SE:戦略的文脈を欠いた議論は米の二の舞
特定の政党が親露的であり、候補者のひとりがスプートニクにも登場したこと、およびその政党を支援するボットなどの活動が暴露されてさわぎになっている。
【参院選立候補の歌手・さや氏「政治に無関係ではいられない」】
https://x.com/sputnik_jp/status/1944725311632900227
参政党を支えたのはロシア製ボットによる反政府プロパガンダ
https://note.com/kirik/n/n2e5c696d250f
スプートニクは少し前に日経新聞にロシアのプロパガンダメディアと名指しされている。
日本にロシア情報工作の影 政府系メディアのX拡散3倍超、偽情報も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA17CK50X10C25A6000000/
ボットなどの分析はかつてアメリカを中心とした関係者が行ってきたものだ(いまでもやってるけど)。また、スプートニクなどロシアのプロパガンダ・メディアを批判したり、禁止したりすることも行われてきた。この分野で の研究と対策で先端を走っていたアメリカがどうなったかは目の前のトランプ政権を見れば一目瞭然だ。このやり方ではアメリカの二の舞だ。
欧米の轍を神速で駆け抜ける日本の誤・偽情報対策
https://note.com/ichi_twnovel/n/nd3935bd3046a
ふつうに考えればスプートニクやばい!という記事が出た直後にこんなことが起こること自体がおかしくないだろうか? なぜ、メディアやインフルエンサーはこの問題を積極的にとりあげるようになったのだろうか?
ロシアはオペレーション・オーバーロードという作戦を実施している。これは、自ら行った影響工作をメディアやファクトチェック団体などに正体を隠して通報するものだ。
ロシアが認知戦の作戦の評価に「メディアや研究機関などにとりあげること」が用いていることは昨年ドッペルゲンガーなどの認知戦の作戦を実施していたSDAから漏洩した文書でわかっている。
ロシアのドッペルゲンガー実施企業Social Design Agencyの2.4GB漏洩文書
https://inods.co.jp/topics/4161/
現在、ロシアは作戦そのものの効果もそうだが、暴露され、警戒されることで相手国に過度な情報への警戒心や混乱、分断が広がる効果もねらっているのだ。
この領域の最近の報告書ではロシアの工作を暴露する際にはその方法や内容に留意しなければロシアの思う壺になると指摘するものが増えている。
ロシアのオペレーション・オーバーロード 第3の報告書
https://inods.co.jp/topics/6545/
残念なことに日本ではそういう指摘を行う専門家を見たことがない。なのであまりこういうことを書くと分断を促すことにつながるので書きたくない。積極的に新しい知見を取り入れている研究者ならば議論が成り立つが、そうではない人とは議論が成立しない。
怪しいアカウントやボットの活動を見つけてたら、すぐにSNSで暴露したくなる気持ちはわかるが、専門家やメディアが取るべき態度ではない。全体の文脈を確認してからでなければいけない。「そんなことを言っても目の前で行われている作戦を止めなければいけないだろ」と考えるかもしれない。しかし、これまでもこれからも認知戦で選挙の結果が変わったり、世論が大きく変化したことは検証することは難しい。その一方で、暴露したことによる影響ははっきりしている。暴露されたことで政府やプラットフォームは対策を講じた。その結果が今のアメリカやEUと思えば、立ち止まって相手の正体と狙いを見極めた方がよいことがわかるだろう。
このまま放置すると、ロシアや認知戦についての議論がメディアや政治の場で広がり、対策の強化が行われることになる。戦略的な文脈を欠いた議論はマイナスの効果をもたらす可能性の方が高く、そこから出てくる対策も同様ということは先行事例であるアメリカが身をもってみせてくれている。日本はアメリカの轍を神速で駆け抜けようとしている。
*ちなみに今回の暴露の半年以上前にすでに日本に対するロシアの干渉をDFRLabがレポートしていた。その時点で専門家や関係者が動いていれば今回の選挙への干渉を防ぐことができた可能性がある。なぜ、前回は無視した専門家たちが、今回はこぞってコメント、拡散しているのか?
DFRLabによる日本のX空間への中露ナラティブの分析
https://inods.co.jp/topics/4839/
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