ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

147 / 176
第11話 最強の戦士

 カンバーの放つ気によって監獄惑星全体が揺れる。

 超サイヤ人3となったカンバーの気は、あのジレンに迫るほどに強い。

 カンバーの着ている服が破れて上半身が裸となり、鍛え抜かれた身体を惜しみなく晒した。

 

「ヌウウウウウウウウッ!!」

 

 カンバーが白目を剥いて吠え、神経を切断されたはずの腕を上げた。

 彼の『悪の気』はそれ自体が腕や爪のように形状変化して腕の代わりを果たす事が出来る。

 それを腕に纏わせ、動かぬはずの腕を強引に動かしてみせたのだ。

 

「オレト……タタカエエェェェ!!」

 

 理性を感じさせない声で叫び、リゼットへと突貫して拳の弾幕を放った。

 リゼットはこれを柳のように避け、カンバーの首目掛けて腕を捩じりながら手刀を放った。

 先程カンバーの腕の神経を切断したのと同じ技だ。

 その時はリストレイント&ギャロウズによる絞殺狙いで、抵抗出来なくする事を優先して腕の神経を切断したが、今度はこの技でそのまま頸動脈切断からの殺傷を狙う。

 

『っ!』

 

 しかし――刺さらない!

 強靭過ぎるカンバーの首は侵入者の存在を認めず、皮膚で弾き返してしまっている。

 そればかりか、カンバーに触れたリゼットの指先の方が消失してしまっていた。

 超サイヤ人3となった事で、カンバーの悪の気が完全にこの分身体の出力を超えてしまった。

 故に、超サイヤ人3となって増大したカンバーの悪の気に触れるだけで身体が消えてしまうのだ。

 今までは気の出力で上回っていた為に貫通出来ていたが、その力関係は完全に逆転した。

 もう分身リゼットではカンバーに直接触れる事すら出来ない。

 そのままカンバーは攻撃された事にすら気付かず、剛腕を振るった。

 タイミング的にはリゼットの手刀とほぼ同時。己の保身を考えないからこそカンバーの攻撃はタイミングを間違えれば相手の攻撃に合わせたカウンターとなる。

 攻撃直後で回避出来ない必殺の隙だったが……しかしリゼットも今は生身ではない。

 まるでカートゥーンアニメのギャグキャラクターのように身体がグニャリと不自然に曲がり(・・・)、人には不可能な動きでカンバーの攻撃を避けてしまった。

 トゥーンだから攻撃は効きまセーン。

 そのまま消えてしまった指を復元しつつ距離を空ける。

 

「ガアアアアアアアアッ!!」

 

 カンバーがリゼットへと真っすぐに飛び掛かる。

 これに対しリゼットは物質創造でカチカッチン鋼の円盤を創り出した。

 いや、円盤というよりは回転ノコギリといったところか。

 刃の部分がギザギザになっており、相手を切る事に特化した形状となっている。

 それを馬鹿のように正面から突っ込んで来たカンバー目掛けて、振り下ろすように投げつけ、回避すらしない彼に直撃した。

 カンバーに回転ノコギリがめり込み、足が止まる。

 このまま左右生き別れになるとリゼットは確信した。

 ……が、ノコギリが回転しない。めり込んだまま止まってしまっている。

 

『……出鱈目ですね』

 

 何が起こっているのかを察したリゼットは呆れ、またしても距離を取った。

 カンバーが何故回転ノコギリで斬れないのか。何故刃が回転しないのか。

 それは回転ノコギリがカンバーの筋肉で食い止められてしまっているからだ。

 憤怒(いか)りの表情(かお)筋と! 古代の上半身(からだ)筋でッッ!!

 恐るべきかな肉の宮……カンバーは面倒くさそうにノコギリを投げ捨て、そして何事もなかったかのように突撃を再開した。

 酷い脳筋もいたものである。

 一方でリゼットはうんざりしたような顔になり、自分はまたこの手の輩の相手をしなければいけないのか、と思っていた。

 こういう脳筋はリゼットの技術が最も通じる相手であると同時に、リゼットが最も苦手とする相手なのだ。

 柔よく剛を制す。だが剛よく柔を断つ。

 技術は暴力を制するが、行き過ぎた暴力は時に技術を捻じ伏せる。

 技を砕くのは限りないパワーなのだ。

 

 今のリゼットならばフルパワーを発揮すれば、超サイヤ人3のカンバーとも互角に戦える。

 互角であるならば技術で勝るリゼットが一方的に勝つ事も可能だ。

 悪の気による相殺も、悟空と同じく神の気を体内に閉じ込めたまま戦えば十分対処出来る。

 だがそれは本体ならばの話。

 ここにいる分身リゼットにそこまでの強さはないし、先述のようにカンバーに触れる事すら出来ない。

 ――しかしそれならば、直接触れなければいいだけの話。

 物質創造術でカチカッチン鋼の刀を作り出し、筋肉の薄い部分……膝や肘などの『角』に狙いを定めた。

 

「あった! あったぞー!」

 

 しかし、どうやらここで役目は終了のようだ。

 悟空がようやく仙豆を発見し、喜びの声をあげたのだ。

 しかしその声に反応したカンバーが振り向き、そして悟空へ向けて走り出した。

 今のカンバーはバーサーカーだ。目につく者全てに攻撃を仕掛ける。

 それがたとえ回復していない相手だろうが関係ない。

 

「げっ!? ちょ、タ、タンマ! 待ってくれ!」

 

 流石に回復前の攻撃は不味い。

 悟空が慌てるが、カンバーは構わず走る。

 それを見てリゼットは静かに笑みを見せた。

 

『……仕方ないですね』

 

 自分を超えたと思っていたのに、相変わらず変な所で手がかかる。

 しかしそんなドジな所も合わせて、孫悟空なのだろう。

 ならば仕方ない。ここは自分が捨て身で彼の為に時間を稼ぐとしよう。

 そう決意し、リゼットはこの分身体で出来る最後の手段に踏み切る事を決めた。

 分身リゼットは気の塊である。

 ならばその身を捨てれば一度限りの大技へと自らを変える事も可能なのだ。

 分身リゼットが発光し、人としての形を失う。

 そこから放たれるのは、彼女が得意とする決め技の一つだ。

 

『Raging blast!』

 

 自らを気功波へと変えて、分身リゼットがカンバーへと衝突した。

 悪の気の防御だろうが、それを上回る一撃を与えれば突破は出来る。

 カンバーとぶつかる事で消失しながらも構わず進み、カンバーの身体を一気に上空へと運んだ。

 そして――爆発。

 空中でカンバーを巻き込んで光が爆ぜ、分身リゼットは完全に消滅してしまった。

 それを見届けた悟空は悔しそうに拳を握り、顔を俯かせる。

 

「くっ……! すまねえ、神様……神様の死は絶対に無駄にしねえ……!」

 

 拳を握り、震わせる。

 無力感、喪失感……そうしたものが悟空の心をかき乱し、リゼットとの思い出がまるで昨日の事のように思い出された。

 

『そうですよ悟空君、私の死を無駄にしないで下さい! さあ、早く仙豆で回復を!』

 

 そしてたった今散ったばかりのはずの分身リゼットが悟空の隣で、腰に手を当てて何か言っていた。

 繰り返すが分身リゼットは所詮気で作り出された分身であり、本体は今も監獄惑星の外にいる。

 先に送り込んだ分身が消えた事を知ったリゼットが、また新たな分身を送り込んで来たのだ。

 つまり分身リゼットとは、本体が無事ならばいくらでも湧いて来る量産兵に過ぎない。

 いわばメタルクウラのようなものであった。

 

「……お、おう」

 

 この雰囲気ぶち壊しな即リスポーンには悟空も引き攣った笑みを浮かべるしかない。

 とはいえ、好機は好機。

 悟空とベジータは仙豆を食べて体力を全回復させた。

 モロによるエネルギー吸収も先程の仙豆ドカ食いが効いたのか起こらず、万全の状態に戻る事が出来た。

 だが問題はここからだ。今のカンバーが相手では完成したブルーですら歯が立たない。

 ブルーと界王拳の合わせ技は完成ブルーとの相性の悪さから普通のブルーでやる必要があるが、これでは悪の気によって相殺されてしまう。

 ベジータのブルーを超えたブルーも同様だ。カンバーには通じない。

 カンバーに勝つにはカンバーの悪の気の影響を受けずに戦い、なおかつカンバーを上回らなければならない。

 そんな手は……残念ながら、一つしかなかった。

 

「おいカカロット……フュージョンするぞ」

「……ベジータ」

「腹が立つが、奴に勝つにはそれしかない」

 

 もう単独では悟空もベジータも勝てない。

 リゼットの本体が来れば三人で協力して勝てるだろうが、来るとモロの気を感知すると同時に暴走してしまう可能性が高いので来る事は出来ない。

 悟空にもベジータにも、一人でカンバーに勝ちたい気持ちはある。サイヤ人のプライドがある。

 だがここで自分達が負けてしまえばトランクスを救出するどころではない事も分かっていたし、カンバーがミラや21号に襲い掛かる可能性もある。

 だからこそのフュージョンの申し出だが、まさかベジータが言うとは……。

 そう思い、悟空は嬉しそうに笑った。

 ベジータが合体を好まない事は知っていた。いや、合体というよりも吸収などを含む『自分の力以外によるパワーアップ』全般をベジータは嫌っているのだ。

 本来その者が持つ力ではない。だからフェアではないとベジータは考えている。

 ある意味でベジータは悟空以上にスポーツマンなのだ。彼の精神は武道家というよりは競技者(アスリート)のそれに近い。

 リゼットやターレスならばそれこそ、『殺し合いの場にフェアも何もない』と断じてしまうだろう。

 悟空もフェアな戦いを好む武道家だが、しかし悟空は案外これで相手が強くなる手段には目くじらを立てずに凄いものは凄いと純粋に褒めることが出来る。

 だがベジータはそうではない。彼はずっと納得がいっていなかったのだ。

 本当は以前のブロリーとの戦いにも納得がいっていない。

 ゴジータとなって相手を倒したのはベジータにとっては勝利ではなく敗北である。

 

「さあ、どうするんだカカロット! フュージョンするのか、しないのか!?」

 

 ベジータの問いに、悟空は堪え切れないかのように笑い声をあげた。

 その反応にベジータが苛立つ。

 

「何が可笑しい!?」

「……いや、可笑しいんじゃねえ。嬉しいんだ。フュージョンしてえってよ……おめえの口から聞けたのがよ」

 

 悟空の喜びはベジータの成長に対してのものであり、そして彼が歩み寄ってくれた事へのものであった。

 昔の、プライドを優先して常に一人で戦おうとしていたベジータからは想像出来ない姿だ。

 プライドを捨てた? いや、そうではない。

 個人のプライドよりももっと大事なプライドを……何が何でも家族を、そして地球を守るというプライドをベジータは見付けてくれた。

 それが悟空にとっては、本当に嬉しい事だった。

 

「勘違いするなよカカロット。俺は……」

「分かってるさ。自分の為じゃねえんだろ? ましてやオラとの融合なんて本当は死んでもやりたくねえはずだ」

 

 ベジータは決して自らの勝利の為に拘りを捨てたのではない。

 自分一人の為ならば彼は喜んで死を選ぶ。そういう誇り高い男だ。

 その彼が拘りを捨てたのは、この星にいる息子の為であった。

 

「最高だぜ、ベジータ」

 

 せっかくベジータが歩み寄ってくれたのだから、断る理由などどこにもない。

 悟空もベジータから離れ、そして反対側でフュージョンのポーズを取った。

 二人はそのまま、一糸乱れぬ動きでフュージョンポーズを決め、指を合わせる。

 

「な、何だ!?」

 

 レイジングブラストを受けた衝撃で正気に戻ったカンバーが戻って来た時そこにあったのは光のドームであった。

 圧倒的な気の余波(・・)によって発生した輝きの中から、先程までいなかった男が現れる。

 逆立った青色の髪に額に垂れた一房の髪。

 鋭い刃のようなその顔立ちは悟空のようであり、ベジータのようでもある。

 メタモル星人の衣装を身に着け、戦士はカンバーを前に不敵に笑った。

 

「何だ貴様は……何者だ!?」

 

 見知らぬ……だが凄まじく強い敵の出現にカンバーが戦慄き、その正体を尋ねた。

 それに対し融合戦士――ゴジータは静かに答える。

 

「俺か? 俺は孫悟空でもベジータでもない」

 

 言いながら、気がゴジータへと回帰し始めた。

 ゴジータブルーの更に上の領域。完成ゴジータブルーへと変わろうとしているのだ。

 瞬く間に神の気を全て取り込み、やがてゴジータは今まで以上の超戦士へと変わった。

 

「俺は……貴様を倒す者だ!」

 

 そう宣言し、ゴジータの姿が消えた。

 いや、消えたのではない。ただ速すぎて見えなかっただけだ。

 ゴジータはカンバーの後ろに背を向けて立っており、そして直後にカンバーの胸板が無数の拳を受けたようにへこんだ。

 

「ぐおおおっ……!」

 

 あまりの威力にカンバーのマスクから血が溢れ、膝が震える。

 だがカンバーは倒れなかった。

 身体がガクガクと震え、それがダメージによるものなのか恐怖によるものなのか、それとも歓喜によるものなのかはカンバー自身にも分からない。

 だがどちらでもよかった。

 今ここにいるのは敵だ。それも、今まで出会った事がないほどの素晴らしい強敵だ!

 ならば、理解する事などそれだけで十分ではないか。

 

「ク、ククク……素晴らしい強さだ……! これだ……これこそ俺が望んでいたもの! お前こそ、俺の敵だ! さあ……俺と……戦えええええッ!!」

「言われなくてもやってやるさ」

 

 カンバーが喜びに顔を歪めて突撃し、ゴジータも正面からそれを迎え撃つ。

 カンバーの比類なき剛拳を正面から受け止め、それ以上の威力で拳を叩き込む。

 よろめいた所を狙って跳躍し、顔面に膝蹴り。そこから後方宙返りしつつサマーソルトキックで顎を蹴り上げる。

 空中で弧を描いて地面に降り、着地と同時に跳躍して独楽のように高速横回転した。

 そして遠心力を上乗せした右の回し蹴り! 間髪を容れず更に回転して今度は左足の蹴りを打ち込む。

 カンバーの巨体が派手に吹き飛び、いくつもの岩山を貫通して飛んでいく。

 ゴジータはその先に一瞬で回り込んでカンバーを蹴り上げ、カンバーは空にあった鎖へと衝突してしまった。

 

「ぐおッ……」

 

 鎖にぶつかって跳ね返りつつ、カンバーはゴジータへと気功波を発射した。

 だがゴジータは怯まない。カンバーの気功波に手を当てて、まるでその側面を滑るようにして更に加速する。

 そこから跳び、空中で三回捻り半を決めてカンバーの背後へ回り込んだ。

 まだ気功波を発射している最中のカンバーを容赦なく蹴り、地面へと叩き落す。

 しかしそのまま落下はさせない。またしても先回りし、落ちてきたカンバーを蹴り上げて再び空中へ輸送し、そしてまたも回り込んでダブルスレッジハンマーで地面へ戻した。

 カンバーが衝突した地面が爆ぜ、巨大なクレーターが出来上がる。

 だがカンバーは震えながらも、まだ立ち上がってきた。

 

「ま、まだだ……! 俺はまだ、全てを出していない! ここからが、俺の本気だ!」

 

 カンバーはそう言い、手の中にパワーボールを生成した。

 狙いは大猿化か。そう読みながらもゴジータはカンバーを止めなかった。

 同じサイヤ人だ。カンバーの気持ちは分かる。

 負けるにせよ勝つにせよ、己の全てを出しきって戦いたいのだろう。

 ならば迎え撃とう。そして、その上で捻じ伏せてやろう。

 そう決意し、ゴジータはカンバーの変身を待った。

 

「弾けて、混ざれ!」

 

 カンバーが空にパワーボールを投げ、月へと変える。

 分身リゼットはこの時、パワーボールを破壊しようと捨て身レイジングブラストの準備をしていたが、いつの間にか近くに来ていたゴジータが無言で肩を掴んだ。

 やらせてやりたい、という事なのだろう。

 分身リゼットは困ったように肩をすくめ、そして口を尖らせた。

 

『サイヤ人の悪い癖ですよ、そういうの』

「悪いな。だがあいつとはとことんまでやってみたいんだ」

 

 ゴジータはそう言い、カンバーを見上げる。

 彼等の前でカンバーは見る見るうちに巨大化し、黄金の大猿へと変わっていった。

 さあ、ここからが本番だ。




【戦闘力】
・ゴジータ:630億
超サイヤ人ブルー(完成):378兆

・黄金大猿カンバー:200兆

Q、これもうビルスをぶっちぎってね?
A、まあ(あくまでこのSSでは)ぶっちぎってます。
このSSではビルスの戦闘力はシャンパよりちょっとだけ強い115兆に設定してますし……。
でもまあ、ビルスは力に上限がないと自称してるし、いけるいける。
多分ビルスは我儘の極意みたいに天井知らずに戦闘力が伸び続けると思われます。
しかもダメージを受けて興奮しないと戦闘力上昇効果が発生しないベジータと違って戦っているだけで上昇すると考えると115兆はあくまで『10割』であって『全力』ではない……。
つまり、まだ数値は伸ばしていい……っ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。