ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第百三十二話 ひとりじゃない

 ジレンの拳が弾幕となり、リゼットの視界を埋める。

 だがその全てを避け、リゼットのしなやかな指がジレンの喉を突いた。

 衝撃に咳き込み、動きを止めたジレンから素早く離れて気の鎖で拘束。更に光の刃で床をくり貫き、念動力で射出してジレンを床ごと落としにかかる。

 だがジレンはすぐに鎖を引き千切り、跳躍しながら炎のような気をリゼットへと発射した。

 これをリゼットは亜空間防御で防ごうとするも、紅蓮の気は軌道を変えて空間の裂け目を避けてリゼットへ襲い掛かる。

 しかしリゼットは腕で円を描くように防御し、完璧に受け流してしまった。

 掌自ら球を成し防御完全とす――気功波だろうが火炎だろうが、防げぬ物はない。

 矢でも鉄砲でも持ってこいといったところだ。ただしアラミド繊維のワイヤーだけは勘弁である。

 ジレンが地面に着地し、二人は五歩分ほど離れた位置で慎重に相手の出方を観察した。

 

「はあっ、はあっ、はあっ! はあ……はあ……っ!」

「ふーっ……ふー……」

 

 両者共に息が切れているが、消耗が激しいのはリゼットの方だ。

 直撃は一度も受けていないが、汗が止めどなく流れ、足が小刻みに震えている。

 リゼットは対技術戦や気の操作で言うならば並ぶ者のいない達人だ。第7宇宙どころか、他の宇宙を見渡しても1、2を争う技量の持ち主だろう。

 だがやはり体力がない。14歳で成長を止めてしまった彼女はどうしても悟空やベジータといった体格に恵まれた戦士と比べるとスタミナで大きく劣ってしまう。

 無論常人どころか、超人と呼ばれる戦士と比べてもリゼットのそれは桁外れているはずだ。

 仮にリゼットと悟飯で体力比べをしても、まずリゼットが勝つ。

 しかしそれは圧倒的な戦闘力(レベル)差で引き離しているだけであり、基礎能力で上回っているわけではない。

 例えるならば悟飯は体力の基本能力値が100でレベルが50、リゼットは体力の基本能力値が20しかないがレベルが300、という感じだろうか。

 故に、同等かそれ以上のレベルの相手と戦うとこうして弱点を露呈する事になってしまう。

 ましてや今は常にバーストリミット・マイナスを発動し続け、一秒の間に万を超える攻防を繰り返しているのだ。

 このまま戦いを続ければほんの数分でリゼットは動けなくなってしまうだろう。

 

 一方のジレンは何度も直撃を浴び、深刻なダメージもいくつか受けている。

 耳からは血が流れ続けているし、急所狙いの攻撃に晒され続けたせいで最早無事な箇所はない。

 しかし体力という面で言えばまだ余裕があった。

 生命力という点において彼のそれはリゼットとは比較にもならない。

 与えたダメージで勝っているはずのリゼットが押されている……それだけの理不尽な差がそこにはあった。

 

「ふー……ふー……大体……わかってきた……。

お前の技量は恐るべきものだ……俺の上を往くと素直に認めよう……。

だが、肉体的な基礎能力を言えばそれほど恐ろしいものではない。

恐らく……元々肉体的に脆弱なタイプの星の人間なのだろう。

生まれついての肉体が根本的に戦闘向きではないのだ……そこのサイヤ人達と違ってな。

だから……急所狙いか、俺の力を利用したカウンター以外の方法で俺にダメージを与える事が出来ずにいる」

「…………」

 

 ジレンの言葉は図星であった。

 いかに気を高め、修練を積み、戦闘力を上げても生まれ持った肉体の造りはどうしようもない。

 神になろうがリゼットは地球人だ。根本的な部分で戦闘向きに出来ていない。

 ナメック星人のように再生出来るように出来ていない。腕も伸びないし巨大化も出来ない。

 サイヤ人のように死にかけたらパワーアップするだとか、超サイヤ人への変身機構を備えている事もない。

 骨の質が違う、肉の質が違う。

 生まれた瞬間に決定した種族差……こればかりはどう足掻いても覆せないのだ。

 

 例えば、こんな話がある。

 孫悟空は幼年期にブルマに銃で撃たれた事がある。

 この時の悟空の戦闘力はわずか10であり、悟飯の妻であるビーデルが近いレベルか、あるいは凌駕していると言われている。

 ではビーデルの頭を銃で撃ったとして、彼女は悟空のように『痛い』で済むのだろうか。

 ビーデルが舞空術なしで幼年期の悟空のように10m以上の跳躍が出来るだろうか。岩を指先だけで砕けるだろうか。地面を割れるだろうか。

 悟空は野生の狼の群れを返り討ちにして夕食にする事が出来た。これらの芸当がビーデルに可能だろうか?

 ――否である。出来るわけがない。

 これが種族の差だ。戦闘力(レベル)が同じでも、基礎スペックが違い過ぎるのである。

 地球人の戦闘力10と、サイヤ人の戦闘力10は決して互角ではない。

 戦闘力とは気の総量を測る物差しでしかなく、肉体的な構造や強度の差までは正確に測れていない。

 

「惜しいな。お前がもっと強い惑星の住民だったならば、俺は負けていたかもしれん」

「……もう勝った気ですか?」

「ああ、勝てる。苦戦する相手である事は間違いないが、最終的には俺が勝つ。

それはお前が一番分かっている事ではないのか?

お前では俺に勝てん……自らの足で武舞台を降りろ」

「…………」

 

 リゼットは横目で悟空を見る。

 悟空も大分回復しており、気が充実しているようだ。

 どうやらここまで稼いだ時間は決して無駄ではなかったらしい。

 ならば出番はここで終わりだ。ジレンの言う通り、これ以上やっても勝ちはない。

 故にリゼットは最後に爪痕だけを残し、悟空に譲る事にした。

 

「そうですね。確かに私は貴方に勝てません。

しかし、勝つのは……“私達”です!」

「――!」

 

 リゼットは背中の光輪を輝かせ、その衝撃を推進力としてジレンへ肉薄した。

 今まで専守防衛に徹していたリゼットのまさかの突撃にジレンの反応が一瞬遅れ、それがリゼットの置き土産を残す事となった。

 気を足に集約させ、まずは蹴り。

 ジレン本人を狙わず、足元の砂を巻き上げてジレンの目を晦ませる。

 

「小細工を!」

 

 ジレンが剛腕を突き出すも、リゼットはこれを紙一重で回避してジレンの目に手を叩きつけた。

 目潰し……ではない。

 親指と人差し指の間で相手の眉間を突く事で一時的に相手の視力と判断力を奪うだけの技だ。

 

「しっ!」

 

 続いて掌打!

 ジレンの顎に命中させ、顎の関節を外した。

 更に指に気を集め、ジレンの脳天を強打。

 この一撃でジレンの頭蓋骨の縫合を外し、ジレンの目、鼻、口、耳から鮮血が溢れる。

 まだ終わらない。

 親指に気を集めてジレンの両耳を貫き、鮮血の華を咲かせる。

 人体破壊――その苛烈な攻撃にジレンが動きを止めたのを見て気を一気に高め、バーストリミットを解除してジレンの目の前に両手を翳した。

 今まで足に絡みついていた枷が砕け、背中の光輪が高速で回転を開始する。

 この一撃を置き土産とし、後は悟空にバトンを託す。

 

「Sparking・Meteor!」

 

 巨大な白い彗星を生み出し、ジレンを飲み込んだ。

 いかにジレンでもこれは効かないわけがない。

 服が破れ、肌が焼け、全身を光が蹂躙しながら凄まじい勢いで生命力が削り取られていく。

 こんな攻撃を受けても何故かズボンが無事なのはお約束だ。

 

「うがあああああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」

「ジレェェェェン!」

 

 ジレンが悲鳴をあげ、ベルモッドが身を乗り出してエースの名を叫ぶ。

 まさか負けるのか? あの無敵のジレンが、こんな事で。

 嘘だ、あり得ない。これは夢か?

 だが悪夢は続き、リゼットは更になけなしの体力を振り絞って彗星に気を注ぎ込み、ジレンを追い詰めていく。

 最後の輝きとばかりに光輪が出力を増し、彗星が一回り巨大化した。

 更にヒルデガーンまでもが実体化し、追い打ちの火炎放射を浴びせかける。

 

「があああっ! あっ、ぎあっ、ああああァァァあああああ!

ぐおああああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーーーッ!!!」

 

 まるで断末魔のようにジレンが絶叫し、感じられる気が減っていく。

 いかにジレンであっても限界はある。

 ここまでの戦いで彼も少なからず消耗させられてきた。

 ベジータに、セルに、四星龍に、ピッコロに。

 第7宇宙の強者を相手に連戦を強いられ、その上でリゼットに打ちのめされた。

 その彼にとってこの一撃は痛烈だ。

 一瞬のみの全力を発揮したリゼットの彗星はジレンですら仕留めるほどの威力を誇っている。

 

 

 ――薄れゆく意識の中、ジレンは師匠の背中を見た。

 俺は夢を見ているのか……ジレンはそう思い、己の敗北を悟った。

 しかし師匠は言う。

 何を勝手に負けた気になっているのだ、と。

 そして師匠はジレンの後ろを指さし、笑った。

 

 立てジレン。お前を支えてくれる者達の為に。

 ――お前は、独りじゃない。

 

「ジレン!」

 

 トッポの声が聞こえる。

 

「ジレン!」

 

 ディスポが叫んでいる。

 

「ジレン!!」

 

 ベルモッドの、そして仲間達の声が聞こえる。

 違う、俺に仲間などいない。俺は一人だ。

 俺を支えてくれる者など、誰も……。

 

 脱力感に支配されながらジレンは倒れていく。

 このまま地面に背をつけてしまえば、どれだけ楽になれるだろう。

 だが何故なのだろう……いつまでも倒れないのは。

 不思議に思い、後ろを見る。そしてジレンは気付いた。

 プライド・トルーパーズの皆が……ベルモッドが……そして今までジレンが守って来た全てが彼の背中を押し、支えていた。

 それは幻覚だったのかもしれない。夢だったのかもしれない。

 だが確かに、心はそこにあった。

 

 ジレンは……独りではなかった。

 

「うっ、おおお……おおおおおォォォォォ!!」

 

 ジレンは想像を絶する苦闘の中でも折れずに拳を握り、彗星の中を突っ切った。

 肉体が折れようと焼けようと、それでも心は折れない。朽ちない。

 魂に宿した正義がある限り、何度だって立ち上がれる。

 その背中を仲間達の幻影が後押しし、加速する。

 そして渾身の剛拳を一撃、リゼットへと叩き込んだ。

 

「こっ……ふ、ぅ……!」

 

 リゼットの柔な腹にめり込ませ、少女の身体を「く」の字に折り曲げた。

 そのまま脱力の防御など知らぬとばかりにリゼットを殴り飛ばし、彼女の小柄な身体が三度、四度と武舞台の上をバウンドしながら転がる。

 防御に失敗したわけではない、間違いなく成功している。そうでなければリゼットなど、今の一撃で二つに千切れていただろう。

 落ちる直前でセルがリゼットを受け止めるが、気は既に枯渇寸前であり、口からは血を流して小さく呻いていた。

 何とか意識は保っているが、失神寸前といったところだ。

 セルはすぐに治療魔術で傷を癒しにかかるが、リゼット自身の表情はどこか満足気だ。

 一方で勝ったはずのジレンの顔は苦渋に満ちていた。

 外れた顎を無理矢理戻し、拳を震わせる。

 

「俺ともあろうものが……あんな幻に救われるなど……。

今まで……今までずっと、皆が俺を支えてくれていたとでも言うのか?

俺は一人ではなかったと……。

…………違う!!

俺の心の中にまだ他人に縋る弱さが残っていただけだ!

信頼など無価値! 仲間など要らぬ! 俺は、俺は一人だ! 一人で戦えるッ!」

 

 ジレンは己に纏まりつく幻影を振り払い、叫んだ。

 誰かに救われるなどあってはならない。揺るがぬ最強でなければならない。誰にも負けぬ正義でなければならない。

 誰も追いついて来れなくていい。戦えなくていい。裏切られたっていい。

 俺一人が戦い、俺一人で勝てばいい。

 弱かったあの時とは違う。もう誰にも奪わせないし、奪われる者も作らない。

 ――俺一人で皆を……仲間達を、この宇宙を守ればいい。

 全ての痛みを引き受けても尚倒れぬ、巨大な柱になればいい。

 だから認めてはいけないのだ……この温かさを。安心感を。

 信頼などというものの存在を。

 

「……すみません、負けちゃいました」

「だろうな。負けない戦いを捨ててまでダメージを残す事を優先するからだ」

 

 リゼットはジレンに勝てないまでも、負けない戦いならば出来る。

 だがそれを捨ててしまえば、負けるのは当たり前だ。

 しかし今回はこれでいい。個人の勝負では負けたが、最終的に自分達が勝てるならば無理をする価値がある。

 だからリゼットは悔いずに、悟空を見上げた。

 

「悟空君……後は任せましたよ」

「ああ……勝って来る!」

 

 バトンは悟空に託した。

 そして彼はいつだって、託されたバトンという名の信頼を裏切らない。

 ジレンへと歩いて行く悟空のその背中には、ただ全てを預けられるような頼もしさだけがあった。

 仲間達の期待。リゼットから託されたバトン。

 その全てを背負い、悟空がジレンの前に立つ。

 

 力の大会は最終局面を迎え、ここに二人の戦士が向かい合った。

 仲間達の信頼を背負い、孫悟空が立つ。

 全ての信頼を振り払い、ジレンが鬼の形相で構える。

 

 そして皆が見ている中、悟空が再び銀色の輝きに包まれた。




【カリスマガード】
頭部を抱え、蹲るようにして敵の攻撃を遮断する絶対無敵の下段ガード。
紅魔館のカリスマ当主であるレミリア・スカーレットが使いこなす。
見た目は可愛らしいが、その実強力な防御態勢である。
頭部を守り、人体で最も頑強な部位である背中で敵の攻撃を受ける。
見た目はともかくこれはいい構え……護身完成ッッ!

【レミリア・スカーレット】
東方紅魔郷のラスボス。カリスマガードの使い手。
外見は幼いが実年齢500歳以上の吸血鬼。
東方界隈でも他を寄せ付けない芸の幅広さを持ち、カリスマ当主からヒロイン、熱血主人公、ラスボス、咬ませ犬、ギャグキャラ、キス魔、ロリBBA、ただのお子様とあらゆる役を完璧にこなすマルチタレント。
妹を監禁する外道な姉になる事もあれば、妹思いの優しい姉になる事もある。
持ちネタも豊富でカリスマに、それをブレイクしてのカリスマブレイク、更にそこからの再評価ネタや自虐ネタ、紅魔館爆発、酷いネーミングセンス、バシュッゴォォ、カッ、レミリア敗北! など使いどころに困らない。
二次創作において、とりあえず困ったら出演依頼を出しておいて損のないキャラ。
『レミリアは何をしてもレミリア』と一部では言われており、その芸の幅広さは東方芸能界の大御所の名に相応しい。
強さも元ラスボスであり吸血鬼である点で保証されている一方でチートすぎず、勝たせても負けさせても問題ないという絶妙なバランスを維持している。
本当はチルノより弱いのに見栄を張って強く見せている事にしてもいいし、逆に本当は幻想郷を支配する一歩手前までいく程の強さなのに今は力を抑えている事にしてもいい。
吸血鬼異変の『幻想郷で最も力のあった妖怪により叩きのめされた』の部分も、「実は大した騒動ではなく、ちょっと調子に乗ってたら紫に懲らしめられた」程度の扱いにしてもいいし、逆に「ガチで幻想郷総出でも手に負えなかったので真の幻想郷最強である龍神によってようやく叩きのめされた」という凄い強い設定にしてもいい。
能力も「本当は大した能力がないのに運命を操れるように振舞ってるだけ」から「本当にチートすぎてレミリア自身もあまり使いたくない」まで解釈の幅が広い。
しばらくはフランドールと二人暮らしだった事にして家事全般得意にしてもいいし、咲夜がいないと何も出来ない事にしてもいい。
実はパチュリーや紫以上の切れ者として扱われることもあれば、チルノ以上の⑨にされる事もある。
かと思えば⑨の振りをしているだけで全て見抜いていたり、逆に全部解ってるような顔をして実は何も分かっていないというキャラ付けも可能。
最強から最弱、切れ者から⑨、カリスマからマスコット、善人から外道までとにかく、どんなキャラ、どんな強さにしてもしっかりそれを演じてくれる凄いおぜうさま。
他キャラとの絡みも定番の紅魔組は勿論、対戦した事のある萃香や依姫、お気に入りの霊夢、緋想天でわざわざ答えを教えに来た紫、新聞愛読者で射命丸、カリスマセンス繋がりで希望の面の人、姉繋がりでさとり、などどのキャラとも気軽に絡ませられる。
とにかくフットワークが軽く、どこに行かせても誰と絡んでも、何をやらせても違和感がない。
何ならブロリーにラリアットされて岩盤にめり込んでても違和感がない。
SSや動画ではオリ主さんや他作品キャラなどの外来人の強さをアピールする為の対戦相手として頻繁に出演依頼を受ける。
もし私が東方で二次創作を書くなら、確実に主人公に抜擢するだろうキャラクター。
お嬢様可愛い。
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