ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第16話 宇宙争乱

 第七宇宙の片隅に、誰もが忘れ去った宙域があった。

 遥か太古より、進んだ文明を持つ様々な異星人が用済みになった宇宙船や人工衛星を廃棄していたその宙域はやがて、増えすぎたゴミによって太陽系にも匹敵するほどの宙域と化した。

 こう言うと恰好よく聞こえるが、要するにゴミを捨てすぎてどうしようもなくなっただけだ。

 いわば宇宙の墓場……だが、どういうわけかその墓場には今や一つの惑星を除いて何もなかった。

 いや、よく見れば残っているそれも惑星ではない。機械の塊だ。

 地球にも匹敵する大きさのそれこそは機械惑星ビッグゲテスター。

 元々はただの小さなチップだったものがクウラの脳と融合し、今やクウラの分身となった機械の怪物である。

 その機械惑星の付近に存在する人影が二つ。

 一つは全身が()色に輝くメタルクウラ。

 そのメタルクウラは他の量産型とは明らかに異なっていた。

 放っている気が桁違いに強く、左眼はあえて完成させていないのか機械的な紅の輝きを放っている。

 このクウラこそはビッグゲテスターのメインコンピュータにして、全てのメタルクウラを統括する存在――即ち、メタルクウラ・コアであった。

 以前と違うのはフリーザ軍の最新の技術によってクウラは一度生身の身体を完全に取り戻していたというところだ。

 前にメタルクウラとなった時は生身の部分が脳しかなかったが故に無理矢理機械のパーツで身体を補っていた。

 だが今回のメタルクウラ・コアは生身のクウラを改造し、その上からメタルでコーティングしている。

 故に、継ぎ接ぎにも等しかった前のメタルクウラ・コアとは下地が違う。

 今や彼の最大戦闘力は破壊神ビルスにすら匹敵している。

 クウラはもう一人の人影を注意深く観察しながら、吐き捨てるように言う。

 

「……監獄惑星に送り込んだメタルクウラが全滅したか。少しばかり貴様に気を取られすぎたらしい」

 

 クウラは監獄惑星に送り込んだメタルクウラの援護を行わず、リゼットに全滅させられるのを黙って見過ごした。

 その理由は今目の前にいる存在と戦い、そちらに意識を割かれていたからだ。

 クウラと相対するもう一つの人影……それは紫色の体色の猫のような獣人――破壊神ビルスであった。

 

「どうやら君にとって困る出来事が起きたようだね」

 

 ビルスは痒そうに鼻の頭をかき、しかし油断なく神の気を高める。

 彼がここにいる理由は至って単純だ。

 『仕事をしに来た』……ただ、それだけである。

 働かない事に定評のある彼だが、今回第7宇宙に突如出現した大軍勢を無視する事は流石に出来なかった。

 そこで彼はリゼット達に先んじてクウラの位置を突き止め、単身殴り込みをかけたのだ。

 

「そうでもない。駆逐されたのは先遣隊に過ぎん。たかが千体の犠牲で奴の技を一つ暴けたならば悪くない取引だ。俺は学習し、更に強くなる」

「あっそう。まあ、どっちでもいいか……どの道君はここで僕に破壊されるんだからね」

 

 ビルスがまるで、これからコンビニで買い物をするかのような気楽さでクウラの破壊を告げた。

 

「君、地球に向かおうとしてるだろ。困るんだよね……あそこにはまだ美味しい物が沢山あるんだ。

それに僕が今まで食べた中で一番美味しかった物もリゼットしか作れなくてさ。

だから君に地球を攻撃されるのは迷惑なんだよ……運がなかったね」

 

 そう言い、ビルスが一瞬でクウラの前に移動した。

 破壊神の拳をクウラの鋼鉄の腕が受け止め、数秒睨み合う。

 そこから無数の攻撃と防御が行われ、両者の放つ気によって空間が歪んだ。

 攻防戦の最中、ビッグゲテスターの分析能力によってビルスの動きのクセを把握したクウラが一撃を加え、ビルスの腹を蹴り飛ばす。

 破壊神の中でも最強クラスと名高いビルスの顔が苦痛に歪み、吹き飛ばされた。

 しかしこの程度のダメージなど無いに等しい。ビルスはすぐに宇宙空間で制止し、腹をさする。

 

「やるね。想像以上だよ」

「俺にとっては想像以下だ、破壊神よ。貴様の最大パワーは俺に大きく劣る。勝ち目はないぞ」

 

 クウラの言葉にビルスはむっとした表情になり、目つきを鋭くした。

 

「言ってくれるじゃないか。けどそれは甘い見積もりだ……破壊神の力に上限はないんだよ」

「負け惜しみは見苦しいぞ」

「負け惜しみかどうか、試してみるかい?」

 

 ビルスが笑い、クウラも笑みで返す。

 どちらも自分が負けるなどと微塵も考えていない。

 互いに己の力に自信を持つ絶対強者同士……そこには勝利の確信しかなかった。

 ビルスがいよいよベールに隠された破壊神の強さの全貌を発揮しようと力み、クウラも更なる力を発揮出来る戦闘フォームへの移行を決めた。

 ますます戦いがヒートアップする――その時、ビルスの付き人であるウイスが主の横に転移した。

 

「ビルス様、お仕事中失礼いたします」

「後にしろ、ウイス。今は見ての通り忙しい」

「いいんですか? 全王様がお呼びですよ?」

「なにい!?」

 

 完全にクウラとの戦いに集中していたビルスだったが、その集中力が霧散した。

 この世に恐れるものなどほとんどないビルスだが、そんな彼が恐怖する数少ない絶対者が全王だ。

 全王からの呼び出しは絶対。他の何を置いても駆け付けなければ最悪消滅させられてしまう。

 

「全王様はどうやら隠れんぼの相手が欲しいようですねえ。破壊神全員が集められていますよ」

「ぐっ……こ、こんな時にか! だ、だったら少し待て! すぐに終わらせる!」

「はあ」

 

 ビルスがすぐに倒すと宣言したが、額を汗が伝った。

 その理由はウイスにもよく分かる。

 ウイスはクウラとビルスを見比べ、事実を突きつける。

 

「すぐに倒せるようには見えませんねえ」

「ぐっ……」

「それにビルス様は以前も全王様の呼び出しより昼寝を優先して無視してしまっています。

今度無視すれば最悪、消滅させられるかもしれませんよ?」

「ぐぐぐぐっ……」

 

 ビルスは冷や汗をダラダラと流す。

 このまま戦っても勝てる自信は十分ある。

 しかし、難敵であるのもまた事実だった。少なくとも短時間で終わらせるのは不可能だ。

 ビルスは数秒悩んだ末、高めていた気を収めてしまう。

 

「……命拾いしたね、クウラとやら。残念だけど急用が出来てしまった」

「おめおめと逃げ帰る前の口上としてはありきたりだな」

「…………どうせリゼットか悟空にやられてると思うけど……もし僕が戻って来た時にまだいたら、その時は絶対に破壊してやる……!」

 

 ビルスは悔しそうに歯ぎしりをし、必死に怒りを抑える。

 しかし悲しいかな、神の縦社会。ビルスは全王の命令を拒否する事が出来ない。

 破壊神は怒りに震えながら背を向け、ウイスと共にその場から消えた。

 ビルスが去ったのを確認したクウラも銀色に戻り、ビッグゲテスター内に瞬間移動する。

 予期せぬ乱入者だったが、本番前のお遊びとしては楽しめた。

 だが遊びはここまでだ。ここからは遊び抜きで宿敵を殺しにかかる。

 その一歩として、まずは偵察隊を送り込んでいた監獄惑星が今どうなっているかを再確認した。

 

「やはり既に地球の神達は去った後か……」

 

 クウラの前に、監獄惑星の映像が映し出された。

 そこには地表が綺麗さっぱり消し飛んだ哀れな惑星の姿が映されている。

 間違いなく、地球の神による攻撃だろう。流石の念の入れようだ。

 この執拗なまでに不安要素を摘み取ろうとする姿勢は、大いに参考にするべき部分がある。

 

「ほう……監獄惑星にいたコアエリアの連中……確かハーツと言ったな……そいつの先導によって連中も脱出したようだな……それに監獄惑星……まだ爆発していない? それに星から生体反応……ドラゴンボール……ふ、なるほどな……生き汚い奴もいたものだ」

 

 監獄惑星のコアエリアと呼ばれる場所には、一際強力な戦士達が閉じ込められていた事をクウラは知っていた。

 あの悪のサイヤ人カンバーも、元々はコアエリアの一員だ。

 カンバーの強さを考えれば、他のコアエリアの戦士も並々ならぬ実力者である事は簡単に予測が出来る。

 しかしコアエリアの戦士達が現在どこにいるかは不明だ。

 恐らくは他の宇宙に移動したのだろうが、これではビッグゲテスターでも捕捉し切れない。

 残念だ……もし捕捉できる距離にいたならば、メタルクウラ生産のエネルギーの一部にしてやったというのに。

 

「まあいい……エネルギーはもう十分にある」

 

 コアエリアの戦士達は他の宇宙に逃げてしまったが、別段問題はない。エネルギーは既に足りている。

 メタルクウラの軍団で暗黒魔界を蹂躙し、魔神と呼ばれている連中はクウラが自ら殺してビッグゲテスターのエネルギーに変えた。

 強大な力を持つ魔神を全滅させるのに数年の期間を要したが、それでも最後にはクウラが笑った。

 いかに魔神達が強大な力を持っていても、際限なく増えて強化され続けるメタルクウラと昼夜問わず不眠不休の戦いを強いられれば消耗し、倒れるのは自明の理だ。

 むしろクウラは魔神達を高く評価していた。

 これだけの条件下で数年間も粘られるなどと予想していなかったし、奴等との戦いのおかげでここまで強くなる事が出来た……暗黒魔界は最高の糧だった。

 だが、それすらクウラにとっては通過点に過ぎない。

 全てはあの怨敵を殺す為の準備だった。

 その機が熟した今、狙うのは地球の神ただ一人。

 邪魔をする奴は全て潰す。それだけだ。

 クウラは中央の玉座に腰掛け、ビッグゲテスターに命令を下す。

 

「ビッグゲテスターよ、進路を北の銀河へ取れ。目的地は北の銀河の地球だ」

 

 クウラがそう言うと同時に、ビッグゲテスターが動き始めた。

 地球に到達するまでの予測時間は凡そ一日といったところか。

 無論、その一日を遊んで過ごすつもりなどクウラにはない。

 玉座からは無数のコードが伸び、クウラの腕や頭に接続されていく。

 

「これより移動とシールド以外の全機能をメタルクウラの量産へ向ける。余計な機能は全てカットしろ」

 

 地球に到着する一日……それまでにメタルクウラを増やし、全戦力を出し惜しみなく投入して地球と地球の神を殺すのがクウラの計画であった。

 現在ビッグゲテスターに待機しているメタルクウラの数は五万体ほど。

 本来はもっと多かったのだが、先述の魔神達との戦いで半数が削られてしまった。

 だから地球に着くまでに急ピッチで仕上げ、十倍程度には増やしておきたい。

 メタルクウラも無限に湧くわけではなく、一体一体が高いエネルギーを持つ以上はどうしても製造に多大なエネルギーを要してしまう。

 だからこそビッグゲテスターは他の星を食らい、エネルギーを補充する必要があった。

 しかしそのエネルギーも今は足りている。

 暗黒魔界という一つの宇宙に等しい世界全てを食らった今のビッグゲテスターならば百万体のメタルクウラを生み出す事も不可能ではない。

 魔神達に削られた分を差し引いても十分なプラスだ。

 そんな事をすればビッグゲテスターのエネルギーは枯渇してしまうだろうが、クウラには知った事ではなかった。

 奴を殺せればそれでいい……それだけで、満たされる。

 今のクウラにとって他の事など、全てがどうでもよかった。

 

 

「……動いていますね」

 

 遥か遠くから隠しもしない敵意が近づいて来ている事をリゼットは感じ取っていた。

 監獄惑星での戦いが終わり、無事に地球に戻ってきた悟空達は次の戦いに備えて全員が神殿で待機している。

 地球の周囲には『永遠の美』の主力艦隊がザーボンの号令で集結し、空を埋め尽くす鋼の軍団を編成していた。

 

「どうする神様? こっちから瞬間移動で仕掛けちまうか?」

「いえ、それはやめたほうがいいでしょう。恐らく転移を防ぐシールドのようなものが張られていると思いますし、第一悟空君達は宇宙空間では戦えません」

 

 今すぐにこちらから瞬間移動やゲートでの転移で仕掛けるのは恐らく不可能だとリゼットは考えていた。

 こちらが転移の使い手である事などクウラはとっくに知っているし、その対策を何もしていないとは考えにくい。

 リゼットは現在、クウラの瞬間移動を防ぐためにバリアを展開しており、向こうも当然のように同じ事をしているだろうと考えていた。

 それに上手く転移出来たとしても、そこは宇宙空間だ。

 ビッグゲテスター内部もクウラとメタルクウラ、機械兵しかないと考えれば酸素があるとは考えにくい。

 これでは自分やミラ、21号や魔人ブウはともかく悟空やベジータはどう考えても戦えない。

 

「なあ、こんな状況なんだしビルス様に協力は頼めねえのかな?」

「それなんですが……さっきからコンタクトを取ろうとしているのですが、繋がりません。私の念話が届かない場所にいるようです」

 

 流石にこんな状況ではビルスも動くだろうと期待しての悟空の発言だったが、リゼットは残念そうに首を横に振った。

 どう考えても破壊神が一丸となって対処しなければ不味い状況なのだが、その破壊神と連絡が取れない。

 全王宮に行く事も一瞬考えたが、それはすぐに選択肢から排除した。

 全王ならば確かにメタルクウラの軍団を消せるだろうが、それは第7宇宙諸共になってしまう。頼る事は出来ない。

 そうである以上、リゼットを含む地球戦力で迎え撃つしかなかった。

 

「くそっ! 普段威張ってやがるくせに肝心な時に役に立たねえ!」

「だが神さんよ、地球で奴を迎え撃つのは危険じゃねえか?」

 

 悪態をつくベジータの隣でターレスが腕を組み、もっともな意見を口にした。

 メタルクウラを地球に引き入れてしまえば、それは実質的に敗北と言っていい。

 その気になればいつでも星を壊せるのだから、招き入れるリスクは犯せない。

 故にリゼットは、まずはその対策をする必要があった。

 

「分かっています。地球を戦場にする気はありません」

 

 リゼットは腕を振るい、地球全体にバリアを展開した。

 かつてジャネンバを倒しに行く時にも使ったバリアで、これならば物理的な移動のみならず瞬間移動なども防ぐ事が出来る。

 その上から更にヘブンズゲートを多重展開し、地球を覆いつくす。

 これならばそうそう突破される事はないはずだ。

 

「北の銀河の先……そしてビッグゲテスターの進行方向の先に生物の存在しない死の銀河があります。そこを決戦場にしてはどうでしょう?」

 

 宇宙の事ならばリゼットよりもザーボンの方が詳しい。

 彼の提案にリゼットも頷き、そこを戦場にする事を決めた。

 今回の戦いはどれだけの規模になるのかリゼット自身も予想が出来ない。

 ならば少しでも周囲への被害は少ない方がいいだろう。

 リゼットは目を閉じ、神殿に気を宿らせる。

 すると神殿が呼応し、まるで宇宙船のように宇宙を目指して発進した。

 自律気弾を膜のようにして神殿に張り巡らせる事で、その気が神殿を包んだまま移動しているのだ。

 こうする事で、神殿という限られた場所での話になるが悟空やベジータが宇宙で戦う事も可能になる。

 

「だがどうする? 向こうはとんでもない数だったぞ。今のままやりあっても多勢に無勢だ」

 

 ベジータの指摘に全員が顔を緊張で引き締める。

 メタルクウラの正確な数は分からないが、とんでもない数に達しているのだけは確かだ。

 いかに地球の戦力が宇宙随一といっても、あの軍団とぶつかればどうなるかは火を見るより明らかだろう。

 一度はメタルクウラ軍を薙ぎ払ったリゼットの破壊光線も万能ではない。

 次の戦いではリゼットに匹敵する力を持つクウラ本体がいるはずなので、相殺くらいは平気でやってくるはずだ。

 だが兵力を増やすのは何も向こうの専売特許ではない。その程度の事ならばリゼットでも十分に出来る。

 

「こちらも兵を増やすしかないでしょうね。

……HEROES・GOD MISSION!」

 

 リゼットの背に光輪が顕現し、空に光のカーテンが差し込んだ。

 そこから次々と舞い降り、神殿の周囲を固めるのは戦乙女の姿をした神の軍勢だ。

 他にもリゼットしか知らない別世界の知識から、様々な姿と技を与えられている。

 正義のヒーローや光の巨人、巨大ロボットに魔法少女、バリエーション豊かな大怪獣。

 剣と魔法の世界の勇者とその仲間達。勇者と敵対する大魔王。

 様々な創作物の主人公、英雄、救世主、強敵達が偽りの現身とはいえ一堂に会する。

 リゼットによって生み出された自律行動気弾は一体一体が神の領域に踏み込み、一騎当千の実力を持つ。

 今のリゼットが生み出す光の軍はまさに宇宙最強の軍団と呼んでも過言ではない。

 ジレンには薙ぎ払われたが、あれはあのマッスルグレイがおかしいだけだ。

 本当に何なんだろうか、あの男は。

 だが今回はあの時のような即席軍隊ではない。

 ジレンをもってしても突破不可能なほどの大軍勢を、時間をかけて作り出す。

 

「私はこれから治療カプセルに入り、兵を可能な限り量産します。

悟空君達も、戦いに備えて休んでおいて下さい」

 

 リゼットは気は実質無限だが、体力は無限ではない。

 しかしブルマに造ってもらった治療カプセルに入ったままゴッドミッションを使い続ければ体力もほぼ無限となる。

 クウラはきっと次の戦い、想像も出来ないようなメタルクウラの軍団を用意してくるに違いない。

 そしてメタルクウラは一体一体、その全てが神の領域に踏み込んだ超戦士だ。

 ならばこれから行われるのは、双方共に神レベルの量産兵(・・・・・・・・)による、宇宙が未だ体験した事のない大戦争だ。

 全員が超サイヤ人ゴッドやブルー、超サイヤ人4レベルの強さを持ち、それが数万数十万と衝突するのだ。一体どうなってしまうのかリゼットも予想出来ない。

 だが何としても勝たねばなるまい。

 そうしなければ、クウラによって全宇宙が滅ぼされてしまうだろうから。

 

「……一応、保険は用意しておきますか」

 

 クウラとの戦いに手を抜く事は出来ない。

 しかしだからといって地球をがら空きにするわけにもいかない。

 一応何人か戦士を地球に残したし、自律気弾も置いているが……もう一つ、保険をかけておきたい。

 そこでリゼットは、ある人物のいる場所ヘブンズゲートによる転移を行った。

 GTの事を考えれば、『彼』にはまだ使っていない大量のパワープールがあるはずだ。

 それを引き出す事が出来れば……とリゼットは淡い期待を抱いた。

 

 

 全王に呼び出され、宇宙を去ったのはビルスだけではない。

 時を同じくして宇宙全ての破壊神が全王宮へ集められ、宇宙は束の間の破壊神不在の期間を迎えた。

 それ自体は宇宙の歴史全体で見れば珍しい事ではない。

 これまでにも時折こうして、全王が破壊神を招集する事はあった。

 だが今回に限っては――それは、最悪のタイミングであった。

 

 監獄惑星の崩壊を切っ掛けとして行動を始めたのはクウラだけではない。

 監獄惑星のコアエリアと呼ばれる場所に閉じ込められていた強豪達……『コアエリア』の戦士達もまた、自由を得た事で己の目的の為に行動を開始していた。

 

「第7宇宙は随分とおかしな事になっているようだな」

 

 宇宙のどこかに造られた隠れ家で、黄色の色付きバイザーを付けた男が愉しそうに呟く。

 薄い金髪をオールバックにし、肌の色は白。バイザーの奥の瞳は赤く、耳は尖っているがやや地球人に近いタイプの宇宙人だ。

 素肌の上からファー付きの黒コートを羽織り、曝け出されている胸元には大きな十字傷があった。

 

「どうするハーツ? 第7宇宙に行って、両方僕達が倒しちゃう?」

 

 自信たっぷりにそう言うのは、白い髪を逆立てた青い目の少年だった。

 青目といっても地球人とは違い、眼球全てが青く不気味さを醸し出している。

 そんな彼に、ハーツと呼ばれたリーダー格の男は小さく笑った。

 

「いいやオレン。俺達は他の宇宙から攻めて行こう。

第7宇宙は一番最後だ……デザートはとっておかないとな」

 

 ハーツはおちゃらけた口調で言い、そして溜息を噛み殺した。

 デザートなどと言っているが、実の所ハーツは第7宇宙を最も危険な宇宙だと思っているからこそわざわざ避けていた。

 今第7宇宙に攻め込むような真似をすれば最悪、クウラ率いる機械の軍団とリゼット率いる光の軍団に挟み撃ちにされ、瞬く間にボロクズにされてしまうだろう。

 あんな所に飛び込むのは自らの力すら把握出来ない馬鹿のやる事でしかない。

 だがどうやら、その馬鹿は味方側にいるらしい。

 オレンの実力では量産されているメタルクウラの一体にすら勝てないのだが、どうも彼にはそれが分からないようだ。

 彼は貴重な戦力で同志だ。今はご機嫌を取り、上手く使うしかない。

 

「俺達の目的は宇宙の種を育て、全王を倒し、人間の真の自由を勝ち取る事だ。

必要のない戦いに飛び込む事はない」

 

 神々が聞けば耳を疑うだろう壮大すぎる目的を話し、ハーツは笑う。

 打倒全王など今まで、どんな神でも考えた事はない。

 いや、あるいは考えた事くらいはあるのかもしれないが、それを表に出した者など皆無だ。

 全王は誰にも倒せない、誰にも害する事が出来ないというのがこの宇宙の常識であり摂理である。

 全王は破壊神の『破壊』を遥かに凌駕する力を持ち、念じるだけで何もかもを消してしまえる。

 だがハーツには全王に勝てる自信があった。

 

「ラグス、カンバーはどうだ?」

 

 ハーツは腕を組み、隣に立つ少女へ声をかけた。

 そこにいたのは、まるで水晶かガラスで彫った彫像のような少女であった。

 一見ではよく出来た精巧な像としか思えないだろう。

 文字通りの透き通るような肌は、彼女を通して薄っすらと向こう側の景色が見えてしまう。

 

「負けたのがショックだったのか、今は大人しくしているわ。けどハーツ、本当に彼を使うつもり?」

「勝手に飛び出して負けて帰って来るなんて情けないわね。もうあいつ殺しちゃう?」

 

 ラグスの言葉を引き継ぐように女の声がした。

 それはオレンと似た容姿の白い女だ。

 オレンが青い服を着ているのに対し、彼女は赤い服を着ているので区別は出来る。

 

「姉さんに賛成! 弱い奴はいらない」

「まあ待て二人とも。カンバーは貴重な戦力なんだ。頭は足りないが、まだ使い道はある」

 

 過激な事を言うカミンとオレンをなだめつつ、ハーツは薄笑いを浮かべた。

 カンバーは考える頭はないが、その分パワーは超一級だ。

 『弱い奴はいらない』とか言っているオレンの百倍は強い。

 上手く使ってやればこれからの戦いでも十分役に立つ。

 

「とりあえずまずは……第6宇宙辺りから攻めていこうか。

第7宇宙ほどではないが、あの宇宙もなかなか強い奴が揃っている。

宇宙の種を育てるいい土壌になってくれるだろう」

 

 第7宇宙ではクウラが活動を始め、そしてそれ以外の宇宙にもまた新たな脅威が迫りつつある。

 破壊神不在の宇宙はまさに今、争乱の時を迎えようとしていた。




地球「た、助かった……」

Q、クウラさん、誰もいないビッグゲテスター内で玉座にぽつんと座ってるの?
A、滅ぼした星の荒野でわざわざ玉座用意して座るくらいには意識高いぞ。

【ビルス様、今回も仕事出来ず】
ビルス「僕、今回悪くなくない?」
・ちなみに全王は下界で何が起きてるか全く把握していない。
(未来編で宇宙全てが大惨事になっているのに悟空に呼び出されるまで気付かない)
・大神官は気付いているが中立を重んじているので何も報告していない。他天使も同様。
(未来編で宇宙全てが大惨事になっているのに全王が知らなかったという事はそういう事)
・破壊神達はビルス以外そもそも気付いていない。
・ビルスは直接戦ってある程度危険である事は知っているが現時点でのメタルクウラの数(5万体)から「リゼットならそれ以上の数で圧殺できるので自分がいなくても問題ない」と見積もってしまった。リゼットがいる事によりビルスの怠け癖は『加速』するッ!
・ピエロは今日もジレンしか見ていない。


【宇宙争乱編】
監獄惑星編から続くドラゴンボールヒーローズの新たなストーリー。
コアエリアの戦士達が各宇宙を攻撃し、力の大会で戦った様々な宇宙の戦士達と悟空達が共闘する。

【コアエリアの戦士達】
・ハーツ
リーダー格のテラ子安。
重力を自在に操り、本気になればブルーの悟空を瞬殺するほどの強さを持つ。
打倒全王という目的を掲げてはいるが、どうにも大神官に相手にされていない節がある。
更にメタ的に言うとゲームオリジナルストーリーのキャラである彼が、本編で底を見せていないどころかダメージを受けた描写すらない大神官や全王をどうにか出来るわけがなく、彼の目的は最初から達成不可能な事が明らかであった。
宇宙の種を取り込んでもゴジータブルーに負けてしまったので、カンバーより弱い疑惑がある。
とりあえずこのSSでの強さはカンバー>ハーツ。

・カンバー
監獄惑星から続投。
監獄惑星編ではあれだけ強敵として描かれていたのに、宇宙争乱編に入ってから一気に小物化してしまった。
それでもコアエリアの戦士達の中では強い方。
その割に味方からの扱いは悪い。
ちなみにこの次の章ではとうとうベジータ一人にさえ負けるようになった。落ちぶれっぷりが半端じゃない。

・合体ザマス
全王に消されたはずなのに何故か復活してきた緑。
このSSではそもそも合体ザマスそのものが誕生していないので出番なしである。
ビルス「(出番)破壊☆」
ザマス「ウワアアァァァーーーッ!!」

・ラグス
宇宙争乱の鍵を握るという触れ込みで登場した子。
宇宙争乱の鍵を握ると言ったな。あれは嘘だ。
ガラスを自在に操る。
登場前に散々盛り上げて満を持して登場したのに気付いたら描写すらなくメタルクウラにボコられていた。
一体この子、何の為のキャラだったんだろう……。
一応かなり後の魔の侵略者編では囚われのヒロインとして出番がありそうな空気があるが、どちらにせよ宇宙争乱の鍵は握っていない。

・オレン&カミン
GTのベビーの二番煎じのような姉弟。
自分が最強だと思っているようだが、その実力はぶっちゃけコアエリアの戦士最弱。
単体ではカリフラとケールのタッグでも渡り合えるレベルで、合体しても17号とピッコロのタッグに負ける。
消耗してたゴッドの悟空がカリフラ&ケールタッグを相手に圧倒してたのを考えると単体ではゴッド(しかも疲れてる)未満の可能性もある。
他のコアエリアの戦士に比べると合体ありきという感じが否めない。
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