明日海りお「強いだけの女にはしたくない」迷いと挑戦の6年を結集した新たな場所

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
近況のニュースを語る明日海りおさん(撮影:すべて島田薫)

 明日海りおさんが、トップスターとして輝き続けた宝塚歌劇団を卒業してから早6年。迷い悩みながら過ごしてきた日々には、現場で感じた戸惑い、舞台に立つ重み、作品との出合いなど、様々な経験がありました。今夏挑戦するのは、新作オリジナルミュージカル『コレット』です。演じるのは、常識にとらわれず、波乱の人生を生き抜いた女流作家。ここで明日海さんが思ったこととは…。

―今年5月に『第五十回 菊田一夫演劇賞』受賞、おめでとうございます

 ありがとうございます。受賞を知り驚きました。お仕事を続けていられるだけで幸せなのに、1年で3本の作品(ミュージカル『王様と私』、ミュージカル『9 to 5』、ミュージカル『昭和元禄落語心中』)をさせていただき、まさか賞までいただけるなんて。

―数としては、宝塚歌劇団時代と比べて特別多いわけではありませんよね

 数でいえばそうかもしれませんが、退団して外に出てからは、特にお仕事のありがたみを痛感しています。宝塚にいる時は公演が約束されているところもありまして、今改めて、演目との出合い、キャスティングしていただくこと、パフォーマンス、どれだけ役を自分のものにできるか、お客様にどうお届けできるか、一つ一つの重みを感じながら次につながっていくということを実感しています。

―受賞した2本の作品の手応えは?

 どちらにも言えるのは、とんでもない挑戦だったということです。『王様と私』は、クラシックミュージカルの王道の作品で、歴代様々な方が演じていらっしゃいます。歴史ある作品でプレッシャーもありましたし、一度舞台に出れば、踊りっぱなし歌いっぱなしです。

 『昭和元禄落語心中』で演じた“みよ吉”のようなタイプの役は、男性への思いにズタズタになるけど、魅力的でもないといけない。でも、その人の弱さも表現したかったですし、原作のファンの方もいらっしゃるし、いろいろと挑戦でしたけれど、本当に良いカンパニー・スタッフさんたちと熱い思いで作らせていただきました。毎日感情が溢れてきた日々が、愛おしくて仕方ないです。

―今まで知らなかった自分に会えましたか?

 知らなかったというよりも、本来の自分らしくいられた気がします。役柄は私の性格と全然違いますし、2人とも別人ですけど、思いっきり集中してのめり込んで、心も体も舞台のために使えることが幸せだと感じられたんです。自分らしいところに帰ってきたと思えました。

 宝塚はずっと同じところにいてホーム感がありますから、自分の魅力の出し方も今よりは分かりやすかったのかなと思う部分があります。それが、卒業後に“性別”が変わり、やり方も変わり、いろいろ悩みながら難しいところもありましたが、卒業後の舞台の中でも自分らしくできた気がしています。

―外に出られて6年目。映像の世界にも幅を広げられました

 最初は打ち砕かれました。やり方も用語も全然わからない。「ドライ」(リハーサル)と言われて、お洗濯かと思いました(笑)。「カット割りの作戦会議をするから来てください」とスタッフさんが呼ばれているのに、私もよく分からず参加したりしていました。動いたら画面から消えちゃうこともありましたし…(笑)。

 この数年間は、コロナ禍を経て不安と試練だらけの時期がようやく落ち着いてきて、いろいろな方がいて、いろいろなやり方があることを知ったことで、私も少しずつ自由になれた気がします。

―様々な経験を経て、今熟して迎える『コレット』に、どんな思いがありますか?

 まだ熟してはおりません(笑)。これからということにさせてください。『コレット』は新作のオリジナルミュージカルで、題材となっているコレットは実在の人物です。本・映画を見る限りでは、波乱万丈な人生を送られている方なので、これをミュージカルにしようと思ったG2さん(演出家)はすごいチャレンジャーな方だと思いました。

―目標はありますか?

 コレットは、自分の人生の行く先を探して、もがきながら大成して、後世に名を残す女流作家になった人だと思うんです。それを、「明日海さんに似合いそうな強い女性の役」という括りにしたくなくて、弱さや面白いところなど、彼女なりの特徴がいっぱいあるので、そこも伝えたいと思っています。

 台本を読むと、ちょっと人と感覚がずれているな、と思うことはあるんです。「そこは何とも思わないのに、ここには執着するんだ」…という感覚もありますし、変わっているところもあります。でも、純粋に家庭を夢見ていたり、自分に与えられる権利があるはずだと主張したり、興味を持ったことには進んでいき、壁が出てくるたびに道を選んで進む。そんな彼女なりのドラマを描いていきたいです。

―今回は(宝塚時代の同期生)七海ひろきさん(ミッシー役)と共演ですね

 同期は10代半ばから一緒なので、本当に幼馴染の感覚です。運命共同体のように助け合って生きてきたと思っています。でも、お仕事でご一緒する機会はそんなに多いわけでもないので、仲の良い“かいちゃん”…、あっ“かいちゃん”と呼んでいますが、一緒に舞台ができるのは心強いです。

 すごくハートフルなお仕事をされる方で、宝塚卒業後も唯一無二の魅力をご自身のスタイルで確立されている。そういう活躍の仕方を見ていて、本当に尊敬します。SNSでのファンサービスもきめ細やかで、新しいことにどんどんチャレンジしていく姿に勇気をもらっています。

―そして、花乃まりあさんがメグ・ヴィラールという役で出演されます

 花乃ちゃんは宝塚時代に相手役として組んでいましたが、舞台ではそれ以来で、しかも“女性同士”としてお芝居をするのが初めてなので、どういう感覚になるのかがすごく楽しみです。彼女もご結婚されてお子さんが生まれてその後、なので、どんな変化があるのだろうと楽しみにしています。

―89期生は本当に仲がいいですね

 出会ってから24年くらい経ちますが、家族より兄弟より、とにかく信頼しあって悪いところを指摘しあって、連帯責任で共に生きてきました。困ったことがあれば、必ず誰かが助けてくれるという間柄です。今は家庭を持っている人もいるし、お仕事の都合もあるので、いつも皆で会うのは難しいですけれど、かけがえのない存在です。こうやってお仕事を一緒にできるのはうれしいです。

―『エリザベート』出演も発表されました

 『エリザベート』とはもう関わらない人生か、その役として舞台の上に立つ人生か、どちらかしかない。そう思うと、何とも言えない怖さがあります。

 なので、エリザベート役が「決まった」と連絡を受けた時は、うれしさに涙しました。でもその日の夜には「とんでもない事になったかもしれない」と、さっそく不安が押し寄せました。

―今年は実在した人の作品が続きますが、今思うことはありますか

 今まで、『王様と私』のアンナ先生、『エリザベス・アーデンvsヘレナ・ルビンスタイン -WARPAINT-』の女社長エリザベス・アーデンなど、信念を貫く役を任せていただくことが多かったですが、今回の“コレット”はスキャンダラスだし、とんでもない人に映ることもあると思います。でも、ただ強い女性に落ち着かずに、いろいろな面を出していきたいと思っています。

【編集後記】

ほんわかした雰囲気で、気がつくと明日海さんの世界観・空気感に引き込まれています。慈愛に満ちた表情で、終始落ち着いたペースを崩すことなくインタビューを終えると、あっという間に時間が経っていました。

■明日海りお(あすみ・りお)

1985年6月26日生まれ、静岡県出身。2003年、宝塚歌劇団に89期生として入団。2014年に花組トップスターに就任し、『エリザベート』『ベルサイユのばら』『ポーの一族』など、数々の話題作で主演を務めファンを魅了した。2019年に惜しまれつつ退団。退団後は、NHK連続テレビ小説『おちょやん』、『グレイトギフト』(テレビ朝日系)などドラマでも活躍。「第41回松尾芸能賞」優秀賞受賞。2024年、ミュージカル『王様と私』『9 to 5』『昭和元禄落語心中』に出演し、「第五十回菊田一夫演劇賞」受賞。ミュージカル『コレット』は、東京・日本青年館ホールにて8/6~17上演予定。その後大阪公演。ミュージカル『エリザベート』は東京・東急シアターオーブにて10/10~上演予定。その後ツアーあり。

『コレット』詳細はhttps://musical-collet.com/

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フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

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