ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
「繰気弾!」
ヤムチャが掌に気を集中し、己の意志で自在に操作出来る気弾を生み出す。
見た目こそ何も変わらないが、修行により確実に威力が増しているそれを敵のサイボーグ戦士――カカオ目掛けて発射する。
右、左、上と目まぐるしく移動し、繰気弾はカカオを翻弄する。
防御するならば背後に回り、避けるならばその移動先へ先回りする。
自動追尾には出来ない細かいコントロール。それが繰気弾には可能だ。
「はっ、とう!」
やがてカカオの隙を見付けたヤムチャは、がら空きになった彼の腹部に繰気弾を叩き込んだ。
防御も許さないクリーンヒットにたまらずカカオが吹き飛び、地面に転がる。
すかさず追撃で気弾を叩き込み、爆発させた。
手応えあり! 勝利の予感にヤムチャは頬を緩め、爆煙を見る。
「ンダ!」
「!?」
だが煙を裂いてカカオが飛翔してきた事でその顔は驚愕へと変わった。
繰気弾を命中させ、倒したと思った直後の隙だらけの硬直。そこにカカオが身体ごとぶつかり、ヤムチャを岩場に押し付ける。
サイボーグの身体と岩場との間に挟まれるサンドイッチだ。
ヤムチャはその威力に吐血し、白目を剥いて崩れ落ちた。
「気円斬!」
ヤムチャ達から少し離れた戦場。
そこでクリリンは気を集約し、円盤状に薄めていた。
それを高速回転させる事で敵を切り裂く切断技、気円斬。殺傷力という点において彼の最高の技だ。
発射される気円斬。それに触れれば多少の戦闘力の差があれど容易く切り裂く事が出来るだろう。
それに対し赤い巨漢――アモンドは身体を高速で回転させた。
「勝ちたかったら、こうするんでっせい!」
そして、回転したまま気円斬と恐らくは同系統だろう緋色の薄い気弾を放つ。
その二つは中央で衝突し、相殺。
互いに弾かれ、それぞれの術者の元へと跳ね返って行った。
「んなっ!?」
クリリンは咄嗟に反射されてきた気円斬を避け、アモンドも同じく己の気弾を避ける。
技自体は互角。むしろ術者の気が劣っているのに相殺したという点ではクリリンの気円斬が勝るかもしれない。
だが気円斬が通じないというのはクリリンにとって致命的だった。
何故なら、これが効かないという事はクリリンが彼に勝てる技がないという事になってしまうのだから。
「そら、次でっせい!」
妙な語尾を付けながらアモンドが突撃する。
クリリンもそれに対し必死に応戦し、激しい攻防が始まった。
だが地の能力ならばアモンドが上だ。
彼の拳がクリリンの頬を打ち、膝が腹を蹴り上げ、クリリンが呻いた所を狙い澄ましてダブルスレッジハンマーを頭部に叩き付ける。
衝撃に意識が飛び、止めとばかりに固い地面に墜落する。
そしてクリリンが立ち上がらないのを確認し、アモンドは勝利を確信した。
天津飯はレズンとラカセイの双子を相手に一人で奮戦していた。
先程までは餃子もいたのだが、既にやられてしまったらしく気が殆ど感じられない。
双子故の一糸乱れぬ連携に晒され、必死に防いでいるのは流石というべきだろう。
だが限界はある。拳が、蹴りが、天津飯を確実に捉え始め、攻撃を受けるたびに動きが鈍くなっていくのが自分でも分った。
「く、くそっ!」
せめて1対1ならば……。
そう思うも、それは叶わぬ事だ。
レズンの拳が顎を跳ね上げ、ラカセイの蹴りが鳩尾にめり込む。
「ぐあっ……が!」
視界が薄れ、膝が地面に付く。
何とか倒れまいとする意志とは裏腹に、身体が言う事を聞かない。
薄れゆく意識の中で双子の勝ち誇った笑い声を聞きながら、天津飯は崩れ落ちた。
「ははっ、その程度か兎野郎!」
青髪の優男、ダイーズの猛攻に晒されながら兎人参化は必死に耐えていた。
相手の男のあまりの速さに防御が間に合わない。
手で触れる機会がない。
拳がめり込み、顔を蹴られ、無様に地面を転がされる。
「やれやれ、とんだ雑魚だったな」
ダイーズが勝利を確信した笑みを浮べながら兎人参化へと近付いた。
その瞬間、人参化は立ち上がって掌底を突き出す。
しかしダイーズは余裕の表情で、いとも呆気なくそれを弾いてしまった。
「へ、そんなのが最後の抵抗かい?」
「……触りましたね」
「あ?」
――次の瞬間、彼は人参へと変わっていた。
触れれば相手を人参へと変える。
その恐るべき特異体質を以て、圧倒的に格上であったはずの彼を見事打ち倒してみせたのだ。
落ちた人参を素早く踏みつけると、グシャグシャと跡形もなくなるまで砕き散らす。
人参になったままならば、まだ元に戻る事は出来る。
しかしこうして砕いてしまえば、もう手遅れだ。
これでとりあえず、クラッシャー軍団の一人は倒した事になる。
「ふう、何とか倒せましたね。
さて、他の皆さんは……」
言って、空を見上げる。
するとそこには、丁度戦士達を倒してきたクラッシャー軍団の4人が滞空し、こちらを殺意の眼差しで睨んでいる所であった。
「…………どうやら、全員負けてしまったようですね」
諦めの心境で呟く。
ああ、これは無理だ。
4人とも今の場面を見ていただろうし、実際近付いてこようとしない。
遠くから気弾の連射で仕留める気満々といった顔だ。
4方向から一斉に発射される気弾の嵐を眺めながら、兎人参化は己の敗北を受け入れた。
撃たれる、撃たれる、撃たれる。
気弾が全身に当たり、地面を砕き、それでも尚足らぬと気弾が浴びせられる。
サングラスが砕け、毛皮が血に染まり、意識が朦朧としていく。
このまま攻撃が続けばものの10秒も待たずに兎人参化は死んでいただろう。
しかし悪運が強いのか、それとも死ねないからこそ運が悪いのか。
結果を言えば、彼は死ぬよりも早く助けられる事となった。
「やめろーーー!!」
叫び声をあげながら悟飯が空より降下する。
どうやらチチの目を盗んで抜け出してきたらしい彼は、怒りのままにレズンを蹴り飛ばした。
しかし勢いよく飛び込んできたはいいものの、悟飯の戦闘力は戦士達の中で最も低い。
残念ながら餃子にすら劣っているだろう。
その理由は、サイヤ人を待つ1年の間に彼だけがリゼットの気霊錠を付けていなかった事に起因する。
リゼットが戦士達に気霊錠を付けた時、彼だけが気のコントロールどころか戦い方すら知らない子供だった。
だからリゼットは彼に気霊錠を与えず(与えてもただの拘束具にしかならないからだ)、それが今になって明確な差として響いて来たのだ。
「このガキ!」
「邪魔だ!」
飛びこんだ事で、とりあえずクラッシャー軍団は兎人参化から悟飯へとターゲットを移した。
だがそれは獲物が変わっただけに過ぎず、肉食獣の群の中にシマウマが自ら飛び込んだに等しい。
クラッシャー軍団の猛攻を受けて悟飯は瞬く間に傷だらけになり、岩に叩き付けられる。
彼の戦闘力では己が何をされているかも解らず、ただ高速で動く複数の影に滅多撃ちされているとしか認識出来ない。
「止めだ!」
動け無くなった悟飯に、先程蹴られたレズンが飛びかかる。
狙いは首、そこに手刀を突き立てればいかにタフなサイヤ人と言えど生きてはいられないだろう。
しかしまさにその魔手が悟飯に当たる直前に、割り込んで来た緑色の腕がレズンの腕を鷲掴みにする事で悟飯の命を救った。
「……あ……」
呆然と見上げる悟飯の前で、白いマントがはためく。
レズンの腹に拳が突き刺さり、胸倉を掴み上げて強引に引き戻す。
最後に顔の前で気功波を放ち、レズンの首から上を消し飛ばした。
「……大丈夫か、悟飯」
「ピッコロさん!」
悟飯を庇うように立つそれは、敬愛する師匠であるピッコロであった。
彼の登場に、先程まで余裕を見せていたクラッシャー軍団も警戒したように距離を取る。
レズンを一蹴したその実力を見て、只者ではないと理解したのだろう。
素早くスカウターを操作すると、アモンドはピッコロの戦闘力を計った。
「戦闘力9000……なるほど、こいつは手強そうだ」
「だが俺達3人でかかれば、どうとでもなる数値だぜ!」
「ンダ!」
ピッコロの戦闘力は他の戦士を上回る。
だがそれはラカセイからすれば僅差でしかなく、アモンドとカカオに至ってはピッコロに勝ってすらいる。
レズンが一蹴されたのは恐らく、油断を突かれたからだろう。
3人はそう判断し、ピッコロを取り囲んだ。
「へっ……そいつはどうかな?」
だが3人を前にしてもピッコロの余裕は崩れない。
それどころか不敵な笑みを浮かべ、そしてその全身が真紅のオーラに包まれた。
戦闘力を瞬間的に跳ね上げる『界王拳』特有の、炎のように燃え上がる気。
それがピッコロのマントをはためかせ、戦闘力を一気に上昇させる。
「な……せ、戦闘力18000でっせい!?」
「ンダ!?」
「そ、そんな馬鹿な!」
アモンド、カカオ、ラカセイが表示された数値に目を見張る。
その隙を逃さず、ピッコロはまるで爆ぜたかのようにその場を飛び出した。
ピッコロの蹴りがアモンドの胸を抉り、胃液が逆流する。
「ずえりゃあああああ!」
アモンドがたまらず屈んだ所で頭を掴み、膝を叩き込む。
のけぞれば、今度は追い討ちのストレートで顎を打ち抜き、倒れかければそれよりも早く腹にエルボーをめり込ませる。
「野郎!」
ラカセイがアモンドを救うべく拳を突き出す。
その一撃は見事貫通し、ピッコロのマントを貫いた――マントだけを。
瞬間、マントを外したピッコロがラカセイの頭上に現れ、肘を頭部に打ち込む。
この時点でスカウターは瞬間的に戦力値22000を計測していたが、残念ながらラカセイがそれを見る事はもうない。
今の一撃で完全に意識が飛んでしまったからだ。
「かあっ!」
意識を失った相手に対する容赦のない止め。
気功波が防御も出来ないラカセイの身体を粉々に吹き飛ばし、それを見届ける事もなくピッコロはカカオに狙いを変える。
ヤムチャを倒したカカオのジェット噴射を正面から受け止め、足場を削りながらその勢いを殺す。
そしてカカオの速度が鈍った瞬間に目から怪光線! カカオの顔を焼き、彼を激痛で悶えさせた。
「っりゃあ!」
だがピッコロの攻めに休みはない。
カカオの頭を掴んで引き寄せると膝蹴りを叩き込み、更に回転。
遠心力を上乗せして、カカオの身体をアモンドへと投げ付けた。
当然、サイボーグボディのカカオなどぶつけられればアモンドといえどたまったものではない。
二人は衝突によりダメージを受け、無様に地面を転がる。
「……くたばれ!」
そこに連続エネルギー弾!
両手から次々と繰り出される気弾が弾幕を展開し、カカオとアモンドを飲み込む。
避けようにも、重なり合った互いの身体が邪魔で動くに動けない。
防御も回避も満足に出来ないまま、二人はピッコロの気弾を浴び続けるしかなかった。
「魔貫光殺砲!」
だがそれで耐えられるかと言えば、答えは否だ。
ピッコロは更に気を高め、以前よりも格段に発射時間を短縮した必殺の一撃を放つ。
一条の光が奔り、直後にその後を追うようにもう一つの光が螺旋を描きながら追従する。
まるでドリルのように貫通力に特化させた、かつてラディッツ諸共悟空をも殺した奥義。
それが虫の息のアモンドとカカオを仲良く貫き、絶命させた。
それを確認し、ピッコロは赤いオーラを解除する。
「ピ、ピッコロさん……今の技は……?」
「……孫の奴が界王の所で学んだという界王拳だ。
力、スピード、タフさ……これを使えば、全てが倍になる」
ピッコロは悟飯の方を振り向き、ニヤリと笑う。
その笑みはどこか、自嘲をも含んだものだ。
「孫の奴に置いて行かれるのは屈辱だが……奴を真似るのも同じくらいの屈辱だったな」
ピッコロは、前回のサイヤ人との戦いで己の無力さを悟った。
悟らずにはいられなかった。
界王の所で修行してきた悟空は基礎的な強さこそピッコロと変わらぬが、しかし悟空の気を常に追っていたピッコロには分かっていた。彼の気が時折、明らかに倍以上に膨れ上がっていたのを。
つまりこれは倍以上の差を付けられたのと同義であり、もはやライバルなど名乗れるものではない。
だがその悟空ですら大猿と化したベジータには手も足も出ず、そのベジータすら今代の神には太刀打ち出来なかった。
弱い……俺は何と弱いのだ。
これで世界征服だなどと、いい笑い話だ。
これでは弱者が必死に遠吠えをしているようなものではないか。
何と滑稽で、何と惨め。大魔王だなどと、一体どの面を下げて名乗ればいい。
故に、ピッコロはプライドを一時捨てた。
孫悟空に組手を持ち掛け、連日彼と戦って打ちのめされた。
その中で悟空の気の動きを観察し続け、界王拳を体得するに至ったのだ。
無論屈辱であった事は言うまでもない。
言葉にして教えてくれと言ったわけではないが、それでも悟空に教えを乞うも同然の行いで、考えるだけで自殺したくなるほどに無様だった。
しかし、今のままでは己は惨め過ぎる。
……ならば耐えるしかない。
この屈辱を噛み殺し、まずは力を付ける。
そうしなければ世界など手に入らない。守護者たるあの女にはまるで届かない。
強くなりたい。その一心のみで大魔王は必死に足掻く。
いつか掴むべき、世界を手にするその日まで――。
リゼットのせいでピッコロさんが妙に苦労人になっている気がしないでもない。
そしてそこまでして戦力を上げても瀕死パワーアップであっさり引き離される。
頑張れ、一応この悟空は劇場版本編よりは弱いぞ。
【各キャラ戦闘力】
―地球側―
・孫悟空(ベジータ戦で瀕死パワーアップ)
基本戦闘力:15000
界王拳2倍:30000
界王拳3倍:45000
界王拳10倍(一瞬のみ):15万
・ピッコロ
基本戦闘力:9000
界王拳:18000
マント抜き:22000
・ナッパ:7000
※瀕死パワーアップ
・以下、前回から変化なし
―クラッシャー軍団―
・ターレス:82万
・アモンド:9100
・ダイーズ:8400
・カカオ:13000
・レズン:8000
・ラカセイ:7600
―(今の所)不参加―
・リゼット
基本戦闘力:12万
最大戦闘力:900万