ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第6話 バトルジャンキー

 モロの気という精神的トラップをうっかり踏み、寝込んでいたリゼットが起きてきたのは昼に差し掛かろうかという時刻であった。

 まだ本調子ではないが、とりあえず何とか復活したリゼットは抱き枕代わりにしていたカリンを解放し、寝室から出る。

 神殿には昨夜から引き続きザーボン率いる銀河パトロールと四星龍、魔人ブウとタピオン兄弟がいるがミラと21号の姿が見えない。

 リゼットが神殿に姿を見せると同時に小走りでやってきたポポを見て、また何か起こったのだろうと察してしまった。

 

「神様、もう大丈夫?」

「ええ、心配をかけましたね、ポポ。ところで何かあったのですか?」

 

 リゼットの問いにポポは、リゼットが寝ている間に訪れたフューという男の事と、それに悟空達がついていった事を話した。

 全てを聞き終え、リゼットは額を押さえる。

 ……怪しいなんてレベルじゃない。そのフューという男はどう考えても高確率で敵だ。

 タイムパトローラーだからトランクスを知っている、というのはまあ納得出来なくはないが、何故そのパトローラーがわざわざこの時代に助けを求めに来る?

 今までにも何度かパトローラーと共闘はしているが、それは全てドミグラやブラックといった時間に干渉する敵がこちらに干渉してきたからだ。

 その流れの中で自然と共闘の形になっていたに過ぎず、タイムパトロール側から積極的にこちらに助力を求めに来た事はない。

 第一そんな真似をすれば、それこそ歴史を変えてしまうだろう。

 仮に歴史を変えてでも助力が欲しいような切羽詰まった展開になったならば必ず時の界王神が出て来るはずだし、そのフューという青年は信用出来ない。

 少々酷いが、有無を言わせずに確保してそれから事実を問いただすべきだ。

 悟空ならば違和感にも気付けたはずだが……まあ、何せ悟空だ。

 悟空は馬鹿ではないが戦闘馬鹿である。

 怪しいと思いつつも、強い囚人が集められた星という言葉に心が擽られてしまったのだろう。

 半分はフューの正体を探る為にわざと話に乗ってみたというところだろうが……もう半分は多分、ただの好奇心だ。

 本当にもう、これだからサイヤ人は……。

 そこまで察し、リゼットは溜息を噛み殺した。

 それからすぐに悟空達の気を探すが、どこにも気が感じられない。

 どうやら外に気を漏らさない、一種の封印空間の中に入ってしまったようだ。

 しかしこれに関してリゼットはあまり慌てなかった。気は感じられないが、それでも監獄惑星とやらへの道標はあるだろうと思っていたからだ。

 

「タピオン。そのフューという人物は監獄惑星の座標を伝言として残していませんか?」

「あ、はい。確かに出かける直前に言い残していきました」

 

 タピオンは驚いたような反応をしているが、これは簡単に予想出来る事だ。

 そのフューという青年は、目的は分からないが悟空達を誘い出した。

 監獄惑星とやらには『強い囚人』が沢山いるというので、恐らくは悟空達と同じように宇宙の各地から……あるいは様々な時代から彼が連れてきたのだろう。

 つまりフューは強い戦士を集めて何かをしようとしている。

 そしてリゼットは自惚れでなければ宇宙でもトップクラスに入るレベルの戦闘力の持ち主である。

 そんな自分をフューという青年が放置するはずがないと思ったのだ。

 

「行くのですか? お言葉ですが、それは自ら罠に嵌りにいくようなものです。

ここは外で待機し、ベジータ達が出て来るのを待つべきではないでしょうか?」

 

 リゼットが監獄惑星に行こうとしている、と察したザーボンが慌てて待ったをかけた。

 ザーボンは気を感知出来ないが、最新型のスカウターを持っている。

 そのスカウターでも悟空達の位置を特定出来ない以上、監獄惑星というのはその名の通り封印された監獄のようなものと思っていい。

 いわば敵の拠点、胃袋の中だ。

 そんな場所にみすみす、今や第七宇宙の正義の象徴となった地球の神を行かせるわけにはいかない。

 万一リゼットがそれで死ぬような事が起これば第七宇宙は大混乱に陥る。

 それはひいては、象徴を失った『永遠の美』の権威失墜にも繋がるのだ。

 ベジータやソンゴクウとかいうサイヤ人の猿がいくら死のうがザーボンの知った事ではないが、地球の神にだけは死なれるわけにはいかない。主に自分の為に。

 

「勿論私自身がそのまま乗り込むわけではありません。

何が待ち受けているか分かりませんからね。

しかし悟空君達をそのまま放っておく事も出来ません」

 

 悟空ならばきっと大丈夫だろう、という信頼はある。

 しかしそれと同じくらい、悟空とベジータのサイヤ人組は状況を悪化させかねないという不安もあった。

 あの二人が監獄惑星に入る事で、それに触発されてパワーアップする敵が出てしまうような気がしてならない。

 そしてもしそうなった時、悟空とベジータはきっと相手が強くなるまで待ってしまうのだろう。

 何故なら彼等はサイヤ人なのだから。

 リゼットが思い浮かべるのはフリーザが100%になるまで待つ悟空の姿や、セルを完全体にしようとしているベジータの姿……サイヤ人は時々こういう、明らかに不利になる事を自らやってしまう。

 

「ならばどうするのですか?」

「そう難しい話ではありません。要するに私が外にいながら、私が監獄惑星の中に入ればいいだけの話です」

 

 ザーボンの問いに、リゼットは明らかに矛盾している答えを返した。

 自分が外にいながら中にも入る。

 それは明らかに両立不可能な事で、しかし不可能の一つや二つくらい可能にしなければこの世界ではやっていけない。

 第一、この程度の事は天津飯だって簡単に出来る事だ。

 リゼットはその場でゼノバースⅡを発動して光輪を背負い、この状態でのみ発動可能な技を使用した。

 いや、正確には技そのものは普通の状態でも使えるのだが……気を高めた状態で使用した方が、強いのだ。

 

「HEROES・GOD MISSION」

 

 ゴテンクスのスーパーゴーストカミカゼアタックとヤムチャの繰気弾をモデルに編み出したこの技は、『打撃属性の自意識を持った人型の気弾』の生成を可能とする。

 これに更にリゼットの神の気を与えることで疑似的に神の領域へと昇華させて神の戦士として使役する。それが『ヒーローズ・ゴッドミッション』だ。

 ここから更にあの世からの魂の召喚で魂を与える事も可能だが、それは今回はやらない。

 というより、それをあまり頻繁にやると閻魔様の仕事が増えてしまう。

 過去の事件の積み重ねの結果、閻魔は既にリゼットに頭が上がらないがそれでも一応上司だ。あまり苛めたくはない。

 そして今回創り出す神の戦士は……リゼット自身だ。

 正確には人格や思考、能力を限りなくリゼット本人に似せた紛い物か。

 魂を分け与えているわけでもないので四身の拳のようにリゼット本人、というわけではない。

 

「よし……出来ました。いつもより気を込めているので私のフルパワーの三割くらいの強さは持っているはずです。

すぐに監獄惑星へ向かい、悟空君達の様子を見てきてください」

 

 リゼットが指示を出すと分身リゼットはコクコクと首を縦に振り、それからヘブンズゲートで転移した。

 分身とはいえ、あれはリゼットの気なので彼女の見ているものはリゼットにも見る事が出来る。

 とりあえずはこれで様子見をし、監獄惑星があまりに危険なようなら悟空達を何とか連れだした後に外側から破壊してしまえばいい。

 ともかく、ここから先は分身リゼットの頑張り次第だ。

 

 

 実験の開始だけ告げてフューが消えた後、悟空達は情報を交換し合っていた。

 もっとも悟空達が知っているような事はバーダックも知っていたので、実質的には一方的に情報を貰っていただけだがそこを気にしてはいけない。

 バーダック曰く、フューはかつてのトワやドミグラと同じような時間に干渉する罪人であり、これまでにも様々な時間に干渉してはかき乱してきたらしい。

 しかしトワやドミグラと違うのは明確な悪意があってやっているわけではない事。

 フューの行動はどこまでいっても子供染みた興味と探求心から来るものであって、そこに善悪の境はない。

 いわば力だけ持っている大きな子供だ。

 夏休みにカブトムシとクワガタを捕まえて一つの籠の中で戦わせている子供と何ら違わない。

 いわばこの監獄惑星は籠であり、悟空達や囚人達はクワガタやカブトムシ。そして実験とは夏休みの自由研究のようなものなのだ。

 故にフューはその時の気分と興味次第で善にも悪にもなる。トワやドミグラのような野心があるわけでもなく、ただひたすらに自由で自分本位なのだ。

 

「実験と言っていたな……フューは強い奴同士を戦わせて何がしたいんだ?」

「目的なんかありゃしねえよ。言っただろ、あいつはただのガキだってな。

ただ、誰が一番強えのかを見たいだけなんだよ」

 

 ベジータの問いに、バーダックは心底面倒くさそうに頭を掻いた。

 子供はカブトムシやクワガタといった昆虫を興味本位で戦わせる。どちらが強いのかを知りたがる。

 だがそれでカブトムシが勝ったとして、そのカブトムシを使って何かをしたいわけではない。

 ただ単純に、純粋に知りたいだけ。手段がそのまま目的なのだ。

 『×月〇日、カブトムシとクワガタとカマキリとその他いっぱいで戦わせたらカブトムシが一番強かったです。カブトムシはすごいです』……これだけだ。これで終わってしまう。

 誰かが止めて、叱ってやらない限り止まらない。この上なく性質の悪い子供……それがフューの正体であった。

 

「そんなクソガキを放っておくわけにゃいかねえから追いかけてたんだが……トランクスの野郎が逆に捕まっちまいやがってな……仕方ねえから俺もこの監獄惑星まで来たんだが、面倒な事に外に出る事が出来ねえ」

「なるほどなあ。そいつは大変(てえへん)だ。

けど、ようするにフューは誰が一番強えか見ることが出来りゃ満足するんだろ?

だったらやろうぜ! オラも色んな強え奴と戦えるって聞いてワクワクしてんだ!」

 

 バーダックは真面目に話しているのだが、悟空はこれに対し軽いノリで答えた。

 彼の出した結論は要するに『フューの思惑に乗ってやろう』である。

 これには、フューにいいようにされるのが気に入らないベジータが不機嫌を露わにした。

 

「カカロット、貴様……今の話を聞いていたのか? 俺達は奴にまんまと騙されたんだぞ!」

「わかってっさ。けど、ここまで来ちまった以上はどのみち戦うしかねえだろ。

そうすりゃあトランクスともそのうち合流出来るだろうし、この星からも脱出出来るさ。

大丈夫だ、要は負けなきゃいいんだよ」

 

 不機嫌なベジータとは対照的に、悟空は嵌められたというのに上機嫌であった。

 それもそのはずで、何の遺恨も不安もなく強敵と戦えるというのは悟空にしてみれば願ったり叶ったりなのだ。

 前回の力の大会は、負けた宇宙が消えてしまうという状況だった為にせっかくの強敵との戦いも楽しめなかった。

 自分達が勝てば悪くもない者達が消えてしまうという事実がどうしても頭を掠め、ワクワクしなかった。

 その点、今回はそんな事は一切ない。純粋に未知の強敵との戦いを楽しむ事が出来る。

 それを思えば騙された事くらい、悟空にとっては何という事はないのだ。

 

「外に出る事が出来ないとバーダックが言ったばかりだろうが……」

「いやあそんな事はねえと思うぞ」

 

 呆れたように言うベジータへ、悟空は尚も明るく返した。

 確かに力づくでの脱出は出来なかった。

 バーダックと悟空の二人がかりでもあの鎖に罅一つ入らなかった以上、超サイヤ人ブルーの上から界王拳を20倍にしても結果は変わらないだろう。

 ベジータとフュージョンすればあるいは……というところか。

 しかし悟空は決して根拠もなく楽観視しているだけではなかった。

 力以外にも脱出出来る手段があると確信していたのだ。

 

「多分、最後の一人になれば脱出出来るような仕組みがあるんじゃねえかな。なあ、父ちゃん?」

 

 悟空はそう言い、バーダックへ視線を向ける。

 するとバーダックは薄ら笑いを浮かべて肯定した。

 

「……気付いてやがったか。

テメエの言う通りだ、カカロット。この星の囚人達にはどこの時間から奪って来たかは分からねえが、ドラゴンボールが渡されている。

フューが言うには、そのドラゴンボールを揃えればこの監獄惑星からの脱出も出来るらしい。

しかし何故分かった?」

「別に難しい話じゃねえさ。せっかく強え奴を集めても戦わなきゃ意味がねえだろ。

だったら、戦いたくなるようにするだろって思っただけだ」

 

 フューの目的は強者同士を戦わせる事である。

 しかしせっかく集めた戦士達も、『戦う理由がない』と何もしなければ意味がない。

 ならば戦いたくなるように脱出の手段を与え、そしてそれを奪い合う形にすればいい。

 分かってしまえば誰でも答えに辿り着ける、単純な話であった。

 

「カ、カカロット、貴様まさか最初からそこまで気付いて……!?」

「まあ何となくな。この星に強え奴を集めてるって聞いた時点でそうなんじゃねえかとは思ってたんだ」

「バ、バカヤロウ! そこまで分かっていながら何故、みすみす奴の誘いに乗ったんだ!」

 

 悟空は最初からフューの違和感に気付いていた。

 そして監獄惑星の話を聞いた時点で、この星には脱出手段が用意されている事も薄々理解していた。

 恐らくはフューが信用すべきではないという事も勘付いていただろう。

 だがそこまで分かっていながら何故みすみすこの星に突撃してしまったのかがベジータには分からない。

 憤るベジータに、悟空はあっけらかんと言う。

 

「何でって……だってよ、宇宙中の強え奴と戦えるっていうんだぜ?

そんなら……ほら、戦ってみてえじゃねえか。なあ?」

「…………」

 

 悟空の言葉にベジータは黙り込んでしまった。

 彼だけではなくミラも21号も、そしてバーダックも残念な人を見るような生温かい視線を向ける。

 頭は切れる。勘もいい。

 フューにこれといった悪意がない事を見抜く洞察力もあり、監獄惑星に脱出手段が用意されている事まで早い段階で気付けた。

 つまりフューが敵である事も、自分達を騙そうとしている事も、それがほとんど興味本位の実験のようなものである事も初見でほぼ見抜いていたという事だ。

 なのに何故飛び込む? 何故自分からノコノコ監獄惑星に入る?

 この男は馬鹿なのか? いや、馬鹿ではないのだろう。馬鹿ではここまで思考を回せない。

 しかし孫悟空は、紛れもなく戦闘馬鹿であった。

 

「…………貴様は時々、賢いのか馬鹿なのか分からなくなるな」

「いひひひっ」

 

 誉め言葉とも呆れとも言えないベジータの言葉に、悟空は歯を見せて笑った。

 この何とも、抜けているようでどこか鋭く、しかしやはり抜けているのが悟空という男なのだろう。

 しかし不思議と、先程まであった張りつめた空気は完全に霧散していた。




ちょっと悟空のクレバーさを出してきたので、ここで駄目な部分も一つまみ……。

ステップ1・フューの事を初見で怪しいと思いました
リゼット「やりますねえ」

ステップ2・フューの本質もほぼ初見で見抜きました
リゼット「流石です」コクコク

ステップ3・監獄惑星に脱出手段がある事も分かりました
リゼット「閉じ込められているトランクスにも脱出経路があると分かったわけですね。
完全に閉じられた世界でないならば、やりようはいくらでもあります。わざわざ飛び込む必要はもうありません。
流石は悟空君! 完全勝利ですねヤッター!」

ステップ4・飛び込みます
リゼット「何でそうなるんですかヤダー!」

次回からやっと戦闘シーンに入れる……。
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