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「ゴジラ」の東宝、アニメとIPで世界に挑む-エンタメ多角化も視野

更新日時
  • 海外では知名度低い東宝、過去最大級の事業拡大進め世界市場に照準
  • アニメ事業で的確な判断、「ホームラン」を連発との見方

日本の映画産業を象徴する存在として最も有名な「ゴジラ」は、1954年の初登場以来、40本近い映画が製作され、多額の興行収入を稼ぎ出している。関連グッズも魔法瓶やぬいぐるみなど多岐にわたり、この架空の怪獣は今や世界中で広く知られるようになった。

  だが、ゴジラをスクリーンに送り出したメディア企業、東宝を日本国外で知る人は少ない。創業者のひ孫、松岡宏泰社長は、こうした状況を変えようとしている。

    映画製作と劇場運営で国内最大手の東宝は長年にわたり日本市場を重視してきた。だが、2022年に社長に就任した松岡氏は、ソニーグループ任天堂などに続き、海外市場への展開を目指している。

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ゴジラ(1954)
Source: Toho 

   日本では人口減少が進み、成長するには新たな市場への進出が不可欠だ。特に東宝が力を入れるアニメーション分野では、グローバル需要が急拡大しており、米ネットフリックスやソニー傘下のクランチロールが人気アニメを世界に配信し、成功を収めている。東宝もこの分野で存在感を高めようとしている。

  松岡氏(59)は東京の日比谷ゴジラスクエアを見下ろす社長室で、東宝が成長するために、あるいは日本のどの企業にとっても、海外でのチャンスを真に捉える必要があると述べた。眼下の広場には、高さ3メートルのゴジラ像が設置されている。

  海外での視聴者の獲得に向け、東宝は過去最大規模の事業拡大に乗り出している。松岡氏の就任以後、同社は8件の買収を発表し、その一環として米アニメ配給会社GKIDSを傘下に収めた。

  米アップルの動画配信サービス「Apple TV+」の人気ドラマ「セヴェランス」を手がけた制作会社フィフス・シーズンにも出資。株式の25%を2億2500万ドル(約335億円)で取得した。

  松岡氏と海外事業責任者の植田浩史氏は、ゴジラや「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」などの人気アニメシリーズを基に、映画やテレビゲーム、ドラマ作品の開発も進めているほか、エンタメ分野での多角的な展開も見据える。

  8月には埼玉県所沢市の「西武園ゆうえんち」にゴジラをテーマにした4Dライド型アトラクションを投入する。大型スクリーンと動く座席を特徴とするこのアトラクションは、将来的に米国やカナダ、オランダ、中国、ドイツなど約40カ所に展開する予定だ。

  東宝はこれらの知的財産(IP)を全て自社で保持する。さらに約400億円を投じて、帝国劇場などがある日比谷地区を大がかりな演劇拠点に再開発する構想も進行中だ。

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松岡宏泰社長
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

 

  スタジオジブリと長年にわたり提携してきた東宝は、米アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞した01年の「千と千尋の神隠し」の舞台版を製作し、今月から上海で国際ツアーを開始。来年にはソウルを巡り、さらに米国や東南アジアでの公演も視野に入れる。

  こうした取り組みに向け、東宝は今後3年間で約10億ドルの投資を予定し、32年までに営業利益を倍増させる目標を掲げている。海外売上高比率も現在の10%から30%へと引き上げる。

  経営陣はまた、ゴジラに匹敵する新たな大型フランチャイズの発掘にも意欲を示している。見つかれば、非常に大きなチャンスになると松岡氏は話す。

「ホームラン」

  子ども時代は父親に連れられ映画館の様子を見に行く程度だったという松岡氏だが、エンタメ業界の国際経験は豊富だ。1980年代に渡米し、ペンシルベニア州のオルブライト大学で学び、ハリウッドでのインターンを経てピッツバーグ大学で経営学修士(MBA)を取得。

  その後、米大手芸能事務所インターナショナル・クリエーティブ・マネジメント(ICM)で働き、帰国後は東宝の映画配給子会社、東宝東和に入社した。

  東宝グループは、阪急電鉄や宝塚歌劇団を手がけた実業家の小林一三によって32年に創業された。その後、東宝の映画配給網は拡大し、邦画のみならず米国の作品も数多く届けてきたが、同社の映画史でゴジラは中心的存在だ。

  放射能によって目覚めたゴジラは、第2次世界大戦後の日本が抱えた核への恐怖を象徴し、これまで38本の映画が作られた。世界での興行収入は30億ドルを超える(ゴジラシリーズの1作目と同じ年に公開され、しばしば史上最高の映画としても挙げられる黒沢明監督の「七人の侍」も東宝作品だ)。現在の東宝は、全国に映画館を展開し、メディアや制作、配給など多数の部門を抱えている。

  外国での事業展開には課題もあった。特にゴジラの英語版のライセンスは、10年以上前に米レジェンダリー・エンターテインメント(現アポロ・グローバル・マネジメント傘下)に供与。米映画情報サイトのボックス・オフィス・モジョによれば、2014年以降、英語版のゴジラ映画は全世界で約20億ドルを売り上げたが、東宝に入る収益はごく一部にとどまった。

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呪術廻戦
Source: Gege Akutami/Shueisha, Jujutsu Kaisen Project

  転機となったのが23年公開の「ゴジラ-1.0」だ。東宝自ら制作・配給を担い、ハリウッドの配給会社を介さずに米国の映画館で公開。制作費はわずか1500万ドルだったが、全世界で1億1400万ドルを売り上げ、米アカデミー賞の視覚効果賞も受賞した。

  この成功が、自社で作品を保有するという現在の経営戦略の軸となっている。植田氏によれば、東宝はゴジラの新作を早ければ来年にも公開するほか、「シン・ゴジラ」の続編の可能性や東南アジアを舞台にした企画も検討している。また、レジェンダリーと共同でApple TV+の「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」第2シーズンの制作も予定している。

  アニメ部門は、言語を問わず東宝が全面的にコントロールしており、特に好調だ。呪術廻戦や「僕のヒーローアカデミア」などの人気シリーズの新作や続編を次々と展開する計画。「アニメ事業では極めて的確な判断をしてきたように見える」と、神田外語大学のジェフリー・ホール講師は評価する。アニメで「ホームラン」を連発しているためだ。

  将来的には、アニメがゴジラを超える東宝の柱になる可能性もあるという。追い風となっているのが、日本政府による「クールジャパン戦略」で、文化輸出を通じて経済成長や観光促進、ソフトパワーの強化を目指しており、33年までに日本発のコンテンツの海外市場規模を4倍にする目標を掲げている。

  33年は東宝の創業から101年に当たる。松岡氏はアニメやミュージカル、ゴジラ、実写シリーズ、映画作品といった事業活動を通じて、世界中で東宝ファンを増やし、世界に東宝の名前を知ってもらいたいと語った。

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Toho CEO Speaks on The Future of Entertainment
東宝の松岡宏泰社長はブルームバーグニュースのSohee Kim記者に海外戦略などを話した
Source: Bloomberg

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:Godzilla Creator Plans Global Expansion After Conquering Japan(抜粋)

(20段落目の情報を更新します。更新前の記事は同段落の発言者を植田氏に訂正しています)
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