ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第七十二話 因縁の対決

 刻は少し遡り、宇宙船が爆発する数分前。

 バビディは混乱の極みにあった。

 かつて父が創り上げたという最強の魔人、ブウを復活させるべく地球へ来たまではよかったが肝心の封印の玉がどこにも見当たらない。

 そればかりか地球人はどいつもこいつも悪の気が全くないせいで洗脳も出来ず、やつあたりで地球の都市を適当に消してしまうように部下の一人であるダーブラへと命じた。

 ここまではいつも通りの事だ。

 上手く行かない事などこれまでにも山ほどあったし、その度にこの下劣な魔導師は部下を使う事で理不尽な怒りを無関係な者にぶつけて晴らしてきた。

 だから今回もそうするつもりだったし、そうなると思っていたのだ。

 ダーブラの、怒りを込めた声を聞くまでは。

 

「……黙れ、蛆虫」

 

 洗脳により己に忠誠を誓わせた者の口からはまず出ないだろう罵倒。

 それにバビディは驚き、ダーブラを見た。

 

「ダーブラ! お前、誰に口をきいてると……がっ!?」

 

 言葉の最中に蹴られ、歯がへし折れた。

 鼻がへし折れて醜い顔がより一層醜くなり、短い手足をバタつかせて滑稽に転がる。

 バビディの戦闘力は無いに等しい。殴り合いならばプイプイにすら劣る。

 だからこそ彼は今まで自分で戦う事などしなかったし、いつだって他人の力を利用してきた。

 心の隙に付け込んで操る事で、本来ならば圧倒的に格上であるはずのダーブラすら従えて王様気分を味わっていた。

 だが、こうしてダーブラから直接的な暴力を振るわれてしまえば抵抗する術などありはしない。

 バビディは恐怖を込めた視線でダーブラを見上げ、そして気付いた。

 洗脳した証である額の『M』の字が消失している事を。

 ダーブラの全身から沸きあがる、黒い気の発散を。

 

「そ、そんな、どうしてだい? どうして僕の魔術が……」

「今までよくも、この魔界の王を扱き使ってくれたな。

この……寄生するだけしか能のない、糞虫があッ!」

 

 ダーブラが憎悪のままに足を振り下ろし、バビディの腕をへし折った。

 否、へし折ったなどという生易しいものではない。

 あまりに早く振り下ろされた足はバビディの枯れ木のような腕を切断し、耳ざわりな絶叫をあげさせた。

 だがダーブラの怒りは仕方のないものだ。

 元々彼は暗黒魔界全てを支配する魔の王であり、魔界の頂点に立つ者だ。

 一方バビディは暗黒魔界に暮らす魔導師という種族であり、それは結局のところ魔界に暮らす妖怪のようなものでしかない。

 つまり本来ならば主従は逆であり、バビディはダーブラに従わねばならぬ立場なのだ。

 それを履き違えて魔術で不意をついて洗脳し、あまつさえ道具同然に使う。正気に戻ったダーブラのプライドがどれだけ傷付いたかは察するに余りある。

 そのダーブラの後ろでバビディを、文字通りゴミを見る視線で見下すのはミラとトワの二人だ。

 トワはダーブラの隣に寄り添い、腕を絡める。

 

「ねえお兄様。早く消しちゃいましょうよ、こんな臭くて醜いゴミ。

生きているだけで眼の毒だし、空気が汚れるわ」

「ああ、そうだな。トワ」

 

 バビディはこの瞬間理解した。

 こいつだ。この女が自分の魔術を破り、ダーブラを正気に戻したのだ。

 小さな皺だらけの魔導師は自分のやってきた事を棚に上げ、激しい憤りを覚える。

 許せない、横暴だ、よくも。

 そんな場違いな感情を燃やし、トワへ向けて怒声を発した。

 

「お、おまえだな! お前、よくも僕のダーブラを! よくもよくも! 絶対に許――」

「あ゙?」

 

 言葉は最後まで続かなかった。

 ダーブラが振り下ろした剣がバビディの残った腕を切断し、またも耳ざわりな絶叫へと変わったからだ。

 痛みにのたうち回るバビディを心からの侮蔑の視線で見下し、魔界の王はこんなゴミに今まで扱き使われていたのかと自分で自分が情けなくなった。

 

「もう貴様は何も話すな。何をしても害悪だ」

 

 ダーブラがこの上ない嫌悪を示し、何の遠慮もなくバビディへと手を翳す。

 そして気功波を放ち、薄汚い魔導師をこの世から消失させた。

 これでバビディは死んだわけだが、そのままではまだ終わらない。

 魔界の王を侮蔑し続けてきた怒りは殺した程度では到底収まるわけもなく、トワは残酷な嘲笑を浮かべた。

 

「さあお兄様。次はあいつの魂を探しましょう」

「ああ。あの屑には『二度目の死』をくれてやる」

 

 トワの差し出した手を取り、ダーブラがそこから消えた。

 死んであの世に残るなど絶対に許しはしない。暗黒魔界の王への侮辱はそれほどに重く身の程を弁えぬ行為だ。

 この世界では死ねば魂はあの世へ行き、そこで地獄か天国かに振り分けられて転生の時を待つ。

 だがもしも死んだ状態でまた死ねば、もう二度と復活する事はない。永遠の『無』と化すのだ。

 また、魔族によって命を奪われた者はあの世にも行かずに彷徨う事になるが、その程度で済ませる気はダーブラにもトワにもなかった。

 これより僅か数秒後、彷徨っていたバビディの魂の前にダーブラとトワが出現してその魂を消し去ってしまうわけだが、残念ながら彼に同情する者は一人として存在しなかった。

 

「さて……始めるか」

 

 そして主のいなくなった宇宙船内に残ったミラは、プイプイやヤコンといった戦士達を屠るべく行動を開始する。

 全ては魔人ブウへエネルギーを注ぎ込み、復活させる為。

 悪人の気では魔人ブウは蘇らない。だが本来ならば死なないはずの者を殺す事により歴史改変のエネルギーが発生する。

 そしてミラとトワはそのエネルギーをキリとして集めることが出来るのだ。

 この船の戦士達は一人残らず、その生贄として選ばれた……ただそれだけの事であった。

 

 

「これは一体……」

 

 何の前触れもなく吹き飛んでしまった宇宙船を呆然と眺め、リゼットが呟く。

 予定外も予定外。こんな展開は流石に予測の外だ。

 だが一体何が原因なのかはすぐに察する事が出来た。

 爆煙の中から、ピンク色の魔人を従えて出てきた男の姿を見てしまったからだ。

 魔人の姿を見て界王神が元々青い顔を更に青褪めさせ、ガタガタと震え出す。

 

「ま……ま、ま、魔人、ブウ……!」

「魔人ブウ? あ、あいつがですか?」

 

 みるからに怯えている界王神に、悟飯が不可解なものを見るように顔を歪めた。

 確かに凄い気は感じる。只者でないのも分かる。

 だが、見た目はとても強そうに見えないし、気だってまだどうにでもなりそうな相手としか思えない。

 だが界王神は汗を滝のように流しながら、頷いて肯定した。

 

「そ、そうです。わ、忘れやしませんよ、あ、あの恐ろしい顔は……」

 

 リゼットは思わず『あれ、大界王神様の顔ですよね?』と茶々を入れそうになったが、かろうじてその言葉を喉の奥に仕舞い込んだ。

 代わりに、この事態を引き起こしただろう敵へと声を発する。

 

「ミラ!」

「久しいな地球の神よ。会いたかったぞ」

 

 そこにいたのは、以前からずっと続く因縁の敵であるミラであった。

 更にその隣にトワとダーブラが現われ、リゼットを挑発的に見上げている。

 彼等との戦いは覚悟していたが、完全に先手を取られてしまった。

 恐らく魔人ブウの復活にはプイプイやヤコンといった連中を纏めて使ったのだろう。

 魔人ブウの復活には悪人の気は使えないはずだが、その辺りはトワの魔術でどうにかしたに違いあるまい。もう彼女が何をしても驚かない。

 ダーブラだけを残しているのは戦力として役立つからだろうか?

 それにしてはダーブラは操られている様子もなく、洗脳時特有の禍々しいオーラもない。

 そればかりか、トワがやけに親しく寄り沿っているような気さえする。

 

「に、逃げましょう、皆……も、もう駄目です」

 

 声を震わせながら敵前逃亡を提案する界王神に悟空達全員がいぶかしむように彼を見た。

 今ここで逃亡などしたら、それこそ地球は魔人ブウに滅茶苦茶にされてしまう。

 これが全宇宙の神が取る決断なのか、と信じられない気持ちにさせられたのだ。

 しかしそれを口に出来なかったのは、彼の怯えようが尋常ではなかったからだ。

 まるでブロリーを前にしたときのベジータのように……いや、それ以上に怯え切っている。

 

「ご、悟空さん、悟飯さん! 逃げましょうよ!

ここにいたら全員殺されてしまう! 逃げるんですよ!

早く!!!!!」

「悪いが界王神様、そりゃ出来ねえよ。

ここでオラ達が逃げたら誰が地球を守るんだ」

 

 逃走を強く推す界王神に、まず悟空が反対した。

 その隣にターレスが立ち、ニヤリと笑う。

 更にベジータとピッコロもそれぞれ戦闘態勢へと入り、前へと歩み出た。

 

「だ、そうだが? どうするんだ、神さんよ?」

「聞くまでもない事でしょう」

「だろうな」

 

 ターレスの問いにリゼットがコートを脱ぎ捨てて、いつものドレス姿になって答える。

 それに対しターレスもまた予想していたように拳を握った。

 今のは質問ですらない。分かり切った事を確認しただけのものだ。

 

「り、リゼットさん、貴女からも皆に言って下さい!

ここは逃げるべきです! 逃げて、生き延びなければならないのです!

貴女が言えば、もしかしたら……」

「……皆に告げます」

 

 界王神の催促に応えるかのようにリゼットが言葉を発した。

 その事に界王神の顔が喜色に歪み、だが次の瞬間硬直した。

 

「これより、魔族及び魔人ブウとの戦闘に入ります!

今感じられる気は小さなものですが油断はしないで下さい。彼の全力はこんなものではありません。

また、界王神様の記憶を覗いて分かりましたが相手はセル以上の高い再生能力を有しています。完全に消滅させるまで絶対に気を抜かないように」

「リゼットさん!!?」

「流石はうちの神様だ。そうこなくっちゃ!」

 

 リゼットが発したまさかの界王神無視の突撃指示に界王神が目を見開いた。

 一方悟空はそれでこそだ、と嬉しそうに言い、他の戦士達も同じように構える。

 ベジータも腕組みをしたまま口の端を歪めた。

 地球の脅威を前にしての撤退などない。この星の住人としても、そして戦士としてもだ。

 

「何だ、あの連中は?」

「この地球の戦士達ですわ、お兄様。

特にあの白い女と、変な髪型の胴着の男には気を付けて下さい」

 

 ダーブラの問いにトワが答えるが、その際に出た言葉がリゼットを驚かせた。

 お兄様? 今、あの女はダーブラを兄と呼んだのか?

 いや、決しておかしな話ではない。あの女だって魔族なのだ。

 しかしまさか、ダーブラの妹とは……。

 

「私達との決着を付けるつもりで戦力を集めて来たのね。

けどそれはこちらも同じ事。纏めて始末してキリを回収してやるわ」

 

 トワが杖を振るう。

 すると、その瞬間に信じ難い出来事が起こった。

 魔人ブウから禍々しいオーラが溢れ、あろう事か3体に分裂したのだ。

 しかも気の減少が全くない。戦闘力をそのままに数だけを増やしている。

 別の時間軸から連れてきた……わけではない。

 魔人ブウは元々肉片の一つも残っていればそこから完全に再生してしまう魔人だ。

 ならば、再生の応用で自分を増やす事すら不可能ではないのだろう。

 事実……リゼット達が知るはずもない事なのだがトキトキ都では別の時間軸の魔人ブウが己の身体を千切って生み出した彼の子孫が存在している。

 そう、魔人ブウはその気になれば増える事すら可能なのだ。

 普段それをやらないのは、やってしまえば魔人ブウといえど弱体化してしまうからだろう。

 例えば本来の歴史では魔人ブウが善と悪に分かれる事で弱体化が発生している。

 だが今回はその弱体化がない。

 何故ならミラとトワがこれまでの時間改変で得たエネルギーを彼に与え、失われるはずの力を充填しているからだ。

 あまりに絶望的な光景を前に界王神は膝をつき、「もうだめだ」と呟いていた。

 

「地球の神は俺がやる。誰も手を出すな」

「ミラ、分かっているとは思うけど」

「ああ。あの妙な力を出す前に片を付ける」

 

 まずはミラが真っ先に飛翔し、狙いをリゼットへ定めた。

 リゼットもそれを受けて立ち、二人の姿が消えて空気が爆ぜた。

 それと同時に3人に分裂した魔人ブウが飛び、最初の一体を悟空が、二体目をセルが、三体目をベジータ、ターレス、ナッパが相手取る。

 ダーブラにはピッコロが向かい、トワには悟飯が挑んだ。

 そして界王神とキビトはあまりの展開の速さについていけず、その場でうろたえている。

 いや、付いていけないのは展開の速さだけではない。戦いの速度そのものだ。

 全員があまりの速度で動くものだから眼で追う事も出来ず、援護すらも行えない。

 

「な、なんと! 下界の者達がこれほどの力を!?」

 

 下界の人間達の力に界王神が驚かされているのを放置し、リゼットとミラが成層圏付近を戦場に衝突した。

 これまで二度に渡り戦ってきたが、そのどちらも不完全燃焼だ。

 一度目はリゼットがまだミラと戦えるレベルではなく、二度目はリゼットの暴走で戦いそのものが流れた。

 そして迎えた三度目の正直。両者のレベルはこれまでになく接近し、余計な邪魔もいない。

 ここで決着を付ける――その決意を共有し、二人は最初から出し惜しみなしの全力で敵へと挑んでいる。

 

「はあああ!」

 

 ミラが連続で気弾を放ち、気の弾幕を展開する。

 しかしその全てがリゼットのバリアに阻まれて届かない。

 だがそれでいい。元よりこの弾幕はただの目晦ましだ。

 ミラが高速で翔け、リゼットの背後から蹴りを放った。

 

「っ!」

 

 だがリゼットの周囲を飛翔している光の球がそれを許さない。

 自動で防御、迎撃を行う光球がミラの蹴りを受け止め、彼を弾き飛ばす。

 それと同時にリゼットが掌を翳して気合砲。追い討ちをかけた。

 吹き飛んで行くミラを追い加速。

 ガードの上から連撃を叩き込む。

 

「ぐ……っ!」

 

 攻撃するのはリゼットだけではない。

 彼女の周囲を旋回している光球も彼女の周囲を旋回(まわ)りながら気弾を連射してミラにガードを強要して動きを固めつつ、その上からダメージを与えて体力を削っていた。

 攻撃をガードされる、というのは基本的には好ましい事ではない。

 しかしあえての逆発想。わざとガードさせて、その姿勢のまま固める。

 光球の気弾が止まない限りミラはガードを解けず、その上で防御の上から削られる。その何と悪辣な事か。

 だが無論、リゼットはこれで終わりではない。

 上半身に光球の攻撃を集中させる事で下への注意を逸らし、隙を晒した足を蹴りで払った。

 

「しま……っ」

 

 体勢を崩したミラの指を掴んで上へ放り投げ、残像拳で上下左右前後から同時に襲い掛かった。

 ただの残像ではない。メタルクウラとの戦いでもやった、気の分身をそこに置いての質量のある残像だ。

 リゼットの分身達が同時に全方位からミラを攻撃して通過し、更にまた戻ってきては攻撃を加えて飛び去る。

 それを三度ほど繰り返してからミラを蹴り落とし、飛びながら無数の光剣を創造する。

 

「千の剣よ、在れ!」

 

 一斉に射出される剣の弾幕。

 その悉くを避け、叩き落とし、防ぎ、ミラが果敢に距離を詰める。

 再び零距離での攻防。両者の手が常識を超えた速度で動き、一呼吸の間に何千何万手と駆け引きを行う。

 拳打、掌打、貫手、手刀、裏拳。

 時に真っ直ぐに、時にフェイントを折り交ぜ、敵の先を読み、その先を読み、先の先を呼んで攻撃と防御を繰り返す。

 一手でも誤ればそこを始点に怒涛の連撃を受けて一気に劣勢に追い込まれる羽目となる。

 それを理解しているが故に気は抜けず、しかし必要以上のプレッシャーで自滅するというミスは犯さない。

 体感時間を極限まで圧縮し、かろうじて互いの残像のみを追える超高速の世界に突入するもその表情は涼しいものだ。

 ミラは地力で上回り、だがリゼットは光球と合わせての手数でそれを凌駕する。

 だがやはりまだミラは真っ直ぐすぎる部分がある。

 不用意に発した攻撃の予兆。青さ故に露見した攻撃の信号――に見せかけたフェイント。

 そのフェイントの中に隠された本命の一撃。恐らくはリゼットの裏の裏の更に裏を掻いたはずの攻撃の――更にその裏! それをリゼットが見抜き、ミラの手首を捉えた。

 

「!」

 

 腕を引いて体勢を崩し、胸に掌打! 更に気を内部に浸透させて炸裂させる。

 一撃で肋骨を砕いた確かな手応えを得て、だが一切の気の緩みはない。

 始点は得た。戦いのイニシアチブと流れはこちらが握っている。

 それをいつまで握っていられるかが勝敗の分かれ目だ。

 主導権がこちらにあるうちに、叩き込めるだけ叩き込む!

 

「はあっ!」

 

 拳打! 掌打! 貫手!

 ミラの身体に点在する人体急所を次々と打ち抜き、怒涛の連撃を雨あられと浴びせた。

 打つ、打つ、打つ――!

 腹を打って空高く跳ね上げて飛ばし、先へ回りこんで蹴り落とす。

 落とした先へ転移して掌打で弾き、飛ばした先へまたも回りこんで一瞬の間に千の連撃を放つ。

 

Infinite World(インフィニット・ワールド)!」

 

 時間を越え、この世のありとあらゆる存在を一秒間だけ停止させた。

 硬直したミラへ次々と短刀型の気弾を放ち、魔空包囲弾のように完全に閉じ込めてから解除。

 時間が動き出すと同時にミラを幾万もの気弾が同時に襲った。

 地球上空で広がる巨大な爆発。その威力に地上の界王神達は顔を真っ青にし、魂が抜けたように呆けている。

 だがそれを直接浴びてしまったミラは全身を血で染めながら猛然と飛翔し、リゼットへと向かう。

 リゼットも接近させまいと亜空間を多重展開し、次々と空間の裂け目からの遠隔気功波を放った。

 だがミラは見る事もなくそれらを避けて距離を詰める。

 前から、横から、後ろから、斜めから、下から、死角から。

 時間差で追い詰めるように撃たれる鮮やかな閃光。だがそのどれも掠りすらしない。

 

「っ!」

「遅いぞ!」

 

 加速に加速を乗せたミラの拳がリゼットを殴打した。

 咄嗟に張ったバリアが軋み、罅割れて貫通する。

 だが直接当ててもまだリゼットには脱力による防御がある。

 手応えはまるでなく、羽毛と化した少女の身体が成層圏を抜けて宇宙空間まで吹き飛んだ。

 その先へとミラが先回りして蹴りを放つも、またも手応えなし。

 脱力で完全に衝撃を受け流したリゼットが回転し、反撃の蹴りを放つ。

 延髄! 確かな手応えと共にミラの首筋に白い足が直撃してミラの瞳がぐるんと上を向いた。

 だが――踏み止まる。

 気絶しそうな衝撃を浴びながらもミラが執念でリゼットの足を掴み、渾身の右ストレートを彼女の腹へとめり込ませた。

 

「……っ! う、あ……ぁ!」

「この体勢ではお得意の脱力も出来まい」

 

 今度はリゼットが痛みに耐える番だ。

 整った顔を苦痛に歪め、吐き出した血で己の顔を汚す。

 そこに容赦なく第二撃!

 一瞬の判断を問われる刹那、リゼットは迷わず自分の前に亜空間を展開してミラの拳を吸い込んだ。

 消えた拳はミラ本人の後ろから現われて彼の後頭部を強打し、意識を一瞬飛ばす。

 

「……が!」

「好機!」

 

 ミラがよろめいたのを見逃さずにリゼットが自身の身体を高速回転させる。

 脚は掴まれたままだが、今のでほんの少しだけ隙間が出来た。

 その隙間を回転によって強引にこじ空け、多少皮膚が削れるのも気にせずに振りほどく。

 更に回転の勢いを殺さずに二度目の延髄蹴り!

 ミラの首へダメージを重ね、今度は蹴った反動で彼から離れる。

 

「はぁ……はぁ……」

「ぜえっ……ぜえ……」

 

 互いに息が切れてきた。ダメージも決して浅くない。

 しかしまだ戦う事は可能だ。相手を倒すには充分すぎる。

 リゼットが白い気を纏い、ミラが真紅のオーラを放つ。

 そして再び、二人が正面から衝突した。

 その光景を地上から見上げながら、トワが嬉しそうに呟く。

 

「フフ、楽しそうねミラ……未来では強い奴、皆倒しちゃったものね。

存分に見せてやるといいわ。次期魔界王たる貴方の力を。

大丈夫、負けるわけなんてない。だって貴方は私の最高傑作だもの」

 

 ミラは今、この瞬間。これまでにない充実感を味わっているのだろうと確信出来る。

 戦士としての本懐。求め続けた宿敵をこの時代で遂に彼は得たのだ。

 ならば後は勝つだけ。この壁を乗り越えた時、彼は更に高みへと至る事が出来る。

 その予感に心躍らせながらトワは、ほんの僅かに胸を過ぎった不安感を無理矢理押し込めて見えない振りをした。

 

 ……本当は、リゼットと関わるのは反対だった。

 いつまたアレ(・・)になられるか分からないし、戦うにはリスクが大きすぎる。

 だがミラが決着を求めたのだ。

 今までは彼に我慢させていたものの、このままでは暴発する可能性もあった。

 だから、危なくなったらすぐに逃げる事を条件として一度だけ戦う事を許したのだ。

 これで勝てればそれでよし。

 もし撤退せざるを得なくなっても、とりあえず我儘は聞いてやったのだから以降はマシになるだろう、と……そう考えて。

 

(……大丈夫よね、ミラ)

 

 だがどうしても、不安が消えなかった。




界王神「もう駄目です……おしまいです……。
勝てるわけがない……あいつは伝説の魔人なんだあ……。
殺される……み、みんな、殺される……。
逃げるんだあ……。
わ、分からないのですか……やはり伝説の魔人……私達が勝てる相手ではなかった……。
何故です……何故貴方達は戦うんです……勝てるはずなどないというのに、何故……」
ベジータ「……………………」


【インフィニットワールド】
・時の止まった世界で見える……。
そう……我が『インフィニットワールド』が初めて時を止める経験をしたのは半年前の事です。
能力のパワーとスピードを試そうと人参化に散弾銃を撃たせ、弾丸をつまみ取ろうとした一瞬……何もかもが静止したように見える事に始まった……。
最初は幻覚だと思った……。
訓練されたマホメド・アライJr.は相手のパンチが超スローモーションで見え……事故に遭った瞬間の範馬刃牙は体内や脳でアドレナリンやらエンドルフィンやら何やらが分泌されて一秒が何秒にも何分にも感じられるというあれだと思いました。
だが……我が能力『インフィニットワールド』はその静止している空間を弾丸を回り込んで体全体で動く事が出来た。
そして弾丸を無視してカリンをモフった……。
幻覚ではなかったのです……。

【戦闘力】
・ミラ:1300億

・ダーブラ:250億→320億
(洗脳解除+トワからのキリ供給)

・トワ:300億
(ただし魔術があるので実際の強さは数値以上)
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