ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
『死の銀河』。誰が最初にそう呼んだかも分からないその場所は、かつては多くの人間が暮らす豊かな銀河であった。
そこには様々な惑星があり、惑星の神がいて、そして神に庇護された人々がいた。
神の中には別の宇宙から移住してきたナメック星人もいて、そのナメック星人が生み出したドラゴンボールがあった。
ドラゴンボールの力によって銀河は繁栄し、人々は幸福に暮らしていた。
だが、世界はプラスとマイナスの均衡によって成り立っている。
片方に偏り過ぎれば必ず揺り戻しがあるものだ。
繁栄と幸福の代償――それは、ドラゴンボールより生じた邪悪龍という形で世界に牙を剥いた。
七体の邪悪龍は手始めに発生源の惑星を破壊し、強大なマイナスエネルギーは伝染病のように周囲の銀河にまで感染し、腐敗させ……そして、滅亡させた。
邪悪龍の強大すぎる力は当時の界王神――今は老界王神と呼ばれている彼の力をもってしても手に負えるものではなく、宇宙は消滅の危機を迎えた。
だが宇宙が今も存続しているという事は、邪悪龍は滅ぼされたという事だ。
運がよかった……当時を振り返り、十五代前の界王神はそう語る。
その時はたまたま、珍しい事に
そして酷く不機嫌だった。その時の彼――破壊神ビルスはシャンパとの美味しい物比べで負けたばかりだったのだ。
だからそれは宇宙を守る為というよりはただ八つ当たりに近く、気分転換に惑星を破壊しようと思ったらその惑星を破壊している妙なのが七体いたから、代わりにそれを破壊した。
そうして破壊神ビルスによって邪悪龍の脅威は消えたが、マイナスエネルギーに汚染された銀河にはそれ以降生物が誕生する事はなく……今でも静寂と、かつて惑星があった名残である岩礁だけが存在し続けていた。
その死の銀河で、二つの勢力が今まさに衝突の時を迎えようとしていた。
片や人の科学文明の業が生み出した機械仕掛けの怪物、ビッグゲテスター。
対するは人の身から神へと登り詰めた少女が住まう神殿と、それを護衛するように展開した宇宙連合艦隊。
ビッグゲテスターの周囲には数十万体ものメタルクウラが配備され、その戦力は一体一体全てが神クラスだ。分かりにくければ超サイヤ人ブルーを完成させたベジータが数十万人いると思えばいい。
神殿の周囲も負けじと光の軍勢が展開され、その戦力はメタルクウラに見劣りしていない。
何とも馬鹿げた光景だとザーボンは冷や汗を流す。
信じられるだろうか……合わせれば百万を超えるだろう、この量産兵の全てが他の弱い宇宙――例えば第9宇宙程度ならば単騎で滅ぼしてしまえるなど。
決してこれは比喩表現ではない。事実、異なる時間軸において全宇宙を壊滅状態に追い込んだゴクウブラックを遥かに超える戦力を、この量産兵の全てが保有しているのだ。
そんなものが一斉に衝突してしまえば第7宇宙はどうなるのか……想像したくない。
だが、それが間もなく現実に起ころうとしている。その事実にザーボンは震えた。
「すっげえなありゃあ……思ってた以上だ。どうする? 神様」
「まずは挨拶代わりの先制攻撃を行います。まず、読まれているでしょうけどね」
悟空の問いに対し、リゼットは淡々と答えて宙に浮いた。
背中に光輪が展開され、輪を作るように両手を胸の前に置く。
手の中に光が集束されていき、神の気によって『破壊』の力が付与された。
「……THE BREAKERS!」
リゼットの宣言と同時に手の中から光が放たれた。
数百、数千……数万。
破壊の光は無数に枝分かれし、それぞれが意思を持っているようにメタルクウラ軍団へ襲い掛かる。
一度はメタルクウラ軍団を滅した一撃……それを初手にていきなり発射したリゼットの判断に間違いはない。
だがあの時と違う事がある。
それは、今回はクウラ本人がいるという事だ。
破壊の光が突き進んだ先で、不意にキラキラと光の軌跡が現れた。
――同時に、爆発。破壊光が相殺され、メタルクウラ軍団に届く事なく消し去られてしまった。
爆発はあちこちで同時に起こり、破壊光を一つもメタルクウラへ到達させない。
そればかりか光の軍勢の近くにまで光の軌跡が届き、その前に破壊光が割り込む事で光の軍勢を防御した。
互いに複数の対象を同時に攻撃・防御する事で結果的にはどちらも無傷に終わり、リゼットは予想通りといった顔でビッグゲテスターを見ていた。
ロックオン・バスター。
メタルクウラが持つ攻撃手段の一つで、指定座標にエネルギーを送り込んで爆破する厄介なものだ。
クウラはビッグゲテスター内部からそれを使用し、破壊光の全てを同時にロックオンして相殺してみせたのだろうとリゼットは推測した。
しかし、いかに広範囲に撒くために威力が分散していたとはいえ……いかに本物の破壊神の技ではないとはいえ、仮にも『破壊』の一撃を相殺してみせるとは。
今のクウラは、最早自分が知っているかつてのクウラとは完全に別人だという事を改めて理解させられ、リゼットの表情が険しくなる。
「まずは互角か……ならば次は」
「ああ、団体さんでお越しだ」
ミラの言葉にターレスが軽口を叩いた。
それと同時に、待機していたメタルクウラが一斉に飛翔した。
「迎え撃ちなさい」
リゼットが号令を出し、光の軍勢も一斉に出撃する。
双軍は中央で衝突し、そして死の銀河のあちこちで戦いが開幕した。
量産兵の全てが強兵。弱兵は一体もいない。
全員が神レベルの力で、神レベルの速度で、神レベルの技で戦う。
拳と脚を高速でぶつけ合わせ、技を打ち合い、背後を取り合い、空間転移と瞬間移動を駆使し、岩礁が余波で次々と砕け散っていく。
そしてどちらも命なき量産兵であるが故に己のダメージを一切気にしない。
メタルクウラは自身の損傷を無視して完全に壊れるまで戦闘を続行し、自律気弾も自身の身が削れる事などお構いなしに完全に消滅するまで戦いを続ける。
太陽系を消滅させるほどのエネルギーが気軽に発生し、重力が乱れ、あちこちで空間が罅割れていく。
ヒーローの姿を再現された光の戦士は一列に並んで同時に跳躍からのキックを放ち、無数のメタルクウラを爆散させる。
五色の光の戦士が次々とメタルクウラに討ち取られ、光の巨人は光線を放ちながら回転した。
巨大ロボットの形をした光の戦士がビームやサーベルで攻撃するが、メタルクウラも一斉にスーパーノヴァを投げて迎撃する。
超巨大な光の戦士が惑星サイズの岩礁を掴んで投げつけてスーパーノヴァとの衝突で大爆発が起こるも、戦いは止まらない。
メタルクウラの拳を光の戦士が素早い掌底で弾き、手刀で切断し、火炎で爆破する。
自ら攻め込まずに、近付いてくるメタルクウラをサマーソルトキックで迎撃していた光の戦士はロックオンバスターで何も出来ずに消し飛ばされた。くにへかえるんだな。
このような戦いが至る所で発生し、第7宇宙が悲鳴を上げた。
今の所……あくまで今の所はまだ、この死の銀河の外にまで影響は出ていない。
自律気弾の何体かは被害を外に広げないように死の銀河全体をバリアで封じ、戦いの余波を抑え込んでいる。
更に超銀河王ザーボンが乗る戦艦の上には天使見習いのメルスが立ち、天使の力で戦いの余波を可能な限り消し去っていた。
しかしそれにも限界がある。
この戦いの規模と量は既に、天使見習いのメルスですら完全に封じる事が出来ない。
「あ、あの……これ……続けたら第7宇宙、壊れません?」
「……壊れる、でしょうね」
21号の不安そうな声に、リゼットは感情を押し殺したような声で答えた。
神レベルの戦士が数十万人も集まって同時にぶつかればどうなるか……そんなのは考えるまでもない。
まず、決着が付くより先に第7宇宙が滅びるだろう。
かつて超サイヤ人ゴッドの悟空とビルスが戦った時も余波で宇宙破壊の危機を招いたのだ。
量産兵単体で見ればあの時の悟空とビルスには遠く及ばないが、何せ数が数だ。
こんな戦いをしては第7宇宙が先に悲鳴を上げるに決まっている。
「だから、この戦いを長引かせる事は出来ません。
これから私がビッグゲテスターに突入して本体を叩きます」
「神様、大丈夫なんか……? オラも……」
「いえ、これは私しか出来ません。悟空君は宇宙空間で生存出来ませんし、何より悟空君には私が抜けた後を任せたいんです」
戦力を言えば、悟空を連れて行きたい気持ちは勿論ある。
だがいかに強くても悟空では、ドラゴンボールで願いを叶えたリゼットと違って宇宙空間で生存する事は出来ない。
ブロリーのようにバリアを張れば宇宙空間での戦闘も出来なくはないが、バリアを破壊されてしまえば待つのは死だけだ。
そしてそんな弱点をクウラが放置してくれるとは思えない。
それに、悟空にはここで待機して欲しい理由があった。
「いいですか、悟空君。
恐らく私がビッグゲテスターに突入すると同時に、ロックオン・バスターによる一斉攻撃が開始され、こちらの戦力が一気に削られます」
現在、クウラによるロックオン・バスターがないのは撃ってもリゼットに相殺されてしまうからだ。
同様の理由でリゼットもブレイカーズの二撃目を発射していない。
つまりリゼットとクウラの存在が互いに抑止力となり千日手を招いている。
だから今は盤上は互角だが……リゼットが抜ければ当然、クウラは狙撃し放題となる。
これは逆も然りで、故にクウラ本人が突撃してくる事は絶対にない。
そんな事をしたが最後、リゼットによってメタルクウラ軍団が一気に削られ、数の暴力で攻撃されるのが目に見えているからだ。
互角であるが故に、この戦いは先に動いた方が圧倒的に不利となる。
酷いレベルでバランスが取れているが故に盤面は動かず、膠着状態が完成する。
だが問題は、盤そのものが持たない事だ。
この膠着状態をこのまま続けては、リゼット達はよくても第7宇宙そのものがこの戦いの余波で崩壊してしまう。
だが、クウラはそんな事は一切気にしない。
彼はもう第7宇宙での支配圏などに固執していない。
リゼットを殺す事……それが第一優先だ。リゼットを殺し、最強のプライドを取り戻す。その為だけに今ここにいる。その為ならば宇宙などいくら壊れたところで知った事ではない。
しかしリゼットはそうはいかない。
第7宇宙を守るための戦いで第7宇宙を滅ぼしては本末転倒だ。
だから不利と分かっていても動くしかないのだ。
「メタルクウラは当然神殿にも踏み込み、私達の後ろにいる銀河パトロールにも被害が及ぶでしょう。だから悟空君はそうなった時の為にここに残り、メタルクウラを食い止めて欲しいのです」
「神様……けどよ……」
「ならば俺が同行しよう」
悟空に後を任せて単騎突撃をかけようとするリゼットに、ミラが声をかけた。
ミラは悟空と違い、宇宙空間でも戦闘を続行出来る戦士だ。
ミラが抜ける事で神殿の守りが薄くなってしまうが、これから敵陣に突撃するリゼットの側に一人もいないのも問題だ。
ミラは悟空の肩に手を置き、任せろと言わんばかりに頷いた。
「そういやお前等はどうするんだ?
この世界での戦いにタイムパトローラーが手を出すわけにはいかねえんだろ?」
「無論そのつもりだ。私達はここで待機している」
「だが、向こうから攻撃されたなら、そんときゃ自分を守るために仕方ねえよな?」
ターレスの問いに、セルとバーダックは揃って悪どい笑みを浮かべた。
時間の秩序を守るタイムパトローラーがその時代の戦いに干渉する事は出来ない。
しかし向こうが攻撃してきたならば、それは正当防衛だ。
少しくらいならば自分を守るために戦っても許される。
時の界王神が聞けば憤慨しそうな屁理屈だし、間違いなく後で小言を言われるだろう。
だがセルにとってこの時代は思い入れのある時間軸であり、バーダックにとっては他ならぬ自分自身の出身地……ならぬ出身時間軸だ。
時の界王神には悪いが、黙って見ているだけなど出来そうもない。
まああの神様は何だかんだで激甘なので、後でご機嫌取りをしておけば大丈夫だろう。
「安心しろ、孫悟空。リゼットは俺にとっても超えるべき壁だ。
こんな所で死なせるつもりはない」
「ああ、分かった……頼んだぞ、ミラ」
まだ心配そうにしている悟空を安心させるようにミラが言い、悟空も彼を信頼してリゼットを任せる事にした。
だが何故だろうか。今回に限って妙な胸騒ぎを感じてしまうのは。
リゼットの強さはよく知っている。そう簡単に負ける事も死ぬ事もないはずだ。
だが今のリゼットの背中は、どこか不安というか……恐怖のようなものを感じているように見えてしまうのだ。
「神様、あまり無理はすんなよ」
「…………」
「……神様?」
「いえ……何でもありません。
そうですね……無理は禁物……分かっています」
リゼットは、心ここに在らずといった様子で何かを眺めていた。
だがそこには何もない。ただ宇宙空間があるだけだ。
悟空に声をかけられて普段通りの彼女に戻るが、どこか地に足が付いていない。
そればかりか、次の瞬間悟空は世にも珍しいものを目にする事となった。
一歩踏み出したリゼットが突然足をもつれさせ、尻もちをついてしまったのだ。
「おっと、こいつは珍しいものを見たな。神さんがすっ転ぶなんざ、初めてじゃねえか?」
「……そうかもしれませんね。お恥ずかしい姿をお見せしました」
リゼットは武の達人である。
普段何気なく歩いている時でも、その立ち振る舞いには隙がなく、常に芯が一本通っている。
その彼女が何もない場所で足をもつれさせるなど、今後二度と見られないかもしれない貴重な光景だ。
だが奇妙な事は続くもので、立ち上がったリゼットは今後は足を滑らせて咄嗟に抱えたミラの腕の中に収まってしまった。
「お、おい……? 本当に大丈夫か?」
「…………」
この異常事態には他ならぬリゼット自身が一番驚いた顔をしていた。
それから彼女はまた、何もない空間を見て小さく溜息を吐く。
(これは……参りましたね……)
体調は万全だ。何か不調があるわけではない。
だがどうやら、この身体は自分をビッグゲテスターに行かせたくないらしい、とリゼットは理解した。
我が身ながら本当に困ったものだと思う。
今になって……これから戦うという時になって、こんなものを見せるなんて……。
リゼットの見る何もない空間――そこには、リゼットだけに見える巨大な鉄の扉が、まるで彼女に『行くな』と言っているように聳え立っていた。
★
「護身の究極形……かの?」
場所は変わって、ここは地球のカメハウス。
そこで亀仙人は弟子であるクリリンから一つの質問をされていた。
武とは何か。
明るく楽しむ為のもの、高みを目指す為のもの、己の身を守る為のもの。
個人によってその意見は様々で、きっとどれもが正しいのだろう。
その中で、最も武術というものを極めているだろう地球の神は武を『弱者が強者から身を守る為のもの』と言っている。つまりは護身術だ。
ならばその護身術を極めた先に何があるのか、クリリンは気になったのだ。
「護身の完成がパオズ山の頂とするならば――このワシをして麓を踏んだばかり」
亀仙人は地球において、武術の神としてその名を知られている。
武天老師とは武の天に至った老師という事……彼の偉業を称えたその別名からも、いかに亀仙人が武の懐の奥深くまで潜り込んでいるかが分かるだろう。
だがその彼が、未だ山の麓にしか辿り着いていない。その事実に、クリリンは驚愕した。
「そもそも突かれたらこう躱す……蹴られたらこう捌く……。
そのような些末な技術にとらわれているようでは護身としては下の下。
真の護身を身に着けたなら、技は無用」
技が必要になるという事――護身術が必要になるという事。
それはつまり、危険と出会ってしまっている事を意味する。
その時点で既に護身は失敗しているのだ。
敵の攻撃を自動で回避する身勝手の極意もまた、危険に出会ってしまった後の技術でしかない。
それが必要になった時点で、既に護身としては矛盾している。
もっともアレは護身術ではなく、敵を倒す為の術という面も備えているが……。
護身とは呼んで字の如く、身を護る事。敵を倒す事ではない。
ならばそもそも、危険と出会わぬのが一番。
危険と遭遇しなければ、それ以上に安全な事はない。
山を登る時、熊との戦い方を考えるだろうか? いや、まずは出逢わない為の鈴を用意するだろう。
自動で敵の攻撃を回避する身勝手の極意の更に先――それは、自動で敵との遭遇そのものを回避する事である。
「真の護身が完成したなら、クリリンよ……危うきには出逢えぬ。己の危機に気付くまでもなく……危機に辿り着けぬのじゃよ……」
亀仙人がそこまで言い終わると、弟子は次の質問をした。
それは、それならばそもそも何の為に武術があるのかという根本的な質問だ。
だが亀仙人はそれに、「バカタレ」と返して弟子の頭を杖で叩いた。
「それはずーっと前に教えたじゃろ。
武道を習得するのはケンカに勝つ為ではなくギャルに『あらん、あなたとっても強いのね~ウッフーン』と言われる為でもない。
武道を学ぶ事によって心身共に健康となりそれによって生まれた余裕で人生を面白可笑しくはりきって過ごしてしまおうというものじゃ」
そう言い、亀仙人はカラカラと笑った。
第7宇宙
_人人人人人人人人_
> 死にとうない!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄