ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第10話 乱入者

 モロの相手を21号が引き受け、フューの相手をミラが引き受けた。

 これで再び悟空とベジータはカンバー一人と対峙する形になったわけだが、残念ながら状況は好転していない。

 モロによる気の吸収でパワーダウンしてしまっているのは変わらず、超サイヤ人になる事すら出来ない。

 パワーを奪われているという点ではカンバーも同じなのだが、カンバーと悟空達では内包している総エネルギーの容量が違う。

 悟空を10とするならばカンバーの気は1000を上回る。仮に両者から9を吸い取ったならば悟空は一割まで弱体化してしまうが、カンバーは991になるだけで、余裕で戦闘を続行出来てしまう。

 しかも最悪な事に、現在進行形でまだ吸われ続けている。

 モロのエネルギー吸収は対象と向き合う必要すらなく、星から吸い上げているだけで自動的にその星にいる者のエネルギーも奪ってしまうのだ。

 今はまだ弱体化しただけだが、この状況が続けば立っている事すら困難になるだろう。

 

「おいカカロット、仙豆は持って来ていないのか!?」

「一応持って来てるけどよ……モロを何とかしねえと仙豆を使ってもな……」

「だがこのままでは戦うどころではないぞ!」

 

 今回の監獄惑星への誘いに応じた際、悟空は念の為に仙豆を多めに持って来ていた。

 確かにベジータの言うように仙豆を使えば体力を回復する事は出来る。

 だがモロの吸収は続いているのだから結局はすぐに元に戻ってしまうし、自分達が回復すればするほど、モロにエネルギーを与えてしまうのだから21号を不利にしてしまうだろう。

 目先の事ばかりを考えて回復を続け、それが原因で21号がモロに負けてしまえば最悪だ。

 だから悟空は仙豆の使用に踏み切るかどうかを考えていた。

 

「クククッ……どうやら回復手段があるようだな。

いいぞ、いくらでも回復するがいい。その分だけ俺のご馳走が増えるだけだ。

あれだけ美味いエネルギーならばいくらでも食べたいくらいだ」

 

 モロは上機嫌に話し、悟空達に回復手段があるならば回復しろと促した。

 エネルギーを食うモロにとって悟空達のエネルギーはまさに極上のご馳走だ。

 あれだけ老いて死を待つだけだった老体が若返る程に悟空達のエネルギーは素晴らしい。

 悟空達が回復すればするほどモロが喜ぶ……とはいえ今のままでは戦うどころではない、というベジータの言葉はもっともだ。

 ならば仙豆を使い、短期決戦でカンバーとモロを倒す以外にない。

 悟空は仕方なく仙豆を使おうと、いつも仙豆を入れている小袋へ手を伸ばし……そこでベジータが、ふと何かに気付いたように表情を変えた。

 

「……待てよ。仙豆……そうか、仙豆か!

おいカカロット! 俺に仙豆を全部寄越しやがれ!」

「え? いや、全部は流石に欲張りすぎだって……」

「そうじゃない! いいから早くしろ。間に合わなくなっても知らんぞー!」

 

 突然のベジータの要求に悟空は困惑する。

 しかしベジータの戦いのセンスは認めていた。

 この場面でベジータが無意味に仙豆を要求するとは思えず、袋ごと仙豆を渡した。

 ベジータは受け取ってすぐに仙豆を一粒口に入れると気を全開にして超サイヤ人ブルーに変身。

 青いエネルギーを迸らせながらモロに向かって叫ぶ。

 

「おい貴様! もっと俺達のエネルギーが欲しいんだってな! ならば好きなだけくれてやろう!」

 

 それは誰の目から見ても分かる、明らかな愚行だ。

 一体何を考えているというのか……ベジータはモロに吸収されるだけだと分かっているはずなのに気を高め、そしてモロは嬉しそうに気の吸収を始めた。

 みるみるうちにベジータの気が少なくなるが、ベジータの顔から笑みは消えない。

 むしろまるで楽しんでいるような素振りさえ見せながら、ギャリック砲の構えを取った。

 それを見てモロは彼の狙いに気付いたように笑う。

 

「はっ! どうせ大量の気を一気に吸わせて自滅させようってんだろ!?

馬鹿め! そんな子供だましに引っかかるか! このまま吸い尽くしてくれる!」

「なるほど、やはり口からエネルギーを『食う』のか。しかもそのエネルギーを自分にプラスするようだな」

「そういう事だ。つまり貴様の狙いは絶対に俺には通用しない」

「絶対に……だな? ククク……避けるなよ~~~……」

 

 ベジータが笑みを深め、気を高める。

 このまま撃っても食われるだけなのは明らか……しかしベジータに止めようという素振りはない。

 

「あいつの言う通りです! あのまま撃っても無駄に吸収されるだけ……ベジータさんは馬鹿だ!」

 

 この場の全員の気を吸収してもピンピンしていたような男が、ギャリック砲の一発を吸い込んだくらいで容量オーバーなど起こすものか。

 ベジータのあまりに浅い作戦に21号が非難の声をあげるが、悟空は腕を組んで事の成り行きを見守っていた。

 

「まあ任せてみようぜ。心配すんな……ベジータの奴は天才だ。きっと何か狙いがあるさ」

 

 ベジータの戦いの才能は悟空も認めている。

 彼は決して無駄な事など…………結構過去にやらかしているが、それでもここぞという時の判断力は本物だ。

 ベジータがああしている以上、そこには何か狙いがあるのだろう。

 それはライバルであり、今でも競い合う男へのある種の信頼でもあった。

 

「ギャリック砲ーーーッ!!」

「馬鹿め!」

 

 ベジータの掌から紫色の奔流が発射され、モロは大喜びで口を開いた。

 それを見てベジータは口の端を吊り上げ、その場からダッシュした。

 自ら発射した少し遅めのギャリック砲を抜いてモロの前に現れ、そして大口を開けたモロへ何かを投げた。

 

「そらっ、良いモンやるよ!」

 

 何かがモロの口に入り、飲み込んでしまう。

 それと同時にベジータは高速移動で退避した。

 直後によろめいたモロの肩にギャリック砲が着弾し、モロが地面を転がる。

 今のギャリック砲はただの魅せ技に過ぎなかったので見た目の派手さと比べて、実はそこまで威力はない。

 だからモロのダメージも浅いのだが、問題はあの程度のギャリック砲を回避出来なかった事にあった。

 

「ぐ……お……!?

な、何だこれは……腹が……腹が膨れて……。

き、気持ちが悪い……!」

 

 モロは腹を押さえながらヨロヨロと立ち上がる。

 彼の腹は奇妙に膨れ上がり、まるで妊婦のような有様となっていた。

 しかし変わったのはそれだけではなく、失われたはずの角や腕が再生してしまっている。

 ベジータは一体何を彼に食わせたのだろうか。

 その正体を悟空が悟り、ハッとしたような顔になった。

 

「そうか……ベジータ、おめえ! 仙豆を食わせやがったな!」

「そういう事だ。随分腹を空かせているようだったからな……俺様からの大サービスだ」

 

 ベジータがモロに食わせたのは仙豆だ。

 それもあの様子を見るに一粒ではなく、かなりの量を同時に放り込んだのだろう。

 仙豆は便利な回復アイテムのように思われているが、本来の用途はカリン様の食料である。

 一粒食べれば十日は何も食べなくても生きていけるほどに栄養に優れた仙豆だが、どんな薬も取り過ぎれば毒となる。

 リゼットは少食であるという理由で仙豆を満足に活用出来ずに一度食べてしまえばしばらくは仙豆を再使用出来ない。

 過ぎた満腹感はただ辛いだけだ。

 それと同じで、ベジータによって多くの仙豆を無理矢理食わされたモロは、満腹になり過ぎたのだ。

 あれでは満足に動く事さえ出来ないだろう。

 

「どうだ、もう腹は減っていないだろう? 感謝しろよ……俺の優しさにな」

「き、貴様あ……」

 

 モロにとって気とは、『食う』という表現を用いていたように食料である。

 故に、何も食べられなくなるほどに満腹にしてやれば気も吸収出来ないのではないかとベジータは考え、賭けに出た。

 仮に外れていてもモロを不調にする事は出来るはずだし、少なくとも今よりはマシになると思ったのだ。

 結果は……大成功。モロのエネルギー吸収がなくなり、大分楽になった。

 そもそも気を主食とするモロにとって、固形物はあまり食べ慣れた物ではない。

 今のモロは言ってしまえば、胃袋にセメントを詰められて満腹感だけを与えられたようなものであった。

 

「やるなあベジータ! ところでオラ達の分の仙豆はちゃんと残してるよな?」

「貴様に心配されるまでもない。まだ三つ残している」

 

 いくらモロのエネルギー吸収を封じても、既に吸収されてしまった気はどうしようもない。

 なのでベジータは自分と悟空と、ミラの分の仙豆だけはしっかりと残していた。

 

「ミラ!」

「すまん、助かる」

 

 まずベジータはミラに仙豆を投げ、ミラもそれをすぐに食べて回復する。

 次に悟空に袋を返そうとしたのだが、その瞬間にモロの目が光った。

 やられっぱなしでは終わらないという事だろう。

 超能力でベジータの手から仙豆を入れた袋が弾き飛ばされ、地面に落ちて転がる。

 そのまま岩の隙間に入り込んでしまい、どこにいったか分からなくなってしまった。

 

「いいっ!?」

「し、しまったあ!」

 

 まさかの不意打ちに悟空が目を見開き、ベジータも顔を青褪めさせる。

 油断大敵である。いつも変なところでサイヤ人は詰めが甘い。

 モロが嘲笑い、そしていい加減待ちくたびれたカンバーは悟空達を厳しく睨んでいた。

 

「おい……いつまで待たせる気だ。早く俺と戦え……」

「ま、待ってくれ! ちょっとタンマ! タンマ! ちょっとだけ! なっ!?」

「俺と戦え……」

 

 悟空がヘラヘラと笑いながら両手を合わせてカンバーに待ってもらうよう頼むが、カンバーは聞く耳持たずだ。

 むしろ彼にしては十分待った方なのかもしれない。

 どちらにせよ、このままカンバーとの戦闘が再開されれば悟空とベジータに成す術はない。

 まさに絶体絶命の危機……だが突如として上空から何かが飛来してカンバーを吹き飛ばした。

 

『悟空君、無事ですか?』

 

 カンバーを吹き飛ばして降り立ったのは、白く輝く……というよりは本当に真っ白なリゼットだ。

 少なくとも生身ではないだろう。

 悟空はすぐに、ここにいるリゼットが本物ではなく気で創られた分身であると見抜いた。

 

「お、おう、何とかな。神様は……そりゃあ気の分身か」

『ええ。ここにいる私は本体ではありません。しかし援護くらいならば出来るはずです』

 

 今ここにいるリゼットは本人ではない。ただの爆発しないゴーストカミカゼアタックだ。

 しかしゴーストカミカゼアタックが自我を持ち、話せるのと同様にこの分身も会話をする事が出来る。

 加えて大量の気を注がれたこの分身は悟空の完成ブルーを上回る戦闘力を有していた。

 そして本体もこの分身を通してここの映像を見ているので、実質的には弱体化したリゼット本人がいるのと変わらない。

 ただし本体と違って、所詮は分身に過ぎないのでやられてしまっても全く問題がないというメリットがある。

 

「また新しい奴が来たか……だが貴様が誰であろうと関係ない。

ここに来た以上は、力だけが物を言う。さあ、俺と……戦え!」

 

 男だろうと女だろうと、ここにいるならばカンバーにとっては敵だ。

 ならばやる事は一つ……ただ、闘争あるのみ。

 サイヤ人の凶暴性と好戦性を極限まで備えたカンバーの頭にあるのは、『闘争』の二文字のみ。

 それ以外は興味がないし、万事どうでもいい。

 大事なのは相手が強いのか弱いのか。自分を楽しませてくれるのか。ただそれだけだ。

 カンバーの興味が分身リゼットへ向かい、悟空はこれを好機と考えた。

 

「悪い神様、しばらくそいつを抑えててくれねえか?」

『ええ、構いませんが……何かあったのですか?』

「仙豆をどっかに落としちまってさ。モロって奴に気を吸収されちまってっから、このままじゃ戦えねえ」

『なるほど、気の吸収ですか。道理で……』

 

 悟空の説明にリゼットが納得し、頷いた。

 実はこの星に来た時に、何かに引っ張られるような感覚があったのだ。

 ならばまず倒すべきはモロである。

 とはいえ、そのモロは今は21号が相手しているのでリゼットの相手はカンバーしかいない。

 というより誰かがカンバーを抑えておかないと悟空達が負けてしまう。

 元々援護用にこの分身体は送り込まれたのだから、ならばその役目を果たすまで。

 リゼットはカンバーを前に静かに一歩踏み出し、構えを取った。

 

「行くぞォ!」

 

 カンバーが走り、一瞬でリゼットとの距離を潰した。

 圧倒的なパワーに支えられた踏み込みは、そのまま凄まじい加速となってカンバーの巨体を弾丸のように放つ。

 リゼットはそんなカンバーを軽く、蠅でも追い払うかのように手の甲で叩き、力のベクトルを僅かにずらした。

 するとカンバーはまるで自らリゼットを避けるように軌道を変え、明後日の方向にあった岩山へと自身のパワーとスピードで突っ込んでしまった。

 リゼットは何か特別な事をしたわけではない。正真正銘、ただ払っただけ……横から力を加えただけだ。

 カンバーが吹き飛んだのは、カンバー自身のパワーとスピードが原因である。

 前に進む力が強い程、横からの力に対しては無防備となる。

 鉄板をも貫く銃弾が、柔らかな観葉植物の葉に掠っただけで軌道を変える事もある。

 高速で走る電車が強風に煽られるだけで倒れる事もある。

 カンバーは、彼自身の前に進む力が強すぎるが故に吹き飛んでしまったのだ。

 

『……厄介ですね』

 

 カンバーの初撃をいなしたリゼットは、己の手を見て困ったように呟いた。

 カンバーの放つ悪の気に触れた手先が削れてしまっている。

 彼の持つ悪の気は神の気を相殺し、消し去ってしまう。

 そして今のリゼットは神の気で創られた分身だ。つまり相性としては最悪というわけである。

 しかし悪の気は何も一方的に神の気に勝るわけではない。

 相殺――悪の気が神の気を消すように、神の気もまた悪の気を消すことが出来る。

 つまり出力で勝っていればこちらが打ち勝ち、貫通させる事も可能なのだ。

 加えてリゼットは通常の気で神の気を覆うようにその場で分身体の構成を変化させた。

 これで大分マシになるだろう。

 

「ぬうう……妙なまやかしを!」

 

 カンバーが起き上がり、リゼットへと飛び込んで拳を放った。

 それを冷静に避け、手首を取る。

 すると自ら投げられるかのようにカンバーが廻った。

 小手返し――手首を極められているため、相手は脊髄反射で投げに身を任せてしまう。

 カンバー自身には自ら投げられた自覚などない為、摩訶不思議な現象にしか思えないだろう。

 

「があああ!」

 

 不安定な姿勢のままカンバーが拳を突き出した。

 リゼットならば容易く避けられるはずの一撃……だがリゼットは避けなかった。

 カンバーの拳がリゼットの腹を貫いたのと同時にリゼットがカンバーの両耳を叩いて空気を送り込み、鼓膜を破裂させる。

 リゼットのダメージは見た目に反して皆無だ。

 何故なら今ここにいるのは気で作り出した分身体。人の形をしているものの、臓腑も骨も肉もない。

 したがって人体急所は存在せず、気が完全に霧散しない限りは腹を貫かれようが首を飛ばされようが頭を破壊されようが問題ないのだ。

 ある種、疑似的な不死身といってもいい。

 分身体であるが故にその戦力はオリジナルには及ばない。

 だが分身体であるが故に……本体にある、『打たれ弱い』という弱点がこの分身にはなかった。

 いわば攻撃力とスピードが下がった代わりに不死身と化したリゼットがこの分身体だ。

 故にオリジナルでは出来ないような無茶な事も、この分身なら出来てしまう。

 

『はっ!』

 

 地を踏みしめ、攻撃に使う各関節を連結加速させた。

 背骨を含む全身27か所の関節を回転・連結加速させる事で、瞬間的に音速に達する正拳突きと成す。

 勿論関節などないが、無いからこそいくらでも作る事が出来る。

 そればかりか本来あり得ないほどの多関節を構築し、加速部位を増やす事すら可能だ。

 それらを一斉に駆動して放たれる正拳は、普段とは比較にならない速度を生み出す。

 もしもこの技術を使えばミスター・サタンですらマッハを超え、その衝撃で自らの腕を破壊してしまうだろう。

 ならば元々マッハなど超越した速度で戦い、加えて肉体の破壊と無縁のこの分身ならばどうか。

 

「ぐおお……お!?」

 

 リゼットの拳が炸裂し、カンバーが膝を折った。

 そこに休む間を与えずに両手で突きを放つ。

 その突きは高速で捻りつつ繰り出され、そしてカンバーに当たる事なく彼の首スレスレを通過して行った。

 外したのだろうか? 否、そうではない。

 リゼットの今の一撃はカンバーの腕の神経を断ち切る為に放たれたものだ。

 気を纏わせた指をカンバーの脊椎に突き入れ、そして捩じりながら神経を切断した。

 その動きが速すぎて外したように見えるだけである。

 

「……ッッ!!」

 

 ブラン、とカンバーの両腕が文字通り糸が切れたように垂れた。

 いくら力もうと意識しようと、腕はピクリとも動かない。

 当たり前だ。神経そのものを切断されたのだから、脳からの指令自体が腕にまで届いていないのだ。

 だがリゼットの攻撃に容赦はなく、光速の蹴りがカンバーの顎に命中して無理矢理起き上がらせる。

 続けてもう一度蹴りを放ち、鞭のようにしならせた多関節連結による超加速の一撃がカンバーの股間へとめり込んだ。

 

「~~~~~ッッ!!」

 

 カンバーの巨体が浮き上がり、吹き飛ぶほどの威力で急所を蹴る。

 しかもただの蹴りではない。多関節連結を用いて光速を超え、そして鞭打ちの痛み――リゼットが普段から多用する鞭打まで組み合わせている。

 つまりこれは、超光速鞭打による金的というあまりにもえげつない一撃であった。

 そしていかにカンバーといえど、痛みがないわけがない。

 飛び出さんばかりに目玉を剥き、顔から滝のような汗を流して空中で痙攣している。

 そんなカンバーへリゼットが手を向けて物質創造術を発動した。

 一人乗り用のポッドにカンバーの巨体を無理矢理詰め込み、リゼット自身は気の分身であるのをいい事に少女の姿を捨てて別の姿へと切り替わる。

 先ほどまでリゼットだった分身体は次の瞬間にはカンバーと同等の体格を誇る伝説の超サイヤ人ブロリーへと変わっており、ポッドを持ち上げた。

 

『ウオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 ご丁寧に声までしっかり変わっていた分身ブロリーがポッドを圧迫してカンバーの身動きを封じ、投げ飛ばした。

 カンバーは気を解放して無理矢理ポッドを破壊して脱出するが、その僅かな時間で分身体は姿を変えて懐に潜り込んでいた。

 今度はジャネンバ。物質創造で作り出した剣を装備した彼が、その刃の冴えを魅せる。

 連続して刀が振るわれてカンバーの全身を刻み、またも変化。

 第6宇宙の殺し屋ヒットとなり、カンバーの顔の急所を滅多打ちにする。

 カンバーも負けじと反撃の拳を突き出す――が、それは分身体に命中すると同時に絡め捕られてしまった。

 分身体は気付けば第3宇宙の誇るただならぬ肉体を持つマジ=カーヨと化しており、カンバーを捕まえてしまったのだ。

 そこから更に変化し、アラレちゃん。

 頭突きの一発でカンバーを空高く吹き飛ばしてから分身体はリゼットへ戻った。

 そして空を舞うカンバーに掌を向けて物質創造術で止めを刺しにかかる。

 

『"リストレイント"』

 

 カンバーの両手両足にカチカッチン鋼の拘束具が嵌められた。

 その重量は一つ20万トンで合計で80万トンだ。

 以前ミラとの戦いで出した重りは4000トンだったので、実にその200倍の重さとなる。

 悟空ですら通常状態ならば10トンで動けなくなることを思えば破格の重量だ。

 重量が想像しにくければ、カンバーに十匹のゴジラがぶら下がっているとでも思えばいい。

 

『"ギャロウズ"!』

 

 続けてカチカッチン鋼で首に拘束具を創造し、それを念力で浮かせた。

 するとカンバーの首に80万トンの負荷がかかり、首をへし折りにかかる。

 カンバーの顔がみるみる青くなり、口の端から泡を吹いている。

 だがリゼットはこのままカンバーが死ぬのを待つ気はなく、更なる追い打ちへと移行した。

 

『千の剣よ、在れ!』

 

 宣言と同時にカチカッチン鋼で創造した剣が宙に出現した。

 分身リゼットはオリジナルと違い、気弾や気功波、気の具現化といった技は使わない。

 使えない事はないのだが、分身リゼット自身が気で創られた分身であるが故に気の放出技は自らの身を削ってしまうのだ。

 故に物質創造術で技を代用しているのである。

 

 カチカッチン鋼の剣が一斉にカンバーに殺到し、このままカンバーを仕留めてしまうのかと誰もが思った。

 だがカンバーはまだ全ての力を見せていない。

 追いつめられたカンバーが遂に力の全貌を解放し、一気に気が高まった。

 眉毛が消えて髪が伸び、全身をスパークが覆う。

 彼を拘束していたカチカッチン鋼の拘束具が罅割れ、あまりのパワーに監獄惑星を覆う鎖すら砕け始めた。

 

「ぬううううおおおおおおおおッ!!」

 

 咆哮。

 それと同時に拘束具が砕け、カンバーに迫っていた剣も一つ残らず弾き飛ばされた。

 




【紐切り】
高速で腕を捩じりながら突き出し、敵の首に指を入れて神経を切断するヤバイ技。
原典では眼の神経を切って失明させる技だが、首に視神経は通っていないのでこの作品では首の神経を切断して身体を麻痺させる技に変更されている。

【疑似不死身】
地獄先生ぬ~べ~に登場する陽神の術で作った身体のようなもの。
気が完全に霧散しない限り首を落とされようがバラバラにされようがノーダメージ。
リゼット最大の欠点であるライフ初期状態アーマーなしロックマンXレベルの打たれ弱さが消えているので単純な本体の下位互換ではなく、状況と相手によってはリゼット本体より強い。
また、気の分身体なので形状も自由自在でワールドヒーローズのギガスのように色々な戦士に変身する。
これにより本体には不可能な『体格で圧倒する』といった戦法も可能に。
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