ドラゴンボールad astra 作:マジカル☆さくやちゃんスター
ピッコロとシーラスが戦っているすぐ近くに、新たな襲撃者が大地を砕いて着地した。
それはブウと17号、18号が足止めしていたはずのモロだ。
この男だけは絶対に地球に降下させてはいけなかった。
何故なら、地球に降り立ったその瞬間から星のエネルギーを吸い上げ、そこに暮らす生き物のエネルギーも吸われてしまうからだ。
エネルギー吸収といえば過去に戦った人造人間19号と20号が思い出されるが、あんなレベルではない。
モロの吸収は直接触れていなくても発動する。対峙しただけで常に19号に掴まれているのと同じ状態になるのだ。
咄嗟にブルマが影響を最小限に止めるべくバリアを二重に張り直すが、これもどこまで被害を抑えられるか分からない。
何より、バリアの内側にいるピッコロ達がエネルギー吸収を受けるのを避ける方法がなかった。
「モロ……来たか」
「アムズ……か? 随分姿が変わったな」
「アムズではない。今の私はシーラスだ、覚えておけ」
シーラスがあらかさまな敵意を隠さずにモロを睨み、そのような視線を向けられる覚えのないモロが不快そうに顔をしかめる。
「何だ? 俺に何か言いたい事でも?」
「……いや、何でもない」
シーラスの最終的な目的はこの世の悪と、愚かな神の根絶である。
当然モロも例外ではない。
今はハーツの意向で共闘関係にあるが、シーラスはモロを仲間と思っていなかった。
ハーツはいい意味でも悪い意味でも大らかだ。
あくまで最優先目標は全王含む神々の排除であり、その目的さえ達成出来てしまえばその後の事は考えていない。
ハーツの目指す『自由』とは何も平和な世の中を指すのではない。
人の愚かさも含めての自由なのだ。
だから神がいなくなった後に人同士で滅ぼし合おうと構わない。
仮にクウラがリゼットに勝利して全宇宙がメタルクウラに滅ぼされたとしても、それはそれで人の自由な選択の結果として喜んで受け入れただろう。
無論、滅びよりは人が生き続ける世界の方がいいので目指せる範囲内でいい結果になるように努力するが、それでもハーツの在り方は矛盾に満ちていて危うい。
だからモロのような見えている爆弾であっても愛するべき『人』として迎え入れてしまう。
ハーツは決してモロが裏切らないと思っているわけではない。
神を消した後ならば別に裏切られてもいいさと思っているだけなのだ。
モロが世界を食いつくしてしまっても、それもまた人の選んだ未来。自由な選択だ。
そんなハーツの在り方をシーラスは決して嫌いではない……だが、その点に関しては譲れない。
悪の存在しない平和で優しい世界の方がいいに決まっている。
だからモロの役目が終われば、たとえハーツが止めてもすぐに殺すと決めていた。
だがそれは、今ではない。
「まあいい。折角美味そうな奴等が揃ってるんだ。エネルギーを頂くぞ」
モロが笑みを浮かべ、エネルギーの吸収を発動した。
シーラスを除くその場の全員を脱力感が襲い、ピッコロはモロを止めるべく咄嗟に飛び出す。
だがモロはピッコロの攻撃を余裕をもって受け止め、ピッコロの背後に回り込んで首を掴むと、反撃の蹴りで弾き飛ばしてしまった。
「ちっ……!」
何とかダウンせずに着地するが、こうしている間にも力が抜けていくのが分かる。
これは非常に不味い事態だ。こうなるのが分かっていたから、モロだけは何とか月で足止めしようとしたのに、失敗してしまった。
形勢は完全に傾き、いかにピッコロでもここからの逆転は厳しい。
遅れてブウと見知らぬ戦士――外見からして17号と18号が合体した戦士とすぐに分かった――が着地し、モロが嘲笑いながら振り返った。
「来たか、間抜け共。だがもう遅い……貴様等に勝ち目はないぞ」
「ちっ……!」
ラピスラズリが歯噛みするが、残念ながら事実であった。
そもそも戦闘力でモロとアムズはこの場のほぼ全員より格上なのだ。
唯一対抗出来るピッコロはエネルギー吸収で弱り、ブウもラピスラズリもこの二人を倒すには至らない。
しかもモロはピッコロをコピーした事で更に力が増している。
まさに絶体絶命……だが、救援者は意外な場所から現れた。
――上空から、二人の男が降ってきた。
一人は黒いコートを羽織った紫色の異星人。第6宇宙最強の殺し屋、生ける伝説。百発百中のヒット。
もう一人は灰色の身体を赤いスーツで包んだ第11宇宙最強の正義の化身。灰色のジレン。
ヒットが不意打ちでモロの目の前に出現して顔面を殴り、ジレンが急降下してシーラスの頭を掴んで地面に叩きつけた。
そのまま返す刀でモロの頭部を殴打――額の水晶を破壊する。
この一撃でモロが持つセブンスリーのコピー能力が機能停止し、せっかくコピーしたラピスラズリとピッコロの力が失われてしまった。
「お前達は……ヒット! ジレン! 何故ここに!?」
「仕事だ」
「仲間を取り戻しに来た」
ピッコロの疑問に、それぞれが簡潔に答えた。
神々がいない今、宇宙から宇宙へ渡るのは難しい。
しかし界王神界で治療を受けていたヒットは回復すると同時に神々の乗り物である『キューブ』を無断借用し、同様にジレンもベルモッドのキューブを勝手に使って第7宇宙へ飛来……二人はこの宇宙で合流を果たしていた。
モロはよろめきながらもヒットとジレンを睨み、シーラスも何とか立ち上がる。
「ぐ……新手か。だが誰が来ようと同じ事!」
モロがエネルギーの吸収を再び使用し、ヒットとジレンの弱体化を図る。
だが二人の顔色は変わらない。
ヒットはいつも通りの無表情で、コートのポケットに手を入れたまま無防備にモロに近付き、ジレンは全身に力を入れ……呆れた事に、身体から出て行こうとする気を無理矢理留めた。
そして次の瞬間、モロは背後から見えない拳を受けてよろめいた。
「どうやらその吸収能力も並行世界までは及ばないようだな」
攻撃を繰り出したのはいつの間にか後ろに移動していたヒットだ。直後に目の前にいたはずのヒットが消え、前にいたのは幻影だったとモロは理解した。
ヒットは時飛ばしの応用で並行世界を作り出し、その中に逃げ込む事が出来る。
その力で彼はモロの吸収を上手く避けていた。
ヒットを厄介と見たモロが反撃に出ようとするが、次の瞬間にジレンの拳が頬にめり込んで地面に叩きつけられた。
あまりの威力に角がへし折れ、地面を砕いてバウンド……浮き上がった所で今度はアッパー。
モロの身体がまるで車輪のようにグルングルンと廻り、血飛沫を撒き散らす。
「が……あっ!」
モロが地面を削ってダウンし、何とか顔を上げる。
すると、そこにはゴミを見るような目で見下ろすジレンの巨体があった。
「ハーツを出せ。雑魚に用はない」
「雑魚だと……この俺が、雑魚だと!?」
ジレンから下された評価に腹を立てたモロが痛みを無視してジレンの顔面に拳を叩き込んだ。
……が、無傷。
ジレンは表情一つ変える事なく、モロの渾身の拳を平然と耐えてみせた。
そこからアッパー。ジレンの巨腕が腹にめり込み、モロの背中がそのまま突き破られてしまいそうなほどに盛り上がる。
「お前は
「ご……お……っ」
吐瀉物混じりの血を吐き出し、モロが悶絶する。
更に追い打ち。両手を組み合わせてモロの頭部を砕かんと力を籠める。
だがシーラスが割り込んで棍を叩き込み、ジレンを弾き飛ばした。
ジレンは空中で一回転すると着地し、つまらなそうにシーラスを見る。
「誰かと思えば、あの時の負け犬か。より下らん姿になったな」
「何とでも言うがいい。全ては私の目指す正義の為……邪魔をするならば貴様もここで始末する」
「悪と手を組むのがお前の正義か。薄っぺらい、何の価値もない正義だ。
己の正義に自信がないからそうして、自分より正しく見える『誰か』を真似る。
その姿こそまさに、お前の薄さの象徴そのもの……お前は所詮その程度だ」
ジレンが飛び込み、シーラスを正面から殴り飛ばした。
一瞬で追いついて更にもう一発。一撃で骨が軋み、無力感を問答無用で味わわされる。
シーラスが空中で体勢を立て直して気功波を放つ。
だがジレンは片腕だけであっさりと気功波を弾き飛ばし、つまらないものを見るようにシーラスを見上げた。
「……黙れ! その余裕もここまでだ! ヒーローズ・ワールドミッション!」
シーラスの使用した技を、ジレンは僅かに警戒したように見る。
力の大会で、第7宇宙の地球の神が使用してきたあの技はよく覚えている。
正直に言って、恐ろしい技だった。
あの時は大会という性質上、リゼットとジレンとの距離が近かったから突破出来たが、例えばお互いが視認出来ないくらい遠い位置からあれをやられてはどうしようもない。
そしてシーラスが呼び出したのは数えるのも嫌になるほどの大勢の戦士だ。
かつて第9宇宙が第7宇宙を襲撃する際に派遣した数多の戦士達……それを前にジレンは無表情で正拳突きを放つ。
それだけで全ての戦士がひしゃげ、吹き飛ばされて消滅した。
「無駄な事は止めろ。魂なき人形の拳など俺には届かん」
「……化け物め! ならばこいつはどうだ!」
生半可な戦士を出してもジレンには通じない。
ならばとシーラスが呼び出したのは、以前にジレンが仕留めたはずの悪のサイヤ人、カンバーであった。
「俺と戦ええええええ!」
「……またこいつか」
カンバーが超サイヤ人3となり、ジレンが迎え撃つ。
ヒットとラピスラズリがモロの相手をし、再び戦いの天秤は均衡を取り戻したが、均衡では駄目だとピッコロは考えた。
後一手いる。この戦況を変えるために、もう一人、モロの吸収を無効化出来るとびきり強い戦士が必要だ。
だからピッコロは、その切り札となりうる仲間に声をかける。
「ブウ! 前に伝えておいた作戦は覚えているな!」
「覚えてる。本当にやっていいのか?」
「ああ!」
ブウはピッコロの指示を受け、一度戦場から離れてピッコロ達の前に降り立った。
それから魔術で全員の怪我を癒し、起き上がった悟飯達を見る。
「やったら今の俺じゃなくなる。悪い奴になるかもしれない。約束守らないかもしれない。それでもいいか?」
「……大丈夫です、ブウさん。僕達は貴方を信じてますから」
ブウの確認に悟飯達が頷き、ブウを見る。
それを聞いてブウも決心したようにゆっくりと頷き、自らの腹を千切った。
千切られた肉片は巨大化・分散して悟飯達へ飛びつき、抵抗しない彼等を優しく包み込んでいく。
そして、慌てて逃げ出した自律気弾を除くその場の全員が魔人ブウに――吸収された。
「うおおおおおおおおおおお!!」
ブウが吠え、頭から煙を出して全身が包まれる。
急激に高まる気にジレン達も戦闘を止め、思わずブウの方を見た。
そして煙の中から何かが歩み出し、次の瞬間モロとシーラス、カンバーを殴り飛ばした。
三人に攻撃を加えた何者かは両手を広げて己の姿を見せ付ける。
それは、魔人ブウであった。
だがただのブウではない。身体は今までの肥満体形から戦闘に特化させた引き締まったものへ。
服装はピッコロの紫の胴着を引き継ぎ、顔つきも端正なものへ変わっていた。
新生魔人ブウは胴着を引き千切って引き締まった上半身を惜しみなく晒しながら、不敵に笑う。
「……どうかな諸君。無事作戦成功だよ。見たまえ、素晴らしいだろう?
この瞬間こそ未来においても二度と現れぬであろう最強の魔人の誕生だ」
圧倒的な力を漲らせる新生ブウに、シーラスが露骨に憎悪したような顔を見せた。
そして戦士の追加はまだ終わらない。
取り残されてしまった自律気弾達であったが、彼女達は突然雷に打たれたように反応すると、一瞬の硬直の後に突然一か所に集まり始めた。
分散しているよりも一つになる事で、強力な一人になった方がいいと判断したのだろうか。
組み合わさったその姿はやがて、ジレン達もよく知る一人の少女と同じものへと変わっていく。
自律気弾が合わさり、その場に出現したのは気で作り出された偽りのリゼットであった。
ジレンは驚きに目を見開き、声をかける。
「……お前は」
『……どうやら、地球はかなり不味い事になってるみたいですね。私自身はちょっと今動けないんですけど、何とか残しておいた気弾の操作くらいは出来るみたいです』
「第7宇宙の地球の神……か……久しぶりだな」
『ええ、お久しぶりです。といっても、これはラジコンみたいなもので私自身は神殿にいるんですけどね。びっくりしましたよ。目が覚めて地球を視てみたら、とんでもない事になってるんですから』
これはただの分身リゼットではない。正真正銘、リゼット本人が操作している分身であった。
リゼットはつい先程目を覚ましたが、彼女自身はクウラとの戦いの後遺症によって戦う事が出来ない。
しかし事前に地球に残しておいた気に命令を出すくらいはかろうじて出来る。
遠視によって地球の危機を知ったリゼットは慌てて残った自律気弾を全て融合させて己の分身にしたのだ。
モロのエネルギー吸収をバリアで遮断し、ジレン、ヒットにも同様のバリアを張った。
『さてと……本体でなくて申し訳ありませんが、地球の危機に私が何もしないわけにはいきません。
微力ながら援護させていただきます』
「いいだろう。お前の厄介さは俺もよく知っている。味方になるならば頼もしい」
『あはは……所詮これは分身なので、あまり期待はしないで下さいね』
緊急参戦した分身リゼットを、ジレンはすんなりと受け入れた。
リゼットの厄介さは、あの力の大会で実際に戦ったジレンがよく知っている。
敵ではなく味方だというのなら、これほど有難い存在はいない、とジレンは思っていた。
「どうやら風向きが変わったようだな。これは俺も楽させてもらえるかな?」
『17……いえ、超17号? でも髪が金髪?』
「ラピスラズリとでも呼んでくれ」
『では、ラピスラズリと……すみませんが、まだ楽は出来ないと思います。力を貸してくれませんか?』
「やれやれ、人使いが荒いな。まあいい、後でたっぷりと対価は請求させてもらうぞ」
『お手柔らかに』
ラピスラズリも一行に加わり、五人は宇宙の侵略者を倒すべく前を見据えた。
『では、行きますよ!』
「ああ!」
「応!」
「……仕事を開始する」
「報酬はクルーザーがいいな。それとも現金にするか?」
リゼット、ブウ、ジレン、ヒット、ラピスラズリが飛び出した。
敵はシーラスとカンバー、モロの三人。数の上では五対三だが、油断は出来ない。
カンバーとジレンが正面から組み合い、ブウは憎悪を漲らせながら突撃してきたシーラスを相手にする。
ラピスラズリとヒットがモロの行く手を阻み、分身リゼットはモロとの相性が悪過ぎるのでシーラスの方へ向かった。
「魔人ブウ! 宇宙の悪が! 私は貴様の存在を決して認めん!」
「フハハハハ! 随分嫌われたものだな。だが生憎私は貴様など知らんぞ!」
シーラスの繰り出す棍を余裕の表情で捌きながら、ブウは彼の憎悪に若干困惑していた。
とはいえ、心当たりなどそれこそ星の数ほどある。
大方、知性を獲得する前に破壊してしまった星の生き残りか関係者だろうと当たりを付けた。
リゼットが横からシーラスの膝裏に蹴りを加えて体勢を崩し、何とか踏み止まろうとした力を逆用して投げ飛ばす。
「ぐっ……この程度!」
シーラスがリゼットに棍を突き出すが、リゼットはそれを軽く受け流す。
そして軽く力を加えて逆に棍でシーラスの顎を打ち、そのまま強奪してしまった。
『いい武器ですね。借りますよ』
捻りを加えてシーラスの喉を突き、咳き込んだ所を狙って頭部を強打。
殴った勢いのままに棍を回転させてもう一度強打し、地面に沈めた。
シーラスは転がるようにしてリゼットとの距離を空けて気弾を発射……しかしリゼットは棍を回転させてその全てを弾き飛ばしてしまう。
「なっ!?」
『よっと』
驚くシーラスの前で棍を地面に突き立てて棒高跳びのように跳び、蹴りを顔面に叩き込む。
咄嗟にシーラスがストレートパンチで反撃するが、今度は棍で回転させるようにして拳を叩いて軌道を逸らし、シーラスの注意が棍に向いているのを利用して蹴りで膝を打ち抜く。
よろめいた瞬間にまたしても棒高跳び。今度は垂直に跳び、頭上から急襲した。
シーラスは咄嗟にガードするが、その隙にブウが横から殴り飛ばす。
起き上がる寸前にリゼットが棍で襲撃。シーラスも反撃するが、リーチの差で一方的にリゼットの攻撃が命中する。
更に棍を超高速回転! あまりの速度に摩擦熱が生じ、炎の輪を生み出す。
そのまま炎の輪を射出し、シーラスをガードの上から炙った。
しかし炎はただの目晦ましだ。ガードしたままのシーラスの股を蹴り上げて空中に飛ばし、リゼットも跳躍。
気で構成された身体を活かして右腕が巨大なドリルに変形し、シーラスの顔を狙って高速回転しつつ突き出された。
シーラスは肩を僅かに削られつつ咄嗟に回避し、反撃の気弾を連射する。
しかしリゼットは人型を捨ててスライムのような形状に変化し、人では絶対不可能な蛇のような動きで気弾の嵐を回避し、元の姿に戻った。
「ぐっ……何故だ……絶対の正義を遂行出来る力がありながら、何故お前は、悪の存在を許している! 私が望んでも得られぬ力を持ちながら、どうして!」
『絶対の正義ですか。その考えは危険だと私は思いますけどね』
「危険だと!? 貴様も……貴様までもが時の界王神と同じ事を言うのか!」
シーラスにとってリゼットという神は、まさに彼の目指す理想の到達点であった。
宇宙全域を攻撃範囲に含め、あらゆる悪を強制的に改心させてしまう『破壊』を振りまく、善の化身。
常に悪人ばかりが強い力を持ち、好き勝手に暴れ続ける第7宇宙という魔境にやっと生まれた全てを変え得る奇跡。そう思えた。
そしてシーラスにとって、魔人ブウという存在はまさに理想の墓場であった。
かつて初代タイムパトローラーであった彼は、純粋だった頃の魔人ブウに殺されそうになっている子供を助けた。
だがその子供が住んでいた星はブウによって破壊され、結局助ける事が出来なかった。
シーラスにとって魔人ブウとはまさに、第7宇宙という魔境を体現する悪の化身そのものなのだ。
そしてシーラスは理想を捨て、歪んだ正義に生きるようになった。
そんなリゼットとブウが手を組んで、地球を守る為に己と戦うという悪夢……シーラスはおかしくなりそうだった。
どうして魔人ブウが守る側にいる? どうして自分は……あんなにも憎んだ『悪』と同じ事をしている?
シーラスはもう、自分が何をしているのかすら見失いかけていた。
一方モロと戦っていたヒットとラピスラズリは、モロとの戦いをこれ以上長引かせるべきではないと考えていた。
長引けば長引くほど、モロによる星への被害が大きくなっていく。
今はまだブルマの張ったバリアのおかげで地球の各地で自然災害が起きている程度だが、いずれは死の星に変えられてしまうだろう。
狙うは短期決戦。そしてそれを実現出来る男が、今この場にいる。
「ジレン! あのモロという奴は厄介だ!
「いいだろう……まずは奴を片付ける!」
ヒット達の狙いを一瞬で悟り、彼等と入れ替わるようにジレンがモロへ向かった。
まずは痛烈な拳打を一発!
「ぐはっ……!?」
モロが錐揉み回転しながら吹き飛び、その先に回り込んだジレンが両腕で叩き落す。
更に急降下して踏みつけ。モロの肋骨がへし折れ、夥しい量の血を吐き出した。
モロは気弾で砂塵を巻き上げて視界を隠し、ジレンの背後に回り込むが即座に振り返ったジレンのカウンターで鼻をへし折られる。
並行世界に潜んでの奇襲すら見破る男に、この程度の小細工など通用しない。
ならばと魔術を使用。地球のエネルギーを操ってジレンとの間にエネルギーの壁を作ったが、構わず突っ込んで来たジレンには通用せずに腕を掴まれてへし折られた。
「がっ……なら、これならどうだ!」
モロは残った腕で、指先一本に集束させた気功波を発射した。
魔貫光殺砲のように、一点に集中させた気功波は通常よりも強力な殺傷力を誇る。
その一撃を前にジレンは仁王立ちで応戦。
そして信じがたい事に、大胸筋で集約させた気功波を受け止め――。
「……むん!」
――そのまま弾いた。
「……は?」
思わず茫然としてしまったモロの頭を掴み、膝を顔面に叩き込む。
更に一発、二発、三発。頭を掴んだまま拳を打ち込み、モロの顔が血の色に染まる。
そのあまりにあまりな出来事に、ラピスラズリとヒットは、ただ呆れた。
ショックから立ち直る間もなくジレンが無慈悲に拳のラッシュを放つ。魔術など知った事かと正義という名の暴行を加え、モロの腹に手を当てて気弾を叩き込んだ。
『今です、ブウ!』
吹き飛んでいくモロを見て、リゼットがブウに指示を出す。
ブウも即座に応え、指先をモロへ向けた。
シーラスが咄嗟に妨害しようとするも、リゼットが棍で足払いをして転倒させ、カンバーはヒットが時飛ばしで翻弄しつつラピスラズリが気弾の嵐を打ち込む事で近寄らせない。
「魔貫光殺砲!!」
ブウの指先からお手本を見せるように光線が放たれ、吹き飛んでいるモロの心臓を貫いた。
致命傷を受けたモロは白目を剥き、壊れた人形のように地面に落ちる。
地面を血が濡らし、溢れ出続ける血の量はもうモロが助からない事を雄弁に語っていた。
「……ち、ちくしょう……だが、まだだ……せめて、貴様等から……この星を……奪ってやる……」
這いずりながらモロは、最後の嫌がらせをしようとした。
彼は惑星と同化する能力を持っており、その力で地球と一体化してこの星を道連れにしようとしたのだ。
だが――同化出来ない。
何かに縛られているように、能力が使えないのだ。
そしてこの感覚には覚えがあった。
「ま、まさか……あの時の……大界王神の……封印……!?
さ、最後の最後まで……俺の邪魔を……」
大界王神の封印術は完全に効いていないわけではなかった。
モロの、星と同化する能力を封じ込めていたのだ。
遂に万策が尽きたモロは、哀れみを誘うような声で懇願する。
「た……たのむ……ころさ……ないでくれ……」
最後にモロが取った行動、それは命乞いだった。
もしここにいるのが孫悟空だったならば、それは有効な手段だっただろう。
モロは極悪人であり、そのモロと戦う相手はモロの悪行を止めようとしているのだから善人の可能性が高くなる。
だからこうして情に訴えかけて許しを乞うのは、意外と有効なのだ。
そしてモロの命乞いを聞いたブウは……。
「卵になれ!!」
全く躊躇せずに攻撃を続けた。
遂に一撃必殺の光線が直撃し、モロは卵となって地面を転がる。
その哀れな卵をブウが思い切り踏みつけ――モロの命は終わった。
【戦闘力】
・モロ:107兆→135兆→80兆
ピッコロをポコピーして強くなったのも束の間、ヒットとジレンに額の水晶を破壊されて元の強さに戻ってしまった。
まあ死んだのでもう0なんですけどね。
・魔人ブウ(地球戦士吸収):92兆
地球戦士を吸収した魔人ブウ。外見はブウ編の悟飯吸収ブウの服装をピッコロの胴着に変えた感じ。
すぐに破いてしまったので、実質上半身を裸にしただけの悟飯吸収ブウ。
大魔王とスラッグが混ざっているせいか、眼もしっかり悪ブウっぽく白目の部分が黒くなっている。
ちなみにバーストリミットは元のブウの戦闘力にかかっているので、この数値で既に使用している状態。
発言がいちいち敵キャラっぽいがちゃんと味方。
× (ブウ+吸収した全員の戦闘力)×30
〇 ブウ×30+吸収した全員の戦闘力
・分身リゼット:40兆
地球に残した自立気弾を全融合させたリゼット分身体。
本人が操作しているので技術もオリジナルと同レベル。
これ自体が気の塊なので、気を消耗する気弾、気功波系の技は使えない。
気を消費せずに相手にダメージを与えられる優秀な武器を現地調達する事に成功した。
リゼット本人が絶え間ない睡魔に抗いながら動かしているので、自己中心の極意のような集中力が必要な高難易度技は使えない。
【モロ退場】
実は生きてましたとかないです。本当にこれでモロの出番は終わりです。流石に三度目はない。
メルス「見せ場がー! 私の見せ場そのものがー!」
トランクス(どうしてだろう……? この人には強い親近感を覚える……)
【ジレン乱入】
語らねばなるまい……。
お前達にも教えよう。ジレンがここにやって来た方法を。
ジレンは第7宇宙に己の過ちを理解させられたんだ。
そして宿敵となる男に称えられ再戦を誓った。
それからジレンは生き返った師匠の下で更なる強さと正しい道を極めようとした。
1人、2人、3人…ジレンの周りには仲間ができた。
そこにコアエリアの戦士がやって来た。仲間と共に戦った。ジレンには勝てる自信があったんだ。
だが、奴は強すぎた。ジレンの仲間は次々と吸収された。
トッポまでも奴との戦いで取り込まれた。
ジレンは再び立ち上がろうとしたが閉じ込められて動けなかった。
動くと爆発するので耐えるしか無かったのだ。ジレンは独りになった。
信頼していた連中を奪われたジレンの悲しみは計り知れない。
その時痛感したんだ。規則など無価値だと。
それと同時に理解したのさ。破壊神の乗り物を奪えば追いかけられると。
勝てば周りが戻って来る。勝利すれば全てが手に入る。そこに遠慮など不要。
俺はそんなジレンのとてつもない行動力とその大胆さに惚れたんだ。
信頼していたジレンの活躍を鑑賞する機会を奪われた俺の悲しみは計り知れない。
byピエロ