ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第百四話 襲来、ゴクウブラック

「……と、いうわけです」

 

 一体何故トランクスがこの時代に来てしまったのか。

 その説明を聞き終えた悟空達の反応は様々であった。

 よく理解出来ずに頭を捻る悟天と少年トランクスのお子様組。

 タイムパトローラーというものの存在に驚くブルマやベジータ。

 気を感知して駆け付けて来たピッコロやターレス、クリリンも交え、自分達の知らないところでトランクスが戦っていた事にそれぞれが複雑な思いを感じていた。

 悟空、リゼット、セルの三人は既に状況を把握しているが改めて聞くとなかなか凄い仕事をしていると思わされる。

 

「それにしても……アンタがタイムパトローラーねえ」

「悪いかよ」

「いいや、意外だっただけだ」

 

 ターレスがバーダックをからかうように言い、バーダックは少しばかりムスッとして答える。

 しかしそんな軽口を叩きながらも、二人はどこか嬉しそうだ。

 

「そういやトランクスから聞いたぜ。テメェ、俺をぶっ飛ばしてえんだって?」

「おお、そういやそんな事を言ったな。今からでもやるか?」

「面白ぇ。どれだけ成長したか試してやるよ」

 

 話している内容は剣呑で、纏う雰囲気もピリピリしている。

 その空気に悟天と少年トランクスが怯えたようにそれぞれの親の後ろへ隠れてしまった。

 しかしこんな会話内容だが、決してバーダックとターレスの仲が悪いわけではない。

 彼等にとってはこれが普通なのだ。

 そんな二人の間へとリゼットが割り込み、二人を押しのけた。

 

「はい、そこまでです。話がややこしくなるので少し静かにしていて下さい」

 

 それにしてもややこしい。悟空、バーダック、ターレスが並ぶと顔が同じせいで誰が誰だか見分けがつかない。

 しかも声まで同じなのだから性質が悪すぎる。

 極め付けは敵まで悟空フェイスらしいという事だ。

 乱戦になると最悪、間違えて味方に攻撃を当ててしまいそうだ、とリゼットは不安を感じた。

 

「だがいいのか? タイムパトロールとやらの事を俺達に話して」

 

 ピッコロの疑問は至極当然のものだろう。

 タイムパトローラーは歴史の修正が仕事であり、歴史への過干渉は禁じられている。

 ならばこうして自分達の存在を話すのはどう考えてもアウトなはずだ。

 その問いにトランクスは予想していたように答えた。

 

「ええ、普通はそうです。

しかし幸か不幸か、この時間軸は既にトワとミラの介入で改変されてしまった後の時間軸なんです。

つまり本来あるべき世界線からは外れています。

貴方達は当事者なんです。だから普通の歴史よりは俺も介入し易い」

 

 トランクスはそう言い、リゼットを見た。

 それを見て彼女も察する。ああ、やはり起点は自分かと。

 

「なるほど。本来との違いは私の存在の有無ですね?」

「はい。本来の……トワやミラが介入しない歴史にリゼットさんは存在していません。

いえ、正確に言うと存在はしていたのですが普通の村娘として一生を終えています」

 

 起点は……恐らくはあの始まりの瞬間。

 リゼットが自分を自分として認識した、あの前世の記憶を取り戻した時だろう。

 あの時リゼットの前にミラが現れ、そしてそれをトランクスが撃退した。

 それを切っ掛けとしてリゼットは本来あるはずのない記憶を呼び起こしてしまい、そして本来の道筋を外れて地球の神にまで登り詰めたのだ。

 そして、それを修正する事は出来ない。

 何故ならトワとミラが過去に来た理由は、未来でリゼットに叩きのめされて、その存在を恐れたからだ。

 つまり、ループしてしまっているのである。

 リゼットがいたからトワとミラは過去に来た。

 だがトワとミラが過去に来たから、リゼットは神になってしまった。

 卵が先か、鶏が先か――リゼットという存在自体が、時の矛盾の上に成り立っている。

 これを下手に修正してしまえば、何が起こるか分からない。

 最悪、歴史そのものが消えてしまう可能性だってあるのだ。

 

「神様が神様じゃねえのか。じゃあ誰が地球の神様やってんだ? やっぱ先代様か?」

「いえ、先代様は本来の歴史ではピッコロさんと融合しています。

新たな地球の神になったのは……ナメック星人のデンデさんです」

 

 悟空にとって地球の神といえばリゼットを指す。

 いや、悟空のみならずこの場の全員にそれは共通していた。

 地球の中でも最大戦力を誇り、押し寄せる外敵を次々と駆逐するリゼット以上の神がまず思い付かない。

 次から次へと強敵が現れるこの地球という惑星において、リゼットという守護神はまさに適任と呼んでいい。

 その彼女を外して地球が無事に済む未来がどうにも思い描けないのだ。

 ……事実、本来の歴史では地球は一度消滅してしまっているので彼等の懸念は実に正しかった。

 

「いいっ? デンデって……あのデンデか? あいつが神様!?」

 

 デンデはナメック星に行ったメンバーの殆どが知っている名だ。

 悟空は驚きを露にするが、本来の歴史でデンデを地球に連れて来たのは他でもない彼である。

 しかし悟空達はデンデが神という事にあまりしっくり感じないらしい。

 少なくとも、この戦闘だらけの地球で神をやるには余りに実力不足に思えたのだ。

 

「悟空君。デンデ君は私などよりも余程、神に向いていますよ。

私は確かに強さという点で見れば歴代でもトップであると自負していますが、所詮は戦いに特化した神です。ドラゴンボールを創れるわけでもなく、性能を向上させる事も出来ません」

 

 そこにリゼットがフォローを入れるが、トランクスとバーダックが同時にぎょっとした顔になった。

 恐らくはドラゴンボールに関する話を出した事……特に『性能を向上』の部分に反応したのだろう。

 トランクスは恐る恐るといった様子でリゼットへと質問する。

 

「お、驚いた……リゼットさん。もしかして貴女は本来の歴史をご存知なのですか?」

「ええ、少しだけですがね。……不気味ですか?」

「い、いえ……貴女は本当に底が知れない。頼もしいですよ、全く」

 

 リゼットの未来知識に関しては彼女自身しかその出所を把握していない。

 時の界王神などもリゼットが未来を読んでいる事を薄々感じ取ってはいるが、その彼女すら『恐らくミラやトワの記憶を読んだのだろう』くらいにしか思っていないのだ。

 リゼット自身もこの知識の出所を語る気などなく、主に自分の『私は色々知っているぞ』という演技(ロール)に用いていた。

 

「ザマスねえ……おいウイス、知ってるか?」

「確か第10宇宙の界王神見習いですね。天才的な格闘の実力を持つらしいですよ」

「ふうん。じゃあそいつ破壊しておこうか」

 

 トランクスから未来の惨状を聞いたビルスはザマスの情報をウイスから聞き出し、早々に破壊してしまう事を決意した。

 別に他がどうなろうと知った事ではないのだが界王神を殺されるのだけは困る。

 あんな弱虫で物知らずでオマケに未熟な東の界王神の事など好きでも何でもない。

 だが界王神と破壊神は運命共同。界王神が死ぬと破壊神も死んでしまう。

 だから破壊神は界王神にだけは手を出さないのだ。

 唯一、対となる存在がいない界王神として時の界王神クロノアがいるが、実は彼女も知られていないだけで時の破壊神というのが何処かにいるのかもしれない。

 

「なあトランクス、オラといっちょ戦ってみねえか?

そのブラックっちゅう奴の基準も知りてえしな」

「俺が悟空さんとですか?」

「ああ。駄目か?」

「いえ、いいですよ。俺も今の貴方の実力を知りたい」

 

 ここですぐに『とりあえず戦おう』となるのは、やはりサイヤ人だからだろう。

 トランクスもそれに同意し、二人は庭へと出る。

 ブルマはそれを見てすぐにバリアを展開し、周囲に被害が出ないように気を利かせた。

 今の二人が戦えば、その余波だけで近くの町が崩壊しかねない。

 それを考えれば素晴らしいアシストであるのだが……恐るべきはそんな二人の力を受け止める事が出来るバリアを開発したブルマの頭脳だろう。

 

「では行きますよ、悟空さん!」

 

 トランクスが気合を入れ、超サイヤ人2へと変身した。

 身体をスパークが覆い、髪が逆立つ。

 その気の総量は今の悟空にも匹敵するほどだ。

 悟空もそれに応じて超サイヤ人2となり、二人の放つ気の波動がバリアを軋ませる。

 

「いきなり超サイヤ人2か。すげえぞトランクス、あの時の悟飯以上の気だ」

「いえ、これでもブラックと戦うにはまだ不足しています」

 

 トランクスと悟空が正面から衝突し、しばしの均衡の後にトランクスが強引に悟空を弾き飛ばす。

 それからトランクスが距離を詰めて目にも止まらぬ連撃を放つが、悟空はこれを冷静に防いでいた。

 跳躍しながらの右足の蹴りを避け、続く左足の蹴りが悟空に迫る。

 胴体を狙うと見せかけて軌道を変え、頭へと蹴りが迫るも、悟空はこれを的確にブロック。

 防がれた反動で宙に浮いたトランクスが回転して今度は着地前に踵落とし。

 しかし悟空は既に狙いを見切っていたのか、トランクスの足を掴んで放り投げた。

 

「ぐっ!」

 

 投げられたトランクスが地面に手を突き、そのまま腕の力だけで回転。

 回りながら空へ飛び、上下逆さまのまま気弾を連射した。

 悟空は静かな笑みを浮かべたまま最低限の動きで気弾を避け、トランクスの背後へ高速移動する。

 そのまま回し蹴りを放ち、トランクスに防御させてからガラ空きの頭部を肘で殴り飛ばした。

 基礎戦闘力はほぼ互角だ。決してトランクスは悟空に劣っていない。

 むしろトランクスには若さという武器があり、フィジカル面では僅かではあるが悟空に勝っていた。

 しかし年齢を重ねるのは悪い事ばかりではない。積み重ねた経験と時間は悟空に技術と老猾さを与えてくれた。

 一見するとただの力押しにも見える悟空の戦いだが、それは違う。

 確かな読みと技に裏打ちされたそれはトランクスの打点を的確にずらし、実力以上の強さを悟空に与えてくれる。

 ただの気弾にしてもあえて避けさせる事で次の行動を予測し、トランクスが逃げてきた所を狙い澄まして蹴りを叩き込んでいた。

 トランクスもわざと隙を作って誘いを入れたりはしているのだが、悟空はそれすらも見切って別の個所を攻撃する。

 力と速度、若さを武器にトランクスが果敢に攻め、悟空が技術と経験を盾に完璧に受け流す。

 結果として戦闘力が互角であるにもかかわらず、戦いは終始悟空が圧倒していた。

 しかしトランクスも数多の戦いを潜り抜けてきた歴戦の戦士だ。

 悟空にあしらわれながらも食らいつき、少しずつ彼の動きに追いついている。

 両者の拳が交差し、互いの強さを認めて二人の顔に笑みが浮かんだ。

 

「す、すげえ、未来の俺……」

「まだだぜ、坊主。あいつの本気はここからだ」

 

 少年トランクスが自分とは比較にもならぬ強さに驚くが、そこにバーダックが補足を入れた。

 そう、トランクスはまだ本気を出していない。

 本気はこれから出すのだ。

 

「じゃあこれはどうだ?」

 

 悟空が不敵に笑い、超サイヤ人3へと変身した。

 しかしそれを見てトランクスは何一つとして驚く事はない。

 当たり前だ、何故なら彼はタイムパトローラー。

 超サイヤ人3へと変身した悟空の姿など今までに何度も見ている。

 悟空の変身に応じるようにトランクスもまた同様の変身を遂げ、全身を雷光が覆った。

 

「おっでれえた。お前も出来るんか」

「俺もあの時のままではありませんよ、悟空さん」

 

 超サイヤ人3へと変化して悟空が上回ったのも束の間、トランクスが変身した事で再び戦闘力差は互角に戻った。

 ならばここから始まるのは先程の焼き直しであり、二人の姿が同時に消えて高速の拳撃戦へと移行する。

 その動きは最早悟天や少年トランクスでは目で追う事すら出来ず、大気が幾度となく爆ぜるのを呆然と見ているだけだ。

 トランクスの拳が悟空の頬を抉り、だが悟空がそれに合わせて回転。

 ダメージを受け流しつつ遠心力を乗せて回り蹴りを放った。

 それをブロックしようと肘を上げるも、インパクトの瞬間に悟空が消えて背後へと回り込む。

 慌てて振り返るも一手遅い。悟空の蹴りが今度こそトランクスを捉え、地面へと叩き込んだ。

 だが落下の瞬間に気を爆発させて急停止をかけ、そこから更に急浮上して悟空へと拳を放つ。

 腕を十字にしてブロックするも、トランクスの攻撃は重く、悟空のガードが弾かれてしまった。

 そこに間髪を容れず零距離バーニングアタック!

 悟空の目と鼻の先で圧縮した気弾を放ち――悟空が神掛かった速度でかめはめ波を発射して相殺した。

 爆発がバリア内で荒れ狂い、遂に内側からの衝撃に耐えきれずバリアが崩壊してしまう。

 だがそこから出て来た二人は無傷だ。

 二人は同時に着地すると互いを認めて微笑み、変身を解除した。

 

「本当におでれえたぞ! 凄え強くなったなトランクス!」

「悟空さんこそ流石です。一瞬でも気を抜けばこちらがやられてしまいそうだ」

 

 悟空にはまだゴッドや、その上のブルーという変身が残っている。

 しかしそれを抜きにして考えればトランクスの実力はまさに見事というべきだろう。

 その戦闘力は、かつてリゼットが倒したジャネンバと戦ったとしても問題なく勝ててしまうレベルだ。

 その逞しい成長にベジータがどこか嬉しそうに笑い、かつての戦友が今も弛まぬ成長を続けている事にピッコロとターレスも満更ではなさそうな顔だ。

 

「どうやらブラックっちゅう奴は油断出来ねえ相手のようだな」

「はい。ザマスは大した事がないのですがブラックの強さは驚異的です。

俺とバーダックさんの二人掛かりでも勝てません」

「……そりゃあ相当だな」

 

 敵の厄介さを再認識し、悟空の目が険しくなった。

 どうやら既に悟空の中ではブラックという相手と戦う事は決定事項らしい。

 かつての戦友が苦しんでいるのに、それを無視出来る悟空ではない。

 それにこれは全ての時間軸に関わる問題だ。

 異なる時間軸だからどうこうではなく、ブラックとザマスは全ての時間の為に倒さねばならぬ相手なのだ。

 

「よっし、オラも未来に行くぞ。一緒にブラックっちゅう奴をぶっ倒そうぜ」

「俺も行くぞ。カカロットを倒すのは俺の役目だ」

 

 悟空とベジータが真っ先に未来行きを宣言し、更にターレスとセル、ピッコロも何も言わないが乗り気である事をリゼットは感じ取った。

 これは今回は自分の出番などないだろう。

 ブラックという男の強さは超サイヤ人ロゼという変身形態を含んで考えれば恐らく悟空と同等かそれ以上。

 しかし、そこにベジータを加えた二人が相手となればまず勝ち目はないだろう。

 そのような事を考えていると、突如として空が割れ、禍々しい気がこの世界に現れた。

 

「この気は……」

 

 リゼットが上空へと視線を走らせ、全員もそれに続く。

 そこにいたのは――悟空だった。

 着ている服装こそ異なるが、確かにリゼット達が知る悟空の顔であり、だが悟空とは異なる悪辣さが滲み出ている。

 どちらかといえば悟空というよりバーダックに近い目つきだ。

 

「見付けたぞ、トランクス」

 

 彼――ゴクウブラックはそう言い、口の端を歪めた。




セル「ほう」
ピッコロ「あれがそうか」
リゼット「来ましたか」
ターレス「へえ」
悟空「オラそっくりだなー」
ベジータ「フン」

ブラック(………………。
何だこの時空!? どいつもこいつも戦闘力おかしくないか!?)
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