中国人留学生を優遇? 博士学生支援、国籍による特別扱い規定はなし
参院選2025・選択の夏
20日投開票の参院選で外国人政策が争点の一つとなるなか、「外国人留学生を優遇している」「日本人が奨学金の返済に苦しむなか、中国人留学生に返済義務なしの奨学金1000万円を払っている」といった言説がSNSなどで広がっている。
文部科学省傘下の科学技術振興機構(JST)による「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」に関する言説とみられるが、SPRINGに特定の国籍を優遇する規定はない。
SPRINGは博士課程への進学を促すため、1人最大年290万円を最長3年間(4年制は4年間)にわたり支給する制度だ。2021年度に始まった。
JSTによると24年度は1万564人に支給し、このうち外国人留学生は4割を占める4125人。中国人留学生は3151人で外国人の中で最も多く、日本人を含めた全体の3割を占める。
対象者に中国人が多い理由について、JSTは「国籍による優遇ではない」とする。SPRINGでは公募に対して各大学が博士学生の支援計画を提出し、外部専門家で構成される委員会が審査して選定。これを受けて大学が学生を選抜する。
大学ごとの支援人数は計画に応じてJSTが配分する。JSTが確認している限りでは、選抜時に国籍で学生を優遇している大学はないという。
日本学生支援機構(JASSO)の24年度調査によると大学院や大学の学部など高等教育機関の留学生は約23万人で、このうち中国人は約9万人と全体の4割を占めている。SPRINGの支援対象に多いのも「中国からの留学生の多さが反映されている面がある」(JST)という。
一方で文科省は6月、SPRINGの支援金290万円のうち、生活費に相当する240万円について、日本人学生に対象を限定する方針を明らかにした。
JSTはSPRINGについて、もともと日本人学生の博士課程進学の少なさが課題視されて創設された支援制度であると説明。「制度化の過程で趣旨が十分に明示されなかったことから、日本人以外の学生にも支援金が広く配分される運用になっていた。当初の趣旨に即した形に是正する」としている。
【参院選2025・選択の夏】
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(更新)- 加藤雅俊関西学院大学経済学部教授今後の展望
日本人と外国人のどちらを優遇するかという二者択一ではない。今後の日本における科学技術を含めたアカデミアの発展(および産業移転なども)のためには、日本の大学で研究と教育を任う日本人の博士課程進学(研究者育成)促進も大事だし、たとえ将来母国に帰るとしても国際共同研究のネットワークのハブにもなりうる優秀な外国人留学生の流入/育成も必要だろう。この少子化の中で大学での研究はもはや留学生抜きに考えられないだろう。公的支援については、その「バランス」を考えて、日本人向けの支援と留学生を含めた支援と区別して施策を講じていくことも必要だろう。
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(更新) - 山崎俊彦東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授分析・考察
金銭的支援を得ながら研究に専念できるなんてなんと素晴らしいと思う反面、支援の一つとして魅力的ではあるものの、他にも考えなくてはならないことはあります。 親御さんや企業の博士という学位への理解の醸成。学生が博士に進学した未来を思い描きやすくするための、博士人材のロールモデルの見える化。外国人博士が増えること事態は世界的な情勢なのでそれは許容したとしても、その後日本にいついてもらいにくい状況の改善。支援額自体もあるだけで大変ありがたいものの「どうしても博士に進学せずに就職した友人と比べてしまう」という声も少なくない現状。など。
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(更新)
日本経済新聞は2025年7月20日投開票の参院選に向けて、各党・候補の政策の具体性や実現性などを点検しています。最新のコンテンツをお伝えします。