メディアを使った情報操作
こうした部門長たちの過剰な関与に加えて、もう一つ指摘されていた大問題は、提出期限が極端に短かったことである。
情報機関の評価は通常は数ヶ月を要するのが普通なのだが、評価の草稿作成に1週間も与えられず、情報機関の仲間との正式な調整に2日も掛けられなかったというのだ。
オバマ大統領からこうした評価をまとめるように指示されたのは2016年12月6日のことだが、指示から2週間後の12月20日には、CIAで正式な審査プロセス入りしたのである。情報機関の分析官たちが連携できた会議は一度しか設けられなかったのも異例だ。
しかもその会議の前日に、ブレナン氏はCIA分析官たちに異例のメモを送っている。クラッパー氏やコミー氏と既に会談し、「最近の大統領選挙におけるロシアの干渉の範囲、性質、そして意図について、3人の間で強いコンセンサスが得られている」と、そのメモを通じて伝えているのだ。要するに、この3人のコンセンサスに異論は許さないという圧力を示していたのは明らかだろう。
しかも評価がまとめられる前から、評価に関しての情報リークが進められていた。例えば、オバマ大統領から評価のまとめを指示された3日後の2016年12月9日には、ワシントン・ポスト紙とニューヨーク・タイムズ紙は、ロシアがトランプ氏の選挙勝利を支援するために介入したことについて、情報機関は高い確信を持って結論付けたと報じた。ワシントン・ポスト紙は、匿名の米国当局者の声として、この結論は情報機関内部でコンセンサスの取れた見方だと表現した。
ロシアがトランプを勝たせようという工作があったと主張するには、あまりにも杜撰な証拠だったと言わざるをえないが、最初からそう思わせようとする結論は決まっていて、その結論を当然のことだと人々に思わせるような情報操作が、既にこの段階で始まっていたのである。