ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第百三十話 孤独な正義

 ピッコロとジレンが正面から組み合い、手四つの姿勢となった。

 二人の腕に血管が浮き上がり、どちらも負けじと力を込めていく。

 パワーで勝るのはやはりジレンだ。彼の剛腕はピッコロすらねじ伏せ、じわじわと押し込んでいく。

 だがこの体勢に持ち込んだ時点で有利はピッコロにある。

 彼は目から怪光線を放ち、ジレンの顔へ炸裂させた。

 

「ぬっ……小賢しい真似を……」

 

 ダメージは浅い。

 だが怯んだ一瞬の隙を突いてピッコロが頭突きを叩き込んだ。

 衝撃で手が離れ、今度は膝蹴り。ジレンを空高く吹き飛ばしてその先へ回り込む。

 

「つあッ!」

 

 ダブルスレッジハンマー。

 轟音と共にジレンが落とされ、その向かう先は武舞台の外だ。

 咄嗟にジレンは外へ向けて気弾を放ち、その反動で武舞台へ戻る。

 そればかりか、追い打ちをかけるべく向かって来たピッコロを蹴り飛ばして武舞台の外へ弾き出した。

 

「ピッコロ!」

 

 悟空が思わず叫ぶが、ピッコロの顔には余裕の笑みが浮かんでいる。

 彼は即座に手を伸ばしてジレンの肩を掴み、腕の長さを元に戻す。

 するとその勢いでピッコロがジレンへ向けて飛び、加速を乗せた蹴りを放った。

 それもジレンは冷静にブロックしているが、すぐさまピッコロの次撃が放たれる。

 二人は落ちながらも高速の攻防を続け、腕と脚が幾度も交差して打撃音を響かせた。

 そして武舞台に落ちる寸前で一度距離を取って宙返り。

 地面に着地すると同時に飛び出し、二人の腕が衝突した。

 だがピッコロの方が次への繋ぎが早い。

 ガードされる事を予想していたように膝蹴りへ移行し、ジレンに防御を強いる。

 その防御すら織り込み済みだ。左足を軸に回転し、回し蹴りを側頭部にめり込ませる。

 身体を支える為に思わず地面に付いたジレンの腕を蹴りで払い、無防備に倒れた瞬間に踵落とし。

 ジレンはこれを、得意の眼力で防ごうとするが……それすらも強引に突破してきたピッコロの踵が彼の胸にめり込んだ。

 

「ぬっ……」

 

 ジレンはすぐにピッコロの足を掴んで持ち上げつつ立ち上がり、彼を逆さにする。

 だがそれこそ待っていましたとばかりに、ピッコロは口からの破壊光線をジレンの顔へ打ち込んだ。

 思わずピッコロを放してしまうジレン。宙に跳び、すぐに体勢を立て直すピッコロ。

 単純な実力ではジレンが勝るものの、ピッコロは巧みな動きで彼に食らいついている。

 

「強いな……」

「いえ、強いだけではありません。巧くなっています」

 

 ピッコロの強さにセルが感心するが、リゼットはそれだけではないと補足を入れた。

 ピッコロが先代との融合で得たのは知識とパワーだけではない。

 先代の経験と技術もピッコロに継承されていた。

 長い年月を生きる事でのみ得られる膨大な経験値が今の彼には蓄積されているのだ。

 圧倒的なパワーと経験に裏打ちされた技術。

 その二つを併せ持つ今のピッコロは、ジレンといえどそう簡単には倒せないだろう。

 

「……これは、不味いかもしれないですますよ」

「何?」

 

 戦いを見守っていた第11宇宙の天使マルカリータが独特な話し方で己の宇宙の不利を告げた。

 それにベルモッドが振り向き、まさか、と言う。

 

「よく見ろ、ジレンの方が強い。手こずってはいるが、負けはしないさ」

「しかし体力を削られています。ジレンといえど体力は無限ではありません。

ですが……ご覧ください」

 

 マルカリータはそう言い、リゼット達の方を見る。

 そこではリゼットがベジータ達に掌を翳し、何かを行っていた。

 すると戦闘不能になっていたはずのベジータと四星龍が立ち上がり、再びセルは四人に分身している。

 更にリゼットは悟空へ近づき、彼まで復活させようとしている。

 

「あ、あいつ……」

「どうやら味方を回復出来るようですね。

そして彼女のあの鎖付きの姿は一度使うと気が乱れて次の使用までインターバルが発生するようですが、その時間を緑色の男に稼がれてしまっています。

逆にあの男を倒しても他の戦士が出てきて、回復されてしまうでしょう。

数の利を見事に活かしていますわ」

「おのれ……小賢しい真似を……」

 

 このままでは圧倒的に不利だ。

 いかにジレンが強くても、一人ではどうしようもない事もある。

 ジレンは第7宇宙の連携を前に、今は亡き師匠の事を思い出していた。

 師――ギッチンはジレンが卒業する事を最後まで認めてくれなかった。

 あの時のジレンは確かに今と比べれば弱かったが、それでも何故師匠が最後まで認めてくれなかったのかはジレンには分からない。

 ギッチンが何故ジレンをプライドトルーパーズに入れたかも不明のままだ。

 だが師匠の死はたった一つの真実をジレンに教えてくれた。

 それは信頼の脆さ。無価値さ。

 仲間などいなくていい。自分一人だけが最強であればいい。そうジレンは悟った。

 

 ――だって誰も……誰も、一緒に来てくれなかったじゃないか……!

 

「うおおおおおおお!」

 

 ジレンが吠え、全身から紅蓮の気を解き放った。

 第7宇宙を手強しと見て、ここにきて遂に力のセーブを止めたのだ。

 呆れた男であった。何とこのジレンという男は今の今まで加減したまま戦っていたのだ。

 第11宇宙最強の名に一切の偽りなし。加減したままでも界王拳20倍ブルーの悟空を寄せ付けなかった彼が本気になった今、その気の圧力は遥かな高みへと達している。

 リゼットはそんなジレンの全力を肌で感じながら表情一つ変えていない。

 だが頬を伝う冷や汗が、彼女の本心を雄弁に語ってしまっていた。

 

「でやああああ!」

 

 ジレンが今まで以上の速度でピッコロへ迫り、拳を彼の腹へめり込ませた。

 今のピッコロはリゼットを除けば第7宇宙最強の戦士だ。

 リゼットのゼノバースには暴走の危険があり、バーストリミット・マイナスを使えば気が乱れる事を考えればピッコロこそが最強かもしれない。

 その彼がたったの一撃でよろめき、膝を突く。

 あまりの光景に戦士達が戦慄するが、即座にピッコロを救うべくベジータが飛び込んだ。

 

「ジレン! 貴様の相手はこの俺だ!」

 

 ベジータがジレンの胸板へ拳を叩き込み、更に連続して攻撃する。

 だがジレンは微動だにしない。

 圧倒的過ぎる気の圧力で完全に攻撃を無効化してしまっている。

 一切の油断を止めたジレンはベジータの首へラリアットを叩き込み、そのまま高速で跳躍。

 その先にあった岩盤へベジータを衝突させ、貫通した。

 

「ぐ、あああ!?」

「消えろ、弱者よ!」

 

 そのままダブルスレッジハンマーへ移行。

 第7宇宙の戦力を前にジレンから余裕が消えた。

 もう倒れている相手を落としもせずに背中を向けて『戦士よ眠れ』などと言ったりはしない。

 ジレンの本気の前に覚醒したベジータが成す術もなく地面にぶつかり、青髪が黒髪へ戻ってしまった。

 そんな彼の足を掴み、振り回して場外へ放り投げる。

 咄嗟に飛行出来る四星龍がベジータを受け止めるが、それはジレンの罠だ。

 一瞬で四星龍の上へ跳躍した彼の蹴りで、四星龍はベジータ諸共場外へ落とされてしまい、ビルス達のいる観客席に転移した。

 

「第7宇宙ベジータさん、同じく第7宇宙四星龍さん、脱落でございます」

「な、なんだと……!?」

 

 四星龍とベジータは強い。

 他の宇宙ならばエースになっていてもおかしくない程に強く、神の領域にすら至っている。

 それが二人一気に落とされてしまい、今まで余裕の面持ちだったビルスの顔に焦りが浮かぶ。

 不味い……まさか、このメンバーでも負けるのか?

 エースだけを集めたこの十人でもジレン一人に及ばないのか!?

 

「ちいっ!」

「合わせろ、ピッコロ!」

 

 今度はピッコロと、分身を含めた四人のセルが突撃する。緑ばかりでとても目に優しい。

 ピッコロは正面から、セルは側面と背後から果敢に攻めるがジレンはもう防御すらしない。

 腕を交差して気を解放し、目障りだとばかりに彼等を吹き飛ばした。

 たったそれだけで分身セルが全滅してしまい、本体も何とかリングに不時着する。

 ピッコロは宙返りしつつ着地し、それと同時に飛び出した。

 再びピッコロとジレンの攻防が始まるが、もうピッコロですらジレンには届かない。

 ピッコロの拳を受けながらジレンが反撃し、ダメージを刻み込む。

 それでも何とかピッコロも蹴りや打撃を放つも、ダメージの差が大きすぎた。

 数秒の戦いの後にピッコロがリングへ落とされ、起き上がる事も出来ない。

 そんな彼を無視してジレンは最も厄介なリゼットの前に、リングを砕いて着地した。

 悟空の回復はまだ終わっていない。

 回復する前にリゼットと悟空を仕留める気だ。

 

(何という気の圧力……仮にバーストリミット・マイナスを解除してフルパワーで挑んでも届く気がしない……)

 

 果たしてリゼットとジレンの差は如何ほどだろうか。

 二倍? 三倍? あるいはそれ以上?

 どちらにせよ、ここにきて完全に戦闘力の格付けは終わった。

 単純なパワー勝負をするならば、万に一つもリゼットの勝ち目はない。

 

「リゼットと言ったな……。

その強さは認めよう。だがお前の実力は既に見切った。お前では俺に勝てん」

「見切った、ですか……是非、どう見切ったのかを教えて頂きたいものですね」

 

 リゼットは平静を装いながら、セルに目配せをした。

 援護しろ、というわけではない。

 むしろその逆。自分が一人で引き付けるから余計な手出しをするなと念押ししたのだ。

 ジレンの強さの前では最早、超サイヤ人ブルー級ですら相手にならない。

 仮に第7宇宙全員で襲い掛かっても的が増えるだけで、下手をすれば数人が一気に叩き落されてしまう。

 ターレスはトッポ、ミラはヒット、悟飯はオブニの相手でこちらに来られない。

 ならば残された戦力はリゼット、悟空、セル、ピッコロ、ヒルデガーンのみだ。

 そしてピッコロが倒れ、悟空も未だ回復が終わっていない。セルもダメージが深い。

 ヒルデガーンは残念ながらレベル外だ。下手に実体化させればそこで終わる。

 となればもう、リゼットが身体を張って止めるしかない。

 

(…………最悪、攻撃を受ける瞬間にわざと気をゼロにまで落とし、私が殺される(・・・・)事でジレンを反則負けにする事も考慮するべきかもしれませんね)

 

 ジレンに勝つ事は困難だ。

 だが道連れにするだけならば手段はある。

 相手を殺してはいけないというルールを逆手に取り、あえてジレンの剛拳を無防備で受けるというのも戦略としては有効だろう。

 そうすれば防御の脆いリゼットなど確実に即死し、ジレンを反則負けで退場させる事が出来る。

 問題は、それを自殺と見なされてしまう可能性もある事か。

 

「行くぞ!」

 

 考える間も満足に与えられぬまま、ジレンがリゼットへと迫った。

 繰り出される剛拳を紙一重で避け、ジレンの顎を掌打で打ち抜く。

 完璧なタイミングでのカウンターだ。

 脳を揺さぶるつもりで放った一撃……だがジレンは揺らがない。

 まるで通用していないかのように次撃へと移行している。

 これもギリギリまで引き付けてから回避し、ジレンの身体へと拳撃を雨あられと叩き込んだ。

 瞬間に千発を超える光速を置き去りにした拳打の嵐。だがジレンはまるで動じずにリゼットへと拳を繰り出す。

 唸りをあげてジレンの巨拳がリゼットへ炸裂し、咄嗟に張ったバリアを貫通してガードごと彼女の小柄な身体を殴り飛ばした。

 

「……っ!」

 

 吹き飛びながらも空中で回転し、着地する。

 脱力による威力の受け流しは成っている。だというのに、ジレンの拳を受けた腕は激しい痛みをリゼットへと訴えていた。

 

「流石……と言うべきでしょうかね。

この威力、単純な戦闘力だけならば、ビルス様すら超えているかもしれません。

よく分かりました。フィジカル勝負では私に勝ち目はありません。少し、小細工を使わせてもらいます」

 

 リゼットの纏う雰囲気が変わった。

 それはまるで、今まで隠していた武器を出したかのような剣呑で油断出来ない空気だ。

 見た目は変わっていない。

 しかし悟空には分かった。

 リゼットは今、封じていた真剣を鞘から抜いたのだ。

 かつて天津飯と戦った時の悟空と同じだ。

 ……試合用から、真剣勝負へとスイッチを切り替えた。そう確信して悟空の背を冷たいものが走る。

 

「あまり悪人以外にやりたい戦い方ではないのですが、そうしなければ貴方とは戦える気がしません。

……覚悟はいいですね? ここからの私は……ちょっと、ズルいですよ」

 

 そう言い、リゼットは両手をダラリと下げた。

 足枷のうちの一つが砕け散り、バーストリミットの倍率が3/4倍にまで引き上げられる。

 ここからはリゼットも体力度外視の本気だ。

 高まる衝突の予感に、神々すら呼吸を忘れて見入っていた。




【戦闘力】
・ジレン:130兆
パワーのセーブをやめたジレン。
今までは相手を殺さないように力を抑えていた為、攻撃にはMAXでも精々60兆くらいの力しか使っていなかったが、ここからは加減なし。
その戦闘力は既にビルスを凌駕している。

・リゼット:93兆
バーストリミット3/4倍。暴走しないギリギリラインであり、今のリゼットのフルパワー。
今までは『試合』に徹していたが、それでは太刀打ち出来ないので真剣を抜いた。
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