ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

163 / 176
第27話 激突!!100兆パワーの戦士たち(4)

 ビッグゲテスターの床を踏み砕き、クウラが飛翔した。

 その巨体からは想像も出来ない速度は今のリゼットをして、目で追う事が出来ない。

 戦闘力が上がればスピードも上がる。

 今やクウラの速度は完全にリゼットを凌駕していた。

 繰り出された剛腕を身体が勝手に回避し、すぐに武器を創造する。

 だが創造した瞬間に鋼の拳によって刃をへし折られ、すぐに素手による攻撃へ切り替えた。

 身勝手の極意はあくまで自らに迫る危険から避ける術だ。手に持っている武器までは守ってくれない。

 ならばと掌底をクウラの胸に当て、強く踏み込む。

 気を掌に集めて増幅させ、それを身体の捻りによってクウラの体内へ送り込んで炸裂させた。

 いかに外側が堅かろうが内部に攻撃を浸透させる事が出来るならば、その頑丈さに意味はない。

 だがそれは内部が脆ければこそ通じる話。

 身体の内側まで、脳以外全て余すところなくメタル化されているクウラ相手では流石に効果が薄い。

 

「ふっ……そんなものか!」

 

 クウラの蹴りがリゼットの顎目掛けて振り上げられた。

 それに合わせてリゼットが後方に廻り、全ての衝撃を逃がす。

 着地と同時に続けてクウラの拳打。これも頬に触れるや否やというタイミングで右足を軸に回転し、受け流す。

 そのまま回転の遠心力を乗せてクウラの首に手刀を叩き込むが、まるでビクともしない。

 内部攻撃は効果が薄いが、外側への攻撃はそれ以上に効果がない。

 元々頑丈な装甲に加えて、今のクウラは圧倒的な気に守られている。

 肉体強度で圧倒的に劣るリゼットの打撃ではダメージにならないのだ。

 リゼットは一度クウラから距離を取って構えを取る……が、次の瞬間喉からせり上がって来た灼熱に思わず口元を押さえた。

 

「こ……ふっ」

 

 血が喉を伝ってドレスを赤く染め、意識が途切れかける。

 受け流したはず。衝撃は完璧に逃がしたはず。

 だというのに、たったの二発でこのダメージ……!

 最早掠らせるだけで、勝敗が決しかねない。

 リゼットはあらかじめ口の中に仕込んでおいた仙豆を噛み砕いて怪我を治し、追撃を仕掛けてきたクウラを迎え撃った。

 

「そらそらァ!」

「……っ!」

 

 クウラが嵐のような攻撃を放ち、リゼットはその全てを避けて攻撃を続ける。

 拳打を避けて関節を挟むように叩き、蹴りを避けて顔面に気功波を直撃させ、気功波を撃とうとしていたクウラの腕を捻り上げて逆に彼自身に当ててやる。

 だが決定打以外はクウラに対して意味がない。すぐに修復してしまう。

 ますます速度を上げるクウラのラッシュを避け、一度距離を空けた。

 するとクウラが気功波を発射するが、リゼットは両腕を突き出して気功波を受け止め、環を描くように両手を廻して気功波を霧散させた。

 今度はリゼットが両手を頭上でクロスさせ、周囲を二つの気の塊が浮遊する。

 手首を合わせた状態で手を前に突き出し、全力の気功波を発射。

 同時に二つの光球も桜色の気功波と化して中央の白い気功波の周囲を螺旋を描くように追従し、クウラへ迫る。

 

「ふっ……」

 

 リゼット渾身のレイジングブラスト。

 だがクウラはこれを片手だけで抑え込み、ほんの僅かも押される事なく余裕の表情で防ぎきってしまう。

 だがそれはリゼットも想定済みだ。

 クウラが一発目のレイジングブラストで僅かに動きを止めた隙にこの世の時を一秒間だけ停止させた。

 そして両手を再度突き出し、気を高めていく。

 同時に彼女の背で光輪が高速回転し、外側から凄まじい勢いで気をかき集め始めた。

 リゼットだけの力ではクウラに遠く及ばない。

 ならば他から力を借り、実力以上の威力を叩き出せばいい。

 

「Ultimate blast!」

 

 かつて破壊神シャンパに土を付けた切り札の一つがクウラに命中した。

 放たれた極光はビッグゲテスターに大穴を開けて宇宙空間をも貫き、射線上にあった岩礁を抹消していく。

 そして攻撃が終わった時、そこには右半身が多少損傷しながらも依然健在のクウラの姿があった。

 

「なっ……!?」

「ぐ……時間停止か……驚いたぞ! 貴様も出来るとはな!」

 

 損傷した部位を修復しながら、今度はクウラが――あろう事か、さも当然の事であるかのように時間を止めた。

 クウラが戦い、取り込んで来た暗黒魔界の者達はタイムパトローラーを苦しめてきた敵だ。

 つまり、彼等も時間の操作を行えたのだ。そしてクウラはそれを取り込んだ。

 流石に魔神ではないクウラでは完全な時間停止は出来ず、その停止時間はリゼット同様精々一秒程度しかない。

 だが彼もまた時間停止の世界への入門を果たしていた。

 そしてその力で先程の攻撃をかろうじて避けたのだ。

 停止した世界の中で走るクウラから、リゼットは咄嗟に距離を取りつつ自分に似せた自律気弾をありったけバラ撒いた。

 更に瞬間移動やヘブンズゲートを試みるが……駄目だ。事前に予想はしていたが、転移系の技はビッグゲテスター内では阻害されてしまう。

 やがて先に時間停止を使ってしまったリゼットの方が先に停止し、クウラが次々と進路上の自律気弾を破壊していく。

 クウラの時間停止が終わるまで残り0.01秒……!

 その時点でクウラの道を塞いでいた自律気弾が全滅し、遂にクウラの攻撃がリゼットを捉えた。

 いかに身勝手の極意といえど、時間ごと止められてしまっては回避出来ない。

 時間が動き出すと同時にリゼットは威力に逆らわずに飛び、床をバウンドして倒れてしまう。

 

「リゼット!」

 

 この危機にミラが飛び込もうとするが、それは無数のメタルクウラが許さない。

 一体一体は今のミラならば倒せるが、数が多すぎる。

 しかもメタルクウラはアップデートされ続け、ミラとの力の差を着実に縮めているのだ。

 

「邪魔だ、どけ!」

「邪魔は貴様だ」

「俺達の戦いは誰にも邪魔させん」

「そこで大人しく見ているがいい! あの女の死に様をな!」

 

 何とか突破しようとするが、メタルクウラがそれを阻む。

 そうしている間にクウラが倒れているリゼットに近付き、躊躇なく踏み付けを行おうとする。

 だがリゼットもこれを待っていたように身体の位置をズラし、踏み付ける為に左足を上げていたクウラの右足……を支えていた床を蹴り砕いて彼を転倒させた。

 倒れている相手への攻撃手段は限られる。

 この状態になればクウラは必ず踏み付けを選択すると踏み、あえて待っていたのだ。

 

「なにぃ!?」

 

 平然と起き上がって反撃を試みたリゼットにクウラが意表を突かれた。

 両者の戦闘力差やリゼットの脆さを思えば、あの一撃で終わっていてもおかしくない。

 だがそれも直撃(あた)っていればの話。

 クウラの見ている前でリゼットが爆発し、これも偽物であった事に気付かされた。

 それもただの自律気弾ではない。第6宇宙の殺し屋ヒットが得意とする気の分身を被せて、外見までも本物と区別出来なくした特別な自律気弾だ。

 無論行動パターンや技術も本物のリゼットに限りなく近く、今この瞬間まで本物と誤認してしまっていた。

 ――これも偽物!? ならば本物は……!

 クウラが倒れながら咄嗟に後ろを向く。

 そこにいたのは、進路の邪魔ではなかったから無視した自律気弾だ。

 全身が白く、いかにも自律気弾と分かる偽物……その偽物の背中を突き破ってリゼットが飛び出し、クウラにカチカッチン鋼の塊を乗せた。

 リゼットは時間が停止した世界の中で、このままでは先に動けなくなると判断するや自律気弾をバラ巻き、着ぐるみのように自律気弾を()()事で自分自身も気の偽物に擬態。同時に自分がいた場所には気の分身を被せた偽物を残し、クウラがそちらを攻撃するように誘導したのだ。

 この好機を逃すまいと、次々とクウラの上にカチカッチン鋼を重ねていく。

 その重量も一つ一つが十万トンを超え、全て合わせれば超サイヤ人4のターレスですら満足に身動き出来なくなるレベルだ。

 まるでテトリスのように隙間なくカチカッチン鋼で埋め尽くし、クウラを圧殺しようと積み上げていく。

 だがクウラもそう簡単にやられてくれない。ビッグゲテスターの床に穴を開けて容易く脱出し、一度宇宙を遊泳してから再びビッグゲテスターへ突撃した。

 壁を貫いて飛び込んで来たクウラの拳を避けるが、クウラはリゼットのドレスのケープ部分を掴む。

 身勝手の極意は本人以外は守らない。そして服を掴まれている状態からではどうしても回避出来なくなり、得意の脱力も難しくなる。

 しかしリゼットは全速力で後ろに飛び、ドレスが破れるのも構わず脱出した。

 クウラの手元にはケープ部分だけが残り、リゼットは肩を露出した姿となるが今更気にした様子はない。

 更に靴を脱ぎ棄てて裸足となり、全ての枷を外す。

 怨敵の本気の本気を前にクウラも気分を高揚させ、高笑いをあげた。

 

「フハハハハハハハッ! 愉しませてもらえるぜ!」

 

 笑いながら、クウラの左眼から火花が上がった。

 クウラはリゼットに手を翳し、気弾を連射する。

 リゼットもそれに合わせて気の剣を出現させ、気弾を全て迎撃した。

 正面からぶつけては威力で劣るリゼットの剣は一方的に打ち消されてしまう。

 だから剣の一本一本の全てが角度を変え、クウラの気弾を逸らしてリゼットへ向かわせない。

 続けてクウラは虚空に指を翳し、巨大な気弾を生み出した。

 かつてリゼットとの戦いでも使用したスーパーノヴァが三つ浮かび、リゼットも迎撃の為に同じく虚空に指を掲げて巨大な白い気弾を生み出した。

 だがこのままぶつければ戦闘力差で負けるのは目に見えている。

 故に再び光輪がスパークを撒き散らしながら回転し、外から気を取り込んで威力を増幅させた。

 

「ぐ……っ」

 

 リゼットの顔が一瞬苦悶に歪む。

 自らの実力以上のものを出すというのは負担も大きい。

 その負担の受け皿として背中の光輪があるが、それでも気弾を生み出す際はどうしてもリゼット自身の身体を通さなければならない。

 そこまでしてようやくスーパーノヴァと同威力の巨大気弾を三つ生成し、正面からスーパーノヴァにぶつけて相殺した。

 その爆煙の中でリゼットとクウラが同時に接近し、互角の攻防を繰り広げる。

 クウラの攻撃はリゼットに当たらず、リゼットの攻撃はクウラに通用しない。

 ならばクウラはいかに攻撃を当てるか。リゼットはいかに攻撃を通すかがこの戦いの行方を左右する。

 攻防の最中、リゼットの足の指がクウラの指を掴んで、クウラ自身の力を利用して床へ叩き付けた。

 クウラはすぐに立ち上がるが、その顔をリゼットの裸足が踏み付ける。

 

「貴様ァ! このクウラ様を足蹴に!」

 

 屈辱と怒りでクウラが拳を上に振るうが、当たらない。

 自分の真上の相手への攻撃手段というのは驚くほど少ない。

 精々拳を突き出すか、気弾を撃つかくらいだろう。

 リゼットはまるでクウラの顔で足踏みをするように蹴りを放ち、クウラを翻弄する。

 クウラの身体を足場代わりとした連続ストンピング! 地面に着地する事なく一方的に蹴り続ける空中殺法にクウラは手も足も出ない。

 今のクウラは攻防速、全てが高次元で纏まっていてバランスがいい。そのバランスのいいクウラが一方的に、まるで赤い配管工の無限残機UPの踏み台として踏まれ続ける亀の如く翻弄されている様からも、この空中殺法の効果の高さが窺えるだろう。

 しかしクウラにはここからでも使える技があった。

 ピピピピピ……という音が響き、リゼットのいる座標がロックオンされる。

 ――爆発。だがリゼットは身勝手の極意によってロックオンバスターすら回避して跳躍……後方回転して着地し、一瞬で接近してクウラの胸に手を当てた。

 同時に危機を察知したクウラは反射的に腕を挟み込む。

 

浄化(はかい)!」

 

 クウラの腕が光の粒子に分解され、破壊は腕から肘へと伝わっていく。

 破壊玉は通用しなかったが、直接触れての破壊ならばかろうじて通じる。

 だがクウラは肩に届く前に腕ごと切断し、すぐに修復を始めた。

 クウラの頑丈な装甲を通して致命傷を与えられる技は少ない。

 その数少ない有効打の一つが『破壊』だ。

 だがクウラもそれは承知の上だ。故に『破壊』だけは受けてくれない。

 クウラが指先を向けてデスビームを連射するが、リゼットは全弾掠りながらも回避した上でバックステップで距離を空けた。

 

「HEROES・GOD MISSION!」

 

 リゼットの周囲に、彼女を守るように複数の分身リゼットが顕現した。

 その戦闘力はリゼット本人には劣るが、それでも神レベルだ。

 特に今回の分身は攻撃力に限れば、オリジナルのリゼットにむしろ匹敵していると言える。

 分かりやすく言えば、ヤムチャの使う繰気弾がヤムチャのパンチ以下の攻撃力と言う事はないだろう。

 ゴテンクスの使うSGカミカゼアタックの威力がゴテンクスの打撃や通常気弾に劣るわけがない。それでは技として欠陥品もいいところだ。

 リゼットの使う自律行動気弾も本質的にはそれらと同じものなのだ。

 分身リゼットがクウラを囲んで四方から同時攻撃を加えるも、クウラの装甲を抜くには至らない。

 

「舐めるな! メタルクウラを使わずとも、対抗する術などいくらでもあるわ!」

 

 だが所詮は気で創り出した分身。より巨大な気をぶつければ霧散するのが道理だ。

 クウラは全ての分身リゼットを同時に照準に入れてロックオンバスターを乱射した。

 ビッグゲテスターの高度な演算能力をもってすれば、敵がいくら増えようと物の数ではない。

 クウラの周囲が連鎖して爆発し、分身を消し飛ばしていく。

 その最中に身勝手の極意でロックオンバスターを回避した本体を発見して接近した。

 またしても自律気弾を着て偽物の中に紛れ込もうとしていたようだが、それはもう学習した。二度は通用しない。

 

「あの妙な技(身勝手)は分身には使えんようだな!」

「くっ……!」

 

 クウラが殴りかかると同時にリゼットが自律気弾の背中から飛び出して退避。残された自律気弾が爆発した。

 爆煙から飛び出したクウラが懲りずに拳打の嵐を放つが、これは当然のように全て回避される。

 だが無意味ではない。

 身勝手の極意は攻撃を勝手に避けるが、避ける為の体力まで与えてくれるわけではない。

 いや、本来ならばそれも与えてくれるのだろうが、リゼットはその能力をオミットしてしまっている。

 そして現状、クウラとリゼットの実力差は大きく開いており、つまりはそれだけの差がある相手の攻撃を避け続けているという事……実力以上の動きを強要され続けているという事だ。

 だがそれ以上にリゼットを追い詰めているのは、クウラの学習能力であった。

 

「く……っ!?」

 

 クウラの拳がリゼットの回避を上回り、避けた先に繰り出される。

 咄嗟に受け流すが、それだけの事でリゼットの腕の骨に罅が入った。

 クウラはビッグゲテスターの高度な解析能力により、リゼットの動きをリアルタイムで分析し、追いついている。

 パワーでは勝っている、装甲も負ける要素がない。

 ならば後は技術で上回ればチェックメイトだ。

 リゼットは既に限界を超えた動きを強要されており、スタミナも尽きようとしている。

 一方でクウラはますます速度を増し、角や足、肩がショートして火花を散らし続ける。

 リゼットは攻撃の合間を縫ってクウラの腕に触れ、『破壊』で強引にもぎ取った。

 更に断面に創造した剣を突き立て、そこから気を流し込む。

 

「ぐおおおっ!」

 

 クウラの目や口から気が逆流し、身体中がショートを起こした。

 だがそれでもクウラは止まらない。

 彼の蹴りがリゼットに迫り、リゼットは跳躍してクウラの頭の上に乗った。

 それから足の指でクウラの角を摘まんでバランスを取り、もう片方の足がクウラの目へ突き刺された。

 無論クウラは眼球までメタルである為、これで失明などしない。しかし一時的に視界を塞ぐ事は出来る。

 腕を再生させたクウラが頭上で両拳を合わせるようにするが、リゼットはそれより早く飛び降りていた。

 そして両腕を上げたクウラの目に指をめり込ませ、神の気を解放する。

 

浄化(はかい)!」

 

 咄嗟に身をよじったクウラの頭が半分ほど消滅し、光の粒子となる。

 今ので確実に脳にもダメージが入ったはずだ。

 いや、というより普通に考えれば脳の一部が破壊された時点で勝負ありである。

 これ以上動けるわけがない。

 だが彼はかつて脳だけで宇宙空間を漂い、それでも生き延びた超生命体クウラだ。常識で考える事は出来ない。

 崩壊しつつある身体のあちこちからコードが飛び出し、リゼットの腕に絡みついた。

 身勝手の極意の自動回避が間に合わず、すぐに気を纏う事でコードを強引に千切って脱出するもその次の攻撃への対処が間に合わない。

 クウラの拳が遂にリゼットを捉え、小柄な身体を吹き飛ばした。

 

「かふっ……」

 

 何とか脱力をして威力を流すも、それも完全ではない。

 ビッグゲテスターの壁に叩き付けられ、力なく床に落ちる。

 それでも何とか立ち上がるが、ここまでの戦いによる消耗と今のダメージで力なく倒れ込んでしまう。

 このままでは不味いと、自らに治癒の術をかけようとする。

 そこに無情のロックオンバスター。リゼットの目の前で空間が爆発した。

 

「ああああぁああぁっ!」

 

 悲鳴をあげ、爆発によって吹き飛ばされたリゼットが宙を舞い、床に叩きつけられる。

 一瞬の隙が命取りになるクウラとの戦いの中では、回復しようとする動きすら相手の攻撃の起点となってしまう。

 リゼットは迂闊さの代償を支払い、回復どころか逆に更なるダメージを負ってしまった。

 何とか意識を保ってはいるが、ダメージが深すぎてすぐには動けない。

 だがそれはクウラも同じだった。

 首の修復をしながらも身体のあちこちから火花を放ち、修復しているはずなのに手や足からコードが飛び出している。

 オーバーヒートだ。強すぎる力の代償に、クウラは機能不全寸前に追い込まれていた。

 脳を半分削られてしまったせいで処理が間に合わず、強すぎる力が暴走を始めて制御不能に陥っている。

 クウラはビッグゲテスターの性能の限界を超えてしまったのだ。

 彼の持つ圧倒的なパワーは彼自身のボディのみならず、ビッグゲテスターまで自壊させてしまう。

 リゼットを倒す為だけに生身の肉体を捨てた弊害が、ここにきて出てしまっていた。

 

「ハァー! ハァー! ま、まだだ! 貴様を殺すまで! 俺は死なん!」

「……あ、ぐ……ま、だ……!」

 

 クウラが自壊しながらも執念と憎悪を原動力に奮い立ち、リゼットも傷付いた身体に鞭打って立ち上がる。

 どちらも限界が近い。だが先に動いたのはやはりクウラであった。

 

「リゼェェェェェット! まだだあああああ!」

 

 クウラが魂からの叫び声をあげ、リゼットに襲い掛かった。

 リゼットも震える身体で迎え撃つが、その動きには先程までのキレがない。

 クウラとリゼットの間で数百数千の攻防が繰り広げられ、どちらも限界が近い中で意志の力だけで戦闘を続行する。

 もう身勝手の極意を維持する事も出来なくなったリゼットの右腕がクウラの拳で砕かれ、クウラの左肩がリゼットの破壊で消滅させられる。

 それでも止まらない。クウラがリゼットの胸に足を乗せ、そのまま体重をかけて彼女を押し倒して一気に力を込めた。

 身体の骨が砕かれる嫌な音が響き、だがリゼットは吐血しながらもクウラの足に手を添えて破壊する事で彼の足を消し飛ばした。

 

「ぐ、あ……ア、ギ……ま、まだ……だ……! まだ終わらないいいい!」

「……ええ……まだ……です」

 

 クウラの全身がいよいよ崩壊を始め、火花が強くなる。

 リゼットも吐血混じりに戦闘続行の意思を示し、幽鬼のように立ち上がった。

 自壊と自己修復を繰り返しながら襲い掛かるクウラを前に、景色がスローモーションのようにゆっくりと流れる。

 続けて、これまでに歩んできた道と仲間達の顔……遠い過去にあの世の住人となった両親の顔が脳裏に蘇る。

 あ、これ、走馬灯現象……。

 そう思うや、リゼットはスローモーションの世界で過去の幻影を振り払って現在(いま)を見る。

 今は死を前にして思い出に耽っている時ではない。

 死んでもこの宇宙最大の脅威を倒すために死力を尽くすべき時だ!

 殻を破ったような感覚と共に意識がクリアになり、全てがスローモーションの世界へ誘われた。

 もう身勝手の極意は使えないし、この傷付いた身体で身勝手の極意を使っても回避出来ない。

 ならば自分で何とかするしかない。

 

 しかしいくらスローモーションになろうと、いくら意識がクリアになろうとダメージが消えるわけではない。

 それにこの状態も長続きしないだろう。これはあくまで、死を前にして偶然引っ張り出す事に成功した僅かな底力……予備電力のようなものだ。

 これではまだ、クウラの執念に届かない。残念ながら認めるしかない……クウラの勝利への執念は完全に、今のリゼットを超えていると。

 悟空やベジータならばここから、限界の壁を破って覚醒の一つや二つもするのだろうが、リゼットにその引き出しはない。

 怒れば超サイヤ人に変身したり、壁を超えて2や3になったり、神の力と合わせればゴッドやブルーやその先に至ったり……そういう秘められた底力は正直何度も羨んだし、ずるいと思った。

 しかしリゼットは同時に思う……きっと自分がサイヤ人ほど戦いの能力に恵まれていたならば、ここまで来る事は出来なかっただろう、と。

 弱くて脆い地球人だからこそ、創意工夫を凝らして、持っている武器を必死に使って、だからここまで来る事が出来た。

 ――刃物を持った相手は、刃物しか使用(つか)わない。

 強力すぎる武器は、心の甘えと依存を招く。

 リゼットがもしサイヤ人だったのなら、その特性を十分に使い倒しただろう。

 瀕死からの強化を繰り返し、自らに暗示をかけて怒りによる超サイヤ人への覚醒も容易くやってのけただろう。

 今ほど身体の脆さに悩まされなかっただろうし、サイヤ人のいくらでも湧き出る底力に依存(たよ)っただろう。

 ……そして今ほど技に熟達(たよ)る必要がなくなり、武の研鑽を怠っただろう。

 そうして辿り着いた強さはきっと、ただの孫悟空の劣化コピーになっていた。

 

 ただの村娘のリゼットから始まったからこそ、今ここにいる。

 悟空達とは違う強みを得て、彼等と肩を並べて戦う地球の神リゼットとして、ここに立っている。

 ならば羨むな、競うな――持ち味を活かせッッ!!

 窮地に追いつめられても突然戦闘力は上がらない。覚醒なんてない。

 金髪にならないし、赤髪にも青髪にもならない。

 サイヤ人のようにいきなり、何もない場所からジョーカーを引く事は出来ない。

 今持っている手札を組み合わせて戦う以外に道はない。

 それでもあえて言うならば、この土壇場における膨大な手札の組み合わせこそがリゼットなりの覚醒とでもいうべきだろう。

 

「くたばれええええ!」

 

 目前まで迫ったクウラが渾身の拳打を放った。

 回避は間に合わない。防御しても貫かれる。

 まさに絶体絶命……もはや勝負あったとクウラが確信し――

 

 ――クウラの拳が、リゼットを外して宙を貫いた。




【ゴールデンメタル→プラチナの上昇率が低かった原因】
別に低くない。
普通のゴールデンとの間にゴールデンメタルを挟んで小刻みに上昇したから低く見えるだけで普通のゴールデンクウラと比較した場合は数十倍の上昇を果たしている。

【クウラの強さについて】
実は最大パワーは300兆ではなく、もっと上。
……なのだが、ビッグゲテスターの方がクウラのパワーに耐えられなかった。

ビッグゲテスター「クウラはん、堪忍や……堪忍やで……それ以上パワーを上げられたらワイが持たんのや……」
クウラ「なにぃ!?」
SORYANAIYO!


【なんで脳を半分削られて生きてるんですか?】
クウラだから。
フリーザなんて頭含めてバラバラの状態で蘇生されても生きてたんだし、弟に出来て兄に出来ないはずがない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。