ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
カメハウスより南方。
紅海の中央に聳え立つ宮殿がある。
その場所こそ、かつて先々代の神に反逆したガーリックの息子であり、そして神への復讐を誓うガーリックJr.の宮殿だ。
部下のジンジャー、ニッキー、サンショを従え、まず当面の目的として狙うのはドラゴンボールによる不老不死の実現。
先代の神を討つのに、彼自身が生み出したドラゴンボールを使う。これほどの皮肉があろうか。
ボールは既に6つ集め、後は一つで不老不死が実現する。
そうして決して死なぬ永遠を得てから憎き先代の神、さらに今代の神をも始末し、世界を手中に収めるのだ。
「後一つでドラゴンボールが揃い、俺は永遠の命を手に入れる。そうなれば俺はもう死ぬ事がない。永遠にこの世界を支配し、全てを地獄へと塗り替えるのだ!」
己の野望を声高らかに叫び、部下の3人がそれに合わせて平伏する。
魔族が支配する世界がすぐそこに来ている。
今代の神は歴代の神の中でも特に飛び抜けた力を持つらしいが、それでも永遠の命には敵うまい。
だが、彼は一つの失敗を犯した。
永遠を欲してドラゴンボールを集めるなら、まずはそれに終始すべきだった。
ピッコロ大魔王に手を出すべきではなかったのだ。
確かにピッコロと先代は一身同体、ピッコロを殺せれば先代も死ぬ。
しかし一身同体故にピッコロの身に何かが起これば先代にそれを知らせるも同義であり、仕留め切れなかった時のしっぺ返しは大きい。
彼はそれを失念しており、そしてまさに今、その代償を払わされようとしていた。
「永遠の地獄ですか。それは穏やかではありませんね」
光の柱が天より降り注ぎ、ガーリックJr.達の前へと突き刺さる。
その中より現れたのは、よく知る憎き先代の神。
そして白いケープドレスを着こなし、淡く輝く白の女神。
今代の神――リゼット。
2柱の神が孫悟空に先んじて、ドラゴンボールが集まるよりも早くこの宮殿へと乗り込んできたのだ。
「先代の神と……今代の神か! ちいっ、忌々しい……もう少しで永遠の命が手に入ったものを! ジンジャー! ニッキ! サンショ! やれい!」
ガーリックJr.の号令に従い、配下の3人衆が飛びかかる。
だが先代は動じず、リゼットだけが前へと出る。
しかし前に出るだけで何の構えもなく、ただ一言、『命令』を告げた。
「
瞬間、三人衆は音もなく崩れ落ちた。
その顔には生気がなく、白眼を剥き、二度と動く事はない。
死んでいる――ただ一言、『死ね』と命じられただけで死んでいるのだ。
この手品の種を明かしてしまうのなら、何て事はない。
格上に通じない事に定評のある超能力の一つ、金縛り。
それを全身のみならず、脳と心臓にまで与えて強制的に絶命させた。
それだけの事であり、わざわざラテン語で発した命令には実の所何の意味もない。
かめはめ波を実は無言で撃てるのを、あえて気合を入れて「かーめーはーめー波ー!」と引き伸ばしが酷い時は数分かけて叫ぶのと同じであり、単なるリゼットの気分出しでしかなく、実は何も言わなくても使える子供騙しだ。
知識の中にあった『デビルマンG』のダンテの技が格好よくて神様っぽかったので真似て再現してみただけのリゼットの遊びである。
しかしそんな物でも、やられた側にすれば驚愕に値するだろう。
事実ガーリックJr.は何が起こったかも認識出来ず、ワナワナと震えている。
「無駄だガーリックJr.……今代の神は儂や歴代の神とは比較にならぬ力を持つ、宇宙からの危機に対抗する為の戦女神。お前如きがどう背伸びしても太刀打ち出来る相手ではない」
何もしてないのに何故か偉そうな先代が威厳に満ちた声で告げる。
しかも勝手に戦女神にされている。
どちらかというと旅の神とかの方がリゼット好みの呼び方だ。
「だっ、黙れえ!」
やはりというべきか、言葉で引き下がるガーリックJr.ではない。
全身の筋肉が膨張し、今までピラフ並の身長しかなかったものが、一瞬にしてマッシヴな巨漢へと変貌した。
しかし悲しいかな、戦力に差がありすぎる。
殴りかかってきた巨腕はあっさりとリゼットに指先一つで止められ、軽く指で弾いただけで5回、6回転して地面に這い蹲った。
「馬鹿な、こんな、こんな事が……」
実力の差は既にこれ以上ない程に思い知っただろう。
それでも尚諦め切れないのは流石というべきか、引き際を知らないというべきか。
ガーリックJr.は憎悪に曇る視線でリゼットを睨み、そして手を上空へと掲げる。
気が高ぶり、何もないはずの空間に黒い虚無が生まれ、何もかもを飲み込もうとする。
ガーリックJr.の切り札であるデッドゾーンだ。
こうして実物を見ると、まさにブラックホールそのもの。上手く使えば実力の及ばぬ相手であろうと倒せる可能性を確かに秘めている。
だが――。
「無駄です」
「ぐがあっ!?」
ガーリックJr.を見据え、無動作からの気合砲を放つ。
手を振るう必要すらない、睨むだけで発動するノーモーションの便利な技だ。
すると見えざる気の圧力が彼を弾き、彼自らが生み出したデッドゾーンへと吹き飛ばした。
確かにデッドゾーンという技自体は格上殺しだ。上手く決まればリゼットだろうと倒す事が出来る。
しかしそれを扱うガーリックJr.が強くなるわけではなく、実力に差があれば飲み込まれるより先にガーリックJr.をデッドゾーンに叩きこむという勝ち方が出来てしまう。
「おのれっ! おのれええええええ!!」
結局の所、運命なのだろう。
ガーリックJr.は悲鳴をあげながらデッドゾーンへと吸い込まれ、そして術者が消えた事によりデッドゾーンも解除された。
後は主を失った宮殿の残骸が残るばかりだ。
リゼットは顔にかかった己の髪を指で払いのけ、小さく溜息を吐く。
それから超能力で6つのドラゴンボールを世界各地へと飛ばし、後片付けとばかりに宮殿跡を消して更地へと変え、そこに植物の種を適当に撒いて気を与えた。
これで数ヶ月もすればここは森に変わり、以降は多くの動物を育んでいく事だろう。
そうしてやる事のなくなったリゼットは眠っている悟飯を抱え、ここに向かってきた悟空と合流。彼の息子を無傷で引き渡した。
★
リゼットが神の座を継いでより5年。
地球は気が抜けそうなほどに平和な日々が続いていた。
先代より神としての業務を学んだり、天気をバランスよく変えたり、修行したりと色々してはいるが慣れればどれも楽なものだ。
ガーリックJr.からパクったデッドゾーンも改良を進め、そろそろ使い物になるという所までは漕ぎ付けている。
技名は――まあ、ヘブンズゲートとかでいいだろう。
デッドゾーンと魔封波の合わせ技で、対象を吸い込んであらかじめ用意した封印の壷の中に入れてしまうというものだ。
要するにただの道具無し魔封波とか言ってはいけない。作るのに苦労したのだ。
一応送り先の封印壷は天命石でポポに作らせた特別製で、簡単には壊れず、また邪悪な気の持ち主以外は封印されてもすぐに出られるようにしてある。
これで万一自爆してしまっても大丈夫というわけだ。
また、この技は改良の結果空間移動としても使用可能になり、リゼットが一度行った場所……というよりは、座標を覚えている場所ならどこでも行けるどこでもドアとしても利用出来るようになった。
まあ、瞬間移動のようにすぐに移動出来るものではなく、咄嗟に使えるものではないので戦闘中の回避行動などには全く役に立たないのが難点だが……移動用と割り切ればそこそこ使えない事もない。
それと並行してリゼットは、いずれ来る地球の危機に先んじて戦士を育てるという試みを始めていた。
といっても、その対象は現在Mr.ポポと兎人参化の二人だけだ。
他にはナムやチャパ王も一応候補として考えたのだが、どう考えても途中で年齢による劣化が入り、使い物にならなくなるのでスカウトはしなかった。
Mr.ポポと兎人参化は一応、現時点でも悟空やピッコロと同等程度には強くなっているので、もう少し修行すればサイヤ人との戦いにも投入出来るかもしれない。
特に兎人参化は触れるだけで相手を人参にしてしまうので、格闘戦が成立する程度のレベルならば基本的に必勝だ。
ドラゴンボール特有の格闘戦なぞしようものなら、その瞬間彼の勝ちが確定する。
一方でヤジロベーは……もう諦めた。
それによく考えれば、彼がいる事で仙豆が激減してしまうので、これはこれでよかったのかもしれない。
カリン塔の仙豆は未だ全く減っておらず、これから1年後にはわずか2粒になってしまうなど考えられない事だ。
要するに、そういう事だ。
本来の運命で仙豆があれだけ減ってしまったのは結局ヤジロベーが原因だったのだろう。
仙豆は一粒食べれば10日は食べなくても済むほどに栄養満点だ。
しかしヤジロベーが原作でカリン塔に住み着いてからサイヤ人編までは実に10年近くの時が経過している。
10日に一粒食べると計算しても、サイヤ人編までに365粒は食べてしまう計算だ。無くなって当たり前としか言えない。
それをリゼットが変えてしまったものだから、この世界では仙豆が余るほどに残っている。
時々カリンがおやつとして食べているが、それでも無くなる気配がない。
準備は万端といっていいだろう。
そして、運命の歯車を回す孫悟空の兄も地球へ訪れたようだ。
とりあえずリゼットが気を抑えて地上を観察していると、まずラディッツはピッコロのもとへと赴き、その後に悟空の所を訪れて悟飯を誘拐した。
それに対し悟空はピッコロと共同戦線を張り、ラディッツと戦う事にしたようだ。
ここまでは運命通りだ。リゼットの知る内容と一致する。
しかし戦いの内容がおかしかった。
ラディッツが妙に強い。
悟空とピッコロを圧倒し、更に怒りを爆発させた悟飯の突撃すらも回避してしまう。
今の悟空とピッコロは同時期の原作よりも強い。なのにラディッツが優勢に進めている。
これは妙だ、そして何より不味い。
悟飯から受けたダメージがないと悟空では抑え込む事など出来ない。
となれば、倒す事が出来ないのだ。
「私がいるせい……? 運命がズレてしまっている?」
リゼットは背筋に冷たいものを感じていた。
明らかに運命の歯車がズレている。
自分はラディッツに対し何かした覚えなどないが、バタフライエフェクトという言葉もあるように、ちょっとした行動が未来への影響を与えかねない。
ともかく、このまま傍観しているのは不味い。
リゼットは即座に超能力を発動し、遠く離れたラディッツの動きを制止する。
確かに多少は強くなっているが、それでもリゼットならばまだ余裕で封じ込める事が出来るレベルだ。
(さて……彼には悪いですが、そろそろ倒れて頂きましょうか)
リゼットの黄金の瞳が鈍く輝き、ラディッツの心臓を圧迫した。
何をする気か――そんなものは問われるまでもない。
彼はサイヤ人の脅威を悟空達に教えた。一年後にさらに強いサイヤ人が来る事も語った。
これで戦士達は危機感を抱き、爆発的に強くなる事だろう。
後は悟空が界王星で修行を積むだけだが……これは別に死ななくとも出来る。
ドラゴンボールを使い、悟空を界王星へ転移させてしまえばいい。
界王星はあの世から続く場所にあるが、しかし決して別次元にあるわけではない。
瞬間移動で到達できる事からも分かるように、この宇宙のどこかに存在している惑星だ。
ならば悟空を見殺しにする必然性はない。
ラディッツをここで潰し、ドラゴンボールで悟空を生きたまま向かわせる。
リゼットだけならばドラゴンボールなど使わずとも生身で界王星まで行く許可が降りるだろうが、流石に神でもない悟空が生きたまま向かう許可は降りない。
故にドラゴンボールをここで使う。本来ならば悟空を蘇生する事に使うはずだった願いを前借りする形だ。
そして帰りは……まあ、こちらは悟空に自力で頑張ってもらおう。
その判断のもと、リゼットはラディッツを葬るべく念力を強めた。
しかし、それと同時に下界から突如として紅い気功波が飛来した。
「っ!」
リゼットはこれを咄嗟に避ける事が出来ずに被弾してしまった。
吹き飛ばされ、空中で回転して何とか着地する。
一方地上では悟空がラディッツを羽交い絞めにし、ピッコロが魔貫光殺砲で悟空諸共ラディッツを撃ち貫いていた。
これで本来の運命通りになってしまったわけだが、しかしリゼットはもうラディッツを見てはいなかった。
そちらに目を向けている余裕などなかったからだ。
悟空達から少し離れた位置。
そこに見慣れぬ――恐らくは魔族だろう妖艶な女が立っている。
赤いボンデージのような衣装に身を包んだ、白髪青肌の女。
手には杖を持ち、隣には同じく赤い衣装の体格のいい男が佇んでいた。
男は掌をこちらに翳しており、今の攻撃は彼が放ったものだと分かる。
直後に何処からともなく現れた仮面の……気のせいか悟空とよく似た髪型の男が魔族の男へ殴りかかり、高速で戦闘をしながら何処かへと消えてしまった。
あの二人は一体……見覚えはないが、只者ではない事は確かだ。
……見覚えがない? 本当にそうか?
否、あの二人の魔族とはどこかで会っているような……。
彼女はこちらの視線に気付いたのか、微笑を浮べるとまるで最初からいなかったかのように姿を消してしまう。
今のラディッツの変貌は間違いなく彼女によって起こされたものだ。
だが何の為に? 何が目的で?
(おかしい……あんなのは私の知る記憶の中にいない。一体何が起こっているというのですか)
リゼットは、かなりドラゴンボールに詳しい方だと自分では思っている。
原作は勿論として無印やZ、劇場版、GT、更にはゲームまで網羅している。
アニメオリジナルの細かい所は流石に怪しいが……まあ、ほぼ知らないキャラクターはいないレベルだ。
その中には魔人オゾットというファンでもあまり知らないようなマイナーなゲームのオリジナルボスや、フリーザに吐息だけで殺されてしまったアニメオリジナルの戦闘タイプのナメック星人まで含まれている。
リゼットの前世は2012年で死亡しており、知識もそこまでで途切れている。
だが、それでもテレビシリーズ最終作である『GT』から15年経っており、ドラゴンボールを知る上では十分だろう。
それこそ、十五年以上経った後に
だがそんな彼女でも、あの魔族二人には全く心当たりがない。
得体の知れない存在の出現。
その事にリゼットは、心がざわめくのを止める事が出来なかった。
・ちなみに、無情な話だが結果的にはここで悟空が死んで正解。
リゼットのプランは例えるならばカリン塔を登らずに飛行機でカリン様の所まで行くようなもので、初対面でこんな事をやって修行を付けて貰えるかは疑問。
てゆーか多分無理。
蛇の道はただ長いだけの道ではなく、界王の修行を受けるに相応しいかを試すテストである。
かといって神龍に頼んで蛇の道の前に悟空を移動させても、それはそれで閻魔の許可を取らずに無断侵入している事になるので、やはり問題。
結局の所、ソウルジェムが魔女を生むなら悟空が死ぬしかないじゃない!
【もし悟空が生き残ったら】
悟空がラディッツ戦で生存するIFルートは『強襲!サイヤ人』ゲームで見る事が可能。
悟空が生きたままラディッツを倒すと神様が現れ、1年後にやってくるサイヤ人を倒すには界王様の所で修行するしかないと教えてくれる。
その際の台詞がこちら。
かみさま「よく たたかった! しかし 1ねんごに
やってくるサイヤじんの つよさは
そうぞうをぜっする! そこでだ・・・」
かみさま「ゴクウよ! おぬしを カイオウさまの
もとにおくり しゅぎょうをしていただこうと
おもうのじゃ! カイオウさまはぜんうちゅうの
かみさまの ちょうてんに たたれている
おかただ! さいごの のぞみなのじゃ!」
かみさま「ただし そのためには ゴクウよ!
しなねばならんのじゃ! しんだものしか
カイオウさまのもとへ いけぬのだ!!」
!?
そして ゴクウは みずからの いのちをたち
かみさまとともに あのよへむかった・・・・
!?