ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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キャウェイちゃんは雑魚かわいい。


第百二十七話 悟空の屈辱

 体勢を立て直す間も与えるものかと、ジレンがリゼットへと仕掛けた。

 リゼットもそれに応じて即座に構えを取り、ジレンを迎え撃つ。

 戦闘力は完全にジレンが上だ。彼の怒涛の攻めを前にリゼットは防戦に回ってしまっている。

 バーストリミットの倍率を今以上に引き上げれば戦力で並ぶ事も不可能ではないが、それは余りに負担が大きすぎる。

 リゼットが可能とするバーストリミットの最大倍率は3/4倍だ。しかしそれを行ってしまえば以前にシャンパと戦った時と同じように自力で立つ事すら困難になるだろう。

 神域化を発動したリゼットは信仰の念によって常に気が補充され続けている状態にある。実質的に気は無限にあるといっていい。

 だが気は無限でも体力は有限だ。あまり飛ばし過ぎればすぐにへばってしまう。

 回復魔法はあるが、だからといって敵の目の前で疲れていては回復する暇すらないだろう。

 1/2倍でもまだ負担がかかる。ここがギリギリで戦闘を続ける事が出来る限界ラインだ。

 これを越えてしまえば自滅してしまうだけだ。

 だからこそこれで勝ちたかったのだが……ジレンはそれを許さぬほどに、余りに強い。

 放たれる拳の弾幕を避け、逸らし、最小限の動きで凌ぐ。

 ジレンの筋肉の動き、視線の向き、気の移動の仕方、重心の向き、足の位置……そればかりか、ジレンの脳が発する攻撃前の僅かな攻勢の気配すらも読み、被弾を認めずに回避を続ける。

 それはリゼットの膨大な経験値が為せる達人の技であり、しかしそれを以てしても攻撃に転じる暇が殆どない。

 だからといってリゼットも守ってばかりではない。ジレンの動きを観察し、動きの癖を見切り、拳の弾幕をすり抜けて反撃の一打を何度か当てている。

 拳打に合わせたカウンターを顔面に。重心移動の瞬間を狙い撃った掌打を胸に。ジレンの脳が発した攻撃のトリガーを読み切っての掌底を顎に。

 だがダメージは浅く、ジレンはすぐに何事もなかったかのように猛攻へと戻ってしまう。

 こういうタフな手合いはリゼットが最も苦手とするタイプだ。

 周囲は二人が織りなす次元違いの攻防を前に戦闘を忘れて見入り、破壊神すらもが固唾を飲んで見守る。

 第4宇宙最後の選手となってしまったキャウェイなどは既に半泣きである。

 いや無理、これ絶対無理、勝てないってこんなの。彼女の表情がそう物語っている。

 

「むん!」

「……」

 

 ジレンの剛腕を避け、彼の大きな瞳目掛けて貫手。

 だが命中の直前で眼力に阻まれ、僅かに眼球を掠るだけに終わってしまう。

 それでも一時的にジレンの目を封じ、死角となった側に回り込んで光の剣で斬り付ける。

 これでもダメージは浅いがゼロではない。ジレンが止まり、その隙に足元を斬り払う。

 ジレン自身を動かす事は出来ずとも、立っている場所が不安定になれば必然的に体勢は崩れてしまう。

 体勢を崩しながらも放たれた拳を避け、彼の指を掴んで投げ飛ばした。

 関節を折る気だったのだが……やたら頑丈だ。折れる気がしない。

 着地すると同時にジレンが反撃へと移り、リゼットはそれを避けてカウンターを合わせる。

 しゃがむ事で右ストレートを避けて腹に一撃。

 左フックに対し一歩下がって回避し、気弾を発射。

 お得意の眼力が発動するのを察知して背後へと回り、気の刃で背中を斬り付ける。

 ジレンが振り返ると同時に気の武器化でトンファーを装備し、ジレンの注意が武器に向いた瞬間に懐に潜り込んで鉄山靠を放った。

 いかにジレンでも無防備を狙い撃たれればダメージくらいは受ける。だが全てが浅く、動きを完全に止めるには至らない。

 効いていないわけではないのだ。ただ、そのダメージは例えるならばHPが100万ある相手に10や20くらいのダメージしか与えていない、というだけである。

 一方でジレンの拳は一度でも直撃すればリゼットに多大なダメージを与える事だろう。

 それ故に今の所は全弾回避しているものの、どうしても防戦に回ってしまう。

 

「リゼットが防戦一方か……!」

「ジレンを相手にここまでやるか!」

「なあ、あのトンファーの意味なくね?」

 

 ビルスとベルモッドは必勝の信を寄せていた自宇宙のエースを手こずらせる相手がいる事に驚愕の顔を見せていた。シャンパの突っ込みなど聞いている暇がない。

 だがビルスのそれが明確な焦りであるのに対し、ベルモッドのそれは賞賛だ。

 ビルスはリゼットがこのまま敗れてしまう事を危惧している。

 だがベルモッドはそうではない。勝つのはあくまでジレンであると確信した上で、そのジレンを相手にここまで粘るリゼットの健闘を称えているだけだ。

 そしてそれは正しい。このまま戦ってもリゼットの勝ちはないだろう。

 ただしそれは、彼女が一人ならばの話だ。

 一方無視されたシャンパは「え、俺何かおかしい事言った?」と狼狽えていた。

 

「ふん!」

「!?」

 

 ジレンを横合いからセルが蹴り付け、その巨体を吹き飛ばした。

 彼の気の圧力など物ともしないパワーにジレンも僅かに警戒を見せるが、リゼットと比べれば遥かに格落ちする相手であると即座に見抜く。

 ダメージなどないように地面に着地したジレンは威圧的にセルを睨み、声を発した。

 

「俺に勝つ気か? やめておけ……お前では無理だ」

「セル、貴方では無理です。下がっていてください」

 

 セルの戦闘能力は第7宇宙でもトップクラスだ。

 だが彼は神の気もなければ、超フルパワーの超サイヤ人4や新生ピッコロ、合体ミラのような神の気すらも超える圧倒的なパワーはない。

 どちらかといえば豊富な技や四身の拳、再生能力などで器用に立ち回るタイプだろう。

 それはそれで充分過ぎる程に強いのだが、ジレンを相手にするのは無理だ。

 しかしセルは不敵に笑うと、全身に力を込めた。

 

「それはどうかな?」

「え?」

「見ているがいい……ぶるあああああ!」

 

 セルが叫び、その全身が黄金の輝きに包まれた。

 超サイヤ人の輝きではない。超サイヤ人ブルーなどと同じ、神の気にも近い揺らめく炎のようなオーラだ。

 そう、それはまるであのゴールデンフリーザのように。

 だがおかしい、とリゼットは考えた。

 確かにセルがフリーザの細胞を持っていたならばそれが出来ても不思議はない。そう、持っていたならば。

 だがここにいるセルは未来の自分が手を加え、フリーザなどの細胞を意図的にオミットしたセルのはずだ。

 したがって、彼にフリーザと同じ芸当は出来ない。

 そのはずだったのだ。

 

「セル……貴方は」

「勘違いしないで欲しいが、別に貴方を騙したわけではない。私がフリーザの細胞を持っていなかったのは本当だ。もっとも、それも以前までの話だがね」

「……! そうか、あのフリーザとの戦いの時に……!」

「ご名答。私はあの時、フリーザの生体エキスを頂いた。その時に奴の細胞を得ていたのだ」

 

 黄金の輝きを身に着けたセルの戦闘力はこれで、合体ミラと並んだ。

 進化しているのは悟空達だけではない。

 彼もまた、強さの最前線を目指して進化を続けているのだ。

 

「しかし、身体の色は変わってないようですが?」

「あの色は少しばかり悪趣味すぎる。私は今の姿が一番気に入っているのだ」

 

 ゴールデンセル、とでも言うべき新たなステージへ到達した彼だが、身体の色は依然変わらず緑のままであった。

 元々あれは超サイヤ人を意識したフリーザが自ら望んでああいう姿になっただけであり、セルはそんな悪趣味な姿になる気などない。

 今の姿こそが完璧であり、完成していると彼は思っている。

 なのでゴールデンフリーザの力を使いつつも、見た目はそのままだ。

 ともかく、予想外に頼もしい戦力だ。これならば二人でいけばジレンとも戦えるかもしれない。

 しかしそれでもまだ勝率は低い。下手をすれば二人揃って落とされてしまうかもしれない。

 故にリゼットは……自らが最後まで残る事を諦めた。

 自分が落ちても九人が残れば勝ちだ。ならばここは、後の事を考えずにバーストリミット・マイナスを3/4まで解除して、セルとの共闘で確実にジレンを落とす。

 その後自分は確実に戦力外となるだろうが、ジレンを残す事は絶対に出来ない。

 自分の脱落と引き換えにしてでも、ジレンだけは落とさなければ駄目だ。

 

「セル。私はジレンを倒す事に全力を使います。

その後は、私に代わって指揮を取って下さい」

「……いいだろう」

 

 ここでジレンを落とせば、第7宇宙優勝の可能性が一気に高まる。

 その為ならば自らが脱落するだけの価値はあるとリゼットは踏んだ。

 そしていよいよリゼットが真価を発揮しようとした時、両者の間に悟空が割り込んだ。

 

「神様、そりゃあちょっとどうかと思うぜ。

セルにゃ悪いが、今ここにいる十人を纏められるのは神様だけだとオラは思ってる。

全員、そう簡単に他人の指示に従うような奴じゃねえ。オラも含めてな」

 

 悟空は今まで別の宇宙を相手にしていたはずだ。

 しかしこちらの危機に、慌てて駆け付けてきたらしい。

 彼が顔色を変えて飛んでくるほどには、ジレンは次元が違うのだ。

 

「悟空君……しかし」

「セル、神様を連れて下がってろ! あいつはオラがやる!」

 

 悟空はそれだけ言うと超サイヤ人ブルーへと変身し、界王拳の炎を纏ってジレンへと突撃した。

 今の悟空の界王拳の最大倍率は無理をしてようやく20倍だ。

 元々の地力も含め、リゼットには及ばない。

 残念ながら悟空では相打ちにすら持ち込めない。そうリゼットは考えていた。

 

「いけない! 悟空君、戻……」

「いや、これでいい!」

 

 慌てて悟空を引き留めようとしたリゼットを、しかしセルが掴んだ。

 セルは理解したのだ、悟空の真意を。

 ここでリゼットとジレンを引き換えにしても恐らく第7宇宙は勝てるだろう。それだけ数を減らしたのだから。

 だが、残っているのはヒットやトッポといった実力者ばかり。第3宇宙の界王神にまだ余裕があるのも気になる。きっとまだ切り札があるのだ。

 もしもそれらが手を組めばまだ有り得るのだ……逆転される可能性が。

 そしてそうなった時、リゼットがいなければ第7宇宙は統率を失うだろう。

 無論それでも十分に強いのだが……確実ではない。

 何より一番怖いのは、リゼットだけを失ってジレンが残ってしまった場合だ。奴にはまだ、何か見せていない隠された力があるような気がしてならない。

 だから悟空は自らがジレンへと挑んだ。

 自分の戦いを通してジレンの動きをリゼットに観察させる為に。ジレンの力を引き出す為に。

 何よりも、自らのサイヤ人としての心の赴くままに。

 

 

 悟空とジレンの戦いは一方的なものであった。

 一応戦いの形にはなっているが、勝負にはなっていない。

 負けが見えているものを勝負とは言わない。

 20倍の界王拳すらも通じず、ダメージを与える事すら出来ない。

 だがこんなのは予想出来た事。

 ジレンがリゼットに押し勝った時点でこの程度強い事は分かっていた。

 故に悟空は切り札の使用に踏み切る。

 

「オラのとっておきの技、お見舞いしてやるぜ!

皆、オラに元気をわけてくれ!」

 

 ――元気玉。

 ドミグラとの戦い以来の使用となるこの技は、本来は星に生きる植物や動物などから僅かずつ気を借りる事で完成する。だがここは無の界だ。当然ながら本来の使い方は出来ない。

 しかし第7宇宙のメンバーが気を与える事で、それ以上の元気玉を作る事が可能となる。

 これは他の皆の消耗を招いてしまう博打技だが、ジレンを倒すにはこれしかないと悟空は考えたのだ。

 そして出来上がった元気玉は凄まじいものだ。

 セル、ターレス、ピッコロ、ミラ、四星龍、悟飯といったそうそうたる戦士達の気で出来上がった元気玉は直撃すればビルスですら重症を負うだろう。

 リゼットとベジータ、ヒルデガーンは手を貸さなかったが、それでもジレンを倒すには十分な元気玉だ。

 ――ただし、当たりさえすれば。

 

「……駄目です、効きません」

 

 リゼットは険しい顔をして戦いを見守る。

 悟空の作り出した元気玉がジレンへと迫っているが、リゼットにはもう結果が見えてしまっていた。

 だから彼女は元気玉に手を貸さなかったし、ヒルデガーンにも協力させなかったのだ。

 

「どういう事だ? あの威力でも通用せんというのか?」

「そうではありません。当たれば効くでしょう……当たれば」

「避けられると?」

「……元気玉は『善』に属する技です。悪人相手ならば無類の威力を発揮しますが、悪の気がない者には……」

 

 リゼットの言葉にセルはハッとした顔をした。

 そう、元気玉は確かに強力な技だが欠点がある。それは邪心があっては創り出す事すら不可能な善の技であるという事。

 今、リゼットが脳裏に思い浮かべているのは本来の世界線(原作)にあった一つの場面。

 悟空が創り出した元気玉をクリリンが放ち、それがベジータに回避されて悟飯に向かってしまった場面だ。

 あの時悟空は何と言っていたか……。

 そしてジレンは、第11宇宙でどういう立場に立っている者だったか……。

 

「元気玉は、悪の気がない者にとっては味方です。

……善人ならば跳ね返せるんですよ、あれは」

 

 ジレンからは悪の気が感じられない。

 それもそのはずで、彼は『プライドトルーパーズ』の一員……そう、正義の味方だ。

 そしてリゼットは知らない事だが、ジレンは正義に全てを捧げた男とまで呼ばれている。

 そんな男に、元気玉が通用するはずがない。

 今まで悟空が戦ってきた相手とジレンでは、根本的に違うのだ。

 リゼットの危惧した通りに元気玉はジレンに通用せず、それどころか悟空へと跳ね返されてしまった。

 悟空もこれに抗うが、両者が跳ね返せる以上、後は地力の勝負になる。

 結果、悟空は皮肉にも自らが発した元気玉に飲み込まれる事となってしまった。




シャンパ「なあ、あのトンファー……」
ビルス「そんな事も解らないのか? やはりお前はまだまだだな」
シャンパ「え?」
ウイス「一見ただ無駄にトンファーを出しているようですが、その実理に適った使い方をしております」
シャンパ「え、いや、だからそもそも使ってねーじゃん?」
ヴァドス「無意味に装備しているように見えますが、そう思わせて二重三重にフェイントを織り交ぜております。あれほどトンファーを使いこなす方を私は見た事がありません。
シャンパ様、修行が足りませんわ」
シャンパ「…………」

シャンパ「……え? これ俺がおかしいの?」
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