ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
「すっ、すごい! 素晴らしいパワーですよリゼットさん!
これならばあの化物にも絶対に勝てます!」
場所は変わって界王神界。
精神と時の部屋から再びこの場所を訪れたリゼットのパワーアップに界王神は感激を露わにしていた。
15代前の界王神によって潜在能力を限界以上に引き出されて大きく力を増した今、リゼットの力は超サイヤ人3の孫悟空すらも上回っている。
リゼットは確かめるように自らの掌を見詰め、先ほど界王神が投げたカッチン鋼の前へと行く。
そして掌底を一撃。すると衝撃がカッチン鋼を貫通し、リゼットが触れたのと逆側からカッチン鋼が爆ぜた。
その光景に界王神とキビトが顎を外したかのように顔を驚愕に歪め、老界王神もまた目を丸くしている。
だが一番驚いているのは他でもないリゼット本人だ。
自分で自分の強さが信じられない。今までにもパワーアップは何度かあったが、今回はそんなものとは比べ物にならなかった。
しかも、これで全くの消耗なしというのが素晴らしくも恐ろしい。
今までリゼットは、バーストリミットを使う事で無理矢理に超サイヤ人達の領域へと入っていた。
だがこの潜在能力解放はバーストリミットのような負担が一切ない。
あくまで自然体のままに、この超パワーを発揮する事が出来るのだ。
……とはいえ、油断と慢心は禁物だ。
強さに酔いかけていた心を平常に戻し、己を律する。
「へっへっへ、ど、どうじゃ、凄いじゃろ?
これでもよ~、儂の力より凄い奴等がいると思うか~?」
「……いいえ。確かに界王神様の仰る通りです。
これは、最長老様やバビディの術とはまるで次元が違います」
「そうじゃろそうじゃろ~。わかっとるじゃないか」
これならば勝てる。
相手が誰だろうと負けるはずがない。
私は今、究極のパワーを……いや、これは負けフラグか。
ともかく、そう自惚れてしまいそうになるほど、効果は劇的であった。
そして同時に心底、原作の悟飯を勿体無く思ってしまう。
これほどの力を、彼はGTの時代になる頃には失ってしまっていたのか、と。
「んでよ~。お礼はちょっと乳や尻を触らせてくれればよ~」
「それでは行って参ります」
老界王神が何か言っていたが、それをあえて聞こえなかった事にしてリゼットは転移した。
パワーアップの為とはいえ、随分ジャネンバを放置してしまった。
地球は封印しているからほとんど被害は抑えられているだろうが、それでも宇宙の星々のいくつかはこの事件で被害を被っているだろう。
ならばこそ、これ以上事態を伸ばすわけにはいかない。
ここで早急に、片を付ける。
その決意を新たにし、リゼットは再び閻魔宮へと帰還した。
まず最初に視界に映ったのは全身皹だらけになったジャネンバであり、どうやらクウラはかなり奮戦してくれたらしい。
だがそのクウラの姿はなく、ジャネンバはまるで玩具で遊ぶようにパイクーハンをあちこちにぶつけて遊んでいた。
どうやら本当に危ない所だったようだ。もう少しリゼットの到着が遅れていたならばパイクーハンは殺されていただろう。
リゼットは速度を上げ、まずはパイクーハンを救出すべく亜光速でジャネンバの右腕の横を通過し、光の翼で腕を切断した。
それから旋回。
念力でパイクーハンをゆっくりと付近の水晶に降ろしながら、自らは亜光速でジャネンバへと突撃した。
バリアを纏っての光の突撃――要はただの体当たりだ。
だがそれだけの攻撃も今の彼女が使うならば強力無比。ジャネンバは相手の攻撃を先読みする力を持つ。
リゼットのように空間と空間を繋げて防御や攻撃に活かせる。
だがそのどちらも使う暇すらなく、身体をひしゃげさせながら吹き飛んだ。
「ジャネンバァァァ!!」
いくつもの水晶に衝突し、砕き、巻き込みながらジャネンバは悲鳴をあげて飛んで行く。
いかに先を読もうが対応出来ない速度では何の意味もない。
やがて失速し、墜落したジャネンバが落ちた先は地獄だ。
そこもまた空間が歪み、地獄とは思えぬファンシーな光景となってしまっている。
だがそれを為したジャネンバも今は狩られる側だ。
ひしゃげた身体を戻す事も出来ずに地面に激突し、そのまま彼は腕をパタリと落とした。
しかしここからがジャネンバの本領発揮だ。
リゼットによってひしゃげた部分を中心にジャネンバの肉が収束し、あれほどの巨体が人間サイズにまで圧縮されていく。
身体の色は黄色から赤へ。
その顔つきは先ほどまでのゆるキャラのような顔ではなく、鋭利で凶悪な悪魔のような顔へ。
灰色と赤の二色で構成された身体は今までの愚鈍そうな外見とはうって変わり、一つの機能美すらも感じさせた。
更に気も凶悪に、より巨大なものとなり以前までのリゼットであれば恐ろしいと感じただろう。
否、恐ろしいどころではない。ほとんど勝ち目がないほど、絶大な気だ。
これでは超サイヤ人3の悟空ですら敗れるのも頷く他ない。
だがそれを前にして尚リゼットの表情は涼しいものであった。
同時にその光景を界王神界から水晶で眺めていた老界王神が小さく、しかし力強く断言する。
――「リゼットの勝ちじゃ」と。
「ウガァァア!」
ジャネンバが獣染みた雄叫びを発してリゼットへと突撃した。
だが遅い。圧倒的に速いはずのその動きすら今の彼女にとっては愚鈍に過ぎる。
軽く腕を振るうだけで風が起こり、次の瞬間ジャネンバの身体を幾重もの衝撃が貫いた。
視認すら許さない速度で以て、一瞬の間にジャネンバの身体を滅多打ちにしたのだ。
「ウ、ウ、ウガァァァ!」
ジャネンバの身体がパズルのピースのように分解した。
リゼットはその技を興味深そうに見るも、佇まいに変化はない。
身体を再構築しながらジャネンバがリゼットの背後を取り、奇襲を仕掛ける。
だが彼の拳がリゼットの背に触れるか触れないかという所でリゼットが廻った。
肌に拳が触れたのを感じてから時間にして刹那。コンマ一秒よりも短い間に攻撃を感知し、後の先を取ったのだ。
そしてジャネンバの拳を右手で掴みながら、左手で一本貫手!
ジャネンバの喉を貫き、更に指を曲げて引き抜く事で喉仏を切断した。
だがやはり悪の気の集合体。人間ならば終わりの攻撃も終わりではなく、引き裂いた喉からも血は流れない。
「……ウゥゥゥアアアアアア!!」
そして、喉が飾りである事を証明するかのようにジャネンバが三度咆哮した。
この分だと心臓や脳に当たる部位を破壊しても変わらないだろう。
ならばやはりジャネンバを倒す方法は一つ。
圧倒的な気の力を以て完全に消し去ってしまうのみ。
ジャネンバが地面に落ちていた棍棒を拾って剣へと変え、リゼットへと切りかかる。
超サイヤ人3の肉体すら切り裂き、空間すらも寸断する魔の刃。
だがその剣先がリゼットへ当たる直前にリゼットもまた腕を薙いでいた。
気によって生み出した白刃が煌き、ジャネンバの剣が腕ごと地面へと落下する。
何の技術もなく、ただ振り回すだけの剣などリゼットには届かない。
いや、それどころかむしろ逆。素手よりやりやすい。
何故なら剣を手にした敵は、剣しか使わないから。
攻撃が限定される分、素手よりも遥かに読み易い。
無論それを逆手に取った戦法は有効だ。
リゼットは手本を見せるように剣を振りかぶり、ジャネンバの注意が剣に向いた瞬間に彼の足を切断した。
それを為したのは、無駄に長い髪の毛だ。
気を通し、念力で操った髪を刃に変えて足元がお留守になっていた彼の足を切断してみせたのだ。
地面に崩れ落ちたジャネンバは歯を食い縛り、憎悪の視線でリゼットを睨んだ。
「アアアアアアアア!!」
牙を剥き出しにして、足を再構築しながら捨て身の突撃。
だがリゼットは尚も揺らがない。
静かに、だがまるで過程でも飛ばしたかのように一瞬で両手の掌を胸の前で構えた。
掌と掌の間には純白の光球が一つだけ生成され、辺りを淡く照らす。
「――Sparking」
炸裂の名を与えた彼女の持つ技の一つ。
彼女の切り札の一つにこの上位技に当たるスパーキング・メテオがあるが今回使うのはそれではない。
ただの圧縮した気弾であり、それだけで充分だ。
解き放った気弾が回避すらも許さずにジャネンバの胸へと命中し、光が彼の胸の内へと吸い込まれる。
すると胸の部分にぽっかりと孔が開き、更にそこから光が溢れて孔を内部から広げて行く。
――そして炸裂。
光が爆ぜ、内側からジャネンバの身体を吹き飛ばした。
彼の肉片がボトボトと地面に落下し、それらはやがて跡形もなく消滅してしまう。
悪の気の塊であるジャネンバにとって、怨念などの悪の気を浄化してしまうリゼットの気は致死毒にも等しい。
かつてドクター・ライチーがその憎悪ごと浄化されてしまったように……否、それ以上に。
神の気によりジャネンバを形作っていた悪の気は残滓すらも残さず浄化され、消滅してしまったのだ。
更にリゼットは目を閉じ、自身を抱きしめるように腕を回す。
そして僅かの間の後に両手を広げ、あの世全域、全方位へと向けて気を放出した。
するとどうだろう。彼女の気が触れた箇所から順に、変化していたあの世の景色が正常化していき元の景観を取り戻していく。
水晶も触れたそばから消失し、更に傷付き倒れた戦士達は傷が癒えて何事かと辺りを見回している。
あの世の至る箇所へと散った悪の気が全て浄化され、清浄な気で包まれる様はまさに神話の1ページ。
その光景を目の当たりにしたパイクーハンは思わず「奇跡だ」と呟き、水晶で眺めていた界王神は「これが……神の力!」と感動していた。
尚、そのすぐ後に「お前が界王神じゃろ」と老界王神に叩かれたようだが。
「ふう……」
あの世の浄化を終え、改めてリゼットは自分の手を見る。
自分のものとは思えない凄まじい力だ。
少し力を出しただけで、あのジャネンバすらあっさり倒せてしまった。
今回の戦いでリゼットが発揮した力は全力の半分にも満たないものであり、リゼットにはまだ疲れすらないのだ。
そもそも切り札をこの戦いで一つとして切っていない。行った攻撃も全て小手調べのような攻撃ばかりだ。
勿論相性がよかったというのはある。
悪の気の集合体であるジャネンバに対し、それを浄化してしまうリゼットは戦う前から相性で優劣が付いていた。
だがそれがなかったとしても、恐らく50%未満の力で容易く勝ててしまっただろう。
これが老界王神の潜在能力完全解放。超サイヤ人にも匹敵する究極のパワーアップ。
後の出来事になるが、GTで悟空が『俺も驚いてるんだ。自分のあまりの強さによ』と言っていた気持ちが理解出来る。
後は、既に復活してしまった悪党達だが……大丈夫。地球には悟空がいる。
きっとあちらも、勝利しているはずだ。そうリゼットは信じていた。
「そうだ、それでいい……それでこそ殺し甲斐がある」
リゼットの戦いを、上から観戦していた男がいた。
それは全身が激しく傷付いたクウラだ。
彼とジャネンバの戦いはどちらが勝ったわけでも負けたわけでもなく、リゼットが開いたゲートを見たクウラが潮時と判断して退いたことで終わりを迎えていた。
少し撤退が早かった気もするが、そうでもしなければ自分は今頃憎しみを抑えきれずにリゼットに向かっていただろうという確信がある。
「そうでなくては、この俺の気が収まらん」
自分に二度も勝ったのだから強くあるべきだ。
そんな勝手な想いをクウラはリゼットに抱いていた。
弱者である事は許さない。誰かに負ける事も許さない。
高みで在れ。誰よりも強く在れ。
その上で、更に強くなった自分があの女を殺す。
そうする事で初めて彼は『最強』に戻れるのだ。
「精々束の間の平和と勝利を享受しているがいい。いつか俺が、再び貴様の前に現れるその時まで……」
その言葉を最後に、クウラは魂となって地獄へと引き戻された。
復讐の時は、今ではない。
だが……いずれは。
【戦闘力】
・ジャネンバ:1000億
第二形態:2400億
・その後のサイケ鬼
サイケ鬼「もっとだ……もっと俺を罵ってくれオニ……。
もっとゴミを見るような目で! もっと激しく罵倒してくれオニ!」
閻魔「…………」