ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第六十六話 サイヤ人絶滅計画⑤

 エイジ737。かつて惑星ベジータを消し去ろうとしたフリーザにたった一人で戦いを挑んだ戦士がいた。

 男の名はバーダック。孫悟空(カカロット)の父であり、そしてターレスの師でもあった男だ。

 下級戦士ではあったが幾度も死線を潜りぬけた事により、その戦闘力は当時のサイヤ人としては間違いなく最強の一人に数える事が出来るだろう。

 だが当時のサイヤ人最強程度でフリーザに及ぶはずもない。彼はフリーザの放った巨大な火球に呑まれ、息子の名を叫びながらその命を散らした。

 ――はずだった。

 

 だが運命は惑星ベジータを見放しても、彼を見放す事はしなかった。

 スーパーノヴァに呑まれる直前に開いた時空の裂け目。ワームホール。

 そこに間一髪で呑み込まれた彼は一命を取りとめ、過去へと飛ばされてしまったのだ。

 恐らくはミラやトワが何度も時間改変を試みているが故に時空に歪みが生じていたのだろう。

 ここで彼が生き残るのは決して正史ではないはずだ。

 だが彼は生き延びた。

 過去の世界へと漂流してしまった彼は後の惑星ベジータである惑星プラントに住む住民から手厚い看護を受けて傷を癒し、そこで起こったフリーザの先祖であるチルドとの戦いを経て超サイヤ人へと覚醒。見事チルドを撃退してみせた。

 しかしそこでめでたしめでたし、とならないのが彼だ。

 チルドを倒したバーダックはある日、突然に再び時間を越える事になる。

 そして着いた先は時間から切り離された特異点……トキトキ都であった。

 

 

 

「強い人を! 俺と一緒に戦ってくれる強い人を連れて来て下さい!」

 

 トランクスが願ったのは、強い戦士であった。

 今リゼット達が戦っている時代よりも更に未来。

 彼はタイムマシンで過去を改変した罪を問われ、贖罪として時の界王神の下で働く事を義務付けられてしまった。

 だがこの宇宙全体の命運をも分ける孫悟空達の戦いはいわば歴史の中心であり、トランクスはそこに深く関わってしまっている。

 したがって彼自身が戦いの場に赴く機会は殆どなく、故に彼は望んだ。

 自らに代わり時間を守ってくれる強い戦士を。

 悟空やベジータ、リゼットや悟飯を守ってくれる心強い仲間を。

 そしてその願いを神龍が叶え、現われたのが時間の迷子であるバーダックであり、彼もまた不可抗力とはいえ過去を変えてしまった罪によりタイムパトローラーとしての仕事を与えられる事になったのだ。

 

 

 バーダックが裂帛の叫びをあげて突貫する。

 手には気を変質させた炎を纏い、女性相手だろうと一切遠慮のない全力の右拳を放った。

 いや、遠慮がないというのは間違いだ。正確には遠慮出来る相手ではない、というのが正しい。

 バーダックの渾身の『ヒートファランクス』はリゼットのバリアに阻まれて届かず、いくら力を込めてもビクともしない。

 だがその時バーダックは『視た』。この直後にバリアを解除して己の心臓を閃光で貫く地球の神の姿を。

 

「ちいっ!」

 

 リゼットがバリアを解除するよりも早くバーダックが避ける。

 直後にリゼットが指から閃光を放つも、既にバーダックは回避動作に入った後だ。

 いかに速い攻撃だろうが攻撃前に避けられてしまえば当たるはずもない。

 互いの実力差を考えるならば避けるなど出来るはずもない。回避動作が間に合うわけがない。

 その不可思議にリゼットは首をかしげる。

 

『…………?』

 

 だから今度は連射した。

 放たれた閃光は空中で拡散し、十の閃光となる。

 更に十の閃光が枝分かれして百に。百は千に、千は万に、億に。

 一発一発全てが防御など容易く貫通してバーダックを蒸発させ得る破滅の鉄槌。

 光が雪崩となって押し寄せ、だがバーダックは滝のような汗を流しながらも縦横無尽に飛び回って見事に全弾回避してみせた。

 放たれてから動いたのでは絶対に間に合わない光速を超えた気の一閃。

 それを必死の表情で全て、撃たれるよりも早く動く事で回避し切る。

 

「冗談じゃねえ! 攻撃全部が当たれば即死っておかしいだろ、この女!

さっきから何度俺に『死の未来』を視せるつもりだ!

俺じゃなきゃあ今ので225回目の死亡だぜ!」

 

 バーダックの脳裏には先ほどから、決して気分のいいものではない己の死に様が視えていた。

 頭を打ち砕かれて死ぬ未来。心臓を貫かれて死ぬ未来。顔を貫かれて死ぬ未来。

 何度も何度も、リゼットが攻撃動作に入るたびに死の未来が頭を過ぎる。

 しかも一つの攻撃で何度も何度も、だ。

 攻撃を受けて生きている未来が一つも出てこない。

 かつてバーダックは侵略したカナッサ星の人間により、未来を予知出来るようになる幻の拳を受けた過去がある。

 これは決して避け得ぬ運命を見せる事でバーダックを苦しめる為のものであり、事実バーダックはその通りに運命を視た事で苦しみ抜いた。

 だが運命から外れた今、カナッサ星人により無理矢理与えられた未来予知の力は今や完全にバーダックのものだ。

 ほんの短い間ならば、という前提条件は付くが自らの意思で未来を視る事も今の彼ならば出来る。

 本来これは絶対の優位と絶対の回避を彼に約束してくれるものだが……それを使い続けても尚、回避に徹するのが精一杯!

 攻撃に転じる事が出来ない。転じた先の未来が全て『死』で閉じてしまっている。

 迂闊に視界に映り続ければ超能力で心臓か脳を止められて殺される。

 迂闊に攻めればカウンターで殺される。僅かでも動きを止めれば気弾で殺される。

 亜空間が幾度となく開き、全包囲から即死必至の気弾が何度も発射される。

 冗談じゃない、なんだこのふざけた女は。

 これと比べればまだ、彼等の大敵であるトワやミラの方が可愛くなってしまう。

 

 だがやはり完全に暴走し切っているわけではないらしい。

 バーダックと異なりトランクスは先ほどから何度もリゼットの視界に入っているが超能力で即死させられる気配もない。

 攻撃もどこか適当で、少なくともバーダックに向けているような完全に殺す気全開の攻撃ではない。

 トランクスが二人いる事に困惑しているようだが、とりあえずあれならばギリギリ殺されずに済むかもしれない。

 

「どうするよトランクス。こいつは俺達の手に負える相手じゃねえぞ」

「とにかく時間を稼ぐんです! 何とか悟空さん達全員が回復するまで稼げれば……」

「この女を相手にか? そりゃあ無理ってもんだ」

 

 バーダックはトランクスの案を一蹴する。

 残念ながら時間稼ぎは不可能だ。むしろそんな事をすれば更にこの女は手数を増やして攻撃してくるだろうし、未来を予知して逃げるにも限度がある。

 いくら未来を視ようと、回避出来ないほどの広範囲攻撃などを行われたらどうしようもないのだ。

 ならば道は一つ。それらの攻撃をされる前に正気に戻すしかない。

 

「聞け。あいつは攻撃の瞬間だけバリアを解除する。

俺が囮になるからお前が攻撃を撃ち込むんだ」

「し、しかし……」

「なあに、ヘマはしねえさ。俺を誰だと思ってやがる」

 

 バーダックは自信に溢れた笑みを浮かべ、気弾を放つ。

 当然それはリゼットには当たらない。全てが遮断されるだけだ。

 だが今度はそれに合わせてバーダックが突撃。

 上手くリゼットの視界に入らないようにしながらバリアへ猛攻を仕掛けた。

 

『…………』

 

 リゼットがバリアを解除し、バーダックの腕を獲る。

 だがこの展開は折り込み済みだ。

 バーダックは予定通りに進んだ事に口の端を歪め、掴まれていない腕でリゼットに殴りかかる。

 だがその瞬間に腕を捻られて上下反転し、更に関節を外された。

 しかしそれも折り込み済みだ。

 関節の一つや二つなどくれてやる。

 バーダックは腕を極められたまま強引にリゼットの後ろへと跳び――その際、掴まれたままの腕が不吉な音を立ててへし折れた――残った片手でリゼットを後ろから抱き抱えるように拘束した。

 腕を掴まれたまま関節の駆動を無視して動き回ったせいで骨が皮膚を突き破ってしまっているが、その代償を払った価値はあった。

 腕一本でこいつの動きを少しでも止める事が出来るなら容易いものだ。

 

「今だ、俺ごと撃てえ!」

「し、しかし!」

「さっさとしろお! 傷は仙豆で治る! やれええ!」

 

 こうしてリゼットを拘束していられる時間など、本当に極僅かだ。

 ものの数秒もあれば簡単に振り解かれてしまう事は自分で分かっている。

 トランクスはすぐにその事に気付き、気功波を発射する。

 だがリゼットには相変わらず動揺も驚愕もない。

 自らを後ろから抱えているバーダックの片腕を獲ると、彼の必死の抵抗など存在しないかのように身体ごと投げ飛ばしてトランクスの気功波へとぶつけた。

 まさかのフレンドリーファイアだ。

 トランクスの気功波がバーダックを撃ち、リゼットには全く届いていない。

 更に、これを好機と見たリゼットはバーダックを仕留める為に大技の構えへと入る。

 背中の光輪が一際強く輝き、まるで重力から解放されたかのように垂直に浮遊。

 手の中に小さな白い輝きを生み出し、空から降り注ぐ光がスポットライトのように彼女と地球を照らし出す。

 

『……サイヤ人……抹消……』

 

 手の中に生み出されたのは神の気を集めて創り出した『破壊』のエネルギーだ。

 その余りの力にリゼット自身が重力場と化し、周囲一帯が無重力となって瓦礫が浮き上がる。

 光は小さいが、しかし直撃すれば銀河すら消し飛ばして余りある神の一撃だ。

 そこにコントロールを加え、悪しき者のみを破壊するよう調整する。

 繊細極まりないコントロールによって実現する、本家の破壊神ですら不可能な『対象指定広範囲破壊』……その攻撃範囲は北の銀河全域だ。逃げ場など何処にもない。

 

「俺に攻撃が当たらねえから大技で仕留めに来たな? ……狙い通りだぜ。

そんなデケェのを準備してたら、避けられねえだろ?」

『……?』

 

 しかしそんな絶望的な光景を前にしながら、バーダックは勝利を確信したように笑った。

 その視線の先にあるのは先ほど悟空達を放り投げた建物の屋上であり――そこでは、今まさに攻撃の構えに入った悟空の姿があった。

 そう、全ては計算通り。

 このタイミングで悟空が復活するのも、リゼットが大技の構えに入るのも全て『視た』通りの事。

 あれだけの攻撃を撃とうとしているならばバリアはなく、更にあの妙な自動回避も活動しない。

 故にここが、唯一にして最大の勝機だ。

 

「波ァーーーッ!!」

 

 ピッコロに与えられた仙豆によって復活した悟空の渾身のかめはめ波がリゼットを強襲し、彼女を呑み込んだ。

 ダメージは……ない。

 残念ながら今の悟空とリゼットの差では直撃してもダメージが通らないのだ。

 服の裾すらも破れておらず、埃の一つも被っていないその姿は、たった今かめはめ波の直撃を浴びたとはとても思えないだろう。

 この衝撃は、いつぞやのブロリー以来か。

 リゼットは悟空へと視線を移し……しかし、そこで動きが止まった。

 

「…………。

……悟空、君……?」

 

 悟空の全身全霊の一撃はリゼットを倒すには至らなかった。

 それどころかダメージにすら至っていない。

 だが確かにその魂の一撃は彼女に響き、強い衝撃となって駆け抜けたのだ。

 リゼットの目に光が戻り、手の中の光と背中の光輪が消滅する。

 今まで彼女を神域へと引き上げていた技法『ゼノバース』を彼女自らが解除したのだ。

 

「へっ。世話かけやがって」

「でもよかった……リゼットさん」

「さて、これで俺達の役目は終わりだ。トキトキ都に帰るぞ」

 

 リゼットが元に戻った事を確認し、バーダックと緑セーターのトランクスが姿を消した。

 瞬間移動や亜空間移動ではない。この世界そのものから姿を消してしまう、トワやミラが使うのと同じタイプの転移だ。

 リゼットは彼等を呆然と見送った後、下の建造物……その屋上を見る。

 そこには確かに仙豆で復活したトランクスがおり、こちらを見上げていた。

 あそこにいるのもトランクス。今助けてくれたのもトランクス。二人はトラキュア。

 ……意味がわからない、何故二人いる。

 

「神様! よかった、目え覚めたんか?」

「え、ええ……どうやらご迷惑をおかけしたようで……。

その、状況はまだよく分からないのですが……今、トランクス君が二人いませんでした?」

「ああ、オラもそう見えた。別の未来のトランクスなんかな?」

 

 それに、とリゼットは思う。

 あのトランクスは気のせいか、少しだけ成長していたように思う。

 もしかして更に未来のトランクスなのだろうか。

 だがそれ以上に意味がわからないのが、トランクスと一緒にいた男だ。

 ……あれ、バーダックだった気がする。

 悟空やターレスと似た顔立ちに緑混じりの戦闘服、そして赤いバンダナに頬の十字傷。

 どう見てもバーダックです。本当にありがとうございました。

 ずっと昔に死んだはずのバーダックが何で超サイヤ人になってトランクスと一緒に出て来るんだろうか。さっぱり状況が掴めない。

 

「……皆……その、今回は本当に申し訳ありませんでした」

 

 目を伏せてリゼットが悟空達に頭を下げる。

 今回の件は完全に自分の安易な決断が原因だ、とリゼットは考えている。

 セルなどの甘言に乗せられ、危険だと薄々分かっていた欠陥技を使用し、その結果暴走を引き起こした。

 一方のトランクス達は、今回の事はセルが起こした事だと分かっているのでリゼットを責める気にはならない。

 だからといって『気にしないで』などと言えば逆に彼女は気を遣わせてしまったと思い、更に気に病むだろう。

 結果として何を言えばいいかも分からず、ピッコロはとりあえずベジータに仙豆を与えなくてよかったと内心考えた。

 もしここにベジータがいたら、今頃罵倒三昧だっただろう。

 とりあえずこのゴタゴタが片付くまではベジータはこのまま気絶していてもらおう。

 

「いや~、神様ホント凄かったなあ! オラ全然勝てなかったぞお!」

 

 そうして重苦しい沈黙が流れかけたところで、普段よりも幾分かテンションの高い悟空の声が場の空気を破壊した。

 責められると思っていたし、それが当然だと思っていたリゼットは呆気に取られたように瞬きをする。

 

「なあ皆! そうは思わねえか?」

 

 悟空は一度リゼットに背を向けて仲間達を見回し、片目を閉じる。

 それを見てピッコロはすぐに悟った。

 なるほど、悟空にしてはなかなか気を利かせている。

 思わず口の端が緩み、この場はあえて彼に乗って道化を演じる事を決めた。

 

「確かにな。今まで感じた事もない凄いパワーだった」

「ま、実際助かったと言やあ助かったしな。あのままだったら俺達全員がゴースト戦士に殺されていた」

「僕もそう思います」

「そ、そうですよ!」

「結果的には誰も死ななかった。それでいいじゃねえか」

 

 ピッコロ、ターレス、トランクス、悟飯、ナッパが悟空の盛り上げた空気に続いた。

 それからナッパは、下でまだ気絶しているベジータを回収しに降りていく。

 とりあえず余計な事を言う前にベジータだけ帰しておこうとでも思ったのだろう。

 

「……あの、怒らないのですか? 私は皆を……」

「何の事だあ? オラ難しい事はわかんねえぞお!」

 

 悟空は馬鹿っぽく振舞うが、決して馬鹿ではない。

 子供の頃の彼ならば本当に今のような反応をしたかもしれないが、今の彼は人並みに空気くらいは読める。

 つまり、わざとそう振舞ってリゼットが気にしないようにしているのだ。

 その事に気付き、リゼットも微笑む。

 

「悟空君……ありがとう」

「そんな事より神様、オラ腹減っちまった。何か食わせてくんねえかな?」

「ええ、いいですよ。今日は好きなだけ食べて行って下さい」

 

 せっかく悟空が道化になってくれたのだ。

 ならばここは、その好意に素直に甘える事にしよう。

 リゼットは地面に倒れているセルを見付けると気のリングで拘束し、念力で引っ張り上げる。

 とりあえず今回の一件で彼の本性は暴露した。

 醜態を晒させてくれたお礼として、知っている情報を何から何まで搾り取ってやるくらいのお返しは必要だろう。




先代様「ハァー、ハァー……た、助けに来たぞ、リゼット! 今こそ老体に鞭打つ時!」
ポポ「神様、もう大丈夫!」
カリン「後は儂らに任せよ!」
人参化「あの時の恩を返しましょう!」

ピッコロ「……来るのが遅すぎる。もう終わったぞ」
先代ズ「えっ」

※リゼットの異常に気付き、全力疾走して来た援軍の図。尚、遅かった模様。

本当は先代様が登場してピッコロさんと融合してリゼットを止める展開も考えていたのですが、ドラゴンボール維持の為と、それをやったらリゼットに後悔が残って重くなるのでやめました。
ついでにバーダックの印象も薄れてしまいますし。

【サイヤ人……抹消】
スパロボの強ユニットによくある垂直移動。フワー↑
撃とうとしていたのはラスボス仕様のスパーキング・メテオ。

【カリン様戦法】
感想欄で言われていた『カリン様投げりゃいいんじゃね?』は実はマジで有効。
オートモードのリゼットは地球の善人には攻撃しないので、カリン様ならばノーリスクでリゼットを叩き放題。
猫パンチ連打で元に戻せた。
ちなみに同様の理由でポポもポポパンチ連打で正気に戻せる。
先代様も先代パンチ連打でOK。
ただし人参化だけは前科があるので善人化ビームの餌食となる。
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