ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第八十二話 幻魔人降臨

 ジャネンバを下し、あの世を正常化したリゼットは日々を過ごしながら地上を監視し続けていた。

 この時期の最後にして最強の敵であるヒルデガーンは魔導師ホイの登場からタピオンの復活を経由して登場する。

 つまり逆に言えば早急に魔導師ホイさえ消してしまえば戦うのは下半身だけで済むわけだ。

 実際未来ではドラゴンボールがない為にタピオンの封印を解く事も出来ずにヒルデガーンの下半身のみが現われたという。

 そしてホイの行動は予測可能だ。

 彼はヒルデガーンを完全に復活させたい。つまりその為には勇者タピオンを復活させなければならず、その方法として神龍を求めるのは簡単に予測出来る事だ。

 ならば後は神龍と関係のある悟空達の誰かに接触を図ってくるだろう。

 リゼットはそこを狙ってホイを消してしまえばいい。

 

 そして彼女の予想通りホイは姿を現した。

 何やら死んでやるだの何だの喚きながら地球の高層建築物の一つであるランドセルタワーにしがみつき、グレートサイヤマンの到着を待っているようだ。

 だがわざわざ彼に合わせてやる必要などどこにもない。

 リゼットはまず彼の心を読み、原作通りの悪党である事を確認してからホイに念力をかけて地面へと急降下させて墜落死させた。

 傍から見れば馬鹿な爺さんが勝手にタワーに登って勝手に落ちて勝手に死んだようにしか見えないだろう。これならば徒に人々の不安を煽る事もない。

 まあ、R-18Gなジャムと化してしまったホイを間近で見てしまった人には少し気の毒な事をしたかもしれないが……。

 

「これで後はヒルデガーンの下半身を倒すだけですね」

「味方ながら時々貴女が恐ろしくなるよ、私は」

 

 セルの呆れたような言葉を聞き流しながら亜空間に手を入れ、ホイが隠し持っていたオルゴールを回収した。

 とりあえず下半身を倒してしまうまでオルゴールはどこか別の次元に隔離して下半身と共鳴しないようにするつもりだ。

 神龍を使っての復活は阻止したが、もしかしたら下半身との共鳴だけでオルゴールが壊れてタピオンとヒルデガーンの上半身が出て来てしまう可能性もなくはない。

 劇場版ではブルマの造ったオルゴールが何の効果も発揮せずにヒルデガーンが蘇ってしまったが、あれも共鳴のせいだろう。恐らくブルマの造ったオルゴールに問題はない。

 ならば下半身をどうにかするまでは隔離しておかなければ復活の恐れがあるのだ。

 

「……!」

 

 だがオルゴールを手にしたリゼットの顔が驚愕に染まった。

 まだ何もしていないのに、既にオルゴールが動いていたのだ。

 取っ手の部分がゆっくりと回転しながらもの悲しいメロディを奏でている。

 それと同時に強い気が溢れ、風が巻き起こった。

 

「封印が解けようとしている? これは、一体……?」

 

 タピオンの封印は力ずくで解けるものではない。

 魔術的な要素が絡む特殊なもので、この地球でこれを神龍なしで解ける人物などそれこそリゼットくらいのものだろう。

 無論リゼットは何もしておらず、共鳴で封印が解けようとしているわけでもない。

 つまりは第三者。何者かがオルゴールに干渉している!

 

「……そこです!」

 

 リゼットが何もない空間に気弾を放つ。

 だがその気弾は確かに何かに命中して爆ぜ、そこに隠れていた者を露にした。

 煙の中から出てきたのは赤い髪の、杖を持った男だ。

 その姿を見てセルは「ドミグラ!」と叫ぶ。

 

「流石は地球の神。よくぞ見破った」

「何者です?」

「私は魔神ドミグラ。いずれはこの宇宙全てを支配する神になるべき存在だ」

 

 ドミグラと名乗った男がふてぶてしく名乗り、大層な事を口にする。

 一体何が目的かは知らないが、オルゴールに干渉しているのはこの男で間違いないだろう。

 ならば取るべき行動は一つ。リゼットは掌を翳し、ドミグラへと超能力をかけて動きを封じた。

 だがそれを阻むかのように横から気功波が放たれ、咄嗟に避ける。

 

「ポポ!?」

「……」

 

 攻撃してきたのは、何とポポであった。

 だがそれが操られてのものである事をすぐにリゼットは見抜く。

 どうやらこのドミグラという男、トワ以上に他者を操る術に長けているらしい。

 更にポポだけではなく兎人参化や魔人ブウまでもがリゼットの前に立ち塞がり、黒い気を発した。

 

「ふふふ、私の魔術は如何かな?

仲間を相手にどこまでやれるか、じっくりと拝見させて貰おう」

「……確かに厄介ですね。ですが私を見縊りすぎです」

 

 以前までのリゼットであったならば、この状況はかなり不味いものだったのだろう。

 魔人ブウは決して加減出来る相手ではなく、更におやつ光線という一撃死技まで持っている。

 だが今のリゼットならば加減しながら戦う事は充分に可能だ。

 彼女は一瞬で潜在能力を解放し、一番手強い魔人ブウとの距離を詰めると彼の胸に掌打を放つと一撃で洗脳魔術を解除した。

 

「なるほど、なかなかの腕前だ。

だがもう封印は解けてしまった。私の歴史改変を止められるかな?」

 

 ポポと人参化はセルが無力化し、何の障害もないかのようにドミグラの前に飛びこむと零距離で気功波を発射した。

 たったの一撃でドミグラが消滅するも、手応えはない。

 どうやら実体ではなく魔力で創った仮初の身体だったようだ。

 なるほど、魔法とはこういう事も可能なのかと少し感心するが、今はそれどころではないとすぐに気を取り直す。

 

「ブウ、人参化、ポポ。無事ですか?」

「うーん……俺、今何やってた?」

 

 ブウは無事正気に戻ったようで頭を抑えている。

 人参化とポポは気絶しているが、そのうち目が覚めるだろう。

 それより問題は封印が解けてしまったオルゴールだ。

 オルゴールからは青年(タピオン)が姿を現し、だが様子が明らかにおかしい。

 登場早々苦しんでおり、必死に何かを抑えようとしている。

 どうやらドミグラは封印を解除するだけでなく、タピオンにも何かしたようだ。

 いや……タピオンというよりは彼の内に眠るヒルデガーンに、か。

 

「セル、構えて下さい。出てきますよ」

「面白い……ドミグラへの怒りはこいつで発散するとしよう」

 

 自律気弾を一つ生成して気絶しているポポと人参化を寝所まで運ばせる。

 ヒルデガーンが復活してしまうが、考えによっては好都合だ。

 この神殿は次元を隔てた空間にある。つまりここで戦えば地球には一切の被害がない。

 悟空達と共闘出来ないのは少し辛いが、幸いセルやブウ、ゴッドガードンはいる。

 何とかここで倒してしまえば問題は起きないはずだ。

 だがヒルデガーンと戦うには神殿は少し小さすぎる。

 ならば、とリゼットは神殿から離れた位置に物質創造の神術で特大のバトルフィールドを造り出した。

 大きさは半径にして1キロ。素材はカッチン鋼の豪華仕様だ。

 下界で戦う? 冗談だろう、こんな巨大サイズの敵と地上で戦えば何人死ぬか分かったものではない。

 

「ゴアアアアアアア!」

 

 ヒルデガーンがタピオンから飛び出し、上手い具合に特設リングの上に着地してリゼットとセルを見下ろした。

 その外見はまさに怪物以外に形容の言葉がない。

 頭部は人の髑髏に近い形状だが、頭に血管が浮いているので骨なのかどうかイマイチ分からない。

 確か元はコナッツ星の悪の気を吸い取る魔神像だったか。

 そこにどこからか流れてきた魔導師の一派が邪悪なエネルギーを注ぐ事で幻魔人とした存在こそがヒルデガーンであり、要するにジャネンバと同様に悪の気の集合体というわけだ。

 ホイは抹殺したが、恐らく魔導師一派は彼だけではあるまい。

 この戦いが終わったら、ホイと似たような気を探索して宇宙から魔導師一派を一掃してしまわないとまた同じ事が起こるかもしれない。

 だが今はまずヒルデガーンをどう倒すかだ。

 その姿は既に下半身と上半身が合体済みであり、ドミグラがご丁寧に下半身をここに引っ張ってきていたのだろうと推測出来た。

 リゼットはまず小手調べとして気弾を発射する。

 放たれた気弾は飛びながら10個に分裂、更に形状を変えて斬撃に特化した円盤へと変化してヒルデガーンへと襲いかかった。

 だがヒルデガーンは文字通り煙のように消え去り、リゼットを背後から急襲した。

 

「……っ」

 

 バリアの上から巨腕を叩き付けられ、リゼットの高度が下がる。

 だがまだ戦闘力の差は顕著だ。ヒルデガーンの攻撃はリゼットのバリアを貫けずにダメージも一切通らない。

 リゼットはすぐに身体の向きを変えて再び気弾を放ち、今度はそれが槍へと変化した。

 

「必中の槍よ、在れ」

 

 命中するまで自らの意思と判断で敵を追い続ける自律行動する必中の槍。

 それが直進し、案の定またもヒルデガーンが消える。

 その消える瞬間から次に現われるまでの時間を計測し、更に気配の移動を探る事に意識を集中させた。

 ヒルデガーンに第二形態があると分かっているのはこちらの強みだ。

 何せこうして、弱いうちに特殊能力をじっくりと分析、観察する事が出来る。

 『次』があると分かっているから、それに備えて準備が出来る。

 消えてから次に現われるまでの間は大体0.001秒といったところか。

 攻撃後の隙を突くならば充分な時間だ。

 劇場版ではゆっくり消えているように見えるが、あんなのは悟空達の視点に合わせてスローにしているに過ぎない。

 実際は一般人ではとても視認出来ない速度で戦い、更にその悟空達ですら捉え切れない速度で消えて、そして現われている。

 だがこの0.001秒の間は潜在能力を解放(アルティメット化)した今のリゼットならば充分に捉えきれる速度だ。

 

(右!)

 

 姿を現したヒルデガーンの爪を、あえて避けずにバリアで受ける。

 消えてから現れるまでの時間、現れてから更に攻撃に移るまでの時間。

 それを冷静に観察し観測する。

 軌道を変えた槍が再びヒルデガーンを襲い、怪物の姿が消えた。

 だがリゼットは邪念の移動を追い、次にヒルデガーンが現われるだろう場所に当たりを付けて掌を翳した。

 消えている時のヒルデガーンに気はない。何故なら彼は()魔人。

 実体化していない時は幻であり、幻に気などあるわけがない。

 実体化するまでの間、ヒルデガーンは本当にこの世に存在していないのだ。

 だがそれでもリゼットには視える。分かる。

 ヒルデガーンという存在の根幹ともなっている邪念は、神として高位のステージに移行しつつある今の彼女ならば捉えられる。

 

「そこ!」

 

 発射した気弾がいいタイミングでヒルデガーンの胸に直撃し、その巨体が倒れ込んだ。

 更に必中の槍がしつこく旋回し、ヒルデガーンへと直進する。

 刺さる瞬間に槍は巨大化し、ヒルデガーンすらも貫通する神の槍と化してその腹部を完全に貫き、役目を終えて消滅した。

 随分と呆気ないが、まあ第一形態ならばこんなものだ。

 いわばこんなのは本番前の準備運動でしかなく、まだ戦いは始まってすらいない。

 リゼットは右拳を握り、後ろへと引く。

 そして距離を無視して拳を放ち、それと同時にヒルデガーンにも匹敵する巨大な気の拳を創造して、倒れている怪物を思いきり殴打した。

 ベキベキと何かを砕く音が響き、ヒルデガーンの全身が罅割れる。

 更に二発、三発、四発!

 攻撃を重ねるごとにヒルデガーンが無惨な姿へと変わり、亀裂が増えていく。

 

「仕留めたのか?」

「いえ、まだです」

 

 クン、と指先を動かしてヒルデガーンへ念力をかける。

 すると彼の巨体は見えない力に引っ張られて無理矢理起こされ、リゼットの前へと吊り下げられた。

 そこにリゼットが無慈悲に光弾を連続で叩き込み、身動きの取れないヒルデガーンをサンドバッグにしてボロボロにしていく。

 騒音に目を覚ましたタピオンは果たして、この光景に何を感じただろう。

 何故か封印が解けて、それで目を覚ましてみれば女の子がヒルデガーンをボコボコにしているという意味不明の状況だ。正直混乱するしかない。

 そんなタピオンの混乱を余所にリゼットはヒルデガーンを再び特設リングへと落とし、念力をかけて彼の身体を全包囲から圧迫した。

 このまま第二形態になる間も与えずに圧壊させてしまおうとでもいうのか。ヒルデガーンの身体がひしゃげ、罅割れ、歪み。まるで見えない何かに押し潰されるように崩れていく。

 だがそう上手くいくほどヒルデガーンは容易くない。

 罅割れた身体の内側には全く傷付いていない真新しい金色の身体が視え隠れし、それは外皮が砕けるごとに全容を現していく。

 やがてヒルデガーンはリゼットの念力を跳ね除けて飛翔し、完全に古い外殻を捨て去った。

 その姿は金色に輝き、どこかセミにも似たシルエットをしている。

 

「ゴアアアアアアア!」

「っ!」

 

 予想以上に速いヒルデガーン完全体の初撃にリゼットが驚き、バリアの上から直撃を浴びた。

 ダメージは薄い。だが薄いだけで確かに通っている。

 空中で姿勢を直して飛翔し、ヒルデガーンと相対する。

 こうして向き合う事で分かる事。それはヒルデガーンの馬鹿げたまでの気の強大さだ。

 正直驚いた。今の自分とだって戦えるほどのものであり、とても悟空の超サイヤ人3で太刀打ち出来る気ではない。

 何故原作で悟空はこれに勝てたのか……改めて彼という男の凄まじさを思い知る事になってしまった。

 何はともあれ、今の自分ならば勝てない敵ではない。老界王神との出会いはまさに値千金どころではない価値があった。

 彼との出会いがなければ、今頃はこの怪物をどうすればいいか本気で悩んでいただろうし場合によっては詰んでいたかもしれない。

 姿を消す能力は厄介だが、札の多さではこちらが勝る。

 ここまで観戦に徹していたセルとブウへと目配せをし、ここからが本番である事を告げる。

 

「行きますよセル、ブウ。このまま、幻魔人を葬ります」

 

 リゼットの言葉に応えてセルとブウが飛び、リゼットも後に続く。

 彼等に合わせるようにヒルデガーンも翼を広げて飛翔し、異星の幻魔人と地球の神との戦いは更に激化を極めた。




【戦闘力】
・勇者タピオン:20億

・ヒルデガーン
第一形態:2000億
第二形態:5000億

【龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる】
ドラゴンボールシリーズの劇場公開作第16弾。
ドラゴンボールZとしては『神と神』が公開されるまでは最終作という位置付けだった。
珍しく本編と矛盾しない物語であり、ブウを倒した後の出来事と考えられる。
また、基本的に負けてばかりの超サイヤ人3が敵を倒すので超サイヤ人3ファンには嬉しい作品。
この作品で悟空が披露した龍拳は後にGTでも彼の切り札となっており、GTトランクスも(多分)タピオンの剣を使っているのでこの劇場版からGTに繋がっている可能性が高い。

【ヒルデガーン】
この映画のボス。
千年前にコナッツ星の悪の気を吸い取った魔人像の霊体が、魔導師たちに邪悪なエネルギーを注ぎ込まれて変身した幻魔人。
攻撃の時のみ実体化し、それ以外のタイミングで攻撃してもすり抜けるというチートキャラ。
究極悟飯や超3ゴテンクスを一撃KO出来るくせに超3悟空に負けたせいで当時のチビッ子達の間で「悟空は究極悟飯より強いのか?」という議論が巻き起こった……かもしれない。
個人的には単純なパワーではヒルデガーンで、技や戦いの巧さでジャネンバが勝るというイメージ。
例えるならヒルデガーンがラオウでジャネンバがトキ。
ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォ

【タピオン】
宇宙一格好いいモヒカン。
自らの身にヒルデガーンを封じた勇者であり、モヒカンが気にならないくらいにイケメン。
一部では『モヒカンになったクロノ』と呼ばれている。
ラヴォスのビームを避け切れずに髪が燃えてしまったのだろうか。
作中でヒルデガーンの炎をバリアで軽々と防いでいるので超2ベジータより強い疑惑があるが、バリアで判断したらバビディが超2ベジータより強い事になってしまうのでこのSSではベジータ以下に設定。
彼の剣はトランクスに引き継がれるが、未来トランクスの剣が彼の剣なのかは不明。というか多分違う。
しかしゼノバースでは未来トランクス(ゼノ)がタピオンの剣を持っている。
もし未来トランクスの剣がタピオンの剣だった場合、どう考えても未来の戦力ではヒルデガーンを倒せないのでタピオンが封印した隙にトランクスがタピオンごとぶった斬ったと考えられる。
悟空が『すげえ気だ』と評するほどの達人。
悟空は界王神を一度も凄い奴と思わなかったらしいので、界王神よりは強いと思われる。

【ホイ】
ヒルデガーンを幻魔人にした邪悪な魔導士の一人。
どう見ても地球人ではないが、作中では誰にも突っ込まれなかった。
魔術で自分の姿が地球人に見えるようにでも擬態していたのだろうか。
……まあ獣人とかいる世界だしピンク肌くらい珍しくないのかもしれない。
最後にはヒルデガーンに踏み潰されて死亡した。
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