、丁度いいタイミングで風向きが変わった事でその姿が露わになる。
マントをなびかせる、悟飯が心から敬愛する師……ピッコロ。
いつもと変わらぬ自信に満ちた顔で、腕組みをして彼が立っていた。
「ピッコロさん!」
「情けないぞ悟飯! いかなる時であっても戦いを諦めるな!」
「は、はい!」
ピッコロがマントとターバンを外し、空に躍り出る。
するとトッポを始めとする影の戦士が集結し、ピッコロ一人を取り囲んだ。
だがそれでも尚、ピッコロの表情に不安や怯えはない。
「……出てきてしまったか、ピッコロ」
「仕方ない。ピッコロが来なければ全滅してた」
カリンとポポは上空を見上げながら不安そうに呟く。
ピッコロは元々、敵の大将が現れた時に迎え撃てるように待機していた。
それは、万全の状態のピッコロしか敵の大将に対抗出来る戦士がいなかったからだ。
つまりピッコロが出てきてしまったこの時点をもって、敵側のリーダーは完全にフリー。どう動かれても誰も対応出来ない。
とはいえ、ピッコロが愛弟子の危機を放置していられるはずがなく、この事態はどのみち避けられない事だったのだろう。
「フンッ!」
トッポが『破壊』の力を纏わせたままピッコロにパンチを繰り出した。
だがピッコロはその拳を軽々と気で覆った掌で受け止め、凄まじい握力で逆にトッポの拳を押し返す。
「つあッ!」
そこから反撃。ピッコロの拳打がトッポの顔面を砕き、続く蹴りで吹き飛ばす。
背後にディスポが回り込んで蹴りを放つも、ピッコロの姿が消えてディスポの頭に肘打ちを叩き込んだ。
カミンとオレンが同時に挑みかかり、ピッコロと高速の打撃戦を展開する。
だが一瞬の隙を突かれて手刀で弾き飛ばされ、今度はラグスがガラスの雨を降らせた。
その全てを軽快に避けながらラグスに接近し、蹴りでラグスの首をへし折る。
「はああああーーー!!」
ピッコロが叫びながら突進し、プライドトルーパーズへ仕掛けた。
プライドトルーパーズも迎え撃つが、ピッコロが手刀を薙ぐたびに面白いように吹き飛ばされていく。
今度は第2宇宙の戦士達。しかし結果は変わらず、手も足も出ない。
蹴り、殴り、落とし……そして悟飯は気付いた。ピッコロは全員を一か所に集めているのだと。
巨大化したリブリアンも一撃で沈め、まるで寄せ付けない。
影の戦士達は何とか立ち上がろうとするが、その前にピッコロが着地して気功砲に似た構えを取る。
「くたばれ……!」
――激烈光弾。
ピッコロの両手から放たれた気功波が影の戦士を纏めて飲み込み、抵抗も許さずに消し去っていく。
気功波は地球の大地を削りながら飛翔し、やがて宇宙へと飛び出し、消えていった。
そうして取り巻きをあっさりと全滅させたピッコロはコキ、コキ、と首を軽く鳴らしてからシーラスへ視線を向ける。
「待たせたな。次は貴様がああなる番だ」
「……なるほど、これは手強そうだ」
ピッコロが構え、シーラスも静かに棍を構える。
……シン、と場が奇妙に静まり返った。
強者同士が衝突する寸前特有の緊張感と静寂が場を支配し、普段なら気にならない風の音がやけに大きく聞こえる。
この場の誰も、あの戦いに割り込む事は出来ない。
それだけの圧倒的な差が、あの二人とそれ以外との間には存在しているのだ。
「…………」
「…………」
両者共に、呼吸すらせずに相手を凝視する。
このレベルの戦いでは一瞬の隙がそのまま死に繋がる。
ほんの僅かでも隙を先に見せてしまえば、次の瞬間には痛烈な一打を受けている事だろう。
緊張感が高まり――高まり――そして、膨らませすぎた風船が破裂するように、『その時』が来た。
「だっ!!」
果たして掛け声を発したのはどちらだったか。
両者が同時に飛び出し、中央で衝突した。
それだけで衝撃波が広がり、付近の建物が倒壊する。
ピッコロとシーラスは超高速の打撃戦を繰り広げながら空へゆっくりと浮遊していき、攻守を目まぐるしく入れ替えながら渡り合う。
そして互いの拳が、相手の顔面にクリーンヒットした。
★
大界王神の登場により、モロとの戦いは新たな局面を迎えていた。
憎悪を隠さず睨みつけるモロに、大界王神は両手を組み合わせて人差し指を立てると、その指先をモロへ向ける。
「さあモロ、大人しく銀河刑務所に戻るんだ。また魔力を封印されたいか」
大界王神の構えを見て、モロの額に冷や汗が流れた。
かつて宇宙を荒らし回っていたモロが魔力を失い、銀河パトロールに捕まったのもこの技を受けたからだ。
モロが強すぎて死刑執行すら出来ないような銀河パトロールが千年以上もモロを閉じ込め続ける事が出来た……と言えば、どれだけこの技がモロを弱らせていたか分かるだろう。
しかし、だからといってここで「はい分かりました」と戻るくらいならば最初から脱獄などしない。
それに今の宇宙にはモロを仕留めてしまえる強者が何人もいるのだ。
銀河刑務所に戻ったが最後、そうした強者による死刑執行が待っているのは明らかであった。
「冗談じゃない……折角得た自由を失ってたまるか!」
「なら仕方ないね……カイカイマトル!!」
大界王神の指から凝縮された神力が発射された。
本来の歴史では、大界王神は神の力を失っており、この術を使う事は出来ない。
魔人ブウが分離した時、純粋ブウの方に神の力を持って行かれてしまったからだ。
より正確に言うならば、本来の歴史の善のブウとはかなり特殊な条件下で発生した存在である。
まず善と悪に分離して悪が勝利し、善を吸収する。その後に体内の善のブウを引き千切られ、大界王神を吸収する以前の純粋ブウに戻る。
更にその純粋ブウが、善ブウと心を通わせたMr.サタンを襲い、中から善ブウが邪魔をし……それを不要なものと判断した純粋ブウが善ブウを『捨てる』事で本来の歴史の善ブウは発生した。
つまり正確には分離ではない、廃棄だ。純粋ブウにとって要らないものを捨てただけなのだ。
あくまで本体は純粋ブウの方であり、善ブウは切り離された老廃物に過ぎない。
つまり捨てたのは『心』だけで『力』までは捨てていなかった。
だから純粋ブウの方に力が残ってしまったのだ。
一方この歴史ではブウは分離を一度もしていない。
リゼットの『
その為、大界王神の力が失われる事はなく、この封印術も使えたのだ。
「馬鹿め! そんな技に今更当たるか!」
しかし今のモロはかつて大界王神と戦った時よりも強い。
素早く封印術を避け、大界王神を仕留めるべく突撃した。
大界王神はすぐに封印術の軌道を変えてモロを追尾させるが、明らかにモロよりも遅い。
このままモロが大界王神に攻撃を届かせる――その瞬間、ラピスラズリがモロを羽交い絞めにした。
「貴様……!」
「よく分からないが、アレはお前にとって嫌なものらしいな。なら、邪魔させてもらおうか」
「よせ、貴様も一緒に喰らうぞ!」
「生憎俺は魔力なんて持ってないんでな。元々ないものを封印されても別に何も困らないさ」
「よ、よせ! やめ……ぐああああああ!」
封印術がラピスラズリごと、モロに直撃した。
ピンク色の光が月面を照らし、モロの絶叫が響く。
しかしモロは全身に力を籠めると、強引にラピスラズリを振り払ってしまった。
更に気の解放で封印術までも弾き飛ばし、引き攣った笑みを浮かべる。
「ふ、ふふ……お、驚かせやがって……残念だったな大界王神……どうやら今の俺にそれは通じないらしい。俺が強くなりすぎたのか、それとも貴様が弱くなったのか……どちらにせよ、目論見は外れたらしいな」
「……!」
先程まで封印術を恐れていたモロだったが、効かないと分かった事で余裕を取り戻した。
ラピスラズリは起き上がりながら埃を落とし、残念そうに肩を落とした。
「何だ、効かないのか。それなら……ええと、誰か知らないが、ブウに戻ってくれないか?
あいつとやり合うにはブウの不死身の身体が必要なんだ」
「…………」
ラピスラズリに冷たく言われ、大界王神は落ち込んだように無言でブウに戻った。
少し可哀想だが、封印術が効かないならばもう出番はない。
戦況は再び元に戻り、モロが拳を握った。
「どれ、少しヒヤッとさせてくれた礼をしようか」
「お礼? お菓子でもくれるのか?」
「もっといいものさ」
モロの言葉にブウが無邪気な反応を見せたが、勿論お菓子などくれるわけがない。
モロが額の水晶に触れると、そこに第4宇宙の戦士――ダーコリの顔が映った。
今の彼は捕食したセブンスリーの力により、首の後ろに手を触れる事で対象の能力をコピーする事が出来る。しかもセブンスリーと違って時間制限なしだ。
あらかじめセブンスリーにストックさせていたダーコリの能力を使い、己の気から札を生み出す。
その札をラピスラズリの影に投げると、影が縛られてラピスラズリが動けなくなってしまった。
「なにっ……これは!?」
「そら、貰ったぞ」
動けなくなった隙にモロがラピスラズリの背後に回り込み、首を右手で掴んだ。
すると右手の掌にある水晶に、ラピスラズリの顔が映り込む。
それをモロの額の水晶に合わせる事で、彼はラピスラズリの能力を獲得した。
モロがコピーし、ストック出来る能力は三つまで。
そのうちの一つはモロ本人の能力なので固定として、ここまで役に立ってくれた幻覚能力を捨ててラピスラズリをコピー……同時に力も大幅に増した。
「ほう、無限のスタミナか。こいつはいい。お前の力、コピーさせてもらったぞ」
「おいおい……俺の永久エネルギーは能力じゃなくて機能だぞ。どういう理屈なんだ」
何とか影縛りから脱したラピスラズリは、あまりに不可解な現象に愚痴を零した。
永久エネルギー式人造人間は、永久エネルギー炉を搭載しているから疲れないのだ。
つまり能力ではない。そういう道具を持っているだけに過ぎない。
今モロがやったのは、芭蕉扇を持っている亀仙人をコピーしたら自分も風が出せるようになったと言っているようなもの……明らかにおかしい。
体内の臓器が永久エネルギー炉と同じ仕組みになったとでもいうのか。
とにかく、理屈は不明だがモロという怪物がとんでもなく理不尽で規格外である事だけは理解させられた。
モロは続けてガミサラスの能力で透明になり、ブウの背後から首を掴んだ。
不味い、とラピスラズリは顔を強張らせる。
モロに魔人ブウの不死身の肉体や再生能力、魔法の数々が渡ったら最悪だ。もう誰も止められない。
だがモロは妙な手応えに顔をしかめ、ラピスラズリはブウを見て思わず笑ってしまった。
――首がなくなっていた。
本来首だったはずの場所はただのピンク色の塊となっており、首も顔も頭もない。
これではモロのコピーは成立せず、ただ無意味にブウに近付いただけだ。
そして驚くモロの前で、何とブウの背中から顔が生えた。
「ばあっ!」
「っ!!」
ブウが口から気功波を発射してモロを吹き飛ばし、元に戻る。
それからモロをおちょくるようにその場で「ホッ、ホッ、ホッ、ホッ」と奇声をあげながらドラミングをした。
「なるほど、これならブウの能力がコピーされる事はなさそうだ。よし、行くぞブウ」
「わかった!」
ラピスラズリとブウが突撃し、左右からモロに攻撃を仕掛ける。
どちらも単体ではモロに遠く及ばないし、ブウは本来ならば一撃で殺されてしまうだけの実力差が開いている。
だがブウはそもそもダメージを受けない上に、動きが出鱈目すぎて予測も出来ない。
加えて実力差があったのは先ほどまでの話。今は大界王神の意識が目覚めた事で彼の力も上乗せされてパワーアップしている。
ラピスラズリはモロにそれなりに近い実力に迫っており、何より疲れ知らずなのでこちらの相手も面倒だ。
二人の同時攻撃を捌きながらモロは考える。
なるほど、ハーツが警戒するわけだ。今の地球は主戦力のほとんどが他の敵と戦う為に離れており、地球に残っているのは力の大会にも出られなかった面子ばかりだという。
だというのにこの厄介さ……本来モロやブウのような者を破壊して宇宙の秩序を守るはずの破壊神ビルスがサボリ続け、危険な者ばかりが生まれて蟲毒のように殺し合い、その果てに強い者だけが生き残った結果だとでもいうのか。
モロは更に考える。正直、この戦いを続けても旨味が全くない。
何せこいつ等からはエネルギーを奪えないのだ。
エネルギーの吸収こそ何よりの至上と考えるモロにとって、これほど『美味しくない』敵は過去にいなかった。
――面倒だな。
ラピスラズリの能力はコピーし、ブウの能力はわけのわからない身体のせいでコピー出来ない。
ならばもう、これ以上この二人と戦う意味はない。
それよりも地球の方が美味しそうな獲物が揃っているし、星というご馳走があるじゃないか。
彼の興味は完全に地球へ移り、最早この二人をいかに倒すかではなく、いかに撒くかに思考が移っていた。
そしてモロが今持っている能力は、まさにその望みを叶えるのにうってつけだ。
「これ以上お前達と戦っても俺には何の得もない。悪いが、地球に行かせてもらう」
「行かせるとでも?」
ラピスラズリの蹴りを右腕で防ぎ、気弾を地面に打ち込んで砂塵を発生させた。
そして透明化能力により姿を消す。
所詮透明になるだけの子供騙しだが、それでも相手の視覚を騙すならばこれほど便利なものはない。
しかもラピスラズリもブウも、気の探知など出来ない戦士だ。
モロは悠々と二人から逃れ、地球へと向かって飛翔した。
それから遅れて、モロがいなくなった事に気付いた二人が地球へ向かう。
戦場は月から地球へと移行し、場はますます混沌としていく。
★
――リゼットは夢を見ていた。
クウラとの戦いで全ての力を使い果たしたリゼットは、あの世へ続く雲の道をゆっくりと歩いていた。
死ぬ事への抵抗は別になかった。
そのうち悟空達が生き返らせてくれるだろうと思っていたし、それならばちょっとした休暇だ。
世界の危機を彼らに押し付けてしまうのは神として情けないとも思うが、自分なりに一生懸命頑張ったのだし、ちょっとくらい休んでも怒られはしないだろう。
そう思いながらあの世へ続く道を歩みだし――彼女の前に一人の女性が現れた。
「リゼットちゃん、残念だけど貴女が今来ても、あの世は迎え入れてくれないわよ。私が止めちゃったからね」
それは、時の界王神だった。
だが以前に見た幼い姿ではない。背中には時計の針のような光輪を背負い、黄金に輝く大人の女性の姿を取っていた。
リゼットは知らないが、これこそ時の力を解放した時の界王神の本気の姿だ。
彼女はどこか疲れたような気配を漂わせており、大分消耗しているように見える。
「え? なんだか疲れてるように見えるって? そりゃそうよ……ハーツ達ったら閻魔君まで他の時間に送っちゃったんだもの。このままじゃあの世から死者が蘇って大惨事になっちゃうから、私が介入してあの世を『時』の中に閉じ込めたわ。これで何とかあの世から死者が復活するのは阻止出来たけど……止めちゃったから、新しい死者を迎え入れる事も出来ないのよね」
あの世の時間丸ごと停止とは、流石は時の界王神である。
リゼットも時間停止は一応出来るが、規模が違う。
彼女の御業を褒めると、時の界王神は誇らしげに笑い、胸を張る。
普段の彼女ならぺったんこで様にならないが、今は十分様になっていた。
「あの世が停止している今、死者はあの世に入る事も出来ずに正常に戻るまで待ち続けるしかない。けどリゼットちゃん……特殊な性質を持つ貴方なら、多分今なら戻れるはずよ。
十分頑張ってくれた事は知っているけど……お願い。シーラス達を止めるために、もうちょっとだけ力を貸して」
時の界王神にそう言われ、リゼットは微笑んで頷いた。
そして、そこで目が覚めた。
ひとまず、状況は把握している。
自分でも理屈は分からないが、心臓病にかかった時の悟空も夢で状況を把握していたので似たようなものだろう。
今、この世界からは神が失われ、人々が必死に戦っている事もリゼットは知っていた。
自分が対象外になった理由は、願いの叶え方が悪かったからだろう。
ハーツは『この世界に生きる』と言ってしまったので、その時点で実質死んでいたリゼットだけは対象にならずこの時間軸に残ってしまったのだ。
そうして数少ない例外となった自分があの世に行って休むのは、確かに少しばかり気が休まらない、とリゼットは思った。
それにこのまま死んでしまえば、それは相打ちだ。
クウラの望んだ通り殺されてやるのは、ちょっと気に入らない結末である。
だからリゼットは、あの世が麻痺しているのをいい事に現世に帰還した。
本人が死んでないと言い張って目を覚ました。なので死んでない、最初から生きていた。ちょっと生死の境をウロチョロしてただけだ。
自己弁護、理論武装完了。精神的大勝利である。
リゼットの中のイマジナリークウラが『認められるか!』とキレ散らかしているが、気にしてはいけない。
まだ戦いは続いている。きっと地球では皆が頑張っている。
ならば、もうちょっとだけ頑張ってみよう。
(……あー……うん……声、出ないですね……)
目を覚まして、己の身体の状況を確認する。
治療カプセルの中にいるので怪我はもう治っているはずだが、全身が何故か痛い。
声も出ないし、指一本も動かせない。
遅発性乱気症の更に酷い版だろうか。
クウラから受けたダメージはしっかりとリゼットを戦闘不能に至らしめ、今も復帰を許してくれない。
折角目を覚ましたのに、これじゃ役立たずだ。
(地球に残しておいた自律気弾は……凄く弱ってるけど一応ある……)
保険として地球に残してきた自律気弾はリゼットが瀕死だったせいか、思った以上に消耗してしまっているが一応健在のようだ。
今のリゼットは気を出す事すら出来ないが、既に出している気に命令を下すくらいは出来るかもしれない。
気を抜けばすぐに睡魔に負けてしまいそうな微睡の中で、リゼットはこの状態で出来る事はないか……時折寝落ちしながら、思考を巡らせていた。
地球「俺のそばに近寄るなァーーー!!」
Q、ブウって気の感知できなかったっけ?
A、出来るのは悪ブウと純粋ブウ。デブのブウは神殿にすら気付けなかった。
Q、リゼットは教えてあげなかったの?
A、一応少しは教えてるが、基本的にブウは自分が興味のある事にしか取り組まないので……。
【超神龍の判断】
超神龍「身体は生きてるみたいやけどワイの眼は誤魔化せんで。これ死んどるわ。つまり願いの対象外や」
Q、どうしてハーツ君は願いを叶える時にこの世界に「生きる」とか言っちゃったの?
A、もしリゼットが生きていた場合はこの願いで厄介なリゼットを追放し、もし死んでいた場合は残ったところで別に脅威ではないと考えてこう願った。
また、もし死んで残った場合はアムズに取り込む事も出来る。
つまりどっちに転んでもハーツ的には美味しい結果になるはずだった。
そうやって欲張った結果、追放の願いの対象外になりつつあの世が麻痺していたせいであの世に入れず戻ってきた。
欲張ったらダメだって自分で言ってたのに……ハーツ……。
【戦闘力】
魔人ブウ:2000億→1兆
バーストリミット30倍:30兆
大界王神の覚醒により基礎戦闘力が大幅上昇した。
これでもまだモロには及ばないが、大分レベルが近付いた。
時の界王神(時の力解放):30兆~???
時の力を解放したクロノア。お前本当に界王神か? と言いたくなるほど強い。
作中では話の都合上敵に負ける事が多いが、超サイヤ人ブルークラスの戦いに平然と参加したり、超サイヤ人4ゴジータと肩を並べて戦ったりと、冷静に考えるとおかしい事をしている。
また、彼女の先輩にあたるアイオスは身勝手(兆)の悟空と渡り合っており、クロノアはそのアイオスと同程度の力を持つと考えると本当はもっと強いかもしれない。
(直接対決ではクロノア側に戦意が一切なかったので負けている)
モロ:107兆
ラピスラズリをコピーし力を増した。
ストック出来るのは三つまでなので、幻覚能力を捨ててラピスラズリの能力をコピー。
セブンスリーはあくまでその時メインに使ってる能力者の戦闘力をコピーするだけだったが、モロはどういうわけか全部同時に使っている。魔術ってすごい。
一応上昇は少しだけ緩くなっている。
(漫画版でもメルスをコピーした割にそこまで強くなってなかったので)
疑似地球人ゴッド:+8000億
自立気弾の戦闘力が上乗せされる。以上。
ちなみに同様の方法で悟空達をパワーアップさせる事は一応可能だが、悟空達レベルになると彼等が気を解放しただけで纏わりついている自立気弾が吹っ飛んでしまう。
要するに自立気弾がバリアのように身体を覆っているだけなので、内側からそれ以上の気が発生したら吹っ飛ばされてしまい、結局何の意味もない。
あくまで『自立気弾を吹っ飛ばせないくらいの格下に下駄を履かせて無理矢理自立気弾レベルの戦闘力を与える』程度のバフでしかない。
Q、これ、性能的にはリゼットがクリリン達を再現して自立気弾作れば何も変わらないんじゃ……
A、そうだよ。
Q、自立気弾が身体を覆う事で強くなるというけど、何でそれで気功波系の威力まで上がってるの?
A、纏っている自立気弾を消費してるから。なので天津飯の気功砲連射は自分を守ってくれている自立気弾をガンガン削ってしまっている。
Q、大界王神何しに出て来たん……?
A、でも大界王神様は太っていたけどやさしく温和だから……。
一応カイカイマトル当てたし、役目は果たしたかなって。