ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第五十話 銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴①

 ――南の銀河を超サイヤ人が襲った。

 

 それは、遠い宇宙での事。

 リゼット達がいる宇宙――通称『北の銀河』から最も離れた南の銀河。

 銀河というからには当然いくつもの星があり、太陽系と同規模の星系が密集していたはずの星の海。

 それがある時からたった一人の破壊者の手により破壊され始めた。

 そこに住む者達も何もしなかったわけではない。

 英雄と呼ばれる者もいただろう。それぞれの惑星には神だっていただろう。

 だがその悉くを男は殺し尽くし、壊し尽くした。

 あらゆる兵器を物ともせず駆逐し、その銀河に存在する全生命を敵に回して尚一方的だった。

 最後にはあの世から英雄達を連れて自ら討伐に赴いた宇宙の王……即ち南の界王すらもを返り討ちとし消し去った。

 その男こそが伝説。

 サイヤ人の間に伝えられる全宇宙最強の戦士の名に偽りはなく、何よりも血と殺戮こそを好む。

 彼こそがサイヤ人そのものであった。

 

 未だ男の殺戮の牙は北の銀河へは向いていない。

 だが、邂逅の時は確実に迫りつつあった。

 

 

 クウラをセルが消し去った後、崩壊するビッグ・ゲテスターの中でリゼットは宙に浮いていた。

 気を探るとトランクスとピッコロ、他のナメック星人達は無事に脱出してくれており、今ここにいるのはリゼットとセルだけだ。

 二人共バリアを展開しており、少なくともビッグ・ゲテスターの崩壊くらいでは傷一つ負う事はない。

 リゼットの気も仙豆で完全に回復しており、涼しい顔で崩壊していく機械惑星の中を探索している。

 

「何をしているのだ? ここはもう崩れるぞ」

「もう少し待って下さい。探さねばならないものがありまして……」

 

 クウラは倒した。だがこのまま帰っては不安の種を残す事になる。

 ここは北の界王の管轄外であり、このままではクウラの魂はあの世に行かない。ずっとこの宇宙で彷徨い続ける。

 流石にクウラといえど魂だけで何か出来るとは思えないが、しかしクウラの怨霊などという何をしでかすか分からない物を放置するほどリゼットは楽観的ではなかった。

 警戒しすぎと言われればそれまでだし、怯えすぎと言われれば頷くしかない。

 しかし魂だけでも何か引き起こしそうな怖さがクウラにはある。

 もしかしたら誰かの身体を乗っ取れるようになるかもしれないし、恨みの力だけで肉体を構築してしまうかもしれない。

 何事にも万が一という言葉があるのだ。

 万が一だろうとそれはゼロではなく、ゼロでないならば起こり得るという事だ。

 だからリゼットは何とか彼の魂を見付けたかった。

 彼女にそんな能力などないが、魂はあの世で何度も見た事がある。

 ならば、何とか目を凝らせばそれっぽいものを視る事は出来ないだろうかと、駄目元で探しているのだ。

 

 そしてそれは、彼女自身すらも予想出来ないほど簡単に上手くいった。

 

 崩れていくこの機械惑星の中で尚も怨嗟の声をあげているこの世ならざる存在……クウラの魂を発見出来たのだ。

 それどころか彼女の眼はハッキリとそれを視認し、あろうことか思わず伸ばしたその手は魂を掴む事すら出来た。

 これはリゼットにとっても全くの予想外であった。

 

「……魂って掴めるんですね」

「なるほど、そこに“いる”のだな?」

「はい。視えないんですか?」

「ああ、普通は視えんし触れん。実際私は視る事も触れる事も出来ん」

 

 リゼットが掴んでいる魂だが、セルは触れる事が出来ないらしい。

 触れようとした指はすり抜け、掠りもしない。

 それどころか彼の眼にはリゼットが空気を掴んでいるようにしか視えていないはずだ。

 

「これは一体……」

「私が思うに神としての力だろう。確かこの時代は貴女の神としての力が最も高まった時期のはず。

貴女は神として高みへと至り、今まで出来なかった事が可能となった、と推測出来る」

「私、神の力が上がるような事何もしてませんよ? 仙術の修行はしてますけど。

まあ最近、私の気を与えた植物が妙に元気になったりはしますけど」

「人の念というものは力を持つ。怨念がエネルギーとなりゴースト戦士やハッチヒャックを生み出すのと同じようにな。

恐らく怨念とは逆の念……崇拝や信仰、といった念が貴女に注がれる事で貴女は神として成長を遂げたのだ」

 

 信仰、と聞きリゼットは首をかしげた。

 確かに覚えはある。天女と呼ばれていた頃は色々な人間から信仰されてむずがゆい思いをしたものだし、その時に設立された宗教は今も一応残っていた。

 だがこんなに急激に伸びる理由が分からない。むしろ人前に姿を現さなくなって随分経つので薄れてもいいくらいだ。

 

「ふっ。どうやら本当に気付いていないようだな。

貴女はこの数年で宇宙を飛び回り、フリーザ軍の残党を蹴散らしていただろう。

それによって救われた者達が貴女を崇めるようになり、今や宇宙中から貴方への信仰の念が注がれているのだ。エネルギー量だけを言えばハッチヒャックすらも上回っている」

「え? ああ……そういえばそんな事もしたような……」

「サイヤ人への怨念を凝縮する事でブロリーにも匹敵する怨念戦士ハッチヒャックが誕生した。

ならばあるいは、この信仰を使う事で貴女は更なる領域へと至る事が出来るかもしれん。否……」

 

 セルは何かを確信しているかのようにリゼットを見詰め、肩に手を置く。

 

「貴女ならば成れる。界王神をも超えた神の頂へ。

誰にも止める事の出来ない、失った物すらも取り戻せる唯一無二の存在へと、貴女ならば至れるはずだ!」

「……それは、流石に持ち上げすぎですよ。私はそんな器ではありません」

 

 リゼットはセルの手を払い、この話題を切り上げた。

 とりあえず今はビッグ・ゲテスターから脱出するのが先決である。

 それにナメック星人達とトランクス達の無事も確認したい。

 何より、今のセルは少し怖いのだ。

 紳士的には違いない。友好的ではある。

 だが自分を見るその瞳に、剣呑な何かを感じずにはいられない。

 だから今は、彼の眼を見たくはなかった。

 

 

 

「また助けられましたな、地球の神よ。

本当に貴女様には何とお礼を言ってよいか」

 

 ビッグ・ゲテスターから脱出したリゼット達は無事に合流を果し、救い出したナメック星人達に囲まれていた。

 彼等は口々に感謝や賛辞の言葉を並べ、リゼットやトランクスの手を固く握る。

 ピッコロも同じナメック星人という事で手厚く歓迎され、過去には星を壊す側だったナッパは複雑そうな顔で礼を受け取っている。

 セルは何時の間にか姿を消しており、一足早く地球へ戻ったらしい。

 同じ緑色同士少しは仲良くすればいいのに。

 

「気にしないで下さい。困った時はお互い様です」

 

 実際こちらが危なくなった時はナメック星に助けて貰う気満々なので本当にお互い様である。

 ともかくこれで絶望の未来を回避するという目的にかなり近付いたと言っていいだろう。

 まだ敵はいるが、とりあえずこれでナメック星壊滅という最悪の事態を逃れる事が出来た。

 それはつまり、もし本当に危なくなってもナメック星人に助けを求めるという最後の希望が残されるわけだ。

 未来ではそれすら出来なくなったが為に取り返しが付かなくなったとトランクスも語っている。

 

「それにこれ、元々は私があの時にちゃんと仕留め切れなかったせいですし」

 

 そう言い、リゼットは自分の右手を視る。

 そこには先程捕獲したクウラの魂がおり、今も必死に逃げようと暴れていた。

 しかしやはりというか、他の者には視えていないらしい。

 不思議な力を持つナメック星人ならあるいは、とも思ったのだが彼等も何の反応も示さない。

 

「いえ、それは貴女の責ではありますまい。

此度の事、そして前回の事。我等ナメック一同、心より御礼申し上げますぞ」

 

 そう言い、ナメック星人達は一斉に頭を下げた。

 それに対しリゼットは笑顔で応え、トランクスが照れくさそうに頬をかいている。

 ピッコロは腕組みをしたまま満更でもなさそうに笑い、ナッパは慣れていないのか何を言えばいいか分からず無言で立っていた。

 

「では私達は地球へと戻ります。またいつかお会いしましょう」

「ええ。お達者で」

 

 地球へのゲートを開き、リゼット達は帰路へと就く。

 神の神殿に降りれば悟飯達が駆け寄ってきて無事を喜んでくれた。

 そんな中、ナッパが小声でボソリと呟く。

 

「……いいもんだな。星を救って誰かに感謝されるってのもよ」

 

 どうやら彼も大分変わり始めているらしい。

 地球に来た当初はただの下品な悪党としか思っていなかったし、助けた時もどうせそのうち裏切ると踏んでいた。

 それがまさかこうまで丸くなるとは、誰がどう変わるか本当に分からないものだ。

 

 だがその全てが失われてしまったのが未来なのだ。

 その事を思い出し、そしてリゼットは緩みそうになる気持ちを改めて引き締めた。

 これで倒したのは二勢力。絶望の未来を作り出すパーツは二つ取り除いた。

 だがまだブロリーとハッチヒャックがいるし、ボージャックも何故か未来で出現していたので油断は出来ない。

 戦いはここからが本番だ。

 

 

 クウラをあの世に送ってから数日。

 悟空の回復を待ちながらリゼット達は修行に勤しみ、次なる敵の出現に備えていた。

 とりあえず人造人間達はもう敵ではないので一時神殿に避難していた皆も今はそれぞれの住居へと戻り各自で修行を積んでいる。(住居のないクリリンとピッコロは人造人間の監視という名目でログハウスに向かわせたが、最近は18号とクリリンがいい雰囲気らしい)

 リゼットもまた仮想敵にメタルクウラを追加して、より効率のいい対多人数戦術を日々研鑽している。

 知識が正しければ順番的に次の敵はブロリーだ。

 間違いなく最難関である事は疑うまでもない。未来もほとんどの戦士がこいつに殺されてしまったと聞く。

 悟空はまだ目覚めていないが、そろそろ精神と時の部屋を提案するべき時だろう。

 そう考えていた時だ。唐突に界王からの念話がリゼットに届いたのは。

 

『地球の神よ。聞こえるか?』

「界王様?」

『大変な事になってしまった。今、地球に大きな危機が迫りつつある』

「またですか」

 

 界王の言葉にリゼットは思わず素で返してしまった。

 だがそれも仕方のない事だろう。

 一体これで何度目なのだ。地球に危機が訪れるのは。

 

『ま、まあ聞け。かつて東西南北の銀河を渡り歩き、一つずつ破壊しようとしたボージャックという、そりゃあ悪くて強い暴れん坊がおってな。

そいつをわし等東西南北の界王が銀河の辺境の惑星に封印しておったのだが、先日、南の界王の奴が死んでしまいおっての……奴等の封印が解けてしまった』

「……死因は?」

『南の銀河を伝説の超サイヤ人が襲ったのじゃ。まあこれは南の銀河の問題じゃから話を戻すぞ』

 

 界王の言葉を聞いてリゼットは一瞬眩暈をおこした。

 まずい、もうブロリーが動き始めている。

 しかも何を間違えたのか、本来死なないはずの南の界王がブロリーに殺されてしまい、ボージャックまで出て来てしまった。

 もう少し時期を考えて欲しいと切に思う。

 ……いや、むしろこれが自然な流れなのか?

 映画では冒頭でサラッと南の銀河が消し飛ばされていたが、あの当時は南の界王などの設定も登場していなかったし、何より映画はパラレル扱いだった。

 だが普通に考えてみれば、銀河ごと滅ぼされては界王だって動かざるを得ないだろうし、あの時に南の界王が死んでいても不思議はないのだ。

 

『復活したボージャック達は、どうやら北銀河で最も環境の整った惑星……即ち地球を目指しているらしい』

「……また地球ですか」

『だが幸い、地球には奴等に対抗し得る者がお前を含めて揃っておる。

頼むぞ、奴等を倒して北の銀河を救ってくれ』

 

 地球の危機と聞いた時から予想は出来ていたが、やはり地球に来るらしい。

 何でどいつもこいつも真っ直ぐ地球を目指すのだろうか。

 しかもブロリーが行動を開始したという事はあまり時間を置かずにパラガスがやって来るはずだ。

 出来ればその前にはボージャック一味は倒しておきたい、とリゼットは考えた。

 ブロリーとボージャックの挟み撃ちとか本気でやめて欲しい。

 

 ともかく、まずは皆と連絡を取って迎撃態勢を整えよう。

 そう決断し、リゼットは念話を飛ばした。




【銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴】
「ドラゴンボール」シリーズの劇場公開作第12弾。
ドラゴンボールZの劇場版としては珍しく本編と矛盾しない貴重な作品。
本編と矛盾しないというだけで、この映画は褒められていい。矛盾しないって素晴らしい。
それどころか本編の補完になっており、「俺はもう戦わん」と言ったはずのベジータが戦いに復帰するエピソードとして機能している。
むしろこの映画をパラレルにしてしまうと、「何でベジータは何事もなかったかのように復帰してるの?」という話になる。
セル編からブウ編までの空白の7年間の間に起こった出来事。

【ボージャック】
その昔、銀河を荒らし回っていたヘラー一族のリーダー。この映画のラスボス。
よくセルとどっちが強いか議論される。
基本的に前作ボスよりも強いキャラが登場する劇場版において前作ボスより弱かったのは初めての事。
一見身勝手だが実はかなり空気の読める男であり、悟飯がキレた際には咄嗟にザンギャを盾にして始末した。
これによって、敵とはいえ美女であるザンギャをヒーローの悟飯が殺すというショッキングな映像を見事防いでみせた。
更に後の映画では自分より明らかに弱いフリーザの部下になっており、そのフリーザが悟飯にワンパンでやられたら他の雑魚と一緒に逃げ出した。
尚、映画でのザンギャへの扱いは流石に酷いと思っていたのか、ゲームで「ザンギャ、えいがではスマン!!」と謝っていた。

【ザンギャ】
ボージャック一派の紅一点。
そのルックスから人気が高く、ゲームの『ドラゴンボールZ 超武闘伝2』にも他のキャラを差し置いて出演した。
映画ではボージャックに盾にされた挙句気弾で殺されるというあんまりな最期を迎えたが、後に謝罪を受けている。
昔はよく18号や西の界王神と並んでドラゴンボール最強の女性キャラ候補として名前が挙がっていた。 

【ゴクア】
ドラゴンボールでは珍しく剣を使って戦うキャラクター。
悪堕ちしたクロノとかよく言われる。
唯一悟飯ではなくトランクスにやられてしまったので、弱く見られがちだがボージャック同様に強化変身がある事を考えると実はナンバー2の実力者だった可能性もある。
ドッカンバトルでは『空を裂く剛剣』という格好いい二つ名を貰えた。

【ビドー】
モヒカンの巨漢。あまりイメージに残らない。
ザンギャはクリリンを倒し、ゴクアはトランクスと戦い、ブージンは悟飯を追いつめた。
そんな中でこいつだけは主要キャラでも何でもないドスコイとかいう力士を殺していたのが存在感の薄い理由かもしれない。

【ブージン】
やたら後ろから糸のような技で動きを封じてくるターバンのチビ。
こいつかザンギャが動きを封じたところをボージャックがタコ殴りにするのが必勝パターンらしい。

【ドスコイ】
主要キャラでもないのに予選を通過してしまったばかりに、ビドーに殺されてしまった哀れな人。
悟飯達の前では薄れるが、10人以上を同時に投げるという人間離れした怪力の持ち主。
油断しきっていたとはいえ、ヤムチャを場外負けにするという偉業を達成した。
最初から最後まで「どすこい」としか言わない。

【ギョーサン・マネー】
世界一の金持ちで、天下一大武道大会を開催した。
息子に「この世は金があれば何でも出来るんだよ」と、将来捻じ曲がりそうな教育を施していた。
世界一の金持ちというからにはカプセルコーポレーションよりも金持ちだと思われるが、一体何をして稼いでいるのかは不明。
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