斜面

論説主幹、副主幹らによる朝刊１面コラム。人工音声が読み上げるコンテンツもあります

斜面（7月19日）サイボーグは何と戦ったか
2025/07/19 06:00
姉を失った悲しみと漫画家としての人生に疑問を抱えた２３歳は意を決して世界に飛び出した。海外旅行が自由でなかった時代。出版社から記者の肩書をもらい、米国や欧州、エジプト、タイ、香港を巡る。若き日の故石ノ森章太郎さん…
斜面（7月18日）夏バテには
2025/07/18 06:00
エアコンが効いた室内から太陽が照りつける屋外へ。これを繰り返すうちに自律神経が乱れてだるくなり、食欲も低下して疲れが取れない…。いわゆる「夏バテ」。夏本番前から猛暑が続き、既に身体が音を上げている人も多いだろう◆暑い場所に長くいて一気に脱水症状になる熱中症と異なり、夏バテは徐々に症状が悪化する。予防…
斜面（7月17日）こわもてと対決する日本人
2025/07/17 06:00
プーチン、トランプ、ネタニヤフ。こわもての権力者たちに真正面から立ち向かっている人がいる。国際刑事裁判所（ＩＣＣ）の赤根智子さんは愛知県出身の元検事だ。日本人として３人目のＩＣＣ裁判官となり昨年から所長を務める◆国際条約に反する戦争犯罪や人道に対する罪、ジェノサイド（集団殺害）、侵略の罪を犯した個人…
斜面（7月16日）音がなかった幕開け
2025/07/16 06:00
その瞬間、音声が消えて、まぶしく光る画面だけが映し出された。昨年公開された米映画「オッペンハイマー」で、８０年前のきょうを再現した場面だ。米西部の砂漠に設営された「トリニティ・サイト」で史上初めて核実験が行われた◆嵐が去った午前５時半、薄暗い空が突然明るくなる。実際に実験を見守った科学者も「物音一つ…
斜面（7月15日）蓮の交わり
2025/07/15 06:00
ちょうど今は七十二候で言う「蓮(はす)が咲き始める」時季。先週土曜日の本紙は、富士見町の井戸尻史跡公園で咲く大賀蓮の写真が目を引いた。長野市の善光寺でも見頃だ。すがすがしい薄紅色は、暑さで不快になる気分を和ませてくれる◆大賀蓮は古代ハスとして知られる。１９５１（昭和２６）年、植物学者の大賀一郎が千葉…
斜面（7月13日）現代の「神話」にご用心
2025/07/13 06:00
小さいころに読んだギリシャ神話。ゼウスを筆頭にヘラ、ポセイドンら個性の際立つ神々が躍動していた。神話とは、世界の始まりなどを伝える説話を指す。別の意味もある。絶対的なものと信じられているけれど、実は根も葉もない話◆例えば「３歳児神話」。３歳までは母親が家庭で育てないと成長に悪影響を及ぼすという考えだ。母親の愛情のみを強調し「ワンオペ」を強いる言説が「育児に多くの弊害をもたらしている」。研究者の大日向雅美さんが以前、本紙で指摘している◆高度成長期の性別役割分業を支えたこの神話は、各種調査から根拠のないことが証明されている。が、男女平等が進む今もどっこい生きている。共働きの女性は
斜面（7月12日）無礼な人物の処し方
2025/07/12 06:00
甘そうだからペロリとなめる―という意味かと思いきや、違った。「なめる」にある「見くびる」という語意は「舌でなめる」と由来が異なる。広辞苑に「なめし」とある。「無礼(なめ)し」とも書く古い形容詞が動詞となって使われている
斜面（7月11日）漂うレジ袋の未来
2025/07/11 06:00
２０３７年までに熱帯の観光地でごみ問題がいよいよ深刻化し、アジアの国々が南シナ海を清掃する１０カ年計画に合意する―。気候変動問題に取り組む米国の専門家らが、プラスチックごみによる海洋汚染で…
斜面（7月10日）「あしながさん」に託す思い
2025/07/10 06:00
すべての震災遺児を支援する提案に、最初はためらいを見せた。３０年前の１月、阪神大震災の４日後に開かれた「あしなが育英会」の理事会で会長代行だった玉井義臣さんは「会の財政基盤が負担に耐えきれるだろうか」と述べている…
斜面（7月9日）不思議の国
2025/07/09 06:00
土手の上で退屈しているアリスの前を通り過ぎるチョッキを着た白ウサギ。追いかけ巣穴にとびこむと―。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」。迷い込んだ世界で、個性的な動物たちに次々と出合いながら繰り広げる冒険譚(たん)だ◆慶応大教授の山本龍彦さんは近著で、ユーザーが興味を引く情報が流れ続けるＳＮＳの世…
斜面（7月8日）セミの声聞いた？
2025/07/08 06:00
江戸の俳人松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で山形市にある立石寺(りっしゃくじ)に参詣したのは、今の暦で７月１３日のこと。その際、あの名句を詠んだ。「閑(しづか)さや岩にしみ入蝉(いるせみ)の声」。では、何ゼミの声を聞いたのか。１００年前、文学論争になった◆山形県出身の歌人斎藤茂吉が雑誌にアブラゼミと書いたのが始まりだ。威勢の良い大合唱が句の印象に合うと主張。これに対し
斜面（7月7日）削除される未来
2025/07/07 06:00
〈未来を信じ未来に生きる。そこに青年の生命がある〉。戦後長く立命館大総長を務めた法学者の末川博は、その言葉で始まる碑文を「わだつみ像」に寄せた。戦争で未来と命を奪われた学生の嘆き、怒り、沈黙を表したブロンズ像だ◆戦没学生の遺稿集「きけわだつみのこえ」の印税収入の一部で造られた。末川を先頭に、教員、学生ら大学を挙げての誘致活動によって、１９５３年、京都市内のキャンパスに建てられた。以来
斜面（7月６日）「つるし」にならなかった法案
2025/07/06 06:00
閣僚が延々と議案の趣旨を説明することを指す「お経読み」をはじめ、国会には独特の用語がある。「つるし」もその一つ。提出された法案が委員会に付託されず、たなざらしにされることを言う。審議入りを阻む国会戦術でもある◆２月初めに与野党４党が参院に提出した「特定生殖補助医療法案」は、４カ月近くもつるしが解けず…
斜面（7月5日）良き未来を願う人たち
2025/07/05 06:00
緑色だったころの諏訪湖をすっかり忘れていた。大量のアオコに覆われて「日本一汚い」とまで言われた。生態学者の沖野外輝夫さん（８８）が諏訪湖の研究を始めて６０年近く。官民の水質浄化対策につながった。その成果が今の湖である…
斜面（7月4日）あてなるもの健在
2025/07/04 06:00
映画「男はつらいよ」シリーズに登場する寅さんの実家の団子屋は夏になるとかき氷を出した。「氷」の旗を軒先に掲げ、おばちゃんが手で器具を回しながら氷を削り、「子どもだましのようなものですが」と炎天下の来客をもてなす◆似たような光景は、クーラーが一般に広まっていなかった昭和の半ば、あちこちにあった。見た目…

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