ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
エイジ774、5月7日。
この日は地上で第25回の天下一武道会が開かれる日であり、本来ならば魔人ブウが復活する日でもあった。
この世に生まれてより274年。遂にここまで来たかと思うとリゼットは何だか感慨深いものを感じていた。
勿論まだ終わりではないのだが、それでもどんどん時が流れていると実感せずにはいられない。
今日の武道会には久しぶりに悟空達も揃って参加するらしく、リゼットも誘われたが断っておいた。
リゼットは天女時代から合わせて結構人前に顔を出しているので、観衆の見ている中で戦ったりするのはまずいのだ。
だが選手としては参加しなくとも、観客としてならば参加は出来る。
外出用の白いケープコートを羽織り、準備を整える。
奇人だらけだった一昔前はともかく、最近は妙に地上の発展が早い。
昔と違い、今のご時勢では流石にドレスで一般人の中に加わるのは目立ち過ぎるのだ。
どうでもいいが、ドレスの重さは普通に戻している。全力を出すたびに肩を露出するのはやはり恥ずかしいのだ。
なのでもう、このドレスは頑丈なだけだ。今後もそのままだろう。
代わりに新しく創造したこのケープコートが重量10tである。やはり常に修行をしていないと気が済まないらしい。
「セルは参加するんですか?」
「無論そのつもりだ。一度、孫悟空達とは全力で戦ってみたかったしな」
この世界でのセルはセルゲームなどを起こしていないので人に知られていない。
したがって人前で戦う事も、その奇妙な外見以外は何ら問題がなかった。
その外見もリゼットの神術で軽い認識阻害を施しており、一般人には普通の人間に見えるようになっている。
最初の頃は岩を持ち歩いていただけの自分が、よくもここまで不思議な術を会得してきたものだと我ながら少し可笑しくなってしまう。
外出の準備は整った。
原作通りならば今日はバビディ達が行動を起こすはずだが、肝心の魔人ブウの封印は界王神界にある。
加えて7年前にリゼットが行った地上の悪人一斉粛清により、今の地球には邪念を持つ者がほとんどいない。
原作において極悪さを発揮したスポポビッチやMr.サタンと犬を撃った下衆までもが善人へと変わってしまっている。
これはあくまで7年前の時点で存在していた悪人全てが対象なので、それ以降に生まれた人間が育てばまた元の状態へと戻ってしまうだろうが、それはまだ数年先の話だ。
少なくとも新世代が育つまでの数年間は地球に悪人らしい悪人などおらず、つまりそれはバビディが洗脳出来る相手がいない事を意味していた。
(……念のため、バビディがいるかもう一度探ってみますか)
バビディは魔術により前触れなく侵入する事が出来る。
したがってスラッグの時のように地球への侵入そのものを防ぐ事は出来ず、リゼットはいつ彼等が来るか分からない以上、毎日のように地上の遠視を行うという手段を選ぶしかなかった。
一日に3回は必ず行っている地上索敵だが、今日は原作で彼等が動いた日だ。もう居てもおかしくない。
そう考えてリゼットは地上へと意識を飛ばして怪しい気配を探り……そこで、彼等を見付けた。
(居た!)
念には念を入れてみるものだ。
都から離れた荒野にバビディの宇宙船があり、更にバビディとダーブラがいるのを確認出来た。
だがそれよりもリゼットの気を引いたのはそこから離れた位置を飛んでいる複数の気だ。
視点を移動させてみれば、そこにいたのはキビトだった。
ボロボロになった界王神を抱えて必死に飛んでおり、その後をプイプイの親戚のような外見の雑魚っぽい連中が追いかけている。
一体これはどういう状況なのだろうか?
いや、考えるのは後だ。とりあえず今は彼等を救出するべきだろう。
「セル、すみませんが天下一武道会は後回しです。やるべき事が出来てしまいました」
「何かあったのか?」
「はい。状況はよくわかりませんが界王神様達がバビディの手の者に追われているようです」
リゼットはそれだけ言うと、すぐに界王神達の元へと転移を行った。
★
「へへへへっ! 逃がさないぜ!」
「大人しく観念しな!」
キビトは瀕死の界王神を抱えて必死に逃げていた。
何故こんな事になってしまったのか……全ては界王神界に突然現われたあの二人の魔族が原因だ。
あまりに強大な力を持つミラという男に界王神とキビトは叩きのめされ、何とか逃げ出したものの逃げた先の地球でバビディに見付かってしまい、こうして部下をけしかけられている。
少しの時間さえあればキビトは界王神を回復する事が可能だ。
界王神が万全ならば、この程度の連中となら充分に渡り合う事が出来る。
だが、その暇すらもない。今動きを止めれば奴等からの一斉攻撃を受けて界王神が殺されてしまうのだ。
自分はどうなってもいい。だが宇宙の正しき神である界王神だけは何があっても死なせてはならない。
あまりに絶望的な状況に思わず祈りたくなる。
だが腕の中で眠っている界王神こそが宇宙の神。神々の頂点だ。
故に祈る相手などいない。
しかし祈りが届いてしまったのか、キビト達を守るようにこの地球の神が転移し、追っ手達の前に立ち塞がった。
「な、なんだ? 女?」
「退きなさい。この星での狼藉は私が認めません」
見た目こそ幼さを残す少女だが、不思議とその声には力があった。
思わず跪きそうになる神聖さと存在感が同居し、歯向かう事そのものが間違いだと錯覚しそうになる。
決して強烈に輝いているわけではない。淡く発光しているが、それだけだ。
だがまるで後光でも差しているかのように平伏しそうになる。己が罪深い存在だと懺悔したくなってくる。
何だこいつは。ここにいるだけで呑み込まれそうだ。
異星の侵略者達はそんな感情を振り払うかのように叫ぶ。
「わ、笑わせるな! 女一人に何が出来る!
俺様こそはあのフリーザにも匹敵すると言わしめた宇宙戦士が一人、ピーリカ様だぞ!」
「同じくピリララ!」
「同じくポポリナ!」
「ペーペルト様とは俺の事よ!」
名乗りをあげる戦士達を見ながら、リゼットはプイプイのパチモノのような4人に何とも言えない気持ちを抱いていた。
何だろう、この、何?
記憶の中に存在するファミコンのドラゴンボールゲームにはギニュー特戦隊の色違いのような雑魚敵がいたりするのだが、例えるならばそんな感じだ。
強襲サイヤ人や激神フリーザ、烈戦人造人間などから続くあのシリーズがもし魔人ブウ編まで続いていたのなら、あるいはこんなプイプイの偽者のような雑魚敵が出ていたのかもしれない。
要するに、リゼットにとって彼等はその程度の感想しか抱けない――雑魚でしかなかった。
「なかなかのエネルギーを持っているようだな。喜べ、貴様のそのエネルギーも魔人ブウ復活の為に使……」
「そうですか」
相手の言葉が終わる前に、リゼットが最近の修行で新たに覚えた力である『魔法』を行使する。
すると上空から4つの雷光が降り注ぎ、色違いプイプイ4人を纏めて焼き焦がした。
気弾に威力は劣るが速射性は悪くないし、威力も術者本人の力でちゃんと変動するようだ。
何より気の消費が全くない。別の何かを使っている感じはするのだが、例えるならHPとMPの違いだろうか。
とりあえず雑魚の処理になら充分使える技だろう。
「つ、強い……! 何故地球の神がこれほどまでに」
「ええと……キビトさん、でしたね。とりあえず私の神殿へと行きましょう。
詳しい話はそこで伺います」
「う、うむ」
キビトを連れて神殿へと戻り、事のあらましを聞いた結果リゼットは思わず溜息を吐いていた。
界王神達が悪いわけではない。ミラとトワの出現を予測しなかった自分の落ち度だ。
まさか魔族が界王神界にまで出しゃばってくるとは。
……というかミラ、生きていたのか。
あの時の記憶はあやふやだが、それでもミラの身体の半分を消し飛ばした事はかろうじて覚えているし、どう考えても致命傷だと考えていた。
だが生きていたという事は、何かしらの再生能力持ちだったのだろうか。
あの二人が何を考えて魔人ブウを持って行ったのかは知らないが、とりあえずロクな目的でないのは確かだろう。
というか先ほど台詞の途中で倒してしまったが、あのプイプイブラザーズ、変な事を言っていなかっただろうか?
確か魔人ブウ復活の為のエネルギーがどうたらと……。
(あ。これ駄目なパターンです。間違いなく玉をバビディに譲渡してますね)
トワとミラの狙いは分からない。
だがどうやら、結局魔人ブウはバビディに渡ってしまったらしい。
んー、と唸りながらリゼットは思案を巡らせる。
バビディ達だけならば自分とセルだけで突撃して余裕勝ち出来るのだが、ミラとトワがいるとなると正直厳しい。
今の自分ならばミラ相手でも充分に勝機があると思うのだが、必ず勝てる相手とも限らないのだ。
しかし、だからといって悟空達に声をかけて、それでベジータに同行されては原作通りになってしまい非常に面倒臭い事になってしまう。
いや、ベジータだけではない。ターレスとピッコロもアウトだろう。
原作の神コロならともかく、ここのピッコロは先代やネイルと融合せずにスラッグと融合してしまっている。
これではどう考えてもバビディの術に嵌ってしまう。
もういっその事、ここから亜空間攻撃でレイジングブラストぶっぱして宇宙船爆破してしまおうか、とまで考える。
それだとまず確実に魔人ブウが衝撃で復活してしまうだろうが、エネルギーの足りていない魔人ブウなぞ大した脅威とは思えない。
誰かが吸収されてしまう可能性も考えられるが、そうなる前にこちらから打って出て細胞一つ残さずに消してしまえばいい。
原作通りならサタンと仲良くなって味方になってくれたが……それは条件が難しすぎる。
まず魔人ブウを復活させて和解して仲良くなってから悪と善に分離させ、悪の方だけ消し飛ばす……いや、無理だからこんなの。
仮にバビディなどを全て倒した後でブウを復活させたとしよう。
その上で人を殺すのは悪い事だからやめてくれと言ったとしよう。
まずそれで素直に聞いてくれるかは分からない。むしろ聞かない可能性の方が遥かに高いだろう。
それで何とか和解したとして、その後どうやって悪と善に分離させる?
まさか子犬をブウに懐かせた上で、誰かを雇ってブウの目の前で子犬を射殺させるのか?
……とんでもない話である。少なくともリゼットはそんな事をやりたくない。
それで上手く行って分離させたとして、その後に悪ブウをどうする。
上手く倒せればいいが、吸収を繰り返して強くなる恐れだってあるのだ。
一歩間違えればブウを味方にしたいが為に地球が滅亡する恐れすらある。
仲間が全員吸収されて死んでしまう可能性だってある。
魔人ブウとはそれほどに恐ろしい相手だ。欲をかいて挑むような相手ではない。
確かに魔人ブウの味方化は魅力的だが……リゼットは地球の神である。
守るべき地球そのものをチップにしてまで引き込みたいとは思わない。思ってはいけない。
魔人ブウは原作では仲間になるから仲間にしたい……これはリゼットの個人的な欲でしかないのだ。
己の欲に地球と、仲間達を賭けるなどどうして出来よう。
「……よし」
即断即決。リゼットはこの場からの遠距離攻撃にて宇宙船ごとバビディ達を消し飛ばしてしまう事を決定した。
善は急げと早速ゲートを開き、手を翳す。
手加減はしない。初手にて最大火力を叩き込む。
気を高めに高め、白い輝きが全身を覆う。
その気の発露にキビトが驚愕に顔を強張らせ、治療の済んだ界王神が慌てたように声を荒げた。
「お、お待ちなさい! 何をするつもりですか!?」
「勿論、バビディの宇宙船に攻撃を仕掛けるつもりです」
「な、なりません! そんな事をすれば衝撃で魔人ブウが復活してしまう可能性があります!」
「復活と同時に処分します。問題はありません」
「なりません! 貴女は魔人ブウの恐ろしさをまるで分かっちゃいない!」
リゼットは界王神の慌てようを見ながら、少し慎重すぎやしないだろうかと心配になってきた。
確かに魔人ブウは恐ろしいだろうが、それは万全の状態で復活してしまった場合だ。
勿論復活しないなら、それが一番なのは認めるが慎重になりすぎてMAXパワーで復活されるくらいならエネルギーが全く溜まっていない時に復活させてしまう方がいい。
何よりトワとミラが何をするか分からない以上下手に後手に回るのは不味いのだ。
あの二人なら何かしらの手段を見付けて魔人ブウを復活させかねない。
とはいえ、それを界王神に説明しても魔人ブウに怯え切っている彼は納得しないだろう。
本当に面倒な事になってしまったものだ。
なまじ、リゼットが神で界王神がその上に立つ最高神であるせいで無視する事も出来やしない。
「では、どうするのですか?」
「地球には貴女を含め、優れたパワーの持ち主が数多くいるはずです。
彼等の協力を得て、バビディの宇宙船に乗り込みバビディを倒すのです」
リゼットはもう頭を抱えたかった。
乗りこむのです、と勇ましく言っているがその場合戦うのは主に自分達だ。
界王神の戦闘力では……失礼を承知で言うと全くアテに出来無い。
スカウターがないので正確な数値は分からないが、気の大きさを言えば人造人間との戦いが始まったばかりの頃のターレスと同じくらいだ。
別に弱くはないのだが、相手側にダーブラがいる事を考えると少々厳しい。
「……乗り込むよりもここで先制攻撃してしまった方が戦術的に有効だと進言しますが」
「なりません! これは界王神としての命令です。
魔人ブウの復活だけは阻止しなくてはなりません」
「……」
これは下手しなくても魔人ブウ復活ルート入るかもしれない。
そう思いながらリゼットは、悟空と悟飯のみを対象としてテレパシーを送信した。
【リゼットの容姿】
・特に書く事がなかったので今回はたまに聞かれるリゼットの容姿について書いておきます。
まずリゼットの顔ですが、一貫してDB初期(1巻~16巻)くらいまでの女キャラみたいな顔です。
一人だけ初期みたいな絵柄のままなので悟空達と並ぶと結構浮きます。
目の形は青ランチさんや結婚前チチみたいな感じで。
服装の全体的なイメージとしては、東方の神綺の服を真っ白にしたような感じでしょうか。