ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第四十話 美しき野望・完

 雪がしんしんと、降り続けていた。

 見渡す限りどこまでも続く雪景色は、宇宙ではなかなか見ないもので少し新鮮だ。

 そんな銀世界を眺めながら、一人の男が岩に腰を掛けて黄昏ていた。

 

「……どうしたもんかなあ」

 

 男――ターレスは、何というか燃え尽きていた。

 惑星ベジータが消滅したあの日からずっと、フリーザを殺す事だけを考えて生きてきた。

 奴を超えるためだけにクラッシャー軍団を結成し、様々な惑星を襲っては神精樹の養分へ変えながら流離い……そしてつい先日、ついに悲願は達成された。

 己の手によるものではないにせよ、バーダックの息子が伝説へと至ってフリーザを倒したのだ。

 それはいい事だ。本当に、夢のような事で……だが、夢であってほしくはない。

 しかし問題は、フリーザが死んだことによってターレスの目的が失われた事にある。

 フリーザを殺すためだけに生きてきたのだ。それしか考えていなかった。

 奴の死後は自分が取って代わって宇宙を支配してやろうなどとも思っていたが……何故だろう。驚くほどにやる気が出ない。

 決して出まかせを口にしていたわけではない。本心から宇宙を支配してやろうと思っていたし、常々その野望をクラッシャー軍団の連中に語っていた。

 

「ああ、なるほどなあ」

 

 そこまで考え、ターレスはやる気が出ない理由に気が付いた。

 何の事はない。単純すぎる話だ。

 大事な物は失ってから気付くとはいうが、まさにその通りだったという事だろう。

 

「…………あいつら(軍団)が、もういねえからか」

 

 ――同じ目的をもって笑い合える馬鹿共が、もういない。

 意外とセンチメンタルだった自分に思わず笑い、自分の我儘に付き合わせる形で死なせてしまったクラッシャー軍団の事を想う。

 打倒フリーザの為に集めた駒のつもりだった。

 ただの手下……それ以上の存在ではないはずだった。

 だが何だかんだでウマの合う連中だったのだろう。いなくなってみれば、妙な孤独感を感じてしまう。

 目的はもう達し、軍団も失った。

 ならばここにいるのは空っぽの、燃え尽きた一人のサイヤ人だ。

 やりたい事もなく、やるべく事もなく……ターレスは完全に、進むべき道を見失っていた。

 

「いっそ……このまま、ここで凍死()ぬか?」

 

 もう悔いはない。ならば一足先に地獄に行ったあいつ等の所に行ってみるのもいいかもしれない。

 そこにはきっと、バーダックもいる事だろう。

 ギネは……どうだろう。そんなに悪事を働いていないし、もしかしたら天国にいるかもしれない。

 などと少しばかり弱気になっていたターレスだが、不意に誰かが近づいて来るのが分かった。

 

「悟空! やっぱり悟空だわ!

うわあ、久しぶり……大きくなったわね。

分かる? 私よ、スノよ!」

「……カカロットの知り合いか」

 

 ターレスに駆け寄ってきたのは、青い防寒着を着た女であった。

 年頃は二十代前半といったところだろうか。

 赤い髪が印象的な、それなりに顔立ちのいい女だ。

 そんな彼女の後ろから巨漢の男が追いつき、慌てたように声をあげた。

 

「スノ、違う! その男、ソンゴクウじゃない! 似ているけど別人!」

「えっ?」

「ほう、よく分かったな。

そうとも、そのデカブツの言う通りさお嬢さん。

俺の名はターレス。悪いが俺はあいつじゃねえ」

 

 スノ、と呼ばれた女は別人と言われてもすぐには納得出来ないのだろう。

 ターレスを足から頭まで改めて見直し、本当に別人なのだろうかという顔をした。

 

「え……本当に人違いなの? 髪とか顔とかそっくりなのに。

……あ、でも、悟空に比べると少し目つきが悪いかも……それに肌も焼けてるし」

 

 ターレスと悟空は外見的にはほとんど同じだ。

 顔や髪型に始まり、身長や体格まで一致している。

 僅かな差異と呼べるのは肌の色くらいなものだ。

 つまり悟空が日焼けサロンなどに行ってしまえば本当に見分けがつかなくなる。それほどに酷似しているのだ。

 

「ねえ、貴方こんな所で何してるの? それにそんな変な服を着て……」

「変で悪かったな」

 

 ターレスの服装は、言わずもがな戦闘服である。

 つまりは肩アーマーの鎧で、下は生足という割とアレなファッションだ。

 フリーザ軍ならばこれが普通なのだが、地球では大の男がアーマーとパンツだけで徘徊するのは普通ではない。

 だからだろうか。スノは思いついたように手を叩いた。

 

「よし、貴方ちょっとうちに寄って行きなさいよ」

「はあ?」

「だってそんな服じゃ寒いでしょ。この雪の中で足を出しているなんて見てるこっちが寒いし、凍傷になっちゃうわ」

「いらん。俺達サイヤ人はこの程度の温度の変化など……」

「いいから! 野菜か何か知らないけど、さっさと来る!」

「お、おい……」

 

 スノはどうも、人の話をあまり聞かない性格なのだろうか。

 ターレスの言葉を遮って、無理矢理に彼を自宅まで引きずってしまった。

 幼い頃に行き倒れていた悟空を引きずって自宅まで持ち帰った腕力は伊達ではない。

 勿論ターレスならば抵抗しようと思えば出来るが……彼は、なんだかなあ、という顔でされるがままになっていた。

 ブルマの一存でカプセルコーポレーションに居候する事になったベジータといい、チチに押される形で結婚した悟空といい、サイヤ人の男は意外と押しの強い女には弱かった。

 

 

 その後ターレスは、この地球の服を与えられて半ば強制的に着替えさせられた。

 新しい彼の服装は黒い厚手のコートだ。

 そのデザインはかつて悟空がこのジングル村で着たものと同様で、色だけが異なっている。

 慣れない地球の服にターレスが顔をしかめていると、彼の前に温かいスープと、カットされたリンゴが置かれた。

 

「これ、食べてほしい、俺が育てた果物」

「ハッチャンはね、果樹園をやっているのよ」

「果樹園ねえ……こんな所でか?」

 

 酔狂な事をするものだ。そう思いながらターレスはリンゴの切り身を一つ口へ放り込む。

 すると、一瞬動きが止まった。

 ……美味いのだ。それも、今まで食べた果物の中でも一番と呼べるほどに。

 実は地球は宇宙全体で見てもトップクラスに食べ物が美味い惑星である。

 それがどれほどの水準なのかというと、数億年もの時間を生きてあらゆる惑星の美食を食べつくしてきた破壊神が『言葉を失うほど美味い』と絶賛するドンドン鳥の茹で卵が、地球の鶏の茹で卵と大差ないというレベルである。

 

「驚いたでしょ? 雪の中で保存したリンゴはシャキシャキした独特の食感を楽しめるのよ」

「……ああ、驚いた。こいつは大したもんだ」

 

 ターレスが驚いたのは無論、食感などではない。

 とはいえそれを教えてやる必要はないし、黙って残りのリンゴを口に入れた。

 

 

 宇宙の地上げ屋フリーザ。

 その名は銀河の果てまでも届き、宇宙に生きる全ての命にとって畏怖の対象だ。

 フリーザとその軍団の名を恐れぬ存在など、それこそ全宇宙の神である界王神やその上に位置する破壊神。遠い過去に封印されたヘラー一族や伝説の超サイヤ人、ツフル人や古の魔人、魔界の住民くらいしかいない。あれ? 意外と多いぞ。

 ともかく、そんな極一部の吹っ飛んだ者達を例外としてほとんどの命在る者はフリーザとその勢力を恐れていた。

 ある日突然攻め込んで来て、惑星の住民全てを殺し尽くして母なる星を奪っていく宇宙の帝王。

 その勢力はフリーザが致命傷を負って回収され、サイボーグ化手術を受けている最中であっても健在だ。

 今日もまたコルド大王の命令を受けて罪なき惑星へと攻め込み、破壊の限りを尽くしていた。

 

 オカカウメ星。

 地球人に酷似した外見を持つ、ヒューマンタイプの宇宙人オカカウメ星人が暮らす平和な惑星だ。

 だが今、その星は侵略者達により未曾有の危機に陥っていた。

 環境がいい、というだけの理由で襲われてはたまったものではない。だがこれがフリーザ軍だ。

 宇宙の治安を守る組織としては銀河パトロールがいるが、彼等は頼りにならない。

 フリーザどころかサイヤ人にすら太刀打ち出来ない彼等は、フリーザ軍の蛮行を見て見ぬ振りをし、黙認しているのだ。

 即ち、フリーザの軍に目を付けられたらそれで終わり。惑星の終焉を意味する。

 仮に第一波を上手く退けたとしてもフリーザ軍の規模はあまりに大きく、質も量も宇宙最大だ。

 今までにフリーザに目を付けられて滅亡を回避した惑星は皆無であり、このオカカウメ星もまた同様の運命を辿ろうとしていた。

 

「撃て、撃て! 原住民は皆殺しだ!」

 

 当然惑星の住民も反発はする。

 何せ自分達の命運がここで決まるのだ。立ち上がらないわけにはいかない。

 星の軍隊を総動員し、戦える者は皆が武器を手にした。

 だが悲しいかな、力が足りない。

 サイヤ人との戦い以降、数字がインフレしてしまったが本来は宇宙において戦闘力が1000を超えれば一つの惑星における最強の戦士を名乗る事が可能なレベルだ。

 だからこそ下級戦士ですら戦闘力が平気で1000を超えるサイヤ人が宇宙一の強戦士とまで呼ばれていたわけであり、彼等こそが異常だったのだ。

 かつての地球を考えればいい。武術の神と呼ばれた世界最強の男――武天老師ですら戦闘力にして僅か120程度だった事実を。

 閻魔大王ですら2000であり、一つの銀河を管轄する界王ですら3500だった事を。

 ……農民の戦闘力が3000を突破しているナメック星人とかいう化け物もいるが、あれは計算に入れてはいけない。

 話を戻すが、フリーザ軍の戦士……特にフリーザに直接仕える戦士とはそんな、各惑星における最強の戦士ばかりを集めた精鋭中の精鋭だ。

 農民に蹴散らされた事もあるが、あれは相手が悪すぎた。

 繰り返すがナメック星人は基準にしてはいけない。

 

 更に絶望的なのがフリーザ軍内で量産されている人造兵士、サイバイマンシリーズだ。

 最も安価なサイバイマンで戦闘力1200を叩き出し、より高価なテンネンマンならば2400。

 高級品のジンコウマンに至っては4000という狂った数値を記録する。

 今回の侵略に用いられているのはジンコウマンが1体とサイバイマンが10体。平均戦闘力が10にも届かないこの惑星にとってはまさに絶望的な相手だ。

 

「ぎ、銀河パトロールは何をしてるんだよ!? 銀河王様は俺達を見捨てたのか!?」

 

 オカカウメ星人のその叫びは尤もだ。こういう理不尽な侵略を止める為にこそ銀河パトロールはある。

 だがその彼等ですら黙認するしかない巨悪がフリーザ軍なのだ。どうしようもない。

 誰も助けてはくれない。

 奇跡は訪れない。

 彼等はただ、今日という日に突如訪れた理不尽極まりない終焉を受け入れるしかないのだ。

 

 ――だが、奇跡はそこに在った。

 

 純白の翼が舞い、白い極光が天より降り注ぐ。

 ただの一つの例外とて逃しはしない輝きが惑星侵略に訪れていた全ての兵士、全てのサイバイマン、ジンコウマンに突き刺さり、その意識と命を一撃の下に断ち切った。

 並外れた気の感知能力による、惑星全域に及ぶ全ての敵対者への同時ロックオン。

 そこから放たれる、万を超える追尾気弾。それが全ての侵略者を平等に裁く。

 その光景はまさしく天の裁きであり、平和を蹂躙する愚者へ下された審判だ。

 銀河パトロールは彼等を、弱き民を助けない。

 あの世から遣わされた、各惑星に一人は存在しているその惑星の神も民を救えない。

 だが救済者はそこにいた。

 遙か遠くの異星より訪れた白い女神が無関係のはずの惑星を救い、民を守る。

 細い手を振るえば倒壊した建造物が元の姿を取り戻し、荒れ果てた地に緑が蘇る。

 見返りを求めぬ救済。傷付いた人々を安心させるような穏やかな笑顔。

 そして何よりも、限りない神聖さを感じさせる純白の輝き。

 少女は何も言わず、賛辞も感謝も受け取らず、翼をはためかせて宇宙へと飛び去っていく。

 そんな彼女の姿はある日を境に宇宙の至る惑星で目撃される事となり、フリーザ軍を恐れていた数多の惑星、数多の人々の心に希望の象徴として深く刻み込まれる事となってゆく。

 故に彼女に救われた人々は口を揃えてこう述べた。

 ――彼女こそが女神だ、と。

 

 

 先に言おう。

 見返りを求めぬ救済というのは原住民達の大いなる勘違いである。

 リゼットは見返りをこれでもかと求めているし、割と打算で動いていた。

 結論を語ればフリーザ軍を蹴散らしているのはただの修行である。

 惑星単位の超能力の使用や気弾の発射、気の感知などを実戦の場で試す為の丁度いい相手としてフリーザ軍を選んだだけの話であり、要するにこれは『あいつら殴っても誰も困らないし、あいつらで技を試そう』という、ほとんど辻斬りに等しい蛮行こそがこの救済の正体であった。

 建物の修復は物質創造能力の試し撃ちだ。ピッコロが原作において悟飯の剣と服を創ったあれを何度も大規模でやればそのうち能力が成長するんじゃないかと期待して行っているのである。

 尚、建物の元の形状などは原住民の記憶などを読んで行っているが、あまりに複雑で修復困難なものは時々変な形になってしまう。仕方ないね。

 植物の再生は元気玉モドキの練習だ。

 折れた木々などから気を吸い取り、それを惑星へと還元する。

 かつてターレスがやって来た時に行ったあれを再現して能力の錬度を上げているに過ぎない。

 

 しかしそんな知りたくない実情はどうあれ、彼女はまさしく宇宙の人々にとって救世主であり、女神であった。

 銀河パトロールですら救ってくれない危機に颯爽と現れ、脅威を排除して無駄に神々しくキラキラと輝いて去っていくのだ。

 あれよあれよという間に様々な星――特にヒューマンタイプの宇宙人の間で絶大な人気と信仰を獲得するに至り、やっぱりここでも変な宗教が設立された。

 そしてやはり彼女のパンツの色が白かピンクかで戦争が起こった。何なんだお前等。

 あれ? これ神様じゃなくてアイドルじゃね? とか言ってはいけない。

 銀河アイドルとか言ってるとランカスレイヤーさんが来てしまう。ワザマエ!

 フリーザ軍がリゼット一人の修行のせいでガタガタになる頃には宇宙でも知らぬ者のいない有名人になってしまっており、信者の数は文字通り惑星単位――兆を通り越して京にまで至っていた。恐らく界王神すら差し置いて宇宙で最も有名かつ信仰を集めている神様だろう。

 というか界王神は顔が笑い話にならないレベルでフリーザそっくりなのでフリーザの兄弟と誤認している惑星もあるらしい。

 

 さて、ここで一つの話をしよう。

 この世界において、人々の念というものはなかなか侮れない。

 例えば超サイヤ人3すらも退けたジャネンバなどは悪の気の集合体であるし、ピッコロ大魔王だって元々は先代から分離した悪の心だ。

 サイヤ人への怨念を増幅する事で生み出されたハッチヒャックという敵も存在する。

 ならば信仰が力を持っても何ら不思議はなく、宇宙の人々の信仰はリゼットを一つ上のステージへと押し上げる事となった。

 リゼット自身が異常に気付いたのは、青い顔をしたポポや人参化が自室へと押し寄せてきた時の事だ。

 リゼットを見て心から安堵する彼等に困惑したリゼットは何があったのかを聞き、そこで初めて己の身に起こっている異常を知った。

 

 ――気が感知されなくなっている。

 

 リゼットの気が消えたわけではない。確かに彼女の気は存在しているしリゼット自身は今まで通りに感じている。

 だが彼女以外から見てリゼットの気というものがまるで感知出来無くなってしまったのだ。

 まるで透明……クリアになりすぎた気を誰も感じ取る事が出来ない。

 強さを計る事も出来ないし、位置も分からない。

 この現象はリゼット自身にとっても予想外であり、原因もさっぱり分からなかった。

 だがその疑問は界王に念話で尋ねる事で氷解を迎えた。

 曰く。

 

『それは神の気じゃな。お主は立場だけではなく、存在そのものが神へと近付いたんじゃ。

儂等よりも遙か上――破壊神ビルス様という方がおられるが、その方の気もクリアであるが故に神以外には感知出来ん。

お主は不完全ではあるが、宇宙中から集まった信仰によって高位の神のステージへと至った。

これで少なくともお主よりも弱い、神ならざる者ではお主の気を感じ取る事は不可能となったわけじゃ。

……お主はこれで神としては儂よりも上になってしまったわけじゃが……立場を忘れるでないぞ。

あくまで立場は儂が上じゃ……いいな?』

『アッハイ』

 

 破壊神ビルスとかいう聞いた事もない名前が出てきたが、とりあえずリゼットは自分の気がクリアになった事だけを理解した。

 ビルスとかいうのは、まあ放っておいていいだろう。

 原作どころかその後を描いたGTでも見た記憶がないから、多分設定だけのキャラだ。関わる事はあるまい。

 それにドラゴンボール世界の神様は界王神が最高位のはずなので、実力も自動的にその下となる。

 全宇宙の神様が超サイヤ人に驚くだけのリアクション要員な世界で今更破壊神とか言われても、という感じであった。

 ……実際は全然違うのだが、今のリゼットがそれを知る術はない。

 

 その後もリゼットはとにかくフリーザ軍を相手に迷惑極まりない修行を続けた。

 ついでにクウラ軍残党もボコった。

 決して自分からフリーザ系列の惑星を侵略するような真似こそしなかったが、他の惑星に向かうフリーザ軍がいれば嬉々として叩き潰した。

 1年も経つ頃には宇宙中で猛威を振るっていたフリーザ軍……否、コルド大王の勢力はすっかり衰退してしまい、見る影もなくボロボロにされてしまっていた。

 これも全てリゼットのせいである。

 しかし彼女が修行と称してコルド大王の勢力をサンドバッグにすればするほどに宇宙の人々は諸手を挙げて大喜びし、益々信仰が集まる。酷い循環だ。

 更に追い討ちをかけたのが、かつてフリーザ軍に所属していた元幹部、ザーボンの裏切りである。

 彼は何を血迷ったのか『永遠の美』というリゼットのファンクラブを開設し、全宇宙に声をかけて打倒コルド一派の旗を掲げた。

 勿論、本心からリゼットのファンなどになったわけではない。

 彼女の美を認めない訳にはいかないし、ぶっちゃけ結構惚れているのだが、それでも己よりも美しい者は許せない。だから心までは屈していない。

 要するにこれは利用だ。コルド軍を消さぬ限り己に未来はないと考えたザーボンは彼等を追い落とす為の都合のいいシンボルとしてリゼットを持ち上げ、偶像に仕立て上げたのだ。

 何よりもかつてフリーザの側近であった彼の口から語られた『ぶっちゃけクウラもリゼット様に倒されました』発言は全宇宙を震撼させ、人々に希望を抱かせた。

 あの圧倒的な強さを持つクウラですら彼女に敗れた。消えぬ悪など存在しない。

 宇宙よ、今こそ女神の名の下に集い、巨悪を討ち滅ぼす時だ。

 こうして本人の与り知らぬ所で勝手に宇宙一の女神兼アイドルにされてしまったリゼットは、今日も今日とて宇宙中から勝手に集まってくる信仰によって仙術――否、神通力を益々強めていた。

 

 そしてザーボンは宇宙最大規模の組織である『永遠の美』の総帥として巨万の富と栄誉を手に入れた。

 今や彼は銀河パトロールの出資者であり、銀河王ですら頭が上がらない。

 まさしく大出世である。人生何がどうなるか分からないものだ。




ザーボンさん「世界を制するのは美と知略。そして金。
妖星が告げておるわ……神が私を選んだと!」
【戦闘力】
ザーボン:3万→40万(神精樹の実)
第二形態:60万

まさかのザーボン大勝利ルート。銀河パトロールも金の力で掌握しました。
金の出所は主に、リゼットを偶像に仕立てて開催したイベント等。
ちなみに今のザーボンさんの恰好はファー付きのコートにサングラス、両端には常に美女を侍らせているという酷い状態です。
自室は金ピカの趣味の悪いゴールドな部屋で、ネックレスやアクセサリをジャラジャラさせつつ、群がる女には餌代わりに金貨やダイヤをばら撒きます。今の彼は宇宙一の金持ちです。
どうしてこうなった。
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