「どうしてやる気がないの?」「もっと頑張ってよ!」
そのような「やる気を引き出さない言葉」を子どもに対して口にしてしまうことがあるかもしれません。親として子どもを良くしたいと思えばこその言葉かもしれませんが、やる気がない子どもに行動を促しても、心が動いていないので、いつまでも行動はしません。
むしろ、そうした言葉が子どもをさらに追い詰め、やる気を削いでしまうこともあります。なぜなら、やる気のなさの背景には、単純な怠惰以上の複雑な要因が潜んでいるからです。
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「やる気が出ない=怠けている」ではない
まず前提として押さえておきたいのは、「やる気が出ない」状態は、単に怠けているわけではないということです。やる気が出ない背景には、子ども本人も気づいていないさまざまな心理的要因が潜んでいることが多いのです。例えば次のような5つの要因が考えられます。
心理学者セリグマンが発見した「学習性無力感」という言葉があります。これは、努力しても結果が出ない体験を重ねることで、脳が「何をやっても無駄」と学習してしまう状態です。子どもの場合は、勉強しても成績が上がらず「どうせやってもムダ」と感じていることがあります。実は、これがやる気が出ない最大の理由です。
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自己効力感とは、アルバート・バンデューラが提唱した概念で、「特定の課題を遂行する能力があると自分で信じる程度」を指します。逆に、親や先生から否定され続け「自分はダメだ」と思い込んでいるケースが少なくありません。このことがあると(1)のどうせやってもダメにつながるケースもあります。
他の子と比較されて劣等感を抱くことがあります。これは社会比較理論に基づいてさまざまなエビデンスがありますし、実感としてもあるのではないでしょうか。比較には2つあります。1つは上方比較(自分より優れた人との比較)といい劣等感を増大させます。もう1つは下方比較(自分より劣った人との比較)といい、自尊心を高めることが実証されています。しかし実際は、上方比較をして凹ませてしまうことが少なくありません。また、親や先生など他者からの比較のみならず、本人自身が他者と比較して自ら凹むケースもあります。
頑張っても誰にも認められない経験を重ねてしまうとやる気はなくなります。マズローの欲求階層説が有名ですが、4番目の承認欲求が満たされないと、5番目の「自己実現の欲求」は出てきません。つまり、短所是正、欠点指摘ばかりされた子には、あれをやりたい、これをやりたいという自己実現のために必要なやる気は出てこないことになります。
期待が重すぎると、逃避したくなる傾向にあります。ストレス反応と心理的負荷に関する研究のエビデンスは豊富にあり、例えば、過度なストレスや慢性的なストレスは心理的影響を強め、パフォーマンスを低下させることが知られています。子どもの場合は、特に中学受験ではよく見られるケースです。
以上の状態は、子ども自身も自分の心理状態をうまく言語化できないことが多く、大人からは「怠けている」「甘えている」と見えてしまいがちです。特に最近よく聞く話では、自分の時代は気合根性努力でやったというマインドを持つ親が子どもに強制しトラブルになっているケースが少なくありません。
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やる気は行動ではなく、「心の状態」のこと
では、どうすればやる気を引き出せるでしょうか。最も大切な考え方は、子どもの「やる気を出させよう」として無理に行動を促さず、心の状態を上向きにさせることを優先することです。やる気とは、外から押しつけられるものではなく、内面から自然に湧き上がる「心の状態」そのものだからです。
では、ここで例を挙げて説明していきます。
勉強や習い事をサボってばかりの子どもがいたとします。その子には「もっとやりなさい!」と行動を促すのではなく、内面的な気持ちを聞くことから始めていきます。
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「何か困っていることがあったら、お母さん(お父さん)に話してくれる?」
これらはいきなり聞くのではなく、雑談をしながら、話をしたくなるような流れを作り、その中で交えていきます。
すると大抵は、子どもが「宿題はやりたくない」「勉強は難しくてつまらない」「誰にも褒められない」など愚痴の形で現状について話をしてきます。親はそれを受けて、いきなり励ますことはしません。
ここはかなり大切な部分です。
通常は、励ましたり、アドバイスをしたりしますが、それはしません。ただ聞くことに徹します。その際、共感しながら聞くため、うなずく、相槌を打ちながら、「なるほどね」「そうなんだ」と答えるのみです。とにかく子どもに今の気持ちを徹底的に吐き出させ、それを徹底的に聞くのです。
すると、子どもは安心感を持ち始め、やがて自分で解決策を出したり、やる気が出てきたりする可能性が高まります。
親が余計なことを言わなければ、この流れになっていきます。その後、もし子どもから解決策を求められたら、アドバイスを提案という形で行いますが、それがなければ、一切アドバイスはしません。ここが最大のポイントです。
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やる気を引き出すための3つの工夫
上記のプロセスだけで子どもは自らやるようになることは、これまで1万5000件以上の母親からの相談を受けてきた経験から感じていますが、それでもなかなかやる気が出ない場合は次の3つをされてみてください。
簡単な課題から始めて、できる感覚を積み重ねていきます。難しい問題は小さなステップに分解し、「できた!」という体験を積み重ねます。例えば、漢字の練習なら1日1文字から始める、数学なら確実に解ける問題を解いていくなど。ポイントは絶対に達成できることを積み重ねていくことです。それによって自己効力感が高まり、「ワンチャン、自分はいけるんじゃない?」と子どもは感じ始めます。
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結果だけでなく、努力した過程を「見える化」します。それによって、「自分はここまでできる人間なんだ」と感じ始めます。見える化にはいくつか方法がありますが、筆者が考案した「子ども手帳モデル」を実践してもらうことが一番早いかと思います。特に夏休みに使うと効果的です。記事に書いていますので、気になる場合はご覧ください(詳細→こちらの記事)。
「なぜ勉強するのか」を一緒に考えます。ただし、難しい話はしません。そのような定義的な話ではなく、将来の夢と結びつけたり、身近な場面とリンクさせたり、子どもの興味関心があることで例えたりします。
「この計算ができるようになると、お小遣いの管理が上手になるね」「鉄道でいえば……」など、日常生活との関連性を示すといいでしょう。
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長期的な視点で取り組む
やる気の回復は一朝一夕には起こりません。特に、長期間やる気を失っていた子どもの場合、心の回復にはそれなりの時間がかかることがあります。そこで継続性が重要となります。これまでの子どもとの関わり方を一時的に変えても、すぐに結果が出ないからといって元の方法に戻ってしまうと、子どもの信頼を失ってしまいます。したがって、子どもが“しつこく”やる気にならない状態が続くのであれば、親も“しつこく”上記のことをやり続けるのです。これが継続のコツです。
子どもは理解され、支えられることで初めて前向きになれます。表面的な行動を無理に変えるのではなく、まずは心の状態を変える関わり方をされてみてください。すぐに変わるケースもあれば、多少時間はかかるケースもあります。しかし、子どもの心に寄り添った関わり方は、必ず子どもの内面に変化をもたらします。そして、その変化は一時的なものではなく、持続可能なやる気として、子どもの心の中に根付いていきます。
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