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【コラム】参政党は不満の受け皿、MAGA派とは異なる-リーディー

20日投開票の参議院選挙を直前に控え、日本が抱える課題は多い。経済が縮小し、実質賃金は下落。トランプ米大統領の関税に備える通商協定もまだない。

   しかし、有権者の注目を集めているのは主流政党ではなく、在留外国人増加を巡る新興政党の主張だ。参政党の支持率上昇が政界に動揺をもたらし、選挙の争点は反移民政策へと移っている。

   同党の神谷宗幣代表は「グローバリズム」を批判し、外国人労働者を減らすよう呼びかけている。「日本人ファースト」のスローガンは、明らかにトランプ氏の「米国第一」を意識したものだ。

  右派の参政党は昨年の衆院選で3議席を獲得。先月の東京都議選でも3議席を勝ち取った。参院選に向けた一部の世論調査では、支持率で自民党に次ぐ2位に浮上した。

   こうした動きを受け、トランプ氏や英国の反移民政党リフォームUKといった右派ポピュリズムの波が日本にも押し寄せるのかと懸念する向きもある。

  だが、それは考え過ぎだ。今の流れは、リフォームUK支持のような動きの始まりでもなければ、ましてやトランプ氏が呼びかける「MAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に)」といった運動からはほど遠い。

  日本が直面している外国人を巡る問題は、これまでの外国人居住者の少なさに伴う不慣れやマナーに欠ける外国人観光客の急増から生じている。

  MAGAやリフォームUKへの支持勢力が拡大したのは、雇用の海外移転を許し、移民をほとんど規制しなかった政策に対する有権者の不満を、政界の中心にいた政治家たちが何十年にもわたり無視し続けたことが一因だ。

  日本では今、外国人に職を奪われているのだろうか。むしろ逆だ。労働力不足が深刻化し、外国人労働者はコンビニエンスストアの店員からトラック運転手に至る多様な業務に不可欠だ。

  トランプ氏のホワイトハウス返り咲きを後押ししたような不法移民の急増が、問題だろうか。そんなことはない。これもまた、全く逆で、むしろ減少傾向にある。ビザ(査証)を得ていない不法滞在者はここ数年間に急減している。

  日本は難民受け入れに極めて慎重で、欧米に倣うよう求める声にも抵抗してきた。今では、そうした国々も自国の方針に疑問を抱き始めているように見える。結果として、日本に暮らす外国人の多くは社会の生産的な一員となっている。

  では、治安悪化は外国人が原因なのか。そうとは言い難い。新型コロナウイルス禍後にやや犯罪が増えたものの、依然として深刻な治安悪化は見られない。

   住宅問題も、在留外国人が家を奪っているわけではない。住宅は十分にある。ただし、外国人による不動産購入を巡り規制があまりにも緩く、裕福な外国人購入者が東京と大阪の中心部で住宅市場を圧迫している。

異色の自民党総裁

  参政党への支持拡大には、幾つかのシンプルな要因がある。まず挙げられるのは、他に選択肢がないということだ。

  与党として長年政権を担ってきた自民党は政治資金スキャンダルが尾を引き、そこに物価上昇に対する不満が重なり、有権者の支持を失っている。

  有権者が政策の中身をしっかりと見極めずに、世論の流れに乗る風潮もある。昨年の衆院選は、多くの有権者が中道右派の国民民主党に票を投じたが、その人気も政策や政治家らの実態が知られるにつれて陰りを見せている。

  石破茂首相は近年では異色の自民党総裁だ。 故・安倍晋三元首相と対立していたことで知られる石破氏は党内のリベラル派で、右派からの支持は弱い。

  党首討論会中に外国人が日本社会で暮らす上で「七面倒くさい日本語、日本の習慣」を受け入れる必要があると発言したが、こうした言い回しに対し、保守層から反発が起きている。

  参政党が今回の参院選で、一定の成果を達成する可能性はある。だが、持続的な支持基盤を築けるかどうかは疑わしい。

  最もあり得るシナリオは、反ワクチンなどの陰謀論に傾斜し、真の政策立案能力を欠く同党への親しみがやがて反感に変わるといった一過性のムーブメントで終わる可能性だ。

  1990年代から2000年代初頭にかけての日本経済停滞期でさえ、日本の有権者はポピュリストにほとんど関心を示さなかった。イノベーションや創造的破壊を犠牲にする形になったが、政治家が雇用の安定や医療制度、インフラ、年金制度を守ったことが背景だ。ポピュリズムの発火点は日本にはない。

  戦略助言会社アジア・グループの西村凜太郎アソシエート(東京在勤)は、参政党が存在感を高めるためには、保守層が自民党に対する抗議ではなく、安倍路線終了後に広がった不満から参政党を支持しているという傾向が続く必要があると指摘。そのため、参政党には経済・外交政策について、意見集約しきちんとした綱領をまとめる取り組みが求められるという。

  リフォームUKに票を投じた有権者が抱いた移民政策に対する異議が、英労働党政権の移民規制強化には反映されたように、参政党の言い分が的外れとは限らない。

   実際、外国人による不動産購入のしやすさや過度に手厚い奨学金制度など、国民が不利益を感じる問題も存在する。政府はこうした懸念に対処すべきで、石破政権も外国人対応の「司令塔」を設置すると表明し、重い腰を上げた。

  それでも、反ワクチンを唱え、がんは第2次世界大戦後にできた病気だとか、小麦は日本の食文化を破壊するため米国が広げたなどといった陰謀論に傾く参政党に有権者が信頼を寄せるとは考えにくい。

   同党の主張はニュースの見出しになっており、一定の支持を得ることはあるだろう。だが、ミニ政党から脱皮し、日本の政治の本流に加わることは難しいだろう。

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(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Japan’s Right-Wing Fringe Is No MAGA or Reform: Gearoid Reidy (抜粋)

    This column reflects the personal views of the author and does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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