ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第四十六話 セル・リビルド

「わ、私が……あ、貴方の、ははは義母、ですって?」

「そうだ。とはいえ当然だが私と貴女の間に血の繋がりがあるわけではない。

私がただ、勝手に貴女をそう呼んでいるだけだ」

 

 突然神殿に上がりこんできたセルを前にリゼットは身構える。

 セルと言えばドラゴンボールにおいてフリーザ、ブウと並ぶ三大悪役の一人だ。

 実際の所、あの二人と比べればそこまで救いようのない完全な悪党というわけではなく、むしろ楽しいという理由だけで人類を虐殺して回ったデブのブウの方が余程外道だと言えるだろう。

 とはいえ、それはあくまで魔人ブウと比較した場合だ。

 普通に考えればセルが悪党である事に違いはなく、疑う余地などない。

 完全体になるという目的の為に数多くの人間を殺して回った彼を善人と言う事は出来ないだろう。

 だがその彼が今、害するつもりはないと友好的な態度を示している。

 これは信じていいのか? 疑うべきか? それとも信じた振りをして戦いをとりあえず避けるべきか?

 だが……まるで勝てる気がしない。

 まるで力を込めていないというのに、感じられる気の桁が違う。

 まだ全く本気ではないだろうが、それでも数値にして確実に100コルドは超えているだろう。

 

「貴女ならば私の正体を知っているだろうが、貴女の知識との差異、または他の者達のスムーズな理解の為にも説明する時間を頂きたい。よろしいかな?」

「……いいでしょう」

「感謝する」

 

 セルは柔らかく笑い、リゼットを見る。

 その視線に敵意は感じない。むしろ慈しみに近い感情すら流れ込んでくる。

 だが、だからこそリゼットには分からなかった。混乱を助長した。

 一体何をどうすれば、あの三大ボスの一人であるセルがこんなに友好的になるというのだ。

 演技? いや、もしも彼が敵ならばこんな演技をして油断を誘う必要などない。

 実力差は圧倒的に開いているのだ。

 

「私の名はセル。これより20年後……そこで寝ているトランクスのいた時代から僅かに位相のズレた平行世界よりタイムマシンでやってきた人造人間だ」

「人造人間だと!?」

 

 セルが開幕に放った爆弾発言に思わずクリリンが構える。

 しかしクリリンが構えた所で彼には脅威でも何でもないのだろう。

 まるで気にした様子もなく説明を続ける。

 

「私の『発案者』はドクター・ゲロ。そして設計図を引き継ぎ私を完成させてくれた『製作者』はブルマ。

そういう意味では彼女もまた私の親と呼べる存在だ」

「なっ……!?」

「かつてドクター・ゲロはあらゆる戦士の細胞を備えた究極の人造人間を考案した。

しかし開発にかかる膨大な時間から研究を断念し、私を地下に捨てた。

……先に明言しておくが私はドクター・ゲロを親とも製作者とも思っていない。確かに私というパーフェクトな存在を考え出した頭脳は評価に値するが、それだけの男だ」

 

 製作者がブルマ、と聞きリゼットの中には二つの感情が芽生えていた。

 一つは信じたい気持ち。

 ゲロではなくブルマが製作したならば、本当にあの恐ろしい人造人間が味方なのかもしれない。

 もう一つは疑惑。

 ブルマの専攻は機械工学だ。遺伝子研究ではない。

 つまりブルマにセルを完成させるなど、出来るはずがない。

 だが、あの大天才ならばあるいは……。その考えがリゼットの頭の中を駆け巡る。

 

「事の始まりは今より20年前……丁度この時代での――しかし決定的に異なる、極めて近く、限りなく遠い世界での事……」

 

 

 暗い……暗い場所だった。

 ただ無為に時間だけが流れ、設計者からも見放された研究室。

 薄暗い一室に設置された培養液の中。私はそこで生を受けた。

 孫悟空を殺すという目的だけを与えられ、しかし肝心の孫悟空は既にこの世になく、私は産まれる前から産まれる理由を失っていた。

 それでもコンピュータは私に細胞を送り続け、私はいつか来るかもしれない完成の日だけを唯一の希望にまどろみの中を生き続けた。

 

 そこに、一人の女が現われた。

 ドクター・ゲロに捨てられて以来誰も訪れなかった研究室に初めて踏み入ったその来客は美しい少女だった。

 そう……貴女だ、義母(リゼット)よ。

 

 彼女の目的は明白だった。

 敵で溢れ返っている地球にこれ以上の敵を増やさぬ為の事前対策。

 いずれ現われるだろう新たな人造人間の抹殺。つまりは私を殺しに来たわけだ。

 どうやって彼女が私の存在を知ったのかは今でも分からん。私をしても彼女には未だに謎が多い。

 実際彼女がここで私を殺そうとすれば、私はそこで終わっていただろうし実際にそうした世界もあるはずだ。

 だが私がここにいるという事は、つまり彼女は私を殺せなかったという事になる。

 そう、彼女は私を殺さなかった。否、殺せなかった。

 恐らくは私から感じられる孫悟空やクリリンといった仲間の気が彼女から決意を削いでしまったのだろう。

 仲間を失って間もない彼女は、その仲間の面影を残す私を消す事が出来なかったのだ。

 

 その後、悩んだ彼女はブルマに相談をした。

 殺す事は出来ない。だがそのまま放置する事もまた出来ない。

 二人は考えに考えた末、私の製作を引き継ぐ事にした。

 ブルマは私自身をどうこうする事は出来なかったが、私の製作を続けていたコンピュータを改造する事は出来た。

 そうして彼女はコンピュータが行う私への教育から孫悟空抹殺の使命を外し、更に私からフリーザ親子やベジータ、ターレスなどの悪に属する者の遺伝子を取り除いた。

 ふふふ、今でこそ多少マシになっているが当初のベジータは酷かったらしいからな。賢明な判断だろう。

 だがその結果私は遺伝子不足に陥り、完成どころか維持すらもままならなくなった。

 それを埋めてくれたのが……貴女だ、義母よ。

 貴女は己の血を私に与え、それにより私は貴女の遺伝子をベースとした、よりパーフェクトな存在として再開発された。

 完成度を高める為に何処からか引っ張り出してきたドクター・ウィローの研究もまた私にとっては有り難いものであった。

 更に嬉しい事に貴女の『不変』の細胞は私に変わる必要のない姿……即ち完全体の姿を与え、17号と18号を吸収せねば完全体になれぬという欠陥を解消してくれた。

 私を考案したのはドクター・ゲロであり、プロジェクトを引き継いで私を完成させたのはブルマだ。

 だが私にとっては貴女こそが義母だった。

 貴女から与えられる貴方の細胞を取りこんで私という存在は造られたのだ。ならばこそ、私という存在にとって貴女こそが親だった。

 

 完成までの十数年は薄暗い研究室から離され、聖堂で過ごした。

 そう、貴女がかつて神になる前に過ごしていたあの聖堂だ。

 神殿が破壊されてしまった未来の世界において、あの聖堂こそが地球の砦となっていたのだ。

 そこで貴女は私に遺伝子を提供し、毎日のように私に話しかけ、私を育んだ。

 貴女は私に『地球及び地球人類への無意味な攻撃の禁止』という教育こそコンピュータを通して施したが、一度として私を戦力として使おうとはしなかった。

 孫悟空の抹殺の代わりに敵対勢力の抹殺を私の目的として組み込めばいいものをそうせず、私には自由に生きるよう望んだ。

 だから私は自分で自分の目的を決めたのだ。

 パーフェクトな存在として産まれ出でたならば、必ずやこの強く、しかし弱く儚い義母を護ると。

 誰かに目的を与えられたのではない。私は私自身の意思で自らの生きる理由を決めた。

 

 だがその目的は果せなかった。

 

 私がようやく産まれた時には、既に何もかもが終わった後だった。

 必ずや倒すと決めていた敵は誰一人として残っておらず、護ると決めた義母は醒めぬ眠りに就いていた。

 私は嘆いた。あまりに遅く生まれた事を心底悔やんだ。

 護るべき存在も倒すべき敵もいないのでは、せっかくの生まれ持った力も意味がない。

 愚かな人間が生み出したバイオブロリーを消し去っても、私の心の霧が晴れる事はなかった。

 そんな時だ。トランクスが乗り込もうとしているタイムマシンを見付けたのは。

 私はそれこそ、己の目的を遂げる為の唯一無二の手段だと考え、トランクスからタイムマシンを強奪した。

 ……ああ、安心して欲しい。殺してはいない。

 奴の母であるブルマは私にとっても親なのだ。流石に彼女が狂いかねない事はせん。

 ただ少し抵抗されたから、多少荒っぽい手で気絶はさせてしまったがな。

 

 

 

「――そして私はこの時代に来た。

あの時代では果せなかった私の目的を果す為に」

 

 セルが語り終え、リゼットは彼をいぶかしげに見る。

 確かに彼からはリゼット自身の気を最も多く感じるし、フリーザ親子やベジータの気も感じない。これは紛れもない事実だ。

 だがどうにも腑に落ちない。

 仮に今言った事が本当だとして、最後だけ少し話が強引ではなかったか?

 だって、ここにいる自分は彼が慕うリゼットではない。同一人物ではあるが、やはり別人なのだ。

 つまりいくらここにいる自分を護ろうと、それは彼が護りたいと願った存在を護る事にはならない。

 要するにそれは護った気になる自己満足であり、そんな事で彼が満足などするのか?

 リゼットはそう思ったのだ。

 

「つまり、敵対の意志はないと?」

「そうだ。私は貴方達の味方だ」

「それを信じろと?」

「信じずともよい。私が勝手に、私自身の為に貴女と地球を護り、敵を討ち倒そう」

 

 セルはそう言い、不敵に宣言する。

 

「さしあたってはそうだな……まずは人造人間の17号と18号を始末してご覧に入れよう。

未来では彼等もまた、散々に破壊行為を繰り返した、私にとっても憎むべき敵だ」

「なっ!? ま、待ちなさいセル! それは……!」

「それでは、また。次に会う時は彼等の首を献上する事を約束しよう。

…………元気な姿がまた見れてよかった。これは、本心からの言葉だ」

 

 ピッ、と人差し指と中指を斜めに立ててクールにポーズを決め、セルはリゼットの制止も聞かずに神殿から飛び降りた。

 彼が勝手に敵を減らしてくれるのならば、それは有り難い話だ。

 メタルクウラやブロリーを倒してくれるならば、そこに異論など挟むはずもない。

 だが17号と18号は不味い! この世界の彼等はそこまで悪党ではない。

 セルが知る未来世界のような残虐な人造人間ではないのだ!

 

(まずい、すぐにセルを止めないと!

ああもう、あの思い込みの強さは一体誰の細胞の影響ですか!?

とにかく17号と18号の現在地は……!)

 

 あのセルはやはり原作のセルとは違うのだろう。

 冷静な性格を気取ってはいるが、何かちょっとネジが緩んでいる気がする。

 例えるならば知的ぶってドヤ顔で誰も知らない論文を提出しているのだが、よく見ると自分の名前を書き間違えている……そんな感じだ。

 リゼットは慌てて17号と18号を探し、すぐに転移する事を考えた。

 今彼等はどこかで盗んだトラックで山道を走っている。

 とりあえずあのトラック付近を張ってセルの登場に備えれば……。

 そう考えていたリゼットだが、それが甘い考えである事を知ったのは次の瞬間に17号達を乗せたトラックが亜空間に飲み込まれてからだ。

 

 そう、忘れてはならない。あのセルのベースはリゼットなのだ。

 ならばやる。亜空間移動くらい。

 そして、それを用いての敵の転送などやらない理由がない。

 恐らくは戦いで地球に被害を出さないようにどこかへと移動させたのだろうが……不味い。

 これではどこに行ったかが分からない。

 

(ど、どうすれば……このままではクリリン君が独身に……)

 

 少しズレた事を考えながらリゼットは焦る。

 後ろにいるターレスが「人造人間を倒してくれるってんならいいじゃねえか」と言っているのも聞こえずに焦る。

 とにかくまずは場所を見付ける事。

 そうしないと、本当に17号と18号が殺されてしまう。

 いくら何でも完全体セルVS人造人間ズじゃ勝負が見えているのだ。

 

(まさか味方から敵をどう守るかを考える日が来るなんて。

いや、まだセルが味方と決まったわけじゃないですけど)

 

 セルが友好的なのは、とりあえず嬉しい誤算だと言える。

 正直何か裏がありそうな気がしてならないが、とりあえずいきなり襲いかかられたら全滅なのでこれは普通に好都合だ。

 だがそのセルに17号と18号が殺されてしまうのはいただけない。

 だからリゼットはそれを止めるべく、必死にセルの気を探るのだった。




・セルが中立味方として参戦しました。
今後セルは敵対勢力に喧嘩を売って回ります。
尚、原作知識はないので味方に出来るキャラ相手でも攻撃します。

リゼット「ただの厄介な第三勢力じゃないですかヤダー!」
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