ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第二十八話 一時退避

 ベジータが目を覚ました時、彼はメディカルマシーンの中で治療されていた。

 そこですぐに起きずに、眠っているふりを続ける咄嗟の判断力は大したものだろう。

 薄目を開けて周囲を注意深く観察しながらベジータは考える。

 自分はザーボンとドドリアに敗れた。屈辱的だが、まずはその事実を受け止める。

 そしてここはどこかの宇宙船で、メディカルマシーンの中。

 ならばまず考え付くのは、あの後ザーボン達に連れ去られて治療を受けている、というケースだ。

 少なくともナメック星にメディカルマシーンはない。

 そもそもこれはフリーザ一味が使っている道具だ。ならばこれがあるという事がすでに、この宇宙船がフリーザに属しているという事を意味していた。

 しかし助けられた理由がわからない。

 堂々と反旗を翻した今、奴等に自分を助ける理由などなく、それに宇宙船内部の構造も異なる。

 同じ技術で造られているのだろう船内は随所に似た所があるが、それでもやはりデザインが違う。

 ここは、フリーザが愛用している宇宙船の中ではない。

 

「よう、いつまで狸寝入りしてるんだ、王子様よ。

わかってるんだぜ? サイヤ人であるあんたの回復力なら、とうに目覚めているって事くらいな」

(この声……カカロットか!?)

 

 声を聞き、ベジータの脳裏にはすぐに地球で出会ったあの忌まわしい下級戦士の顔が浮かんだ。

 随分挑発的な台詞と口調だが、声は確かに奴のものと一致する。

 ならば、今メディカルマシーンの外には奴がいる!

 そう考え、ベジータは目を開く。

 果たしてそこにいたのは、予想通りの特徴的な頭髪に忘れるはずもない顔立ち。

 だが、その肌は褐色であり、更に黒い戦闘服と白いマントを着こなしている。

 極めつけはスカウターを付けたその顔だ。

 顔立ちこそ瓜二つだが、表情が違う。

 反吐が出そうになる、あの甘さを残す表情ではない。冷酷さに彩られた、自分と同じサイヤ人の表情だ。

 驚いている間にメディカルマシーンの水が抜け、ベジータを外気に晒す。

 そうしてまず感じるのは、身体の軽さ。そして漲る力だ。

 どうやら死を乗り越えた事でまた一つ強くなったらしい。

 しかし……それでも、目の前のカカロット似のこいつには、まるで勝てる気がしない。

 

「き、貴様、何者だ……? カカロットではないな」

「俺の名はターレス。あんたと同じサイヤ人さ。

それとも、こんな下級戦士の事は眼中にないか?」

 

 ターレス――その名前だけはベジータも知っていた。

 フリーザに仕えるいくつかの部隊の一つであるクラッシャー軍団。

 数こそ少ないが全員が戦闘力7000を超える強豪部隊で、その部隊の隊長がターレスという名前だったのを覚えている。

 しかしまさかサイヤ人だとは思わなかった。

 そもそもベジータは、自分とナッパ、ラディッツ、そしてカカロット以外に生き残りなどいないと思っていたのだ。

 いや、厳密に言えば他にも一人だけいない事はない。

 あまりにも性格が戦闘に向かない為に王族からも除籍されてしまった愚弟ターブル。

 しかし彼はベジータにとっての恥部でしかなく、故に弟の事はサイヤ人とすら見なしてはいなかった。

 

「何の目的があって俺を助けた?」

「あんた、フリーザから離反したんだってな?」

「それがどうした」

「なあに、それなら俺と目的は同じだ。

どうだ? 俺と手を組まねえか?」

「……必要とは思えんがな。くそったれめ」

 

 ベジータは顔をしかめ、露骨に舌打ちをする。

 認めたい事ではない。しかし気を探るに、こいつの戦闘力は恐らくフリーザすら上回っている。

 なのに自分の力を欲するなど、あまりに怪しいではないか。

 その考えが顔に出ていたのだろう。ターレスはニヤリと笑う。

 

「あんたが知っているフリーザの強さは、ほんの一部分だけだ」

「何っ?」

「フリーザの戦闘力53万は俺達の間じゃ有名だがよ……その程度なら俺一人でどうにかなる。

スカウターで計りきれねえから憶測になるが、今の俺なら戦闘力にして250万以上は確実だろう。

理性がなくなるが、大猿になりゃあ2500万だ。

だが、それでもまだ奴の全力には多分届かねえ」

「ど、どういう事だ!?」

 

 戦闘力53万。それがフリーザの全力だとベジータは認識していた。

 実際これはとんでもない数値だ。

 フリーザの次に強いとされるギニュー特戦隊のギニュー隊長ですら、その戦闘力は12万。

 ならば53万はまさに破格の数値。宇宙の帝王に恥じぬ強さのはずだ。

 だが、それがまだ全力ではない?

 最大で2500万にも届くターレスが届かないだと?

 それは、ベジータにとって絶望にも等しい宣告であった。

 

「俺は一度だけ、奴の兄貴を見た事がある」

「あ、兄、だと?」

「ああ。奴が偶然フリーザの宇宙船に立ち寄った時に、俺はその付近の警備に就いていた。

……正直ゾッとしたぜ。俺も少しは戦闘力を肌で感じる事が出来るが……ありゃあ桁違いだ。今の俺が大猿になっても勝負にならねえ。

多分、戦闘力にして軽く1億は超えてるぜ」

「ば、馬鹿な……」

「おっと、絶望するにゃまだ早い。肝心なのはここからだ。

これもあんたは知らない事だろうが、フリーザは変身型の宇宙人って噂がある。

実際、奴の兄貴とフリーザの姿はまるで異なっていた。

……もしフリーザが、兄貴と同じ姿に変身出来るとしたら、どうする?」

 

 ベジータの背筋を冷たいものが伝った。

 今の彼の戦闘力は、死を乗り越えて上昇したものの、数値にすれば3万程度だ。

 全力どころか、今のフリーザにすら遥か劣る。

 これがもし、ターレスの言う通りフリーザに1億を超える形態があるとすれば、つまりフリーザは現状において全力の1/200程度しか見せていない事になる。

 1%どころではない。0.5%だ。

 つまりベジータがフリーザに並ぶには、少なくとも今の3000倍以上に強くならなくてはならない。

 

「だから、俺はとにかく戦力が欲しい。

王子であるアンタなら、いずれは俺を超えるかもしれない。

俺達サイヤ人の手でフリーザを討つんだ」

「……気に食わん。気に食わん、が……確かに今の俺ではフリーザには到底及ばないらしい。

いいだろう、手を組んでやる。ただし俺の足を引っ張ったらてめえから先に死ぬと思え」

「おお、怖い。だがそれくらい威勢がいい方が頼もしいぜ。

よろしくな、ベジータ王子様よ」

 

 狙うは、サイヤ人の怨敵フリーザの首。

 その為に二人の悪しきサイヤ人が手を組んだ。

 無論そこに仲間意識があるわけもなく、ただ便利だから利用しようという打算があるだけだ。

 しかしこれは決して彼等二人が特別に冷酷なわけではない。

 サイヤ人とは本来こういうものだ。利己的で、自己中心的。

 それこそがサイヤ人という人種であり、ある意味において彼等はこの上なく正常であると言えた。

 ターレスは口角を吊り上げ、しかしすぐに気を取り直したように宇宙船内に設置したモニタへと視線を走らせる。

 ベジータには言わなかったが、問題はフリーザの強さだけではない。

 フリーザとの戦力差を少しでも埋める為の策の一つである神精樹。この惑星に来ると同時に確かに地に植えたはずのそれが、全く発芽しないのだ。

 

(ちっ……どこの誰かは知らねえが、俺以外にもこの惑星のエネルギーを吸い上げてる奴がいやがるな? すぐにでも叩き潰してやりてえ所だが、あまりフリーザ以外に構ってる余裕はねえ。どうしたもんかな)

 

 

 

 スラッグは突然変異で生まれた超ナメック星人である。

 その戦闘力は老いて尚156万に届き、他を寄せ付けない。

 ナメック星人唯一の戦闘型と言われるネイルの戦闘力が4万2千である事を考えれば、彼がいかに逸脱した存在かが分かるだろう。

 加えてカタッツの子のような分離もせず、まさに最強のナメック星人と呼ぶに相応しい強さを誇っていた。

 しかしその心は悪そのもの。

 かつてナメック星が異常気象に襲われた際、極寒のスラッグ星に飛ばされた彼はそこで完全な魔族と化し、他の星へと攻め込む侵略者と成り果てた。

 生まれてからこれまで敵らしい敵と出会った事もなく、同格どころか己に迫る者すらもが皆無。

 第一形態――とはいえ、宇宙最強とされるあのフリーザですら53万なのだ。これでライバルと出会えるわけもない。

 故にこそ彼は何の警戒も、危機感すらも抱いてはいなかった。

 

「この惑星は儂の遠い記憶を呼び覚ます……そうだ、儂は覚えている。どんな願いも叶う奇跡の球を。

お前達、あれを……ドラゴンボールを探すのだ。そうすれば儂は、永遠の若さを得る事が出来る」

 

 スラッグが恐れるのは寿命のみ。

 いかに強かろうと生き物である以上、いつかは老いて死ぬ。

 それが彼には耐えられなかった。

 これほどに偉大な己が、寿命などという運命が決めた摂理に従うなど冗談ではないと思った。

 そしてこの星にはそれを解消する手段がある。

 寿命の楔から解き放たれ、永遠を手に入れる方法があるのだ。

 ならば、それを追わない手などどこにもない。

 

「ゆけ、我が僕達よ。ドラゴンボールを儂の前へ持ってくるのだ」

 

 だからスラッグは至極当然の判断として部下達を放った。

 いくつかの強い気は感じ取れるが、どれも己を脅かすほどではない。

 もしかしたら部下の何人かは犠牲になるかもしれないが、それでも最後には自分が勝つという確信があるし、いざとなれば真の姿である巨身術を使えばいい。

 その実力に裏打ちされた傲慢さはなるほど、決して何も考えていないわけではないのだろう。

 しかし彼はまだ知らない。この星にいる者の何人かは己の全力をも凌ぐ力を隠している事を。

 

「スラッグ様……お言葉ですが、この星は太陽が多すぎます。

我等魔族が住むにはいささか不向きかと……」

 

 スラッグの判断におっかなびっくりといった様子で意見を出したのは、彼の部下の一人でもあるゼエウンという男であった。

 ヒューマンタイプに近いが、頭から生えた二本の角とオレンジ色の肌はまるで地球人の想像する鬼のようだ。

 髪は赤く、腰まで伸びている。

 その服装はほぼ半裸であり、身に着けているのは青いパンツとリストバンド、シューズ。それから首からパンツにかけて繋がっている『Y』の字のベルトだけだ。

 そんな変質者チックな恰好の鬼は、しかし外見に反してまともな事を言っていた。

 彼ら魔族……というより、惑星スラッグに住む者達は太陽の光が届かない極寒の環境下に適応し、進化してきた種族だ。

 それ故に太陽というものに酷く弱く、陽光を浴びては一時間と生きていられない。

 つまり、太陽が3つもあるこのナメック星は彼らにとってあまりいい星ではないのだ。

 スラッグは元々がナメック星人であるから、それでもこの星に居心地の良さを感じているが部下はそうではない。何故スラッグがこんな星を欲するかまるで理解できないのだ。

 しかしスラッグはそれに説明をするでもなく、己に意見した無礼者へ無言で気功波を撃ち込んで黙らせた。

 哀れ、ゼエウンは心臓を気で焼かれ、断末魔の声すら上げることが出来ずに動かぬ死体と化してしまった。

 

「ならば改造すればよい。ギョーシュ、何日必要じゃ?」

「は、はい、10日もあれば……」

 

 一つの惑星を10日で改造できる。

 そう言い切る彼は、決して無能ではない。むしろ有能である。

 しかしその言葉はスラッグの気に召すものではなく、またしても無言で放たれた気功波がギョーシュを焼き殺してしまった。

 

「どうじゃカクージャ」

「み、3日でやり遂げてみせます!」

「ならば早々にやれ」

 

 残るもう一人の科学者であるカクージャは咄嗟に、助かりたい一心で出来もしない時間を口にした。

 それを聞いたスラッグは彼を処刑せず、何とかカクージャは命を拾う事が出来た。

 とはいえ、3日はどう考えても無理だ。最初に答えた時間の半分もない。

 トボトボと作業に戻るカクージャの背は、気のせいか煤けていた。

 

 

 地球の成層圏付近にある神殿。

 如意棒にてカリン塔と接続されている間は実体化するそこは、今は如意棒を取られて再び別次元へと潜っている。

 加えてバリアも復活しており、リゼットの許可なくしては先代以外の何者も立ち入れない状況となっていた。

 少し厳しいようだが、これは当然の措置だとリゼットは考えている。

 何せこの神殿こそは地球防衛の要であり、最後の砦と呼んでいい場所だ。

 地球の気の乱れなどもここで管理しており、普通に考えるならば必要な時以外は防衛機構を働かせておくべきなのである。

 原作ではそれをせず、常に如意棒を刺しっ放しにして、その上バリアまで解除していたものだからガーリックJr.やら魔人ブウやらがホイホイ侵入してしまったし、GTではピラフ一味という本来なら絶対に入り込めないはずの雑魚にまで侵入されて究極のドラゴンボールを使われるという大問題まで起こしたのだ。

 

 しかし普段は何者も立ち入らせないはずのそこに、今はナメック星人達が集まっていた。

 最長老とデンデ、ネイル、それからツーノ村長の村人達全員だ。

 彼等をこれ以上ナメック星に残しても、いずれベジータかフリーザに殺されるだけだと判断したリゼットは地球の神殿に彼等を避難させるべきだと考えたのだ。

 自分達が守っていればフリーザ以外は跳ね返せるが、それは行動の選択が狭まる事を意味する。

 悪く言ってしまえば足手纏いだ。

 その点、現状は安全な地球の、その中でも最も安全だろう神殿に連れてくれば彼等が殺される心配はない。

 何かの間違いでターレスやらスラッグやらが現れる事を危惧しないでもなかったが、何故か彼らは二人共ナメック星に来ているのでその心配も消えた。

 回復役のデンデまでこちらに逃がすのは少し迷ったが、足手纏いという点では同じだし、回復なら充分に余っている仙豆がある。

 万一ドラゴンボールを揃えた時にどう願いを叶える、という問題もあったがそこはピッコロがいる事で解決した。彼もナメック語くらいは話せるので、やはりわざわざデンデを残す意味はない。

 

「それでは皆様。少し狭いかもしれませんが、戦いが終わるまではここに身を隠していて下さい。

ポポ、彼等の事を頼みます」

「任せて下さい、神様」

 

 ポポにナメック星人達の世話を任せ、ついでにヘブンズゲートに手を突っ込んでカリンを引っ張り出した。

 何かあるとは思えないが、念のためにカリンもこちらに置いて守りに就かせておくべきだと思ったのだ。

 そうして再びリゼットはナメック星へと戻ろうとする。

 しかしその背を、最長老が呼び止めた。

 

「お待ち下さい、地球の神よ。

これは元々我等ナメックの民に降りかかった災難。

ならばせめて、ここにいるネイルを連れて行って下さい。きっと力になれる」

 

 最長老からのネイル同行の申し出。これは本音を言えば勿論有り難い事だった。

 実力はともかくとして、ネイルがいればピッコロとの融合が可能となる。

 そうなればピッコロは今よりも強くなり、フリーザにすら匹敵する実力者へとなれるだろう。

 今でさえ界王拳込みとはいえ、原作における同時期のピッコロを上回っているのだ。

 ならばそこにネイルを加えれば、確実にフリーザにすら迫る超戦士となれるはずだ。

 しかし……融合とはある意味、死よりも残酷な事だとリゼットは考えている。

 この世界にはあの世がある。天国がある。生まれ変わりだってある。

 死んでもそこで終わりではなく、死後に続く道があるのだ。

 だが融合をしてしまっては、それすらない。

 基本となる人格に吸収され、その者は失われてしまう。

 勿論死んでいないのだからあの世にも行けない。こんな残酷な事があるか。

 申し出はありがたい……ありがたい、が、無理して融合させるまでもない。それがリゼットの出した結論であり、彼女の甘さでもあった。

 

「いえ……彼は貴方達の守りの要のはず。私達の戦いに付き合わせて死なせるわけにはいきません」

 

 ネイルの同行を断り、今度こそリゼットはナメック星へと戻った。

 これが正しかったのかは分からない。

 もしかしたら、これが原因で何かが狂ってしまうのかもしれない。

 だが、それでも不必要にネイルを消すなどという選択を選ぶ気にはなれなかった。




リゼット「え? 融合させずにそのまま使う選択はないのか、ですって?
……いや、戦闘力42000が今更一人加わっても……その、守りながら戦う余裕ないですし……。
今からじゃ鍛える時間もないですし……。多分、潜在能力もとっくに解放済みでしょうし……」
訳:戦闘力42000なんか今更参入しても足手纏いです。

・Mr.ポポ:16500→17万
・カリン様:16000→16万5000
・ベジータ:22000→29000

閻魔「地球に派遣した人材がえらい事になってるんだが……」
※カリン様とMrポポはあの世から派遣されてきた人材。いわば派遣社員である。
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