ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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以前までここに掲載していた支援イラストは第一話後書きに移動しました。


第1話 オッス! 帰って来た孫悟空と仲間達

 ――地球。

 宇宙の中で最も環境が整った、とまで評される事もあるその惑星の空で今、一人の戦士が戦っていた。

 奇妙な跳ね方をした特徴的な髪は黒。同じく黒い眼には力強さが溢れている。

 山吹色の胴着は亀仙流のものをベースとしているが、象徴である『亀』のマークは入っていない。

 かつてこの惑星を侵略する為に送り込まれ、今では地球一の戦士となった男――孫悟空だ。

 彼が迎え撃つのは第9宇宙のトリオ・デ・デンジャーズ。

 三人の連携を涼しい顔でかわし、いなし、蹴りで纏めて薙ぎ払う。

 背後から飛び掛かるのはボタモにオッタ・マゲッタ、フロストといった第6宇宙の戦士達だ。

 悟空は振り向きながら超サイヤ人ブルーに変身し、彼らも纏めて叩き落す。

 

 地球の中核である神殿。その隣には以前ヒルデガーンとの戦いの為にこの星の神が物質創造の術で作った巨大な浮遊闘技場(リング)がそのまま残っている。

 その上で今、悟空は複数の戦士を同時に相手取っていた。

 悟空を取り囲むのは、いずれも宇宙の命運を背負う力の大会に選抜された他の宇宙の精鋭達……アニラーザやトッポ、ジレン、ディスポ、ヒット、カリフラにケール、そしてカリフラとケールがいるのに、どういうわけか二人が合体して生まれるケフラまでいる。

 そればかりか、今まで戦った強敵達までもが連携して悟空を追いつめていた。

 

「だっ! そりゃ!」

『オラオラオラオラオラ!』

 

 悟空がカリフラとケフラというあり得ないタッグを正面から迎え打ち、両者の間で無数の攻防が行われる。

 この戦士達は全員、本物ではない。

 この星の神――リゼットの技の一つである『ヒーローズ・ゴッドミッション』によって再現されただけの偽物である。

 『ヒーローズ・ゴッドミッション』は繰気弾のような打撃性能とスーパーゴーストカミカゼアタックのような自律行動を備えた、要は少し変わっているだけの気弾に過ぎない。

 しかしそこにリゼットの観察力と模倣の技術をプラスする事によりオリジナルと遜色ない動きをさせる事が可能となる。

 とはいえ万能には程遠く、所詮はリゼットの気弾に過ぎないのでリゼットより強い戦士……例えばジレンの完全再現は不可能だ。

 四星龍のような太陽熱を与えることも出来ないし、ヒットは時飛ばしを使えない。

 それでも修行の相手としては十分だ。疑似的にではあるが、今まで戦ってきた強敵……あるいは戦えなかった強敵を相手に限りなく実戦に近い経験を積む事が出来る。

 

『カカロットォォォォ!』

『まずお前から血祭りに上げてやる!』

 

 筋骨隆々の伝説のサイヤ人であるブロリーとケールが前後から悟空を挟むように飛び込み、ラリアットを同時に放った。

 咄嗟に避けた悟空の頭上で二人のラリアットがクロスし、衝撃波を放つ。

 まだ安心する事は出来ない。今度は五人のフリーザが突撃してきた。

 第一形態、第二形態、第三形態、第四形態、そしてゴールデンフリーザだ。

 偽物と分かっていてもフリーザが五人に増えて同時に奇声をあげて突撃してくる様はなかなか恐ろしい。

 

『ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』

「お……っとお!」

 

 第三形態のエクレアのような頭をしたフリーザが高速で両手を動かし、指先からのビームを連射するも悟空はこれを片手で全て弾く。

 しかしその隙に第二形態フリーザが角を悟空に突き刺そうと突撃してきた。

 これを避けるも今度は最終形態フリーザとゴールデンフリーザが悟空を蹴り落とし、下で待ち受けていた第一形態フリーザがアッパーで迎撃する。

 だが悟空は直撃の瞬間に腕を挟んで防御しており、逆にカウンターで第一形態フリーザを粉砕した。

 更に気を解放。全方位に気を放つ事でフリーザを全滅させた。

 それでもまだ終わらない。今度はシルバー大佐、ホワイト将軍、ブルー将軍、ムラサキ曹長が同時に襲い掛かってきた。

 悟空はこれをかめはめ波で同時に消し飛ばし、一息つく。

 今となっては大した事のない敵も混ざっているが、そんなのはこの技にとって意味がない。

 何せ術者はリゼットなのだ。ならば当然、その強さは術者に依存するので『超サイヤ人ブルーより強いチャパ王』というありえない戦士だって作り出せてしまう。

 だが悟空は追いつめられながらも不敵な笑みを崩さず、戦闘の最中でありながら眼を閉じた。

 そして次の瞬間には瞳が銀色に輝き、敵の攻撃を全て避けてしまう。

 『身勝手の極意・兆』。あの力の大会で新たに会得した技を用いて軍勢相手にも優勢に立ち回り、そのまま体力が尽きるまで戦い続けた。

 

 

 

「はーっ……はーっ……やっぱ身勝手の極意は持続時間が弱点だな。長く続かねえや……」

 

 自律気弾相手の修行を終えた悟空は特設リングの上で大の字になって寝転び、激しく呼吸をしていた。

 途中までは圧倒的に優勢だったのだが、結局軍勢を全滅させるまでは至っていない。

 その前に身勝手の極意が時間切れを起こし、戦闘が終わってしまった。

 これが実戦だったならば、そのまま袋叩きにされている所だ。

 寝転ぶ悟空の近くに少女がやってきて、悟空を見下ろす。

 

「お疲れ様です、悟空君。手応えはありましたか?」

 

 外見年齢は十四歳ほど。

 白銀の髪に純白のドレスを着こなすこの少女こそ、先ほどまで悟空が戦っていた戦士達を具現化した張本人……この星の神を務めるリゼットだ。

 リゼットは覗き込むようにして、倒れた悟空を見る。

 

「ぜー、ぜー……あ、ああ、神様、サンキューな。前よりは時間を少しだけ伸ばせたんだけど、やっぱどうしても途中でヘバっちまうな。それに身勝手って言っても当たる時はやっぱ当たっちまう」

 

 力の大会が終わって以降、悟空の当面の目標は身勝手の極意を完全に物にする事となっていた。

 その為にこうして連日神殿を訪れてリゼットに対戦相手を用意してもらっているのだが、今の所は毎回物量に押し切られて途中で変身が解けてしまっていた。

 それに、今回へばってしまった原因は他にもある。

 

「ところで神様、途中で何かオラにちょっかいかけてなかったか? 何回か身勝手の極意がおかしな動きしたんだけどよ」

「あ、バレました? 実は対身勝手の極意用に使えそうな技を発見しまして。つい試してみたくなったんです……これなんですけど」

 

 そう言い、次の瞬間悟空は咄嗟に防御姿勢を取った。

 しかし何も来ない。ただ、本物と錯覚するほどの『気配だけの攻撃』が来ただけだ。

 実際には何もされていない。リゼットは一歩も動いていないし手も動かしていない。

 なのにガードの上から走る衝撃……一撃の重さ、鋭さ。それがリアルに想像できてしまうほどの、真に迫った気配だった。

 

「……今のは?」

「イメージの押し付け……エア打撃とでも言いましょうか。悟空君ほどの達人ともなれば実際に私が攻撃する前に気配だけである程度察して動いていますし、身勝手の極意ともなれば猶更です」

 

 悟空達は戦いの中で、実際に攻撃が来てから避けたり防いだりしているわけではない。

 膨大な戦闘経験値からくる予測や見切りを混ぜ、ほんの少し先に動いているのだ。

 リゼットはそれを利用し、気配だけの攻撃を放つことで本物の攻撃と悟空に誤認させ、防御姿勢を取らせた、というわけだ。

 

「身勝手の極意は頭で考えて動いているわけではなく身体が勝手に判断して避けてしまう奥義です。

つまり悟空君が頭で偽物の攻撃と理解していても、身体が本物の攻撃と誤認すれば勝手に回避動作を取ってしまうんですよ。けれど実際はありもしない攻撃を回避してるわけですから、それは余計な隙となります」

「なるほどなあ……流石神様だ。そういうやり方もあるんだな。

よしっ! そんなら次はそれも最初からありで頼む!」

「もう一戦するんですか? タフですねえ……」

 

 少しの休息ですっかり回復してしまった悟空は飛び跳ねるように起き上がり、軽く体操をする。

 そんな悟空を見てリゼットは困ったように笑い、しかし嫌そうな顔はしなかった。

 

 

 全宇宙の命運を左右した力の大会から数か月ほどが経過した。

 悟空が帰った後もリゼットは、神殿から地上を観察しながら世界のバランスを調整している。

 大会前に一時的にタピオンに譲渡した神の座は再びリゼットに戻り、タピオンは次期地球神として修練に励んでいた。

 あの大会の為に復活させた四星龍も今やここの住人だ。

 最近では一星龍同様に他のドラゴンボールを取り込んでのパワーアップも可能だと判明したが、地球のドラゴンボールは石になってしまっているのでパワーアップ比率は微妙だ。

 何であの人、額に石埋め込んでるの?

 

 ここ最近は、特に大きな事件も起きずに平和が続いている。

 しかし悟空達は相変わらず修行大好きで、リゼットも研鑽を続けている。

 大きく地力が伸びる事はなかったが、以前まではバーストリミット・マイナスとの併用でなければ使えなかった全力のゼノバースを短時間ならば維持出来るようになり、リゼットはこれを旧来の出力を抑えたゼノバースと差別化して『ゼノバースⅡ』と名付けた。

 悟空達の超サイヤ人や超サイヤ人2、3、4といった進化が羨ましかったわけではない。断じてない。

 段階ごとに強化する変身恰好いいとか思っていたわけではないのだ。

 尚、超サイヤ人と違ってⅠ→Ⅱと移行しても見た目は何も変化しない。

 それから、常時発動しているせいで今となってはほぼ素の状態となったアルティメット化の上からバーストリミットを使う事で、一応戦闘力『だけ』ならばあのジレンをも上回る事に成功した。

 ……ただし、こちらはゼノバースに備わっている気の無限回復が失われ、ゴッドミッションやアルティメットブラストといった燃費の悪い技が悉く使用不可能になってしまう上に持続時間がゼノバースⅡより更に短いのでとても使い物にならない。

 さながらそれは、セルの前でドヤ顔をして「僕は父さんを超えてしまったんです」と言い放ち、悟空からも「これでは勝てねえ」と駄目押しされたムキンクスの如く。

 いくら戦闘力だけを上げても、それ以外を疎かにしては勝てる相手にも勝てない。

 なのでリゼットはそっと、アルティメット化+バーストリミットを封印した。

 

 そんな平和が続いたある日の事。

 セルが何の前触れもなく、見知らぬ女性を神殿に連れてきた。

 

「……セルの彼女ですか?」

 

 セルが女性を突然連れて来るという予想しなかった事態への、リゼットの第一声がそれであった。

 多少不意は打たれたものの、女性を観察するとなかなか美人だという事が分かる。

 やや跳ねた茶髪は腰まで伸び、眼鏡をかけた目は18号とよく似た切れ目で顔立ちも整っている。

 服装は赤と藍色の6面分けという、なかなか奇抜なデザインのミニワンピース。

 上からは白衣を羽織り、その左肩にはカプセルコーポレーションのロゴマークが刻まれていた。

 足はストッキングで覆われ、両耳には金のイヤリング。リゼットにはない大人の女性らしい色気と魅力が彼女からは感じられる。

 そして左手の中指に金の指輪……この位置の指輪は確か協調性が高まる、とかだったか。

 対人関係や家族との接し方で悩みでもあるのだろうか?

 

「何故そうなる」

 

 セルが不本意そうに言うが、それ以外に一般人をわざわざここまで連れて来る意味があるのだろうか、とリゼットは考えた。

 気を感知したところ、この女性からは大して気を感じない。

 しかしここで、リゼットは己の間違いを悟った。

 ……違う。一般人ではない。

 彼女から感じられる気は悟空や自分、ピッコロなどの気が混ざり合った……セルに限りなく近いものだったのだ。

 

「気が付いたようだな」

「……人造人間、ですか? それも貴方と同じく有機体の……多くの戦士の細胞を集めたタイプのようですね」

「その通りだ。名を人造人間21号……17号や18号と同じ人間ベースの人造人間だ。

そして、この時代の私でもある」

 

 セルの発言にリゼットは自分の耳がおかしくなったのかと思った。

 このクール系美女がこの時代のセル? いやいや、そんな馬鹿な。

 自分の知るセルは目の前にいるように、緑色のセミと人を混ぜたような変なのだ。

 加えて言うなら、セルに性別というものはないが、それでもその人格はピッコロ同様に男性と断言していいものである。

 セルTSとか一体どこの誰が得をするというのだ。

 

「何か変な事を考えていそうだが、この時代の私をそのまま女性体にしたわけではない。

ドクターゲロの研究所で破棄されていた人造人間21号をベースに、この時代の私を素材として融合させたのが彼女だ。

したがって正確に言えばこの時代の私を取り込んだ別の人造人間と言った方が正しいだろう」

「……まだ研究所があったんですか」

 

 リゼットはげんなりとした声で言う。

 ドクターゲロの研究所は調べられる限り調べて、全て潰したと思っていたがまだ討ち漏らしがあったらしい。

 リゼットは千里眼にも等しい遠視能力があるが、ゲロの研究所をピンポイントで検索出来るようなものではない。

 生物ならば気の探知も出来るが、人造人間ではそれも不可能だ。

 人造人間は、流石に今度こそ打ち止めだと思いたい。

 

「それで、その21号もやはり悟空君の抹殺が目的ですか?」

「いや。妙な事だが、ただ造られて放置されていただけだった。

恐らく暴走の危険性から、起動出来なかったのだろう」

「暴走、ですか?」

「ああ。こいつには魔人ブウの細胞が多く使われている。

恐らくスパイロボが採取したのだろうが……その結果、異常な食欲を抱えて慢性的なエネルギー不足に陥ると言う欠陥を抱えてしまったのだ」

 

 セルの説明にリゼットは思わず顔を顰めた。

 魔人ブウの細胞……それはいくら何でも、危険すぎる代物だ。

 今でこそ魔人ブウは人並みの知性と善性を備えているが、それは太っていたけど温和で優しかった大界王神を吸収したからこそ得られたものである。

 しかもその上でリゼットが悪性だけを『破壊』し、ようやく今の魔人ブウになった。

 しかし魔人ブウというのは本来、貪欲に相手を吸収して進化していく存在だ。

 魔導士ビビディが創ったと界王神は語っていたが、リゼットが時の部屋で調査した結果、実はそれは間違いであったという事も判明している。

 魔人ブウそのものは太古から存在しており、ビビディはそれを目覚めさせる方法を知っていただけに過ぎない。

 そして魔人ブウは永い休眠と大暴れを繰り返すうちに人間の悪しき部分をどんどん吸収し、純粋ブウと呼ばれる姿になったのだ。

 つまり純粋ブウと呼ばれる、この世界では登場しなかったあの小柄なブウすら原初の魔人ブウからはかけ離れた姿の可能性が高い。

 ここからはリゼットの憶測になるが、恐らく魔人ブウには元々悪も善もなく、己の力になりそうなものを無差別に吸収するだけの……言うならば生物版ビッグゲテスターのような存在だったのではないだろうか。

 そこに悪の要素だけを意図的に与え、そして純粋ブウを『完成』させたのがビビディ……と思えば、彼が創ったというのもあながち間違えた表現ではなくなる。

 無論、憶測だ。確証はない。

 しかしどちらにせよ、魔人ブウの細胞が恐るべき貪欲さと飢えを常に抱いているのは間違いないだろう。

 

「ドクターゲロも危険な事をしますね……いくら彼が天才といってもそれは……」

「ああ、到底制御出来るものではあるまい……通常の方法ではな」

「……? 通常ではない方法ならば可能、とでも?」

 

 魔人ブウの細胞は人間の手に負えるものではない。

 ビビディですら結局、魔人ブウを制御する事は不可能だった。

 しかしドクターゲロはやはり、人知を超えた超天才だったのだろう。

 魔導士ですら制御不可能だった魔人の細胞すら制御する方法を確立しかけていた。

 

「『リンクシステム』。21号の中の魔人細胞を制御する為にゲロが造り出したシステムだ。

こいつは、対象の中に異なる魂を注入する事でその力を制御し、抑える事が可能となる。

肉体ではなく魂を制御するのだ。理論上これで抑えられないものはない。

このシステムにより、21号の中には現在彼女とは別の魂が入り込み、食欲にブレーキをかけ続けているのだ」

「その魂こそが……」

「そう。この時代の私だ」

 

 リゼットは思わず溜息を吐いた。

 それはドクターゲロへの感心と称賛と、そして呆れと嘆きが入り混じったものだ。

 ……天才だ。本当に、そうとしか言いようがない。

 ドクターゲロは魔導士すら制御不可能だった魔人ブウすら制御しようとしていた。

 そして未完成ながら、その方法を確立した。

 魂の操作と制御……それはもはや神の領域だ。

 リゼットのような、地球人が神という役職を与えられただけのなんちゃって神様ではない。

 閻魔や界王神といった、生まれながらの神々にしか許されない禁忌の領域である。

 最終的にそれを応用して見事完成にまで漕ぎつけたセルとブルマも大概だが、やはりゲロの天才性と閃きあってのものだろう。

 勿体ない……本当に心底、ゲロの頭脳が勿体ないと思った。

 

「あ、あの!」

 

 リゼットが考えていると、話題の女性――21号が声をあげた。

 そういえば当の本人を置いて話し過ぎた。

 セルが彼女をここに連れてきた意図はまだ分からないが、とりあえず今は彼女とも話しておくべきだろう。

 そう思い顔をあげると、21号は委縮したようにもじもじする。

 

「え、ええと……初めまして、神様。私、21号と申します。

その……セルさんに言われて、今日からここに住む事になりました。

よ、よろしくお願いします!」

 

 外見からは18号と同じクール系のイメージを抱かせたが、実際に話してみれば全くそんな事はなかった。

 見た目に反して礼儀正しく、内気な性格をしているらしい。

 彼女は深々と頭を下げ、この神殿に住むと言い出した。勿論リゼットは初耳である。

 

「セル、これはどういう事でしょう?」

「あ、あのっ、駄目でしょうか? そ、そうですよね……いきなり私みたいなのが住むなんて、そんなの嫌ですよね……」

「あ、いえ。そういうわけではないのですが」

 

 セルに問いかけたが、どうやら拒絶に見えてしまったらしい。

 21号はしゅんとし、だんだん声が小さくなっていく。

 目には涙が滲んでおり、何だかこちらが悪い事をしてしまったようだ。

 慌ててリゼットが違う事を告げると、パアッ、と表情が明るくなった。

 

「あまり邪険にしないでやってくれ。これから、私の代わりに貴女の助けとなるのだ。

性格はあまり闘争には向かんが、それでもスペック上は私を超える人造人間だ。足手まといになる事はないだろう。

それにベースになった21号は科学者だったらしくてな……ブルマほどではないが、なかなか優れた頭脳を持っている。きっと役に立つだろう」

 

 セルはまるで自慢の娘を紹介するように得意気に話すが、その中に無視できない言葉がある事をリゼットは聞き逃さなかった。

 『私の代わり』? それはまるで、これからセルがいなくなるようではないか。

 そこまで考え、リゼットは一つの答えに行き着いた。

 

「……そうか……見付かったのですね」

「……そういう事だ」

 

 セルがこの神殿を去る。

 それはつまり、未来へ帰るという事である。

 トランクスの未来でも、彼の時代のセルが生き残りのナメック星人を見付けて宇宙復活に貢献した。

 それと同じようにセルもまた、生き残りのナメック星人がどこにいるかを探り当てたのだろう。

 ならば後は未来に帰り、彼の世界を救うだけだ。

 セルは元々、リゼットの助けになる為にこの時代に来たのではない。

 彼の世界のリゼットを救う為に、今までここにいたのだ。

 

「シリアルという惑星にドラゴンボールがある事が分かった。

集める球の数が二つで、恐らく地球のドラゴンボールよりも性能は低いだろうが、未来でピッコロを復活させる程度の事は出来るはずだ。

ピッコロが蘇ればダークドラゴンボールも復活する。ダークドラゴンボールは超ドラゴンボールには劣るが強力だ……失われたものを全て取り戻す事が出来るだろう。

……この時代で色々あったが、私もいい加減自分の世界に戻らねばな。

いつまでも義母(リゼット)をそのままにはしておけん」

 

 セルはそう言い、静かに笑った。

 この時代での自分の役目は終わった、とセルは考えている。

 最悪の未来は回避し、今やリゼットは自分よりも遥かに強い。

 後継者として21号も残し、後の憂いも断った。

 今後も色々と起こるだろうが、自分がいない分はこの時代の自分……21号が補うだろう。

 

「そうですね……それが一番いいでしょう」

 

 リゼットも静かに微笑み、セルを快く送り出す事にした。

 困った事もやらかしたし、セルのせいで一度は暴走もさせられたが……それでも彼には助けられた。

 セルがいなければどこかで死んでいた事は間違いないだろう。

 その彼がようやく自分の世界を取り戻しに行こうと言うのだ。

 ならば自分達は、もう彼がいなくても大丈夫だと送り出すべきだ。

 

「セル。そっちの私をよろしく頼みますよ」

「言われるまでもない」

 

 リゼットが軽く握った拳を出し、セルもそれに合わせる。

 セルにとってこの時代での戦いは前哨戦で、帰ってからが本番だ。

 破壊神ビルスが来るかもしれないし、力の大会もあるかもしれない。

 別の時代からゴクウブラックが飛来してくる可能性もゼロではない。

 だがセルならばきっと、こっちで得た経験を元に乗り越えられるだろう。

 そう信じる事が出来た。

 

 その後セルは悟空達に見送られ、タイムマシンに乗って出発した。

 今まで共に戦ってきた戦友との別れだが、寂しさはなかった。

 お前なら絶対出来るという励ましと声援を送り、セルを送り出したのだ。

 大丈夫……もう二度と会えずとも、心は繋がっている。

 それに万一セルが駄目なようなら、その時は自分達が助けに行けばいい。

 

「セル! 負けるんじゃねえぞ!」

「ふっ。そちらもな」

 

 悟空の声援を受け、セルはタイムマシンの中でキザに笑う。

 しかしタイムマシンの中は窮屈そうで少し恰好が付かない。

 考えてみれば原作のセルはタイムマシンに乗る為に卵にまで退化していたんだっけ、とリゼットは思う。

 完全体のセルは第一形態に比べれば小さいので何とか入れるが、それでも2mを超える長身だ。とても狭そうである。

 最後まで変に締まらないのは、自分の細胞のせいだろうか……。

 そんな事を思いながら、タイムマシンが消えた空を、リゼットはいつまでも見続けていた。

 

 

 

 

 

「ちょっとアンタ! アンタでしょ、過去に戻って歴史を変えた馬鹿は!

私は時の界王神! この宇宙の時間を管理してる神様よ!

アンタ、ちょっとコントン都まで来なさい!」

「久しぶりだなセル。タイムパトローラーのトランクスだ」

「バーダックだ。悪ィな、ちょっと来てもらうぜ」

「ぶるわあああああ!?」

 

 もう二度と会えないかもしれない、とリゼットは考えた。

 違う未来に生きるのだからもう道は交わらない……そう思った。

 ……しかし案外、再会の時はそう遠くないのかもしれない。




【戦闘力】
※今回は神殿メンバーのみ。数が多いので地球メンバーは次回。

・リゼット:1兆6000億
ゼノバース:6兆4000億
ゼノバースⅡ:128兆
バーストリミット(100倍):160兆
力の大会終了後も実力を伸ばし、僅かに強くなったリゼット。
出力を抑えた旧ゼノバースと真ゼノバースを別の技として分け、倍率2000倍の旧版をゼノバース、真ゼノバースの方をゼノバースⅡと名付けた。
ようやく暴走せずにMAXを発揮出来るようになり、純粋な戦闘力だけならば破壊神を凌駕している。
(尚、最近ビルスは力に上限がない事が判明した……)
気の無限供給も健在なので、いくら戦っても気が減る事はない。体力は回復魔法で癒せるので性能的にはその気になればずっと戦っていられるはずだが、あまり長い間ゼノバースⅡを続けると暴走する危険性があるので相変わらず長期戦は安定しない。

また、ゼノバースの他にバーストリミットによる戦闘力上昇も一応可能。
こちらの方はゼノバースの利点を全部捨ててしまうので数値ほど強くない。というかゼノバースⅡより弱い。
一瞬のみの最大火力という点でも、それならゼノバースⅡにはアルティメットブラスト・QTEがあるので圧倒的にゼノバースⅡが上。
持続時間も酷く、ウルトラマンに鼻で笑われるレベル。

・21号:200億
超サイヤ人:1兆 2:2兆 3:8兆
魔人モード:20兆
魔人モード(悪):40兆
未来セルが置き土産として残していった現代のセル。
廃棄されていた人造人間21号をベースにしており、様々な戦士の細胞を併せ持つ。
素の状態でも分離した善ブウの半分ほどの強さを持つやばい奴。
その上S細胞を保有しているので、サイヤ人でもないくせに超サイヤ人に変身可能。
魔人ブウの細胞がかなり多くを占めているようで、本気の戦闘時には桃色の肌の女版魔人ブウとでも言うべき姿になる。
『意志を持った食欲』という第二人格が存在し、そちらに主導権を渡す事で更にパワーアップ。セルのような斑点が身体に浮き出て、紫色に変化する。
普段は大人しく優しい女性だが、この状態の21号は興奮状態に入り、敵をスイーツにして食べてしまう。本人もあまりやりたがらない変身。
尚、この上から界王拳は厳しい。既に変身している状態の上、魔人化は超サイヤ人ブルーのように気の操作を極めた形態ではない。だがゴッドやブルーは魔人ブウの細胞が邪魔をして習得出来ないかもしれない。クリアな気とは一番遠い位置にいそうだし。

・ミラ:2700億
トワ融合モード:4兆500億
バーストリミット10倍:40兆5000億
すっかり神殿に馴染んだかつてのライバル。
トレーニングによってかなり強くなった。
バーストリミットも習得し、界王拳20倍ブルー悟空、キラキラベジータ、超フルパワー超サイヤ人4ターレスに並んだ。
頑張って倍率を上げればもっと強くなる。目指せ20倍!
Q、既にトワ融合モードで変身してるのに、その上から界王拳系の技っていけるん?
A、雰囲気的にブルーと近そうな感じだし、まあ短時間ならいけるかなって。

・四星龍:4000億
黄金化:4兆
界王拳10倍:40兆
リゼットのせいで色々不遇な元邪悪龍。
素の状態(黄金化は変身ではなく、熱を封じ込める外殻を捨てただけ)で強い連中は界王拳系の技を習得するだけでお手軽に戦闘力が爆伸びするから困る。
バーストリミットではなく界王拳な理由は見た目的に、こいつは界王拳の方が絶対合うから。
リゼット考案の技を使いたくなかった……とかではないと思いたい。

・ヒルデガーン:5000億
バーストリミット10倍:5兆
元コナッツ星の守り神にして今は地球の守り神……のペット。
無敵のステルス能力に加えて邪念吸収強化能力を持ち、でかくて強い。
第9宇宙程度ならば力の大会メンバー10人同時に相手にしても蹂躙出来る凄い奴。
しかし第7宇宙の力の大会メンバーの中では最弱である。
残念ながら現状の立ち位置は『見た目だけ強そうだが実際は大した事ない見掛け倒し』という悲しいもの。
バーストリミットを習得させてはみたものの、残念ながら今となってはこれでも不足。
残念だったなヒルデガーン……このインフレ特急に乗る条件は二桁兆なんだ。
最近リゼットの戯れで、芸としてビンゴダンスを覚えた。

・タピオン:80億
バーストリミット10倍:800億
次期地球神候補。一惑星の神としては強すぎるくらいに強い。
どのくらい強いかというと、初期の魔人ブウ(デブ)相手なら善戦出来るくらい強い。
バーストリミットを習得し、界王神くらいならば一撃で倒せるようになったが、残念ながら二軍。
800億は残念ながら今となっては大して強くない。

・Mr.ポポ:10億
バーストポポ(20倍):200億
神の付き人。タピオン同様今のレベルについてこれる強さではない。
しかし神殿に訪れた挑戦者が最初に挑む壁と思えば、あまり強すぎない方がいいのかもしれない。
挑戦者の心へし折りそうだし。
ポポ神様に色々教えてもらった。神様もっともっと凄い。

・カリン様:10億5000万
バーストカリン(20倍):210億
カリン塔の仙猫。武の神様として伝説になっている。
正攻法でリゼットと会うには、まずこのカリンから超聖水を奪って認められなければならない。

・魔人ブウ:2000億
バーストリミット30倍:6兆
力の大会に出れなかった事を気にして修行した。
それにより善悪分離前の強さを超え、リゼットのバーストリミットを見て覚えた。
やはり天才か……。
ちなみに素の強さはこの世界では登場せず終わった悪ブウと同じくらい。
身体への負担など知った事ではないので倍率無限……と思いきや『ブウの攻撃はブウにダメージが通る』が適用されてしまうのか、反動は自傷ダメージ扱いで思ったより倍率を上げられなかった。
とはいえ、これで兆の壁を突破したので彼も一軍に復帰する目が出てきた。
休眠期に入った場合は精神と時の部屋に放り込まれて無理矢理復帰させられる。

・量産型ゴッドガードン(改):150億
21号脅威の科学力で改良されたゴッドガードン×15。
何か強くなったが、今となっては二軍どころか三軍レベルの戦力。
ちょっと頑丈な玩具。

・ミノシア:1億
非戦闘要員のマスコット。

インフレ特急「そうだ、俺達に辿り着く場所なんかいらなかった……止まらねえ限り道は続く!」
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