売り上げ世界一も“一人負け”状態 なぜ「クール」だったナイキは失墜してしまったのか
世界のスポーツブランドの中でもトップクラスに属する企業、米ナイキが苦戦しています。一方でドイツのアディダスや国内ブランドのアシックス、ミズノは好調です。 【画像】「マイケル・ジョーダン ビル」「タイガー・ウッズ センター」など、とてもユニークなナイキ本社(計3枚) ナイキが復活するには何が必要なのでしょうか。流通小売り・サービス業のコンサルティングを約30年続けてきているムガマエ代表の岩崎剛幸がマーケティングの視点から分析していきます。
ナイキはもうクールではないのか?
最近、筆者は街に出かけるたびに「人々の足元」に注目しています。先日も新宿駅から池袋駅まで電車で移動中、乗降客の靴のブランドを見ていたのですが、ナイキを履いている人は1割も見つけられませんでした。カジュアル化が進み、スーツでもスニーカーやスポーツシューズを履く人が増えた今、代名詞である「スウッシュマーク」のついた靴がこれほど少なくなっているのかと驚きました。 「Is Nike Still Cool?(ナイキは今もクールなのか?)」 米有力ファッション誌のGQは、2024年8月にこんなタイトルの記事も掲載しています。 ナイキは世界で最もクールなブランドだったはずです。世界的なブランドコンサルティング会社であるインターブランドが毎年発表する「ベストグローバルブランド」によると、2024年にナイキは14位に後退していました(前年は9位)。アップルと並んでクールなトップブランドといわれていたナイキが、なぜ今やクールではなくなっているのでしょうか。
理由(1)業績を落としている
ナイキがクールだった大きな理由は、何より業績を伸ばし続けていたからです。発売する商品が軒並み売れ、ナイキを履いていないとカッコ悪いという時代すらありました。結果的に業績も大きく伸び、スポーツブランドのトップブランドになりました。 スポーツブランドのツートップである、ナイキとアディダスの業績を比較してみましょう。 ナイキの2025年5月期の売り上げは、6兆8000億円(1ドル=147円換算)です。現在も売り上げがスポーツブランド各社の中でダントツで、2位のアディダス(2024年12月期=4兆498億円、1ユーロ=171円換算)に3兆円弱の差をつけています。その意味で、ナイキは今もトップスポーツブランドであることに間違いありません。 しかし、売り上げの伸び率がナイキは前期比で9.8%減、金額にして7500億円ほどの減少です。営業利益はさらに大きく落とし、同42.0%減、4000億円超も減少しています。大幅減収減益というのがナイキの実態なのです。 アディダスは2024年度に世界各地で売り上げを伸ばしており、卸売り、DtoC(Direct to Consumer)、小売店、ネット販売とあらゆるチャネルで2ケタ以上も伸びました。特にフットウェア部門が好調で、オリジナル、サッカー、トレーニング用各シューズが2ケタ成長しています。 アパレルでも、特徴的なスリーストライプやトレフォイルロゴの人気が高まっており、レトロ風のアイテムを発売して人気になるなど、フットウェアを中心にしながらも、ファッションブランドとしての地位も確立しています。アディダスはライフスタイル(いわゆるファッション分野)とパフォーマンス(アスリートやランナー向けのスポーツ分野)の両面をバランスよく強化したことで、大きく成長しているといえるでしょう。 アシックスとミズノを加えると、4社の中でナイキだけが減収減益で、他の3ブランドはすべて増収増益です。しかも国内2ブランドは過去最高売り上げや過去最高益。スポーツブランド市場全体が厳しいというわけではなく、ナイキだけが業績を落としています。