ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第九十九話 破壊神選抜格闘試合④

 超サイヤ人4への変身を遂げたターレスを前にマゲッタが後ずさりをする。

 彼も何となく理解出来たのだろう。目の前に立つ男には逆立ちしても勝てないという事を。

 それほどの絶対的な力の差を。

 それでも退くことは出来ない。覚悟を決めたマゲッタは前へと踏み出し、全霊の一撃をターレスへと叩き込んだ。

 のけぞるターレスの顔。回避すらしなかった事に驚く悟空とベジータ。

 そして呆れるリゼットの前でターレスは不敵な笑みを崩すこともなくマゲッタを見る。

 

「くくっ、効かねえなあ」

「!?」

「くすぐってえんだよ……お前のパンチは」

 

 ターレスは力の差を思い知らせるようにわざと攻撃を受け、そしてノーダメージをアピールする。

 マゲッタはそれでも尚、健気に攻撃を続行するが最早力関係は大人と赤子だ。

 いくら殴ってもターレスは微動だにせず、痛みすら感じていない。

 マゲッタのパンチはただくすぐったいだけで、ターレスを笑わせるだけだ。

 

「そら! 今度はこっちの番だ!」

 

 ターレスはリングが砕けるほどに強く踏み込み、マゲッタの懐へと飛び込む。

 そして一撃!

 繰り出した拳の威力でマゲッタを殴り飛ばし、千トンはあるはずの身体をリング外へと弾き飛ばした。

 マゲッタもまさかパンチの一発で自分が押し出されるなど予想すらしていなかっただろう。

 呆然とした様子でリング外に倒れており、身に起きた出来事を理解出来ていない。

 

「マゲッタ選手リングアウト! よって勝者はターレス選手!」

 

 審判の声に第7宇宙側の応援席から歓声が上がった。

 これで第7宇宙の三連勝だ。

 ビルスは愉快そうに笑い、シャンパは悔しそうに床で駄々っ子のように転げまわっている。

 リゼットは相手側に残っている選手を見て、うまくいけばこのままターレス一人で四連勝も狙えると考えていた。

 出てくる順番にもよるが、あのキャベというサイヤ人は恐らく大した事はないだろう。

 超サイヤ人や大猿を見て心底驚いていたようだし、こちらから下手に覚醒を促したりしなければ余裕で押し切れる相手だ。

 

『ターレス。次の相手は恐らくキャベという少年です。

今のままならば貴方の相手ではありませんが、覚醒してしまえばどう転ぶか分かりません。

余計な事はせずに一気に倒して下さい』

『はいよ。神さんも慎重だね』

『慎重にもなりますよ。何せ景品が地球なんですから』

 

 こう言ってはあれだがキャベはこちらがよほどの馬鹿をしない限りまず負ける相手ではない。

 問題は相手側の切り札と思われるヒットという男だ。

 先ほどからずっと腕を組んで座っているが、彼だけは別格の貫禄を漂わせている。

 リゼットとしては出来ればあのヒットには万全を期して自分を含むこちらの戦力4人をベストの状態でぶつけたいと考えていた。

 ヒットも目を開いてリゼットへ視線を向け、一瞬のみ二人の視線が交差する。

 互いに最も警戒すべき相手を、戦う前から察しているようだ。

 リングの上に4番手のキャベが上がり、ベジータと似た構えを取る。

 だが勝機がないに等しい事は彼が一番痛感しているのだろう。その構えはどこか腰が引けたものだ。

 その余りに覇気のない姿にベジータが苛立ちを見せる。

 同じサイヤ人として何か思う所があるのかもしれない。

 

「ターレス選手VSキャベ選手、始め!」

 

 試合開始のゴングが鳴り、それと同時にキャベが走り出した。

 ターレスは一切の構えを取らずにキャベの出方を見ている。

 そんな彼の胸板にキャベの拳が叩き込まれた。

 

「やああ! でやっ!」

 

 拳打から繋いで蹴りへ移行。

 しかしターレスは僅かも仰け反らず、可笑しそうに笑っている。

 

「ぐっ……だだだだだだだ!」

 

 ターレスの腹や胸へとキャベが拳のラッシュを叩き込んだ。

 だがやはり通じていない。

 それどころか、ターレスを殴っているキャベの拳の方が赤く腫れている始末だ。

 余りの差にキャベの顔が弱気に染まり、それでも諦めずに距離を開けて気弾を連射した。

 

「だだだだだだだ! だあああああーッ!」

 

 次々と気弾が炸裂して煙を巻き上げる。

 だが実力差は絶望的だ。

 キャベの攻撃が終わった時、そこにいたのは開始位置から一歩も動いていないターレスの姿であった。

 その光景にシャンパは頭を抱え、「駄目だ、勝負になってねえ……」と項垂れる。

 

「ま、こんなもんだろうな。じゃあ、終わりにするか」

 

 ターレスが唐突に、キャベとの間合いを潰した。

 変身や覚醒など待つ必要もない。

 相手が弱いというなら、弱いまま叩き潰すだけの事だ。

 反応すら出来ずにいるキャベにターレスの膝蹴りが炸裂し、いとも容易く膝を突かせてしまった。

 キャベは数秒呻いた後に何とか顔をあげ、零距離で気功波を放つ。

 ベジータのギャリック砲とよく似た攻撃だが、しかしターレスには通じない。

 煙が晴れた時、そこには片手を前に突き出したターレスがいて更に絶望を深めただけだ。

 

「少しは効いたぜ……と言ってやりたい所だが悪いな小僧。全く効かねえよ」

「あ……ああ……!」

 

 力の差に絶望した彼の髪を掴んで持ち上げ、ターレスが残忍に笑う。

 

「諦めろ。お坊ちゃんじゃあ俺には勝てねえ」

「ぐ……う、うう……こ、降参、します……」

 

 ターレスとキャベの戦力比は数値にして実に数千倍にも及ぶ。

 基本の状態ならばキャベにもまだ勝ち目はあったが、何せ今のターレスは超サイヤ人4。平常時とは比較にもならぬ強化を果たしておりキャベに勝ち目などない。

 故に彼の降参は至極当然のものだったのだが、そのあまりに早い諦めにベジータとシャンパが同時に舌打ちをした。

 

「実力差があるとはいえ、不甲斐ないガキだ……あれでもサイヤ人か!

くそっ、あのだらしない根性、俺が後で鍛え直してやる!」

 

 サイヤ人の王子としてキャベに何か思う所があるのだろう。

 あるいは、サイヤ人は強くなければならないと思っているのかもしれない。

 それでもわざわざ彼自ら鍛え直すほどとは思えないが……。

 そこまで考えて、リゼットはある点に気が付いた。

 

(そうか……あの子、ベジータの弟に何となく似てるんだ)

 

 キャベはサイヤ人らしからぬ礼儀正しさや細さが、どこかベジータの弟であるターブルに似ているのだ。

 第6宇宙ではあれがサイヤ人として普通なのかもしれないが、ベジータは弟と似ているキャベを放っておけないのだろう。

 あるいはそれは、昔は弟を放置していた事を悔いての事なのかもしれないが……きっと、ベジータにその自覚はないだろう。

 

「キャベ選手、降参を宣言! よってこの試合はターレス選手の勝利です!」

「はっはー! いいぞターレス、これで4連勝だ!

いっそこのままターレス一人で第6宇宙の連中を全滅させてしまうのも面白いかもな!」

 

 審判の勝利宣言にビルスは最早有頂天だ。

 ターレス一人で4連勝を飾り、更にこちらにはまだ神の域に踏み込んでいるベジータ、悟空、そしてリゼットが控えている。

 しかし盛り上がるビルスとは違い、リゼットはここからが本番だと考えていた。

 こう言ってはあれだが前の4人など前座もいいところだ。

 互いの戦力差を考えれば第7宇宙側の実力者――即ちリゼット、悟空、ベジータ、セル、ピッコロ、ターレスのいずれが出ても4人抜き出来てしまうだけの差があった。

 しかしヒットだけは違う。彼はこちら側の住人だ。

 間違いなくその強さは神の域に踏み込んでおり、リゼットでも確実に勝てるとは言い切れない。

 

(頼みますよターレス。なるべく彼にダメージを残して下さい)

 

 リングの上に上がったヒットを見ながらリゼットは精神を研ぎ澄ませる。

 ここから先は余所見、瞬き厳禁だ。ヒットの動きを観察しなければならない。

 うまく悟空かベジータまでで止まってくれればいいのだが最悪の場合自分まで出番が回ってくる。

 そうなった時の事を今から考えなければ不味いのだ。

 何故なら……恐らく彼は、その最悪を実行するだけの実力を秘めているのだから。

 

「ターレス選手VSヒット選手、始め!」

 

 審判が開始を宣言し、まず最初に仕掛けたのはターレスであった。

 先制の右ストレートを放つも首を動かすだけで避けられ、続く連撃もヒットに掠りすらしない。

 ならば、と素早く身を屈めて足へ蹴りを放つ。

 だがヒットはそれを予期していたように軽く跳躍し、ポケットに入れていた手を抜く。

 目にも止まらぬ拳打がターレスの頬を打ち、のけぞらせる。

 だがターレスはすぐに体勢を戻し、ヒットとの距離を取った。

 

(速え……だが見えない程じゃない)

「……タフだな。急所を打ったはずだが」

 

 ダメージは受けたが浅い。

 超サイヤ人4は大猿の膨大な質量をこのサイズにまで圧縮しているせいか戦闘力以上にタフだ。

 少なくとも単純なパワーや耐久力を言うならばブルーを遥かに超えているだろう。

 多少の攻撃なら浴びてやると決意したターレスが正面から突撃し、ヒットが不動の姿勢で迎え撃つ。

 ターレスが攻撃を放つよりも早くヒットがポケットから手を抜き、居合の如き拳を顔へ叩き込んだ。

 だが攻撃を受けるのは覚悟の上。

 ターレスはのけぞりすらせずに蹴りを放つ。

 相打ち上等で放った完璧なタイミングでのカウンター。

 誰もが当たると確信し、だが次の瞬間硬直した。

 当たるはずだった攻撃が外れ、ヒットの第二撃がターレスの顎を揺らしたのだ。

 しかも第一撃と違い、こちらはいつ攻撃されたのかが分からない。

 気付いたら殴られていた。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 ターレスが吹き飛びながら呻き、空中で回転して着地する。

 何が起こったのかを把握出来ず、その顔は混乱に満ちている。

 そしてそれは彼だけではなく、悟空もベジータも、ビルスですらも何が起こったのかが分からない。

 一方リゼットは険しい顔をしており、ウイスは眉をひそめている。

 どうやらこの二人には何が起こったのかが分かるようだ。

 

「っちい!」

 

 ターレスが黄金の気を纏い再び突撃する。

 正面からの拳打! ――と見せ掛けて背後へ回り肘打ち!

 だが次の瞬間にはまたもターレスが殴られており、何とか踏み止まって蹴りを放つも見えないカウンターを浴びてしまう。

 たまらず距離を取っての気弾連射へと切り替え、爆煙がリングを覆った。

 だがまたも次の瞬間にはターレスの後頭部をヒットの手刀が打ち、即座に回し蹴りで反撃に移るも擦りすらしない。

 

「ちいい! っざかしいんだよォ!」

 

 ダメージは軽微。超サイヤ人4のタフさは多少急所攻撃された程度で動じるものではない。

 かつて、ブロリーを相手にリゼットが決定打を与えられなかったように、余りに相手がタフ過ぎてはいかに技が優れていても通じぬ場合もある。

 いや、むしろそうした原始的かつ単純な強さこそ技にとっての天敵なのかもしれない。

 柔は剛を制する。だが行き過ぎた剛は柔を捻じ伏せるのだ。

 だがターレスは追い詰められていた。

 攻撃のほとんど効かぬ者と攻撃の当たらぬ者……一見すると互角のようだが、実際の勝敗は火を見るより明らかだ。

 いかに超サイヤ人4のターレスといえど、ヒットの攻撃は決してノーダメージではない。

 ならば数を重ねればいずれ敗れるのはターレスの方だ。

 

(分からねえ……攻撃の正体が全く!)

 

 数度この身で浴びているのに分からない! その事実は彼を精神的にも打ちのめし、圧倒的な差を痛感させる。

 確かにヒットは速い、それは確かだ。

 だが、だからといって攻撃を浴びる瞬間が見えないとはどういう事だ。

 まるで攻撃するという『過程』を飛ばして殴ったという『結果』だけが出ているような……。

 『攻撃する瞬間』そのものが存在していないとしか思えない。

 そう考えていたターレスだが、次の瞬間目の前で起こった現実に目を見開いた。

 ……口の端から流れ落ちた血が、床に落ちた真紅の斑点が……突然増えたのだ。

 

「――!」

 

 考えるよりも早く身をかわし、ヒットへカウンターの蹴りを放つ。

 不安定な体勢から放たれた攻撃故に直撃には程遠いが、試合始まってより初めてターレスの攻撃が命中した。

 打点を外しつつもヒットの脇腹をターレスが蹴り、そのまま第6宇宙一の殺し屋の身体を吹き飛ばした。

 ヒットは自らの肋骨が罅割れる音を聞きながらも空中で回転し、構えを取り直す。

 直撃を外して尚この威力か……そう思い、ヒットは戦慄した。

 超サイヤ人ゴッドやブルーとは異なる、神の気に頼らない単純な暴力方面への特化。だからこその攻撃力は一撃でもまともに当たれば、そこで戦いを終わらせてしまう。

 

「なるほど。そういう事かい」

 

 ターレスは疑問が氷解した事に少なくない満足を感じ、自分の指を噛んだ。

 指先から血が滴り床へと赤い血液が落ちていく。

 そしてターレスはヒットに警戒しながらも、その落ちていく自分の血液へ注意を払っていた。

 床に1滴落ち、2滴落ち、3滴落ち……そこで斑点の数が4を飛ばして突然5に増えた。

 

「――ここだ!」

 

 ヒットとの距離が開いているにも関わらずターレスが肘打ちを放つ。

 するとどういう事か先程まで遠くにいたはずのヒットがターレスの前に出現して肘打の脅威に晒された。

 ――当たれば顔面を砕かれる!

 咄嗟にヒットが身体を逸らして回避するも、体勢が崩れてしまった。

 無論この好機を逃すターレスではない。

 彼は素早く次の攻撃へと繋ぎ、拳打と蹴りを次々にヒットへ放っていく。

 しかしヒットもさしたるもので、すぐに体勢を立て直すと再び見えない拳でターレスを迎撃した。

 ヒットはターレスの攻撃を逸らし、いなし、回避しながら迎え撃つ。

 対し、ターレスは防御も回避も捨てて攻撃のみに全力を注ぎこむ。

 それは技術と暴力の戦いであり、リゼットも知らずのうちにヒットに感情移入しながら戦いを見守っていた。

 勝負の天秤は完全に互角。ヒットが技で勝利するか、それともターレスが捻じ伏せるか。

 どちらが勝ってもおかしくない一戦……だが、その天秤を揺らがせたのは時間であった。

 

 ――ターレスの変身が、突然解けたのだ。

 

「っ! しまった……もうサイヤパワーが尽きたか……!」

 

 ターレスは頭上に輝く偽りの満月を睨み、口惜しそうに叫ぶ。

 超サイヤ人4への変身は大猿と同様にブルーツ波を吸収する事で成し遂げられる。

 だがパワーボールで生み出した月は所詮偽り……通常の大猿ならばともかく、超サイヤ人4を維持するにはパワーが足りていないのだ。

 大猿化に必要なブルーツ波は1700万ゼノというのは今更語るまでもない常識だが、超サイヤ人4への変身の際は実際はそれ以上のブルーツ波を吸収している。

 リゼットしか知らない並行世界(GT)の話になるが、ベジータなどはブルーツ波を過剰摂取する事でようやく変身を成立させているのだ。

 だがこの偽りの月で補給出来るブルーツ波は1700万ゼノしかない。

 かろうじて変身は出来るが、これでは超サイヤ人4の超パワーを長続きさせるなど不可能だ。

 これを好機と見たヒットは気弾を放ち、偽りの満月を破壊した。

 これで再度の変身を阻止し、一転攻勢へと移る。

 

「ちいい!」

 

 ターレスも咄嗟に超サイヤ人2となって応戦するが、超サイヤ人4でパワーを使いすぎた。

 これでは3にすら変身出来そうにない。

 これでも単純な戦闘力ならば何とか戦えない事もないが……これではターレスはヒットには勝てない。

 ヒットの時飛ばしや技を、圧倒的なパワーで捻じ伏せてようやく五分だったのだ。

 ならば戦闘力で負けてしまえば、技の差はそのまま実力差となってターレスを打ちのめす。

 先程までと違い、ヒットの攻撃一発一発が重い。鋭い。

 意識が容易く途切れそうになり、目の前が血で染まっていく。

 ……勝敗は既に決まった。

 途切れそうになる意識を無理矢理繋ぎ止め、ここらが限界だなとターレスは悟る。

 ならば自分に残された役割は一つ。相手にダメージを残し、次へと繋ぐことだけだ。

 

「潮時か……だが、ただでは終わらん!

この俺の全てのエネルギーを貴様にくれてやる!」

 

 両手を頭上で組み合わせ、魔閃光にも似た構えを取る。

 ヒットも当然これを防ごうと瞬時に移動するが、またもターレスはそれを見切ったように距離を開けた。

 次の瞬間にはヒットが拳を放っているがターレスはもういない。

 

「喰らえ! カラミティブラスター!」

 

 攻撃の一瞬のみ気を無理矢理に急上昇させ、全身全霊の気功波を発射する。

 紫色の気の奔流がヒットを飲み込み、だが惜しくも不発に終わる。

 ヒットはまたも瞬時に移動をする事でターレスの切り札を避けてみせたのだ。

 だが、切り札は一枚ではない。

 ターレスはそれすらも読んでいたようにヒットを後ろから羽交い絞めにし、壮絶に哂う。

 

「捕まえたぜ。こうなりゃあ時間を止めようが飛ばそうが関係ねえよな?」

「っ! 貴様、読んで……!?」

「ああ、幸運にもな。リングに落ちた俺自身の血の跡が時間の不自然な流れ方を教えてくれたぜ!」

 

 ヒットの能力の正体は時間の操作だ。

 分かりやすく言ってしまえば0.1秒ほど時間を停めているようなものだ。

 しかしその正体は時間を停めているのではなく、時間を飛ばしている(・・・・・・)

 アニメーションは動いている絵に見えて、実際は一枚一枚の静止画が連続する事で成立している。分かりやすく言えばパラパラ漫画の原理だ。

 その中から一枚を抜き取ってしまえば、その抜き取られたシーンを視聴者は認識できない。

 ヒットの能力はそれだ。時間を0.1秒だけ飛ばす事により、その飛ばされてしまった時間を彼以外の誰も認識出来なくするのだ。

 そして彼は、その飛ばした空白の時間の中で動くことが出来る。

 時を飛ばしているという言葉でピンと来ないならば、時を切り取っていると解釈してもいい。

 時計の針が秒を刻むシーンから一枚だけ切り取れば、先程まで10秒を指していた針が突然12秒を指す。

 石が落ちるシーンから一枚切り取れば、石がワープして地面へ落ちる。

 そして殴るシーンから一枚切り取れば……攻撃モーションがなく、次の瞬間には殴っている。

 ややこしいが、ほとんど時間停止と同じと言っていいだろう。

 

「だが飛ばせる時間はそう多くはないようだな! この状態からならば、どうしようもあるまい!」

 

 ターレスはそう語り、全身の気を全解放する。

 紫電が迸り、名前のない惑星が鳴動する。

 これから彼が何をしようとしているかは明白だ。

 自爆――! ターレスは全ての気を一瞬にして全解放する事でヒットにダメージを残すつもりなのだ。

 自分では勝てない事はよく分かった。時間を飛ばすカラクリは何とか見抜いたが、それで倒せると思うほど楽観視はしていない。何よりダメージを受け過ぎた。

 残念ながらこれでは己の勝利などまず有り得ないだろう。

 ならばせめて、後発の勝率を少しでも上げるべくここで己の敗北を相手にプレゼントしてやろうではないか。

 

「先に脱落する俺からのせめてもの贈り物だ!

……うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ターレスが咆哮をあげ、星全体が紫の爆光で埋め尽くされる。

 ウイスとヴァドスが展開したバリアにより観客席には一切の被害がないがリングにいるヒットはたまったものではないだろう。

 ターレスの自爆は数十秒に渡り続き、リングを完全に消し飛ばして紫の光の柱を登らせる。

 そしてそれが終わったとき、地面の上に変身が解除されたターレスが墜落し、その後から全身の所々に傷を負ったヒットが不時着をした。

 両者共に命に別状はない。だがターレスは満足そうな顔で意識を失っており、どちらが勝者なのかは明白だ。

 

「しょ、勝者、ヒット選手!」

 

 ここにきて遂に第7宇宙の連勝が止まり、第6宇宙は記念すべき初勝利を飾った。

 だがそれを見守る破壊神二人の表情は変わらず、ビルスは余裕を、そしてシャンパは屈辱を顔に浮かべていた。




ビルス「……勝ったな(確信)」
シャンパ「きっと向こうは先鋒がいきなり最強の出し惜しみなしだったんだ……そうに違いない(白目)」
ヴァドス(単純なパワーという意味では)その通りですわ、シャンパ様」
シャンパ「だ、だよな!」
ヴァドス(残る三人は全員、神の気を体得しているようですけどね)


【戦闘力】
ヒット:1兆
※時飛ばしや殺しの技は戦闘力に反映されないので、実際は数値の数倍は強い。
このヒットはアニメ版の強さなので能力抜きでも普通にブルー悟空と殴り合える。
そのうち界王拳ブルーと普通に殴り合いそうで怖い。
成長力が凄まじく、力の大会時にはゴールデンフリーザを超えている可能性あり。

漫画版ヒット:5000億
本気:1兆
※アニメ版に比べて弱すぎると評判の漫画版ヒット。何故かアッパーをよく食らう。
ゴッドの悟空に力の差がありすぎて時飛ばしが効かないのでかなり弱い。
本気を出せばゴッドは止められるがブルーは止まるんじゃねえぞ……。
ベジータに勝てたのも、ベジータが連続でブルーに変身して1/10の力も発揮出来ていなかったから。

【自爆】
GTで悟空が超17号にやった技。
己の気を爆発させて相手に大ダメージを与えるが、自分は戦闘不能になる。
自爆とは言うが、ベジータのファイナルエクスプロ―ジョンと違って術者が死ぬ事はない。

【時飛ばしに関して】
よく『ザ・ワールド』なのか『スタープラチナ・ザ・ワールド』なのか、『キング・クリムゾン』なのかで議論の的になるヒットの時飛ばしですが、このSSでは『キング・クリムゾン』として扱います。
その理由はアニメでヴァドスが「ヒットの能力は正確には『止める』のではなく文字通り『飛ばしている』」と断言したからです。
というか時間停止だった場合、ヒットなら0.1秒で相手を殴り放題な上に悟空の先読みでは対応できない気がするので、こちらの説を採用しました。
いくら先を読もうと停まっている間にボコボコ殴られたらどうしようもないと思うんですよね。

ちなみにリゼットの時間停止はスタプラ方式なので普通に停まっている間に相手をボコボコ殴ります。
身勝手の極意だろうが停めて殴ります。
やっぱり時間停止ってずるい。
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