ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第五十四話 銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴⑤

「同じ男としてちょいと同情はするが……折角の好機だ!

このまま押し切らせてもらうぜ!」

 

 リゼットと入れ替わるように最初に飛び込んだのはターレスだった。

 彼は獲物を狙う獰猛な獣の如く形相を歪め、未だダメージから立ち直れていないボージャックへと仕掛ける。

 相手の回復を待つ騎士道精神など最初から持ち合わせていない。そんなものはクソ喰らえだ。

 卑怯卑劣、ラフファイト。いいではないか。上等だ。

 かつてクラッシャー軍団と名乗っていたのは伊達ではない。

 闘いにルールなどない。殺し合いに禁じ手などない。

 殺るか殺られるか! 喰うか喰われるか! ここはそういう世界だ。

 加速を加えたターレスの肘打ちがボージャックの顔面へ突き刺さり、よろめいた所で髪を鷲掴みにして膝を顔へと叩き込む。

 二度、三度、四度、五度!

 まるで街角の喧嘩のようなラフさで幾度もボージャックの顔を蹴り、返り血を浴びたターレスがサディスティックに哂う。

 

「調子に、乗るな!」

 

 ボージャックが怒りの声をあげてターレスの顔を鷲づかみにする。

 ターレスも抵抗するがパワー勝負では勝ち目がない。

 ギリギリと握力任せにターレスの顔を掴んだまま持ち上げる。

 ターレスも必死に蹴りをボージャックの胸へと叩きこんでいるが、まるで怯む様子がない。

 だがボージャックは背後から迫る殺気に気付いて即座に退避。直後にトランクスの剣が空を斬り裂いた。

 

「ずあっ!」

「!?」

 

 避けた所を狙い、ピッコロの気功波がボージャックへと炸裂。爆炎を上げた。

 更に煙の中へと突撃し、視界の利かない中でボージャックへ格闘戦を挑んだ。

 突き出した拳を避けられてボージャックの膝が腹へめり込む。

 だが歯を喰い縛り反撃。ピッコロの回し蹴りがボージャックを弾き飛ばし、地面へと叩き落とした。

 追ってピッコロも降下し、ダブルスレッジハンマーを振り下ろす。

 しかしボージャックも見た目に似合わぬ機敏さで避け、ピッコロへと気弾を発射した。

 

「ぐああああっ!」

 

 咄嗟に両手で受け止めるも、威力を抑え切れない。

 気弾に押されて地面を削りながら後ろへと飛ばされ、遂に爆発した気弾に身体を焼かれた。

 深いダメージを負い倒れたピッコロを守るようにトランクスが割って入り、剣を振り下ろす。

 だが……無傷! まるで金属同士が衝突したような硬質な音を響かせてボージャックの腕が剣を止めてしまったのだ。

 

「ぐっ……はああああああ!」

 

 超サイヤ人の超身体能力と師から教わった剣術を駆使し、高速で刃を振るう。

 だが鍛え抜いた肉体は鋼にも勝る。トランクスの斬撃は悉くボージャックの肉体に防がれ、表面を僅かに削るだけに留まっている。

 だが直後、背中に鋭い衝撃が走ると同時に耐え難い激痛がボージャックを襲った。

 襲撃者(リゼット)は間髪を容れずにボージャックの背中に掌打を見舞い、鞭の激痛を彼に思い知らせる。

 鍛えた肉体? それがどうした。そこに皮膚がある以上痛覚は存在するだろう。

 ならば皮膚にダメージを刻む鞭の掌打――鞭打の前では余りにも無力だ。

 この技の前に防御は意味を成さない。狙いが皮膚である以上、攻撃箇所はブロックした腕や足を含む体表全てであり、身体の全てが急所!

 怯んだ瞬間にリゼットは気の剣を手にし、密着状態から片手平突きを発射。ボージャックの心臓へと剣を突き立てるも、筋肉の壁に阻まれて心臓までは刃が達しなかった。

 

(なんて堅さ……生身の手応えじゃない!)

「きっさまああああ!」

 

 ボージャックの豪腕がリゼットの頬を殴り、少女の身体が二転三転と横に回りながら吹き飛ぶ。

 だがまたもフワリ、と着地。

 屈辱に顔を歪めるボージャックの前でリゼットは己の頬を擦り、僅かに痛みが残る事に驚きと敵への敬意を感じていた。

 脱力による羽毛化は為っている。攻撃は間違いなく受け流している。

 だがそれでもごく僅かではあるが彼の豪腕はリゼットへ届いているのだ。

 バリアと光球で威力を削がれた上で受け流して尚この威力……直撃を許せばそれだけでKOされてしまいかねない。

 よくもまあベジータはあんなにボコスカ殴られて死なないものだ。

 もっとも傍から見ればリゼットこそ理不尽な防御力に見えるだろうが。

 

「貴様、どうなっている? 確かに直撃(あて)たはずの拳……まるで手応えがない。

まるで羽根でも殴っているかのような、異様な感触(てごたえ)ッッ!」

「まさに仰る通り。貴方は羽根を殴っているのです」

「ほざけえッ!」

 

 からかわれた、と思ったのだろう。

 ボージャックが激昂し、リゼットへと飛びかかる。

 だが間に割り込んだターレスが彼の両手に己の両手を合わせ、リゼットでは持ち得ぬ膂力を以て突進を受け止めた。

 更にそこからリゼットに倣うように脱力! それによりボージャックが前のめりになり、ターレスは倒れ込むように上体を反らす。

 そのまま、勢いに逆らわずにボージャックの腹を蹴り上げた。

 互いの両手が離れ、だがターレスは別れを惜しむように飛翔。ボージャックを殴り飛ばして更に追い掛け、彼の肩に乗って背後に回り込み羽交い絞めにした。

 

「そらあ!」

 

 その体勢のまま背中へサマーソルトキック。

 再びボージャックを蹴り上げ、飛んで行く彼の先へと高速で回りこむ。

 そしてダブルスレッジハンマー! 地面へと叩き落とした。

 これぞかつてバーダックが得意とした連続攻撃、『ファイナルリベンジャー』。その見様見真似だ。

 だがここで終わりではない。ターレスは地面へと向けて渾身の気弾を発射し追い討ちをかける。

 

「キルドライバー!」

 

 リング状の気弾がボージャックを撃ち、爆炎をあげた。

 しかしまだ終わらない。ボージャックが立ち上がれぬ今が好機だ。

 ターレスは気弾をもう一発用意し、それに合わせてトランクスとリゼット、ダメージから立ち直ったピッコロがそれぞれの技の構えへと入った。

 

「リベリオントリガー!」

「バーニングアタック!」

「激烈光弾!」

「Sparking!」

 

 四発の高威力の気弾がボージャックを撃ち、連鎖爆発を起こす。

 これでもまだ死んでいないようだが、ボージャックから感じられる気が目に見えて減っている。

 ボージャックが煙から飛び出して反撃の気弾を発射するが、それは彼等へ届かない。

 空間の穴に飲み込まれ、ボージャック自身の背後から飛び出すだけだ。

 己の放った気弾に背中を強襲されたボージャックは歯を喰い縛り、何とかダウンだけは避ける。

 

「無駄です。私に遠距離攻撃は通じません」

「離れて戦えば一方的に跳ね返されて、近付けば訳わかんねえ技で滅多打ちってか。

おっかねえ女神様もいたもんだぜ。こいつどうすりゃ倒せるんだ?」

「肉体能力そのものは低いから、何とか一発でかいのを当てるしかないな。出来ればの話だが」

「あの、何で私を倒す話になってるんですか? 敵はあっちですよ」

 

 リゼットの戦闘スタイルは極めて性質が悪い。

 相手に接近戦を強要するくせにその接近戦こそ彼女の独壇場なのだ。

 その容赦のなさにターレスが敵を無視して対リゼットの戦法を真面目に思案し、かつてはリゼットを倒す事を本気で考えていたピッコロが乗っかる。

 リゼットとしては味方が自分を倒す方法を真面目に考えるなど、軽く涙目になりそうな状況だ。

 そうこう漫才をしていると痺れを切らしたボージャックが突撃してくるが、振り下ろされた拳を受け流してリゼットの掌打が人中に入る。

 更に顎を打ち、喉仏を貫手! よろめいた瞬間に両手の親指を立てて乳様突起(耳の後ろ側にある突起した骨の部分)を突き、平衡感覚を狂わせてから気の刃で両目を切り裂き、気合砲で弾き飛ばした。

 

「いい攻撃だ! 続かせてもらうぜ!」

 

 飛んで行くボージャックを追い、ターレスが追撃。

 リゼットのような洗練された武こそないものの、実戦の中で鍛えてきたラフファイトが彼にはある。

 蹴り! 肘打ち! 髪を掴んで膝蹴り!

 サイヤ人の本能のままに繰り出される連撃がボージャックを滅多撃ちにし、全身至る箇所を強打した。

 最後に渾身の力で蹴り飛ばし、後続へと繋げる。

 

「次だ! 休ませるな!」

「任せろ!」

 

 ターレスの号令に応えて今度はピッコロが攻める。

 両手の拳を常識外れの速度で繰り出し、ひたすらに連打! 連打! 連打!

 ボージャックの胸板を執拗なまでに叩き、苦し紛れの反撃で繰り出されたボージャックの腕を掴み取る。

 

「……くたばれ!」

 

 腹に一撃!

 そこから力任せに放り投げ、口から破壊光線を発射。爆炎をあげた。

 そして次に続くのはトランクスだ。

 

「トランクス!」

「ハイッ!」

 

 放り投げられたボージャックを襲うのはトランクスの、上段からの剣撃だ。

 鋭い刃がボージャックの頭から股までにかけて一直線に赤い線を引き、血の雨を降らす。

 だが終わらない。本来ならばフリーザに見舞うはずだった高速の剣閃がボージャックの全身を切り刻み、切断にこそ至らぬものの決して浅くはない裂傷を刻み込む。

 最後に仕上げとばかりに気功波を放ち、空中へと吹き飛ばした。

 それを見てリゼットは即座に己の近くに空間の穴を開き、それと同時にボージャックを囲むように数多のゲートが展開される。

 

「皆! ここに攻撃を!」

「よし! いくぞ!」

「あいよ」

「これで終わらせる!」

 

 リゼットが手を振り上げ、ピッコロが手を翳す。

 ターレスがニヤリと笑い、トランクスが両手を後ろへと引いた。

 そして始まるのは気弾の弾幕だ。

 

「千の剣よ、在れ!」

「死ねええッ!!」

「魔空包囲弾!!」

「だだだだだだだだっ!!」

 

 連射、連射、連射連射連射!

 気弾の連射は戦力差を考えれば普段のボージャックに通じる戦法ではない。

 だが今のボージャックならば別だ。彼は今弱りきり、格段に力が落ちている。

 そしてダメージが1でも通るならば気弾連射は有効な戦法であり、追い討ちには持って来いだ。

 避けようもない弾幕が360度から発射され、ボージャックの全身を雨あられと撃ち抜く。

 爆煙が彼の姿を覆い隠し、最後の止めとして全員が大技の構えへと入った。

 

「Raging blast!」

「フィニッシュバスター!」

「魔貫光殺砲!」

「カラミティブラスター!」

 

 飛翔する四条の閃光。

 それがボージャックへ迫りながら重なり合い、一つの気功波と化して加速する。

 潰れた眼ではそれを視界に入れる事も出来ず、しかし自らの破滅を悟りながらボージャックはあらん限りの声で絶叫した。

 

「ちくしょおおおおおおおおお!!」

 

 ――爆破。

 

 空を覆い尽くすほどの大爆発がボージャックを包み、その全身を完全に消し飛ばした。

 断末魔は聞こえない。叫びは大爆音に掻き消された。

 死体など確認する必要もなく、気は完全に消失している。

 

「や、やったか?」

「トランクス君、それはやってないフラグです。

……と言いたいところですが気は完全に消えてますね」

 

 トランクスが余計なフラグを立てるも、もうボージャックは塵になってしまっている。

 流石に彼も塵になってしまっては折角のフラグを活かす事など出来ないだろう。

 つまりはこれで決着。今回地球を襲ったヘラー一族との戦いは勝利という形で完結を迎えたのだ。

 ターレスとピッコロが互いの健闘を称えるように笑い合い、トランクスもそれに合わせて破顔する。

 紛れもない強敵だった。

 だが精神と時の部屋での修行の成果を充分に発揮して見事に退ける事が出来たのだ。

 この経験は今後、彼等の自信となり彼等を更に成長させてくれる事だろう。

 何より悟空抜きで終わったというのが大きい。

 未来は悟空がいないが為に絶望に染まってしまったが、悟空がいなくてもやれるんだぞと今回の戦いで証明する事が出来たのだ。

 

「ところで、次は神さんが精神と時の部屋に入るのか?」

「そのつもりです。敵も段々強力になっていますし、そろそろ私もあの部屋を使う頃でしょう。

とりあえずカリン辺りに付き添ってもらって、その後は悟空君が起き次第悟空君と悟飯君ですね」

 

 リゼットは今まで精神と時の部屋を使用しなかった。

 究極のドラゴンボールを捨てる為に入ったりはしたものの、その時はすぐに出てしまいほとんど使用時間にカウントされていない。

 精神と時の部屋には個人で使える限界時間があり、それを過ぎると二度と入れなくなるし出られなくなる。

 リゼットならば空間移動で脱する事は不可能ではないだろう。

 精神と時の部屋からの通常空間への脱出は決して簡単ではないし、今はやれと言われても出来ないが時間をかければ出来るようになるという予感はある。

 だからその気になれば無制限に使える可能性は低くない。

 だがもしかしたら、閉じ込められて亜空間をも閉鎖されてしまう可能性もゼロではなかった。

 そしてそうなった場合リゼットは脱出する術を持たない。原作における魔人ブウやゴテンクスのように力だけで空間をこじ開ける事は不可能なのだ。

 だから今まで精神と時の部屋の使用を自らに禁じてきた。

 決して分の悪い賭けではないと思っている。むしろ8割方勝てる賭けだ。

 限界時間を超えた後の脱出は“多分”可能だ。

 だが、絶対ではないのだ。

 それが今までリゼットを足踏みさせてきたものであり、精神と時の部屋を使わなかった理由である。

 

 とはいえ、次はいよいよブロリーだ。

 流石に使わないという選択があるはずもなく、リゼットは精神と時の部屋の解禁を決意した。




どうでもいいが、リゼット達が去った後にブルァと鳴く緑色のセミのような何かがひっそりと物陰から立ち去ったらしい。
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