ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

54 / 176
第五十三話 銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴④

 腕組みをしたままベジータとボージャックが向かい合い、気を高める。

 ベジータは既に超サイヤ人の壁を超えた姿となっており、身体が一回り大きくなっていた。

 対するボージャックは余裕の面持ちで、まるで底を見せていない。

 ならばすぐにその余裕面を消してやる。好戦的に考えたベジータは腕組みを解いて気を集中し、ボージャックも合わせて構えを取る。

 

「っちゃあああ!」

「フン」

 

 互いに気弾を発射し、相殺。

 すぐに次弾に入り、それが相殺されれば間髪を容れずに次撃へ。

 横へと位置をずらしながら気弾を相殺し続け、互いの視界を煙が埋め尽くす。

 だが気を探れば場所は分かる。ベジータは迷いなく突貫し、ボージャックへ渾身のストレートを放った。

 だがボージャックは目にも止まらぬ速度で距離を取り、先ほどよりも強力な気弾を発射した。

 

「ちいっ!」

 

 ベジータが両手を突き出して気弾を受け止めるも、威力の高さに押される。

 多少はダメージを抑えるも、気弾を防ぎ切る事は出来ずに爆発に吹き飛ばされてしまった。

 地面に尻餅をつき、起き上がろうとした所を狙い撃つように間合いを詰めたボージャックの左拳に殴られる。

 更にボージャックが追撃。空中へと上がり、吹き飛んで行くベジータを追う。

 ベジータも何とか体勢を直して飛翔。ボージャックの拳に交差させて拳を出すもタイミングのずれから一方的に殴り飛ばされた。

 飛んで行くベジータの先に回り込み、今度は蹴り。ベジータの身体を空へ跳ね上げる。

 まだ終わらない。飛翔して追いつき、背中を思いきり蹴る。

 崖に叩き付けられる事でようやく止まったベジータは脇腹を押さえながらボージャックを忌々しそうに睨んだ。

 

(く、くそったれ……! 俺は精神と時の部屋の修行で腕を上げたはずだ!

今ならカカロットや、この星の神にだって勝てる! なのに、何故エリート戦士であるはずの俺がこうまで押されているんだ!)

 

 屈辱。そう、屈辱だった。

 ベジータは以前のフリーザとの戦いで一度プライドをへし折られ、更に悟空とターレスに先んじて超サイヤ人に変身されるという屈辱を味わっている。

 本来ならば誰よりも先に覚醒するべき自分が、あろう事か下級戦士二人の背中を追うというあってはならない事態。

 だがベジータは彼等に遅れて覚醒し、サイヤ人の王子としてのプライドを取り戻した……はずだった。

 だが人造人間との戦いでは16号に後れを取り、あまつさえ見逃されるという醜態を犯し、自信が再び砕かれた。

 それでも彼は折れず、ならば超サイヤ人の限界を超えてやると心に誓い、今の強さを得たはずだ。

 なのに……届かない。宇宙で最強のはずの超サイヤ人、その更に先へと至ったはずの自分がまた遅れを取っている!

 

「俺は……俺はスーパーベジータだーッ!!」

 

 ベジータが声の限りに咆哮し、崖が崩落する。

 全身を覆うオーラが更に強まり、額には血管が浮き出た。

 ベジータは全身を包む怒りの衝動のままに手を翳し、ボージャックへと狙いを定める。

 

「くらいやがれえ!」

 

 ――気弾乱射!

 凄まじい速度で両手を動かし、気弾を次々と発射する。

 

「だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!」

 

 肺活量の限界に迫るように掛け声を発しながら、息切れすら起こさずに気弾を連射し続ける。

 気弾が当たっているかどうかすらも確認せず、気の感じられる方向へとひたすらに撃ち続ける。

 その連射速度はまさに地球随一と呼んでいいだろう。

 それはまるで気弾の機関銃。

 彼と同じく気弾の連射を主力技として使う人物を挙げるならばリゼットが該当するが、その彼女だって一度に千の剣型気弾を射出する事はあっても、これだけの速度で気弾を撃ち出す事は出来ない。

 まず、それを可能とするだけの体力がない。

 故にベジータの気弾連射は疑う余地もなく地球最速だ。

 まさにマシンガンの如く撃ち出される気弾は最早弾幕ではなく、気の波と呼んでいい。

 これを可能とするのはひとえにサイヤ人の王子として生まれた天才的な実力。即ち気の総量や体力が為せる技だ。

 そう。これはいわば――気弾の無呼吸連打!

 

「だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!」

 

 気弾の連射。

 それだけならば、ある程度以上の実力があれば誰だって出来る。

 それこそ弱虫ラディッツだって出来る。

 だがそれだけの戦術を、一つの『技』にまで昇華させるのは簡単な事ではない。

 休みなく、間髪を容れず、間を空けず。ひたすらに発射され続ける気弾の雨。

 これはまさに技だ。奥義と呼んで言い過ぎではない絶技なのだ。

 だがここまで語った上であえてこう言おう。

 

 ――この攻撃は無意味である。

 

 別にベジータが弱いわけではない。むしろ充分に強い。

 そしてその強い彼が放つこの気弾の嵐を全て受けるという事は、ベジータからそれだけの回数攻撃されているという事だ。

 既にここまでに数百発発射されているこの気弾を、もしも他の者が受けたならば無事では済まなかっただろう。

 だが相手はボージャック。ベジータよりも格上の相手だ。

 そこに連射の為に一発一発の威力が落ちた気弾をいくら撃ちこんでも彼にしてみれば軽く小突かれている程度にしか感じず、ダメージにもならない攻撃を何百と撃ち込まれた所で効くはずがない。

 1でもダメージが通るならば意味がある。

 だが0では意味がないのだ。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……ど、どうだ! ざまあみやがれ!」

 

 ほぼ無呼吸連打に等しい攻撃を行ったが為に激しく息を切らし、ベジータは煙を見る。

 だが彼自らが巻き上げてしまった煙のせいで敵のダメージ具合が確認出来ない。

 しかし見る必要はなかった。煙を裂いてボージャックが飛び出し、その健在ぶりを示したのだから。

 驚愕に目を見開くベジータの腹へ蹴りをめり込ませ、その身体を蹴り飛ばす。

 

「ぐあっ!!」

 

 ベジータが吹き飛び、遂に髪が金から黒へと戻った。

 超サイヤ人の壁を一つ超えた形態――彼で言う所の『超ベジータ』は絶大なパワーを得る事が出来るが気の消耗が激しい。

 だというのにあんな気の連射を行い、更に追い討ちの攻撃まで受けてしまったのだ。

 ならば超サイヤ人が解除されてしまうのはごく自然な事であり、ここに勝負は決した。

 しかしボージャックは尚もベジータを追い掛け、崖にめり込んでいた彼の腹に拳をめり込ませた。

 

「ふおおっ!?」

 

 ベジータの口から唾液と血が撒き散らされ、筋肉の膨張によりボージャックの服が破れる。

 今度は肘打ち! これも執拗に腹を狙い、肘部分も破れた。

 とうとうベジータが動かなくなり、ボージャックは一度彼から離れる。

 攻撃をやめる? 否、止めを刺すのだ。

 

「ウオオオオオオオ!!」

 

 ボージャックが叫び、筋肉が更に膨張。上半身の服が完全に千切れ飛んだ。

 その気の高まりだけで崖が崩れ、ベジータが埋まる。

 その彼へと容赦なく手を翳し、止めの一撃となる気弾を発射した。

 

 だが次の瞬間、気弾は空間の穴に吸い込まれ、代わりにボージャックの周囲を囲うように空間が開いた。

 

「!!?」

 

 空間の裂け目から一斉に閃光が放たれる。

 その中には今ボージャック自身が発射した気弾すらも含まれており、彼の身体を滅多撃ちにした。

 ダメージは浅い。しかし不意を打たれたせいで少しだけ喰らってしまった。

 ボージャックは口の端を吊り上げ、奇襲者を見る。

 

「現われたな、地球の神よ」

 

 ベジータを間一髪で救ったのは、ブージンと戦っていたはずの地球の神、リゼットであった。

 その周囲には白光球が二つ旋回しており、油断なくボージャックを見据えている。

 どうやらブージンはダメージも与える事が出来ずに敗れたらしい。

 全く使えん奴だ、とボージャックは内心で死んだ部下を蔑んだ。

 

「取り巻きは始末した……次はこの星の真ん中にお前の墓を建ててやる」

 

 後ろから響いた声の正体はターレスだ。

 彼は好戦的に笑いながら腕を組んでおり、ボージャックはまたも己の部下の敗北を知った。

 だがそこに追い討ちをかけるように右と左の両サイドを塞ぐようにトランクスとピッコロが駆けつけ、ボージャックは隠す事もなく舌打ちをした。

 

「全員死んだか……使えん屑共め」

 

 これで4対1。負けるとは微塵も考えていないが、流石に少し面倒だとは思っていた。

 とりあえずまずは一人。速攻をかけて潰した方がいいだろう、とボージャックは考える。

 そして潰すならばこの地球の戦力の中核でもあろうあの女だ。

 ボージャックは獰猛に顔を歪め、リゼットへと突進した。

 

「ウオオオオオ!!」

 

 掛け声をあげて豪腕を繰り出す。

 ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ!

 何の躊躇もなく放たれた腕はリゼットの腰ほどの太さもあり、当たれば無事で済むはずもない。

 だが避ける、避ける、避ける!

 まるで次の攻撃が読めているかのように最小限の動きで拳を避け、それどころか合間合間に彼女の周囲を飛ぶ光球がボージャックへと衝突を繰り返した。

 無論大したダメージではないが、それでも僅かなりとも拳の軌道が逸れる。

 気が散るし、特に目の前を通過した時が鬱陶しい。

 どうしても視界が塞がれ……そして次に視界が開けた時、そこに女はいなかった。

 

(消えた? 何処に……)

 

 思考は一瞬であった。迷いはほんの僅かな間であった。

 敵の姿を見失うというよもやの事態にボージャックが困惑したのは時間にして僅かコンマ1秒にも満たぬ間の事であり、凡そ隙と呼べるような間ではない。

 だがその間にリゼットは動いていた。

 彼女は消えたわけではない。そもそも互いの戦闘力差を考えればボージャックが見失うような速度で動けるはずもなく、リゼットがやったのは単純にボージャックの視界の外に出たというだけの事でしかない。

 ボージャックの視界を一瞬光球で塞ぎ、その間に懐へ飛び込みつつ上体を屈める。

 これにより互いの身長差も相まってボージャックの目からはリゼットが消えたように見えた。

 更に高度を落としてボージャックの股の間を潜るようにして背後を取り、振り向きざまにバーストリミットを100倍まで跳ね上げる。

 それは本当に一瞬の事で、それでもリゼットの気と体力を大きく食ってしまう。

 だがそれに見合うダメージさえ与えることが出来れば消耗に見合うだけの成果はあり、この初撃でどれだけボージャックに痛手を与えて戦力を削げるかが勝敗を左右する。

 更にリゼットは今までの反省を活かし、口の中に先に入れていた仙豆を飲み込んでいるので実質ノーリスクだ。

 今回は100倍バーストリミットが必要になると踏み、ここに来る間に半分に割った仙豆を口に含んでいたのだ。

 ここで何故半分なのかというと、小食のリゼットでは一粒食べてしまっただけでお腹一杯になって動きが微妙に鈍るからである。

 そこまでして上昇させた戦力で以て、気の刃を纏った蹴りを叩き込む。

 

 何処に? 笑止、愚問。

 そこ(・・)に解り易すぎる弱所がぶら下がっているのだ。そしてここはルール無用の実戦の場。

 ならば躊躇う理由などあるはずもなく、弱所があるならば進んで狙うし卑怯などという言葉があれば率先してその卑怯を行う。

 ならば狙うは一箇所。解り易いまでに男性型の宇宙人で、有り難い事に同族に女性がいる事まで判明している。

 ならばナメック星人のような無性という事はまず有り得ず、故にそこは高確率での急所。薄皮一枚でぶら下がっている内臓だ。

 

 

 ――金的。何か(・・)が潰れる音が二つ響いた。

 

 

「~~~~~~~~ッッッッ!!!!?」

 

 全霊で男の急所を蹴り上げられたボージャックは声にならない叫びをあげて絶叫した。

 いかに戦闘力が高かろうと、ここ(・・)は鍛えようがない。

 無論常人に比べればその強度は高く、鋼と言ってもいいだろう。

 だがそれでも、筋肉の鎧や骨に守られた他の部位と比べれば致命的なまでに脆弱で、格下の攻撃であろうと通ってしまう。

 余程圧倒的な戦闘力差があれば気だけで防げてしまうだろうが、100倍バーストリミットを発動したリゼットとボージャックにそこまでの差はなかった。

 可憐な見た目に反したえげつない攻撃にターレスが冷や汗を流して『え? あの神さんあんな攻撃すんの?』といった表情になる。

 ピッコロはイマイチ理解出来ていないのかいつも通りの冷静さを保ったままであり、トランクスはターレス同様に汗を流していた。

 もっともこちらはターレスとは違い、“予想通り”という意味での冷や汗であるが。

 そんな彼等の前で、リゼットが気の剣を生成して振り上げる。

 股間の布地が鮮血で染まったボージャックへ行う無慈悲の追い討ちだ。同じ男の立場からすれば思わず『やめたげてよお!』と言いたくなる。おら! きんのたま だせ!!

 しかしボージャックも股間を押さえて苦悶の脂汗を流しながらではあるが咄嗟に反応し、剣を避ける。

 だが尚も間合いを詰めてきたリゼットが今度はノータイムで貫手! 何ら躊躇なく眼球へ指を入れようとする。

 これもかろうじて避け、ボージャックが怒りの右ストレートを放った。

 周囲を旋回していた光球二つに遮られ、更にバリアに阻まれる。

 だがそれでも強引に拳を通し、バリアを貫いてリゼットの胸に拳が直撃した。

 しかし……手応えがない!

 拳を受けたリゼットの身体が殴られた勢いのままに吹き飛び、空中でフワリと回転すると何事もなかったかのように静止した。

 リゼットは「ふむ」などと呟きながら拳を受けた己の胸を摩り、納得したように頷く。

 

「皆さん、気を付けて下さい。思ったよりも腕力があります」

「いや、その前にアンタ何で無事なんだ?」

「攻撃を受ける直前に脱力して威力をほぼ受け流しました。羽毛に拳は当たりませんよ」

「……意味わかんねえ」

 

 ターレスの言葉は尤もだろう。

 リゼットの取った防御は通常の防御の概念の真逆を行くものだ。

 通常、攻撃を受ける瞬間は力む。筋肉を固くして衝撃に備える。

 だがリゼットは逆だ。どうせ力んでも変わらないと開き直って極限まで脱力しているのだ。

 気の出力はそのままに、筋肉だけを弛緩させて全身の力を抜き、己自身が羽毛になったと強く思い込みイメージする。

 そうする事により敵の剛拳の威力、そのほとんどを受け流して無傷のままにやり過ごしていた。

 

 その姿を見ながらトランクスは思う。

 ああ、過去の世界でも相変わらずだなあ、と。




リゼット「断言します。睾丸とは内臓なのです。
(中略)
仮に――皮膚一枚に包まれた心臓が股間にぶら下がっていたら戦闘時どれほどの弱みとなることか」
ターレス「…………お、おう」

多分、DB系オリ主の中でこいつくらいだろうなあ……真面目な戦闘の最中に、真面目に相手のゴールデンボール破壊しにいくの……。
ちなみにリゼットは別にふざけていませんし、受けも狙っていません。
大真面目に、そこが弱点だから破壊しにいってます。

【戦闘力変化】
ボージャック:150億→80億
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。