「宇賀と申します」となりすましも 最高裁に一石を投じた異彩判事
国会や行政に歯にきぬ着せぬ意見を述べてきた最高裁の宇賀克也判事(69)が20日、定年退官を迎える。
在任期間は6年4カ月。他の判事たちと意見が食い違っても、折れずにリベラルな反対意見を書き続けた。
異彩を放つ存在が最高裁からいなくなると、司法はどうなるのか。紛争の当事者となった人らと考えた。
<主な内容>
・旧姓の通称使用は「合理性なし」
・最高裁が焦った「なりすまし事件」
・司法の信頼とは
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夫婦別姓認めずは「違憲」
「夫婦同氏を婚姻成立の要件とする制約を課すことは、婚姻の意思決定を抑圧するものだ」
夫婦別姓を認めない民法の規定の違憲性が争われた家事審判の決定(2021年6月)で、宇賀氏は別の弁護士出身の判事とともに反対意見を記している。婚姻の自由を保障した憲法の趣旨に反しているとする内容だ。
その分量はA4判27ページに上る。最高裁の裁判官15人が参加する大法廷が出した「合憲」の多数意見がわずか2ページだったのとは対照的だ。
多数意見は合憲の理由として、氏(姓)には社会の構成要素である家族の呼称の意義がある▽旧姓の通称使用が広まることで不利益は一定程度緩和され得る――とする考えを支持した。
これに対し宇賀氏らは、いずれも論理的な否定を試みている。
離婚の増加などで家族の実態が多様化する中、子とその家族として暮らす人の間で姓が異なることがまれではなくなっていると言及。家族の呼称としての意義は、夫婦別姓を認めない合理的根拠とは言いがたいとした。
旧姓の通称使用拡大も、女性にダブルネームを認めるもので両性の本質的平等の観点から合理性があるとは言えないとした。
選択的夫婦別姓制度を巡り、先の国会では野党3党が法案を提出した。継続審議となったが、子の姓や通称使用の拡大は主要論点となっている。
「宇賀判事の反対意見は説得力があり、将来違憲判断を獲得するための道筋を示している重要な視点だ。当事者が置かれている実態から目を背けない姿勢がうかがえる」
家事審判の申立人側代理人だった寺原真希子弁護士は、宇賀氏らの反対意見が将来的に多数意見に変わることを期待する。
法曹界を騒がせた「事件」
「宇賀と申します」。23年11月、ある最高裁判決を報じたヤフーニュースのコメント欄に本人の名前で書き込みがあった。
判決の内容が薄いと批判する内容に「本当に宇賀判事が書き込んだのか」と法曹界やマスコミをざわつかせた。
最高裁は確認に追われ、すぐになりすましと判明した。悪質で許され…
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