ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
白い光と化したリゼットは驚くシャンパへと文字通り光の速度で接近し、彼の脛を思い切り蹴り抜いた。
いかに破壊神でも痛覚は存在し、その急所は人とそう大差ない。
少なくともシャンパは試合中に足をテーブルに打ち付けて痛がっている姿を見せており、つまりいかに破壊神でも予期していない衝撃には痛みも感じるし怯みもするという事だ。
シャンパが悲鳴を上げる間もなく今度は足の小指!
痛覚神経が集中している小指は身体の末端という事もあり通常よりも痛みを感じやすい。
更に普段使わない部位だけに脳は小指の存在を普段は認識していないのだ。
『固有感覚』――人は普段、この機能によって自らの身体の位置やどう動いているかを認識する。
だが身体の末端にあり、かつほとんど使わない足の小指はこの固有感覚による認識から外れやすい。
故に人は自らの小指の位置を正しく認識出来ず、小指だけをどこかにぶつけて痛めるという事態が頻発してしまうのだ。
つまり完全な意識の外、不意の痛み。だから小指への衝撃というのは予想外に響く。
だがこんなのはほんの序の口。シャンパが怯んでいる隙にすぐにリゼットは次の攻撃へと移行した。
シャンパの鼻を小突き、怯んで口を開けた所で素早く顎を掴んで口の中に指を入れる。
そして自律行動気弾発射! 小さな、指先程度のサイズの気弾をシャンパの口へと入れて何度も何度も舌の付け根を刺激させた。
舌の付け根というのは刺激する事で嘔吐反射が起きる。
シャンパにそれが適応されるかは不明であったが、どうやらやはり猫よりも人に近い身体構造のようだ。
こみあげる吐き気にシャンパが元々青い顔色を真っ青にして震え、口元を押さえる。
そこに容赦なく貫手で肝臓打ち!
踏み込みだけでリングが砕け、次いで光速の打撃がシャンパの肝臓を打った。
そうしている間にも自立気弾はシャンパの舌の付け根を刺激し続け、嘔吐感で彼を苦しめる。
ダメージと嘔吐感にシャンパが思わず膝を突いてしまうが、それがリゼットの次撃を許してしまった。
「ふっ!」
リゼットは爪先でシャンパの喉を突いて無理矢理起き上がらせ、シャンパの胸に手を当てて零距離の掌底を叩き込む。
更に念力と気合砲を合わせ、シャンパを一気にリング外へと押し出した。
これはまだルール有りの試合。ならば破壊神だろうが何だろうがリングの外へ墜落させてしまえばリゼットの勝ちとなる。
しかしシャンパも流石にこれで終わりとはならず、空中で静止してリングアウトを免れた。
それからシャンパは咄嗟に顔をあげるが、次の瞬間彼の視界に飛び込んできたのは一発の気弾であった。
それがシャンパの目の前で炸裂し、太陽拳を上回る眩さで彼の視界を塞ぐ。
思わずシャンパは目を閉じてしまい、その硬直を利用して追いついたリゼットがまたも意識の外からの攻撃を放ち、シャンパの顎を掌打で打ち上げた。
それと同時にシャンパが飛んでいく先へと一瞬で回り込み、飛んできたシャンパの腹へと右手で掌打! 間髪を容れずに左手を右手の上に乗せて掌打! 二重の衝撃を浸透させ、シャンパをリングへと落とす。
まだ終わらない。落ちていくシャンパを追って自らも急降下し、背中の光輪から爆光を発して更に速度を上げた。
シャンパはそれに対し落ちながらも拳を繰り出して反撃を試みるが、確かに放ったはずの拳が亜空間へと呑まれて自らの背中へと直撃する。
それと同時に加速し切ったリゼットの光速すらも超えた手刀が腹へ炸裂し、シャンパは自らの攻撃との板挟みとなってしまった。
地面へ墜落し、何とか起き上がったシャンパへとリゼットが猛然と迫る。
だが次の瞬間にはリゼットの姿が消え、シャンパを素通りしたかのようにその先へと現れた。
直後、シャンパの身体を見えない打撃が幾度も打ちのめし、彼をダウンさせる。
「凄いね。打撃が速すぎてダメージが後から発生してるよ」
「ホホホ、あれは回避出来ませんね。
シャンパ様が攻撃を受けたと認識した頃にはもう攻撃が完了している。素晴らしい事です」
ビルスが椅子にもたれながら面白そうに観戦し、ウイスもリゼットの技巧を手放しに誉める。
そうしている間にもリングの上では幾度となくリゼットが消え、シャンパが光速を超えた打撃に叩きのめされていた。
無論シャンパならば対応出来ない攻撃ではない。気の総量ではリゼットなど上回っているのだ。
だが彼の喉にはリゼットが残した鬱陶しい気弾が残っている。即ち彼は今、絶え間ない嘔吐感と戦いながら試合をしているのだ。
これでは実力の3割すらも発揮出来ない。
ベジータは舌打ちをし、過去の闘いを思い出すように話す。
「あの女の性質が悪い所はこれだ。相手の方が強いと分かった途端、その実力そのものを発揮させないような戦い方をしやがる」
「しかし正しい戦法だ。相手が強いなら実力を出させなきゃいい。
強い相手に実力を出し切らせたら負けるに決まってるからね。小賢しいが大したもんだよ」
ベジータとは違いビルスはリゼットの戦い方に肯定的なようだ。
しかしシャンパもまたビルスと同格の破壊神。いかに実力を制限されてもそう簡単に敗れはしない。
嘔吐感を堪えながら起き上がり、リゼットへと突撃を敢行した。
そして攻撃を繰り出す刹那――リゼットはシャンパの前へ両手を出し、強く掌を叩いた。
所謂『猫だまし』というやつだ。
だがたかが猫だましといえど侮る事は出来ない。意識が最大に高まった一瞬を狙って放たれたそれは意識の波長を乱し、崩し、場合によっては意識そのものを断ち切る武器にだって変化する。
そしてこれは相手が集中していればいるほどに効果を増し、まさに今のはこの上ない絶好のタイミングで放たれたカウンターであると言えるだろう。
シャンパの動きが一般人の肉眼でも捉えられるほどに硬直し、その瞬間リゼットが勝負へと出た。
「Infinite World!」
時間停止!
この世の時間を一秒間だけ止め、リゼットは跳躍して両手を広げる。
シャンパが放心しているという絶好の機会。それを時間停止によって一秒間にまで伸ばし、ここで最大の勝負を仕掛けたのだ。
ここで決めなければ勝ち目はない。破壊神が態勢を完全に立て直してしまえばリゼットの負けが確定する。
故に静止時間一秒、この間に全ての片を付ける!
両手を頭上でクロスさせ、前方へ向けて掌を向ける。
それと同時に手の中に白い輝きが生まれ、膨大な神力が集約されていく。
「はあああぁ……!」
キュイイイン――と。
まるでモーターが高速駆動しているような音を立ててリゼットの背にある光輪が、スパークを撒き散らしながら回転を開始した。
同時に彼女の手の中の輝きが強まり、その威力を桁違いに跳ね上げていく。
気功波や気弾というのは、基本的には本人の力量に左右される。自らの力を超えた気功波は通常、創り出す事は出来ない。
しかし例外というのは何にでもあるもので、例えば元気玉などはその最たるものだろう。
そしてリゼットの技であるゼノバースも、元々は元気玉を目指して編み出された技法だ。
ますます回転速度を上げる光輪が信仰と共に運ばれる気をリゼットへ供給し、集められた気はリゼットの身体を通して手の中の輝きへと集約されていく。
光輪は次第に速度を加速させ、最後には狂ったような速度で超速回転を始めた。
それに比例して手の中の輝きは破壊神すら壊せる領域へと達し、今ここに最強の一撃が完成する。
そして放たれるのは、純白の極光。
「Ultimate blast!」
シャンパが放心している絶好の好機を伸ばした制止時間一秒。
その停止が途切れる前に巨大な気功波が彼へ炸裂し、そして時間が動き出した。
「ッ、不味い!」
「っ!」
時間が動き出すと同時にウイスとヴァドスの姉弟が最大出力のバリアを展開する。
一つの宇宙すらも崩壊させかねない膨大極まるエネルギー、それがリゼットの攻撃にはある。
いかにシャンパでも放心中に放たれたこの攻撃は効く。効かないわけがない。
彼は正気に戻る間すらも与えられずに極光の中へと呑まれ、吹き飛んでいった。
リング? 当然そんなものはとっくに飛び出してリングアウトしている。
光が止んだ時、そこには地面に倒れているシャンパと彼の前でバリアを展開しているヴァドスの姿があった。
それを見て攻撃の余波でひっくり返っていた審判が起き上がり、そして手を掲げて勝敗を告げる。
「シャ、シャンパ様場外! 場外です!
よってこの試合、リゼット選手の勝利!」
審判の声を聞き、リゼットが地面に降りて膝を突く。
息は荒く、汗が止めどなく流れている。
やはり神域中のバーストリミットは方向性を反転させようが危険だ。身体への負担が半端ではない。
後、ほんの数秒でも闘いが長引いていればもたなかった。
そう、これは余裕の勝利などではない。
リゼットにとっては、ギリギリの危うい勝利だ。
「ひええ、すっげえな神様。シャンパ様に一方的に勝っちまったよ」
「それはそうでしょう。一方的に勝たなければ負けていたのはリゼットさんです」
悟空は素直にリゼットの実力に感心するが、ウイスは両者の実力を正しく見切っていた。
一方的に勝ったのは事実だ。しかしそれは決して楽勝という事ではない。
それ以外にリゼットの勝ち筋などなかったのだ。
「ああしてシャンパ様の油断を突き、ペースを手放さずに終始圧倒して、立ち直る前に決めてしまうしかなかった。そうする事でしかシャンパ様には勝てないと彼女は分かっていたのです」
「ま、そういう事だ。僕ならああはならなかったけどね」
「それはビルス様が彼女の実力を知っているからです。初見なら案外、同じ事になったのではないですか?」
「馬鹿を言うなウイス。僕が負けるわけないだろう」
余裕を見せるビルスだが、しかしその額に一筋の汗が流れている事を悟空は見逃さなかった。
ビルスならば勝てるという発言は恐らく事実だ。彼ならばあんな不意打ちは受けないし、地力の差でリゼットを押し切ってしまえるだろう。
だがそれはウイスが言うようにリゼットの脅威をビルスが知り、認めているからに他ならない。
もしも初見ならば……ビルスもそれを考え、万一の事態を思い浮かべているのだろう。
もしかしたら、あそこで倒れているのはシャンパではなく自分だったかもしれない、と。
「ほら、御覧なさい。リゼットさんは自力では動けませんがシャンパ様はもう立ち直っております」
「……これが破壊神と俺達の差、か」
試合はリゼットが勝った。
しかしシャンパはもう復活しており、リングの外で「もう一度だ!」だの「やり直しだ!」だの駄々っ子のように喚きながら転げまわっている。
一方リゼットは自力では立つ事も出来ずに、観客席から飛んできたブウに姫抱きにされていた。
その光景を見てベジータは舌打ちを隠せない。
「しかし勝ちは勝ちだ。破壊神でもない相手に負けるシャンパなんてきっとこの先拝めないぞ。向こう10万年はこのネタでからかえそうだ。うへへへへ」
「ビルス様もお人が悪いですねえ」
ビルスはニヤニヤと笑いながら嬉しそうに、スキップでもしそうなテンションでシャンパの前へと飛んで行った。
そして彼と何かを話した後、シャンパをからかうように彼の前で軽快なステップを踏む。
「なあなあ、今どんな気持ち? 破壊神以外の相手に負けて今どんな気持ち?」
「~~~~~っっ!!」
これは酷い。ビルス絶好調である。
一方シャンパは涙目になって唸っており、やがて決壊を迎えて手足をジタバタと振り回した。
「ちくしょーちくしょーちくしょーちくしょーちくしょーちくしょー!」
「はっはっはっはっは! やーいやーい、ざまあみろ!」
子供のように喚くシャンパと子供のように最高にハイ! なビルス。
その二人を見てベジータが呆れたように「子供か」と呟く。
こうして今度こそ第7第6宇宙対抗試合は完全な決着を迎え、更にシャンパは参加選手の破壊すら禁じられてしまった。
その後、一悶着はあったものの疲労により眠ってしまったリゼットは残念ながら見ていない。
何でも、全ての宇宙で一番偉い神様が降臨したり、悟空がその戦いぶりを気に入られて握手されたり、何故かシャンパが不興を買ったりと色々あったようだが、まあ割とどうでもいい事だろう。
その後、今度は十二の宇宙で試合をやろうという話になりその場は解散となった。
また、せっかくの超ドラゴンボールの願いをビルスは第6宇宙の地球の再生に使ってしまったが……もしかしたら、何だかんだでこの兄弟は仲がいいのかもしれない。
背中の輪っかがギュルギュル回ってチャージしてからのビームって何か凄い好きなんですよ。
FF10のバハムートのメガフレアとか。
これ分かる人……いますかね?
それと、言わなくてもやる人はいないと思いますが、感想欄でNDKのAAを張ったりはしないで下さいね。
【遠距離太陽拳】
気弾と見せかけて敵の目の前で太陽拳が発動する。
通常の太陽拳と違ってコンボの中にいきなり組み込んでくるので対策し難い。
【二重掌打】
ほとんど時間差なく掌打を叩き込む。
一撃目の衝撃が浸透し切らないうちに二発目の衝撃が追いつき、対象に大ダメージを与える。
【アルティメットブラスト・QTE】
アルティメットブラストの別バージョン。
通常と違って援護用の光球は浮かべず、全てを一発の気功波に賭ける完全威力重視の技。
時間停止中に外からの気をかき集めて自らの力を遥かに超えた一撃を完成させる事でノーモーションで発射される。
停まった時を認識出来る者以外は、この技が撃たれた事にすら気付けない。
正式名称は『アルティメットブラスト・クイックタイムイベント』だが長ったらしいのでリゼットは発射の際は『アルティメットブラスト』とだけ言う。
【QTE】
クイックタイムイベントの略。
ゲーム『アルティメットブラスト』をジャンケンゲーにしてしまった恐るべきシステム。別名アルティメットジャンケン。
名前的に時間停止と合いそうだったので技名に採用した。
【光輪】
リゼットの背中に付いている変な輪っか。
実はこれ自体が気の塊であり、弱い相手はこれに触れるだけで消し飛ぶ。
外から無限に供給される気を受け止める受け皿のような役割を果たしており、実は信仰と気は直接リゼットに注がれているわけではない。
まずこの光輪に充填され、リゼットが必要とした時にリゼットに供給されている。
また、リゼットが受け止めきれない気は光輪が勝手に外に出しており、放熱板のような役割も果たしているなど無駄に多機能。
この形態になった時に自分に最も必要なものを理解したリゼットが無意識化で造り出したサポート用自律気弾であり、これも技の一種である。
リゼットが技に入る際に光輪が輝くのは、リゼットに気を与えているからであって決してただの演出というわけではない。
その他、気を後ろに発射しての加速やその場で留まっての急停止、方向転換などにも対応。
チャージ済みの気では出力不足の時は今回のように高速駆動して外から気をかき集める事も可能。
自律気弾の一種なので自らの意思で判断する事もあり、リゼットが倒れそうな時などは自動でバランスを取ってダウン回避もしてくれる。
ちなみに着脱可能。