ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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・前話のゴッドガードンの性格に関して『ブリーフ博士の趣味?』などの感想が多く寄せられましたが、こいつは元々ゲームでもこんな奴です。
ちなみにこれがゲームでの実際の台詞です。
「ライチーサマノ モトニハ オレサマヲ タオサナケレバ イケヌゾ!」


第百十八話 一気呵成

 三星龍は一方的に打ちのめされていた。

 冷気を操る能力を持ち、彼によって氷漬けにされた者は超サイヤ人4であろうと自力脱出は困難だ。

 更に手段を選ばぬ性格を持ち、不意打ちや騙し討ち、人質すらも躊躇なく使う彼はある意味では戦いのプロフェッショナルと言えた。

 四星龍とは兄弟の関係にあるが、その性格は真逆。どこまでも勝利のみを突き詰めたその在り方は彼なりの美学すら感じさせる。

 しかしそれは相手が甘い相手ならばこそ通じる事だ。

 孫悟空のように正々堂々とした戦士を相手にした時こそ、彼の狡猾さは真価を発揮する。

 だが今、彼と戦っているのは人造人間セル。

 多少の卑怯卑劣、騙し討ちなどにかかる相手ではない。

 全身にスパークを纏った彼は平常時とは比較にもならぬ爆発的な戦闘力で三星龍を圧倒する。

 冷凍光線は気のバリアで阻み、仮に命中してもすぐにその部位を切り捨てて脱出し、再生する。

 そうして自らの攻撃を次々と命中させる事で三星龍を的確に追い詰めていた。

 

「ま、待ってくれ。わ、私の負けです……。

ドラゴンボールは渡しましょう。い、命だけはお助けを……」

 

 三星龍はプライドを捨てて命乞いに走った。

 祈るように両手を組んで跪き、セルを見上げて懇願する。

 戦士としての誇りなど微塵もないその姿にセルは興醒めしたように見下ろす。

 だが三星龍はまだ戦いを諦めてなどいなかった。

 セルが隙を見せた瞬間に目を攻撃し、視力を奪った一瞬で氷漬けにしてやろうと目論んでいたのだ。

 いかに再生できるといっても視力を奪われれば一瞬その動きは止まるはず。

 集中も途切れてバリアも消えるだろう。

 その瞬間ならば勝機はある。

 

「ふむ、そうだな。ドラゴンボールさえあれば確かにお前などに用はない」

 

 セルはやがて温情を見せ、三星龍の手からドラゴンボールを受け取った。

 ――勝機!

 三星龍はニヤリと笑い、素早く片手を薙いで指先に集めた水分を刃へと変えた。

 彼の最後の切り札の『ダーティークロー』は余波だけで遠く離れたビルすらも切断する威力を持つ。

 その一撃でセルの眼球を裂き、間髪を容れずに目からの冷凍光線でセルの足を氷漬けにした。

 

「ぐわっ、眼が……!」

「ヒャハハハ! 油断しましたね!

駄目押しです、両腕も封じさせて頂きましょう」

 

 再び目から光線を放ち、セルの両腕を封じた。

 いかに再生出来るといえど、自ら動かせる部位がなければ自分の身体を切断して逃れる事すら出来まい。

 これで形勢逆転だ。セルはもう何も出来ない。

 

「か、勝った……ヒャハハハ!」

「ま、まさか、こんな事が……この私が……」

「ヒャハハハハハハ!」

「ち、ちくしょう……ちくしょおおおおおおお!」

「ハーッハハハハハハ!」

 

「――なんちゃって」

 

 氷漬けにされていたセルが、突然これまでの苦渋の表情を捨てて哂った。

 そして三星龍はそれと同時に首に鋭利な何かが深く食い込むのを感じた。

 目で追えば……そこにあったのは、地面から飛び出したセルの尾だ。

 それが首に突き刺さり、貫通している。

 セルの方を見れば、尾を地面に突き刺していた。

 

「馬鹿笑いしおって。既に命を握られていた事に気付かなかったか?」

「な……あ……!?」

「お前が下手糞な命乞いを始めた時、既に私は尾を伸ばしてお前の首に突き付けていたのだ。

欺くのに必死でそんな事すら分からなかったらしいな。

どうやら相手を騙すのは得意でも、騙されるのは苦手と見える」

 

 そう、勝負はもう付いていた。

 セルは相手の命乞いが演技である事を見破った上で遊んでいたに過ぎない。

 その事を理解してしまった三星龍の顔が屈辱で染まり、吐血する。

 集中が途切れ、セルを拘束していた氷すらも持続出来なくなり砕けてしまった。

 

「さて、このまま生体エキスを吸い取って私の一部にしてやってもいいのだが……お前にそれをやると余計なマイナスエネルギーまでセットで付いてきそうだな。腹を壊しそうだ。

やはりこのまま消えて貰う事にしよう」

「な、何故……わざわざ騙された振りを……」

「あえて言うならば楽しむのが目的かな。

屈辱と絶望の顔を見てみたかったのだ」

「ち、ちくしょおおおおおおおお!」

「はっはっは。そうそう、その顔だ」

 

 セルは満足そうに笑い、三星龍の首を掴んで持ち上げ、握力でへし折る。

 そして掌を彼の胸へと当てた。

 

「じゃあな」

 

 無慈悲に気功波を発射し、三星龍をこの世から消滅させた。

 

 

 

 神殿の中央で対峙するのはリゼットと一星龍だ。

 互いに総大将同士であり、先程から睨み合いが続いている。

 だがリゼットが涼しい顔をしているのに対し、一星龍の顔は苦渋に満ちていた。

 それは互いの陣営の戦局が完全にリゼット側に傾いているからであり、殆どの邪悪龍が成す術もなく駆逐されてしまっているからだろう。

 

「一つ、聞いておきましょう。貴方は何時の願いから生まれた邪悪龍ですか?」

「フリーザ一味に殺された者達を蘇らせた時の願いだ。俺はその時に生まれた」

「私が気になっているのはそこです。貴方がその時に生まれた……それはよしとしましょう。

しかしその時に発生したマイナスエネルギーは私が浄化したはず……つまり貴方はその時点で消えたはずです。

その貴方が、いかにマイナスエネルギーを得たとはいえ何故、今になって出てくるのですか」

 

 一星龍が誕生する経緯になった願いは確かにこの世界でも叶えている。

 だがそれはリゼットが浄化したはずであり、もう邪悪龍は誕生しないはずなのだ。少なくともこの、GTと全く同じ姿の一星龍にはならない。

 マイナスエネルギーを注ぎ込んでも、そもそもその邪悪龍がボールの中にはいないはずなのだ。

 しかも、この時間軸ではGT時間軸では叶えていない願いも存在する。

 それがリゼットには不可解だった。

 

「確かにその通りだ。お前に対し、『今までドラゴンボールを乱用していた』と責める事は出来ん。

どうやらお前はマイナスエネルギーの危険性を理解し、完全に管理していたようだからな。むしろ大したものだと称賛すらしたくなる。

俺が真に憎いのは、ドラゴンボールを乱用して俺を誕生させた別の時間軸の孫悟空達だ」

「別の時間軸……まさか」

「そうだ。俺はこことは異なる時間軸のドラゴンボールの中で生まれたマイナスエネルギーだ。

何者かがそれを無理矢理吸い上げ、この時間軸のドラゴンボールへ宿らせ、そして俺達は生まれた。どうやらこの何者かは余程お前が憎いと見える」

 

 一星龍の言葉にリゼットは目を細め、既にこの世にはいないかつての敵の姿を彼の背後に見た。

 魔神ドミグラ……死んでからも厄介な男である。

 ある意味ではこの一星龍も彼の被害者という事か。

 

「もっとも、それだけで矛を収めはしないがな。

生まれた以上は宇宙をマイナスエネルギーで覆い、破壊する。

それが俺達邪悪龍だ」

「でしょうね。遠慮の必要がなくて助かります」

 

 聞くべき事はもう聞いた。ならば後は戦うのみだ。

 リゼットは両手を降ろした無形の構えを取り、一星龍も咄嗟に構える。

 リゼットの気はクリアな神の気。故に外面で戦闘力を測る事は出来ない。

 つまり相手はまずリゼットを見た目で判断してしまい、どうしても無意識の油断が生じる。

 その油断を突くようにトン、と。不意に一星龍の背中に誰かの手が触れた。

 それは目の前にいるはずのリゼットだ。

 ならば今、前に立っているのは何なのか……それは、気で創り出した幻影である。

 第6宇宙の殺し屋ヒットの戦い方は、リゼットの戦術に新たな広がりを与えてくれた。

 この、気を使っての残影も彼の技を真似たものだ。

 そしてリゼットは己の気が感知されない事を利用し、幻影を残して自らは一星龍の背後へ転移していたのだ。

 

「ご、ふっ!?」

 

 一星龍の口から血が吐き出された。

 決して素早く打撃を与えるようなものではなく、むしろ優しく当てるような触れ方だったはずだ。

 ダメージを与えるようなものではなかった。

 だが見た目に反して威力は絶大だ。今、一星龍の体内では気が弾け、骨と内臓を破壊しているのだ。

 これもヒットを参考にして編み出した技だ。彼の見えない打撃は発射した気が物質を透過する性質を持ち、障害物を無視して対象のみを狙い撃つ。

 リゼットはこれにアレンジを加えた。

 障害物を無視出来るならば、筋肉を無視出来ない道理はない。

 ならばこの見えない打撃は強固な筋肉と骨を無視して直接内臓にダメージを刻む事が出来る。

 何の障害もなく敵の体内へと潜り込んだ気を内部で炸裂させる……単純だが悪辣にして強力な一撃だ。

 ヒットですらやらないような悪辣な攻撃を初手で使用したリゼットは、そのまま躊躇なく光の剣で一星龍の首を落としにかかる。

 

「ぬお!?」

 

 間一髪。光刀をかろうじて回避するも、背中の棘の何本かがあっさりと切断されてしまう。

 ――強い! それも桁外れに!

 一瞬でその事を痛感させられた一星龍から完全に油断が消え、本気になる。

 だが本気に移行するまでの一瞬が命取り。

 その間にリゼットは既に次の攻撃へと移っている。

 彼女が手を振るうと同時に一星龍の身体が気で拘束され、更に気が固形化する。

 そうして完成したのは一星龍の両腕を封じて首を固定する断頭台だ。

 斬首の刃が降り注ぎ、一星龍は咄嗟に気を全開にして何とか拘束を外すが今度は頭の角が切断されてしまった。

 

「かああッ!」

 

 一星龍の剛腕がリゼットへ迫る。

 しかしそれが彼女の掌に触れたかと思った刹那、一星龍の身体は宙を舞っていた。

 地面に衝突した彼へと、リゼットが手を翳す。

 

「千の剣よ、在れ!」

 

 斬撃から斬撃へと繋ぎ、更に斬撃へと続ける。

 リゼットの背後に空間を埋め尽くす程の白い刃が発生し、次々と飛来しては一星龍の身体を切り刻む。

 一星龍が知るはずもないがリゼットは彼の事を知っている。彼がGTのラスボスである事も知っている。

 そして、リゼットの知る限りでは唯一孫悟空を実力で殺したかもしれない相手でもある。

 GTでの悟空が最後にどうなったのか、何故神龍と共に去ってしまったのか……リゼットの知る限りではそこに公式からの回答はなく、ファンによる考察の域を出ていない。

 その中でも有力とされるのが『悟空は超一星龍の攻撃で死んでいて、最後の願いで一時的に生き返っていた』とするものだ。

 もしそうだった場合、正面から孫悟空を殺すという偉業を為したのは彼だけだ。

 悟空に勝った者は数多くいれど、実力で負かして殺した者はいない。

 並行世界では悟空は何度か死んでいるが、どれも負けて死んだわけではない。

 ラディッツの時は悟空が自ら命を捨てたに等しく、セルの時も命と引き換えに自爆を防いだだけ。

 ザマスに至っては自分の情けない身体を押し付けて借り物の強い身体で殺しただけだ。

 一星龍だけなのだ。実力で孫悟空を殺しまでしたのは彼しかいない。

 無論これはあくまで考察が正しい事を前提とした評価ではあるが……そうである可能性が高い以上、リゼットは彼を評価しているし、警戒している。

 だからこそ油断はしない。たとえどれだけの実力差があろうと、慢心せずに全霊を賭して完膚無きまでに消し去る。その必殺の決意を以てこの戦いへと臨んでいた。

 飛来する刃で手足を切り裂かれながらも生き延びていた一星龍の上へとリゼットが転移し、指で突いて両側の頬を突いて顎を外した。

 そうして無理矢理開きっぱなしにした口に指を向けてレーザーのように圧縮した気を連射。次々と口内を攻撃し、貫通して首の裏側から気が飛び出していく。

 さらにそのうちのいくつかは軌道を変えて体内へ潜り込み、腹の中で爆破。徹底的に外も内も破壊してゆく。

 まだ終わらない。口の中に気弾を放り込んで顎を叩いて無理矢理口を閉じさせる。

 ――爆破。口の中で気弾が炸裂し、一星龍の頬肉が消し飛んで鼻から下は筋肉が剥き出しの酷い有様と化してしまった。

 

「~~~~~~~!!」

 

 声にならない絶叫をあげる一星龍の頭を掴んで今度は目潰し。

 片目を貫き、指を深く差し込んだ所でまたもレーザー気弾を発射して脳にまでダメージを叩き込む。

 ここまでやれば普通でなくとも死ぬが、流石に邪悪龍だ。常識が当てはまらない。

 身体の穴という穴から血を垂れ流しながらも、まだ気が感じられる。生きている。

 まだ息がある事を確認し、リゼットは素早く次の手を打った。

 逆転の目は、決して残さない。余さず全て摘み取る。

 孫悟空は、絶対に連れて行かせない。

 

Infinite World(時よ止まれ)

 

 一秒間の時間停止。

 自分以外の全てが静止した世界でリゼットは、地面に転がるドラゴンボールをゲートへ閉じ込めた。

 代わりに物質創造の術で偽物のドラゴンボールを配置し、そこに自らの神の気を宿らせる。

 しかし全ては回収しない。一星龍の一番近くに転がっている五星球だけは偽物とすり替えずに、神の気を宿らせただけで放置した。

 これで罠は完成した。後は敵が毒を飲むように仕向けるだけだ。

 時間が再び動き出し、それと同時にリゼットは攻撃を再開した。

 

「戻りなさい、剣よ!」

 

 先程一星龍を切り裂いて飛んで行った光の刃が旋回し、再び帰還する。

 そして今度は刺突。次から次へと一星龍に突き刺さり、とにかく刺せる場所があればそこに刺さる勢いで殺到し、あっという間に彼を血達磨へと変えてしまった。

 勿論一星龍もやられっぱなしではない。必死に迎撃しているし撃ち落としている。

 しかしそうしているとリゼット自身が飛び込み、一星龍へ怒涛の攻めを叩き込んだ。

 まずは気で剣を創造して斬撃。

 次に槍で突き、薙刀で腹を裂く。

 一星龍が反撃の拳を出せば、背中の光輪が突然倒れてリゼットはそこに身体を通す。

 すると光輪が腹付近でフラフープのように回転――突っ込んで来た一星龍の拳を割った。

 怯む一星龍に畳みかけるように光輪を元に戻して今度は鉄扇を創造し、一星龍の頬を打つ。

 まだ終わらない。今度はトンファーを創り、それを宙に放り投げて一星龍の視線が一瞬そちらに向いた瞬間に蹴りを叩き込んだ。

 そしてそれと同時に待機していた光の剣が殺到し、一星龍を襲う

 頭、顔、首、胸、腹、股間、腕、足。身体のありとあらゆる箇所を串刺しにし、貫通する。

 その上で――爆破。突き刺さった刃が一斉に爆発し、それと同時に出番を待っていた次の剣が刺さってまた爆発する。

 細胞一片すらも残さぬといわんばかりの凄惨極まる攻撃に、その戦いを見ていたバーダックが「えげつねえ……」と冷や汗をかいていた。

 

「あ、あ、集まれ! ドラゴンボール!」

「……」

 

 このままでは勝てない。

 そう悟った一星龍はまだ四星龍が残っているのも気にせずにドラゴンボールへ召集をかけた。

 彼は邪悪龍の頂点。故に他のドラゴンボールを取り込む事で自らの力を高める事が出来る。

 四星球だけはまだ取り込めないので不完全なパワーアップになってしまうが、このままでは戦いにすらならず処刑されるだけだ。

 まずは強くならなくては話にもならない。

 そしてリゼットはそんな彼を、ただ冷ややかに見つめていた。

 ドラゴンボールを彼が必死の形相で呑み込むのすら止めず、その眼には哀れみすら感じられる。

 やがてドラゴンボールを五つ飲み込んだ彼は五星龍の電気スライムの能力で身体を再構築してからリゼットを見た。

 

「ど、どうだ! まだ勝負はこれからだぞ!

ドラゴンボールを取り込んだ今の俺の力は先程までの数倍はある。

いかにお前でも簡単に勝てはすまい!」

「……そうですね。もしそれが本当に成功していたならば、あるいはそのくらいの強さを得ていたのでしょう」

 

 そう言い、リゼットは一星龍へと背を向けた。

 その行為の意味が分からない一星龍は呆気に取られ、思わず顔をしかめてしまう。

 

「お、おい、何の真似だ?」

「もう戦いは終わったという事です」

「何を馬鹿な事を……勝負を捨てたか?」

 

 一星龍は考える。

 なるほど、相変わらず気は感じ取れないが向こうからはこちらの気と自分の気の差が判別出来る。

 それで彼女は気付いてしまったのだ。この一星龍の力が遥かに己を超えてしまった事実に。

 だから勝つ事を諦めた、そうに違いない。

 そう思った直後、一星龍の腕が――光となって消えた。

 

「……あ? な、なんだ……俺の身体が……崩れ……いや、これは、浄化されている……?」

「言ったでしょう、戦いは終わったと」

「な、なにをした?」

「貴方がドラゴンボールを取り込んでいた時、私が何もしなかった事を不思議に思わなかったのですか?

敵が目の前で何かを企んでいるのに、止めもせず、攻撃を加えるでもなく、ただ馬鹿みたいに見守っていたとでも?」

 

 そう、止める時間はいくらでもあった。

 ドラゴンボールを一つ一つ目の前で飲み込む相手を前に何もしないなどありえない。

 妨害するでもなく攻撃するでもなく、ただアホみたいに呆けて見守るなど絶対にあるわけがないのだ。

 しかしリゼットはあえてそれを見送った。

 何故なら……一星龍が飲み込んだそれは本物のドラゴンボールではないから。

 リゼットがすり替えた偽物のボールであり、それには彼女の気が宿っている。

 つまり一星龍は自らの意思でプラスのエネルギーという毒薬を飲み干してしまった事になる。

 これの性質が悪いのは、一つだけ本物が混ざっていた事だ。

 全てが偽物ならば一星龍もおかしいと思って飲むのを止めてしまったかもしれない。

 だがリゼットは、彼から一番近くにあった五星球だけは神の気を宿らせただけですり替えなかった。

 結果、それを最初に飲んだ一星龍はパワーアップの手応えを感じ、他のボールも一緒に飲み込んでしまったのだ。

 背を向けたままリゼットは右手を挙げ、パチンと指を鳴らす。

 

「Sparking」

 

 技名を宣言し、それと同時に一星龍の体内で神の気が膨張し、弾けた。

 身体の内側からの浄化だ。避ける事など絶対に出来ない。

 一星龍は何一つ抵抗も出来ぬまま、圧倒的なプラスエネルギーの波動に蹂躙されるだけだ。

 消えていく中、一星龍は驚愕の表情を浮かべていたが、やがて諦めたように抵抗を止めた。

 

「……ふん。マイナスエネルギーが足りなければ、こんなものか。

まあいい……俺達はドラゴンボールを使い過ぎた者への罰だ。

元より、それに該当していないこの時代に現れた事自体が間違いだったのだ」

 

 一星龍は自嘲するように笑う。

 元々この時代の人間やリゼットへの恨みなどなかった。

 ただ呼び出されてしまったから、邪悪龍の使命に従って戦ったに過ぎない。

 その上で負けて浄化されるというならば、それでいい。

 そう、彼は思っていた。

 

「だが忘れるな。お前達が欲望のままにドラゴンボールを使い続けたならば、その時こそ俺達は再び現れる。

ドラゴンボールを使う事の意味、心に刻んでおけ!」

 

 こうして最強だったはずの邪悪龍は、その力を出す事すら出来ずに消滅を迎えた。

 その顔にはどこか、己の消滅を受け入れたような清々しさすら残しながら。

 

 

 

「……勝負ありか」

 

 ミラの前で膝を突き、四星龍が無念そうに呟いた。

 彼の前に立つミラはトワと同化した変身形態へと変わっており、その力は先程までと桁が違う。

 だが勝利したはずのミラもまた、無傷ではない。

 その全身は傷付き、至る所が焼けている。

 だがそれでも結果を見ればミラの勝利だ。他の戦いも既に決着が付き、リゼットやセルが歩いてくる。

 

「俺の負けだ。殺せ」

 

 四星龍は自身に勝機がない事を悟り、止めを促す。

 他の邪悪龍にはない潔さだ。

 この戦士を消してしまう事を多少惜しく思いつつもミラは掌を翳した。

 

「さらばだ。誇り高き龍よ」

 

 別れの言葉を告げ、気功波を発射。

 敗北を悟り、気を限界まで落とした四星龍を葬るにはこれで十分だ。

 何ら抵抗せずに消えていった龍へ心の中で敬意を示し、そしてミラは自身の掌を見詰める。

 己の弱さをまた自覚する事の出来る、いい戦いだった。

 この経験は必ず彼を更なる高みへと導いてくれる事だろう。




【RTA成功】
珍しくガバらず理想タイムで勝利したリゼット。
タイムボタンを押す事で敵のパワーアップイベント中に動けるバグを利用し、攻撃して粉砕した。
どうやらイベント中でも当たり判定はあるらしい。
例えるならばそれは、ロックマン&フォルテでテングマンの足元に爆弾を仕掛けて、登場デモで暗殺するかのような非道ぶりであった。

【テングマン】
ロックマン&フォルテのボスの一人。
ロックマンのボスは登場デモ中はライフバーが空っぽであり、ポーズを決めてからライフが満タンになるという演出があるが、何故かテングマンはこの登場演出中に当たり判定があるらしく、彼の足元に特殊武器のリモートマイン(任意のタイミングで起爆出来る爆弾)をバグを利用して設置すると何と登場デモ中にダメージを受けて死んでしまう。

【何か優しい一星龍】
彼がGTで怒っていたのは要するに『よくも邪悪龍(俺達)が生まれるまでドラゴンボールを乱用しやがったな!』なので、こまめに浄化していたリゼットへの怒りは最初からない。
しかし残虐ファイトの限りを尽くされた事で流石に少し怒った。
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