ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
ミラの腕から抜け、スカートについた汚れを軽く払う。
それから今度はしっかりと脚を地に付け、行きたくないと駄々を捏ねる我が身に活を入れた。
こんなものが視えてしまった以上、恐らくこの先に行けば無事では済まないのだろう。
待っているのは死か……そうならないにしても、余力が残る事はないと考えていい。
少なくとも、クウラの後にコアエリアの戦士とやらを相手にするだけの力は残らないだろう。
「ごめんなさい、悟空君。いきなりですが前言を撤回させて下さい。
無理は禁物、そう分かっていると言ったばかりですが……今回ばかりは、無理をします」
「……神様」
「きっと、この戦いが終わった後に私に余力は残らないでしょう。
そして、その隙を敵は必ず突いてきます。
だから……コアエリアの戦士との戦いは貴方達に任せていいですか?」
リゼットは真剣な眼差しで悟空を見る。
悟空も彼女のその瞳に、決死の覚悟を見た。
だから静かに頷き、せめてリゼットが後の事を気にせず戦えるように送り出す。
「分かった……コアエリアの戦士っちゅう奴等はオラが倒す」
悟空のその頼もしい言葉にリゼットは柔らかく微笑む。
「ありがとう、悟空君……貴方がいてくれるから、私は前だけを向いて戦える」
クウラを倒しても、今回の争乱は終わらない。
必ず次の危機がやって来る。
しかしリゼットは、そちらに回す余力はないと割り切る事にした。
大丈夫……後ろには孫悟空がいる。彼がいてくれるならば、自分は全ての力をこの一戦に費やすことが出来る。
そう決意し、表情を引き締めて前を向いた。
まずはあのメタルクウラ軍団を突破し、ビッグゲテスターへ突入する。
転移の類はバリアで防がれるだろうから、やるのは愚直な一点突破だ。
圧倒的な力でメタルクウラ軍団を蹴散らし、ビッグゲテスターに穴を開けて入り込むしかない。
「行きますよ、ミラ」
「ああ」
リゼットの背中の光輪が爆発したように輝き、飛翔と同時に一気に加速した。
その後をミラが続き、無数のメタルクウラが反応するよりも早くビッグゲテスターとの距離を縮める。
奥の方に控えていたメタルクウラ達が迎撃の気功波を一斉に発射するが、リゼットは回避する素振りも見せない。
気功波の前にミラが飛び出して両手を広げる事で全て吸収し、己の力へと変換……それと同時にリゼットがビッグゲテスターへ突撃した。
「ヒルデガーン!」
リゼットの呼びかけと同時にヒルデガーンが一瞬実体化し、リゼットが幻魔人の拳に己の気を纏わせて出力を上昇させる。
後押しを受けたヒルデガーンが拳を叩きつけてビッグゲテスターの外壁を破壊した瞬間にリゼットは宣言通りに穴を開けて中へと飛び込んでいった。
その後をメタルクウラ達が追おうとするが、それを許さない為にミラがいる。
「電撃地獄玉!」
本来の世界線であれば超17号と呼ばれる戦士が使うはずだった大技を放ち、メタルクウラ達を蹴散らした。
それから神殿とメタルクウラ達に両手を向け、魔術を行使する。
「二度と使う事はないと思っていたが……」
ミラが使ったのは、トワが得意とした強化・凶暴化魔術だ。
魔術をかけられた相手の力を高め、そして凶暴化させる。
この力を使う事で、かつてトワは様々な時代をかき乱して来た。
その力は今や、トワを取り込んだミラのものとなっている。
悟空達の身体が黒いオーラに覆われて力が増し、しかし以前のような凶暴化はない。
純粋に力をブーストさせる為だけのものだ。
一方メタルクウラの方は凶暴化効果のみを与えて暴走からの同士討ちをさせようと思ったが……駄目だ。暗黒魔界と戦っていただけあって既に対策済みだ。
しかしこれで少しは戦況もマシになるだろう。悟空達の力が高まったのを見届けたミラはすぐにリゼットの後を追ってビッグゲテスターへ飛び込む。
するとリゼットが読んでいた通りに、突入から間を置かずにビッグゲテスター内部からのロックオン・バスターによる狙撃が始まり、光の軍勢が目に見えて減り始めた。
「我等も行くぞ!」
「は、はい!」
戦況が動いたのを見て、神殿から四星龍と21号が出撃した。
四星龍は七つのドラゴンボール――だった石を取り込んだ超四星龍とでも言うべき姿になっており、21号も最初から戦闘形態へ移行している。
超四星龍は最も多くメタルクウラが密集している場所へ飛び込むとその場で獄炎のフィールドを発生させて閉じ込めた。
本来の歴史では不発にこそ終わったが、もし決まってさえいれば遥か格上のはずの超一星龍すら葬ったと言われる彼の究極技『バーニングスピン』だ。
超四星龍の表面温度が太陽の表面温度6000℃ならば、このバーニングスピンは太陽の内側に敵を閉じ込めるようなもの。
爆発時の温度は太陽の中心温度1600万℃にまで達する。
かつてクウラはリゼットとの戦いにおいて、太陽に押し付けられる事で敗北した。
そして今再び、彼は太陽によって滅却されるのだ。
「バーニングスピン!」
超四星龍の掛け声と同時に超新星爆発の如き大爆発が起こり、内部のみならず外側にいたメタルクウラ達までもを諸共に焼き尽くしていく。
それでいて超四星龍自身は全くの無傷であった。
当然だ。太陽そのものと言っていい彼が太陽熱でダメージを受けるわけがない。
再び彼は別のメタルクウラが密集している場所に突撃すると、同じように炎のフィールドに閉じ込めた。
今の彼はそのスピードと相まって、まさに高速で動き回る太陽だ。
この熱から逃れる術などない。
いずれアップデートにより対応されてしまうだろうが、それまでに一体でも多く破壊する!
「ご、ごめんなさい!」
21号は両手を広げ、十の指先から次々と光線を発射してメタルクウラをお菓子へ変えていた。
当たれば格上だろうが何だろうが問答無用でお菓子に変えてしまうこの技は凶悪だ。
余りに実力差がありすぎるとお菓子にしても平然と動き回る可能性もあるので決して勝ち確定の技というわけではない。
別の歴史においては魔人ブウが不用意にベジットをコーヒーキャンディにした結果、宇宙最強の飴玉となった彼に逆襲されたという事もある。
しかしこの問題に関しては事前にリゼットより対処法を聞いており、21号は忠実にそれを実行していた。
なまじ頑丈な飴玉などにするから逆襲された時に困るのだ。
ならば当たっても痛くない綿飴や、ソフトクリームにしてしまえばいい。
これならば仮にお菓子に変えた後に相手に自我が残って逆襲されても、恐れるには値しない。
仮に体当たりなどすれば潰れるのは向こうの方だ。
尚、こうしてお菓子にしたメタルクウラだが、味はとても酷いものだった上に生物ではない完全な機械だったせいで食べても戦闘力の向上は見込めなかった。
それでも実質即死のこの技ならば、メタルクウラだろうと倒してしまえる。
とはいえ、何せ数が数だ。
超四星龍と21号をもってしても全てのメタルクウラを相手取れるわけではない。
何体かは神殿へと近付いてしまっている。
だが神殿へ接近したメタルクウラが見たのは、その外周部分の先端で背中合わせになるようにしてこちらに半身を向ける二人のサイヤ人の姿であった。
「くくっ……団体さんのお越しだ。そんじゃ丁重にお出迎えしてやるか……なあ、カカロットよ」
「ああ。いっちょやってみるか」
悟空とターレスは瓜二つの顔で同じように不敵に笑う。
ターレスは両手を合わせてボキボキと関節を鳴らし、悟空は開いた右の掌に左の拳を軽くぶつけて闘志を高めた。
そして同時に変身――ターレスは野生を極限まで解放した超フルパワーサイヤ人4となり、悟空は外見がほとんど変化する事なく、眼だけが銀色に変化する。
神の御業である『身勝手の極意・兆』だ。
身勝手の極意は敵の攻撃を回避するだけではなく、身体を強くするという効果もある。
肉体が弱ければこの強化に耐えられずに自滅してしまうが、今の悟空は身勝手の極意を使っても自滅しないだけの強さを手に入れていた。
異なる進化を果たした二人のサイヤ人が同時に飛び出し、メタルクウラ軍団と衝突し、次々と破壊する。
ターレスはあくまで力任せに、暴力的に。
悟空は洗練された技と動きで。
方向性は正反対だが、しかし二人は阿吽の呼吸で完璧な連携を見せて銀色の侵略者を跳ね返す。
その更に奥……神殿の屋根の上で額に指を当てて気を集中しているのはセルであった。
「ようこそ、諸君。早速だが私の歓迎を受けて貰おうか」
挑発するようにキザな言い回しをし、指先から限界まで気を集めた魔貫光殺砲を発射した。
放たれた魔貫光殺砲は容易くメタルクウラの頑強なボディを貫き、更に軌道を変えて別のメタルクウラを次々と貫いていく。
最大までチャージした魔貫光殺砲は自身の数倍の強さを持つ相手だろうと容易く貫通し、死に至らしめる。
だがこれだけではメタルクウラは死なない。すぐに再生してしまう。
故にセルの攻撃もこれで終わりではない。メタルクウラが動きを止めるのを待っていたように物陰から飛び出したのは四身の拳で分裂した三体のセルだ。
気円斬。気功砲。そして兎人参化の人参変化。
格上殺しの技を駆使し、弱ったメタルクウラを次々と葬っていく。
そして攻撃はまだ続く。
「ぶるああああああ!」
セルが黒い気を解放し、体色が今までの明るい緑色から黒に近い深緑へと変わった。
フリーザの細胞を獲得したセルはこれまで、フリーザ同様に黄金の気を発する変身を可能としていたが、この変身はこれまでのものとは違う。
元の時代に帰還してから経験した様々な戦いと、タイムパトローラーとしての経験はセルを新たなステージへ押し上げていた。
その果てに得たのが、この黒い変身だ。
恐るべきはフリーザの細胞か。まだ先があったなどとは、セルも思いもしなかった。
だが今思えば、その考えこそが己の成長を止めていた原因だったのだ。
力の大会の時、一度は自分はもう強くなれないと思った。ここが限界だと勝手に自分で可能性を諦めた……何という不真面目!
見よ、限界など自分で決めない限りどこにもないのだ。
「あいつ……!」
「流石だなあセル……こりゃあオラ達もうかうかしてらんねえぞ!」
戦友の今も止まらない成長と進化にターレスと悟空が嬉しそうに笑った。
彼等の見ている前でセルは次々とメタルクウラを破壊し、獅子奮迅の活躍を見せ付ける。
「キキーッ!」
知性を感じさせない奇声を上げて両手を上空へ向けているのはセルジュニアだ。
セルにより生み出された即席戦力であるセルジュニアは単純な強さだけを言えばセルの数割程でしかない。しかもゴールデン化もブラック化も出来ないというオマケ付きだ。
ハッキリ言ってとてもこの戦いについてこれるレベルではないだろう。
しかしセルジュニアはセルの持つ技のほぼ全てを継承している。
そして今、彼が使っているのは術者本人の力量とは無関係の大技……元気玉だ。
今ここには、戦闘に参加する事は出来ないが数だけは揃えた『永遠の美』の構成員達がいる。
一人一人はメタルクウラから見れば塵も同然の戦力に過ぎないが、全てのパワーを集めればメタルクウラにすら届く力となる。
そして元気玉は本来は邪悪な心の持ち主には使えない技だが、このセルジュニアに邪心はない。
セルがあえて邪心を持たないように調整して生み出した特別製の個体だ。
だからこそ、元気玉も問題なく使う事が出来る。
「ウキャー!」
セルジュニアが元気玉を投げ、それが神殿に近付いていたメタルクウラ達を押し返した。
更にバーダックもメタルクウラと渡り合い、一瞬の隙を見てダブルスレッジハンマーで叩き落とす。
続けて次のメタルクウラに突撃し、白い気を纏った拳で破壊した。
今のバーダックは、外見だけは平常時とほぼ変わらない。
だがその全身は、身勝手の極意に似た白いオーラに包まれていた。
「父ちゃん……それは……変身なのか? 身勝手の極意じゃねえよな?」
「さあな、俺にも分からねえよ。ただ身勝手の極意って奴じゃねえ事だけは確かだぜ。
ありゃあ心を静かにして戦うんだろ。だったら俺のこれは違う」
バーダックは不敵に笑い、拳を固める。
「俺はいつだって"勝つ事"だけを考えている。その闘志が俺に力をくれる……それだけだ!」
猛々しく吠え、バーダックがメタルクウラの群れに突撃した。
驚くべき飛躍を遂げた戦士達だが、それでも、メタルクウラは容易な相手ではない。
倒しきれなければパワーアップして再生し、戦況を悪化させてしまう。
現に今も何体かの仕留めきれなかったメタルクウラが復活し、今まで以上の力で襲い掛かってくる。
ターレスが殴り飛ばされ、高速移動からの奇襲でセルジュニアが粉々にされる。
ロックオンバスターで光の戦士が消し飛ばされ、バーダックの腹にメタルクウラの鋼鉄の拳がめり込んだ。
しかし今の悟空達もまた、普段とは違う。
かつては魔人ブウを増殖させるという離れ業すらやってのけたトワの魔術が戦士達を後押しし、彼らの力を飛躍的に高めている。
「く……ククク……この俺があいつの術に助けられるとはなあ!」
バーダックが渾身の一撃で目の前のメタルクウラの頭部を殴り壊し、追い打ちの気功波で消滅させた。
少し不満そうに、そしてどこか愉快そうに言いながらも、今するべき事は分かっている。
タイムパトローラーは本来この戦いに加わるべきではない。
だがクウラが滅ぼし、養分へと変えてしまった暗黒魔界こそは彼等の本来の敵なのだ。
言うまでもなくフューのエネルギーもクウラに加算されているだろう。
つまりクウラがここまで強くなってしまったのは暗黒魔界とフューのせいだ。これもある意味歴史改変の一つと言えるだろう。
タイムパトロールにクウラと戦う責任と使命などない。クウラはこの時代に元々存在しているのだから、放っておくべきだ。
だがこのまま終わらせるのはバーダックもセルも納得がいかない。
……いや、そんな建前などどうでもいい。
バーダックを突き動かしているのはもっと別の、個人的でどうでもよくて、しかしだからこそ強い思いだった。
獲物の横取りをされた。
だから気に入らない。
獲物を目の前で取られて怒らない肉食獣はいない。それだけだ。
「なるほど、まずは流石と言ってやろう」
「しかし無駄だ。お前達が今、必死の思いで破壊したメタルクウラは精々百体程度」
「しかし俺は何十万と存在する」
「お前達にこの俺を倒す事など無理なのだ」
カシャン、カシャンと足音を立てて新たなメタルクウラの群れが神殿に侵入した。
全く嫌になる、絶望的な光景だ。
だがこの場にいる戦士の誰一人として絶望などしていない。
悟空もバーダックも、ターレスもセルも、21号と四星龍もただ勝利のみを信じ、メタルクウラを迎え撃つ。
「そうかもしれねえ……けど、無理と分かっていても、やんなきゃなんねえ時だってあるんだ」
悟空が先頭に立ち、静かな瞳でメタルクウラを見据える。
メタルクウラは黙ってその視線を受け、そして生意気なサイヤ人への苛立ちを募らせた。
「……猿が。ムカつく野郎だ」
それだけを言い、メタルクウラが一斉に動き出す。
同時に悟空達も飛び出し、戦いがますます激化した。
★
今の所、悟空達は順調にメタルクウラを迎撃している。
だがそれも長時間はもたないだろう。
何せメタルクウラの数が数だ。
それに光の軍勢が全滅すれば、メタルクウラのロックオン・バスターが次に牙を剥くのは悟空達だ。
そうなる前に何としてもリゼットがクウラ本体を倒す以外に勝ち筋はない。
そして向こうもきっとその程度は予測している。だからビッグゲテスターに入ってからが本番で、以前の戦いの時同様に激しい抵抗を受けるとリゼットとミラは思っていた。
「おかしい……静かすぎる」
「ああ……迎撃のメタルクウラの一体すらいないとはどういう事だ?」
ビッグゲテスター内部を進み、感じられるクウラの気が近付いて来る中リゼットの胸中にあったのは戸惑いであった。
中に入ってからここまで、一切何の妨害も受けていないのだ。
そればかりか『どうぞこちらです』と言わんばかりに分かりやすく道が用意され、リゼットを通している。
罠……? 進んだ先に大量のメタルクウラが配備されていて物量で押し潰す作戦か?
そう思うも、ビッグゲテスター内部には本体らしきクウラの気以外何も感じる事が出来ない。
だがクウラが何の侵入対策も施していないとは考えられない。
事実、ビッグゲテスターに入ると同時にミラは凶悪化の魔術が使えなくなってしまった。
量産型に無効化された時点で薄々わかっていたが、やはり魔術対策はばっちりというわけだ。
つまり、いきなりパワーアップ手段の一つを無効化されてしまった事になる。
やがて二人は開けた空間に到達し、その中央で佇む一人の男を目にした。
「来たか……待っていたぞ」
そこにいたのは銀色の男であった。
量産型のメタルクウラとほぼ同じ外見で、かろうじて違いがあるとすれば左目が空洞となっていて、中央で赤く光を放っている事くらいか。
だが、
感じられる気の圧力……背筋が冷えそうなあの眼……そして何より理屈抜きに感じられる存在感。それらが彼こそオリジナルのクウラであると雄弁に伝えてくれる。
その彼の後ろから無数のメタルクウラが出現し、リゼットとミラは身構えた。
「なるほど、気を消して潜んでいましたか……あえてここまで通したのは残りの戦力全てと本体とで私達を叩くつもりだから……」
「勘違いするな、こいつ等は貴様とは戦わん。これは邪魔な奴を排除する為に残しておいた保険だ」
そう言い、クウラはミラを心底疎ましそうに睨んだ。
それからリゼットへ視線を戻す。
「貴様だけでいい。このビッグゲテスターへ来るのは貴様一人でいいのだ。
俺の望みは一つ……俺自身の手で貴様を完膚なきまでに叩きのめし、葬り去る事。
二度も余計な奴に邪魔はさせん」
クウラが言っているのは、以前の戦いの時の事だろう。
ナメック星で戦った時、クウラは後一歩でリゼットを地獄の道連れに出来るはずだった。
だがそれはクウラが全く予期していなかったセルというイレギュラーによって阻まれ、彼は敗北の屈辱を味わう事となったのだ。
「では、罠も何もないと? 正真正銘、貴方一人で私と戦うと……そういう事ですか?」
「そうだ。そうでなければ俺のプライドを取り戻す事は出来ん」
ギリ、とクウラの握り拳から音がした。
表面上はクウラは冷静に見える。
だがリゼットは、彼の氷の眼差しの奥に沸々と煮え滾る憎悪が隠れているのを感じた。
「俺のプライドは地に堕ちた。同じ相手に二度も負けるというこの上ない屈辱……。
その汚点を拭い、俺は失われた最強としてのプライドを取り戻す」
カシャ、と硬質な音を立ててクウラが一歩前へ踏み出た。
それからゆっくりと両手を広げ、フリーザも好んだ独特の構えを取る。
「全てはその為の下準備だった……このビッグゲテスターも多くのメタルクウラも……暗黒魔界やフューを始末した事すら、全てはこの時だけの為。
貴様と一対一の場を作る事……その上で勝利する事。
そうする事で初めて、俺は俺を取り戻せる」
勝利するだけならばきっと、クウラにはまだ他に手があったのだろう。
少なくとも一対一に拘る必要はなかった。
極端な話、真っすぐリゼットに向かわずにメタルクウラを宇宙のあちこちにバラまいて人質を取る事だってクウラには出来たのだ。
そうすればリゼットも無論対策の十や二十くらいは打ち出し、場合によってはドラゴンボールだって躊躇なく使って全力で防いだだろうが、少なくとも今よりは断然やり難かったのは間違いない。
このビッグゲテスターに罠を仕掛けてもよかった。多くのメタルクウラで弱らせてもよかった。
だがそんな真似をすれば、そうしなければ勝てないと自ら認めているも同然……。
どんな言い訳をしようと、どれだけ勝ち誇ろうと、自分だけは誤魔化せない。
『もしかしたら本気で正面から戦えば俺は奴に勝てなかったのでは?』、『俺は本当に最強なのか?』……そんな心のしこりがきっと残る。
そればかりか、実力以外で勝利してリゼットを殺してしまえば最後、リゼットはクウラの中で永遠に『実力で勝てなかった相手』となってしまう。
二度と勝てない相手として神格化される。未来永劫、届かぬ頂となる。
……許せるものか!
そんな存在がいるなど、決してクウラは認めない。
一点の濁りもなく、言い訳の余地もなく、完全に完璧に勝利する。
そうする事で初めて、地に堕ちたプライドを取り戻せるのだ。
「お喋りはここまでだ」
話を打ち切り、クウラの気が爆発的に上昇した。
銀色だった全身がフリーザのように黄金に輝き、その気の圧力にリゼットの額から汗が流れる。
空洞の左目が鈍く輝き、そして剥き出しの殺意がいよいよリゼットに牙を剥こうとしていた。
【戦闘力】
・孫悟空(身勝手・兆+凶悪化):87兆3600億
・21号(セルジュニアモグモグ+凶悪化):65兆
・超四星龍(凶悪化):65兆
・ターレス(凶悪化):53兆5000億
ミラによるバックアップを受けた悟空達。
凶悪化といっても今回は戦力の向上効果のみで精神への影響はない。
21号は性格が変わってないが、これはメタルクウラがあまりに不味そうだったので食欲が表に出たがらないから。
・超フルパワーバーダック:44兆
凶悪化:57兆
漫画版で登場した謎の変身(あるいは界王拳のような技?)を使用したバーダック。
もしかしたら悟飯ビーストに近い何かなのかもしれない。
このSSではアルティメット化+大猿パワーとの合わせ技で実質超フルパワーサイヤ人4として扱う。
・セル:2500億(超サイヤ人相当)
フルパワー(超サイヤ人3相当):2兆
ゴールデンセル:5兆
ブラックセル:50兆
凶悪化:65兆
フリーザ細胞によりブラック化という新たな変身を獲得した。
おい誰だ、ゴールデン化が最後の強化イベントとか言った奴。
Q、どうしてミラさん、力の大会でこれ(凶悪化)やらなかったの……?
A、自分がこういう事出来るのを知らなかったから。(元々トワの技なので発想自体なかった)
ゴールデンメタルクウラ:100兆
ヒーローズであのカンバーをフルボッコにしたクウラの最新形態。
超3カンバーをボコボコにするほど強いので、当然戦闘力はカンバー以上。
とはいえ、カンバーを倒した後はオーバーヒートして撤退したのでそれほど大差はない。
戦力だけならば今のリゼットが全力で戦えば上回る事は出来るが、何せクッソ固い上に人体急所がないのでクッソやりにくい。
これが全力ならいいのだが……。
ちなみに次章で再登場した際は何故かゴールデンフリーザと同格のような扱いを受けて、フリーザと一緒に雑に蹴散らされていた。
眼もメタルクウラ・コアっぽくなかったし、もしかして量産型……?